5.《ネタバレ》 唐突なラストにア然とするのと同時に、心が締め付けられました。まさかこんな“途中”で幕切れとは。最後はてっきり感動のライブが待っていると思っていたのに。でもよく考えてみれば、人生とはそんなもの。志半ばにして終わるのが常。それに何も積み重ねていない奴らに、晴れの舞台などあろうはずもありません。そもそも表現者として、観客に届けたい“思い”があったのかさえも疑わしい。しかし居酒屋でのデブニートのラップには、訴えかけるモノがありました。無様です。情けないです。カッコ悪いです。それよりちゃんとバイトしろよって話。でも心に響きました。負け犬の遠吠えだとしても、吠えるのを諦めるよりは100倍マシ。たった一人でも心を揺さぶる事が出来たのなら、もしかしたら観客の心にも届くのかもしれない。それがこの映画が伝えるささやかな希望でした。馬鹿は諦めが悪いもの。でもその馬鹿が羨ましい。そして愛おしいのです。絵に描いたようなダメ人間に感情移入が叶うのは、奴らの本質が腐っていないから。仲間と上手くやりたいのなら同意できなくても適当に話を合わせておけばいい。でも奴らにはそれが出来なかった。その純粋さは、捨てちゃいけない。一度手放したら二度と手に入らない宝物だと思うから。ラストシークエンスや謎の小声先輩タケダのエピソード等、サプライズが感動に直結する見事な脚本と、リアリティある人物造形に強く共感する、痛痒さ満載の笑って泣ける青春讃歌。素晴らしいです。大好きです。遅ればせながら、続編も必ず観ます。 【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 9点(2013-06-16 17:58:39) (良:1票) |
《改行表示》 4.“ラップ”という音楽表現が、日本の音楽シーンに根付いてもう久しい。 けれど、“日本語でラップをする”という表現方法が持つ根本的に拭いされない違和感と気恥ずかしさは確実にあり続けている。そういうものから目をそらさず、それでもこの表現で夢を追う若者たちの“無様さ”を真正面から描いた試みが良かった。 「自主制作映画」ということは知っていたけど、音声の違和感も含め思ったよりもチープな映像世界と素人臭い演技には少々面食らってしまった。映画冒頭の感触は、どこかの映画学校の学生が課題で撮ったものかと思える程で、果たしてこれからどんな映画世界が描き出されていくのか不安になったことは否めない。 繰り広げられる安っぽい映像や演技に嘲笑を禁じ得なかったけれど、気がつくとそういうことは気にならなくなっていた。 稚拙な演技も含めて、ださくて、格好悪い片田舎のラッパーたちの行く末が気になって仕方なくなってくる。 尽く格好悪い彼らの言動が、可笑しくて、仕方がない。 中盤でみひろが主人公に対して言うことは、恐らく間違っていまい。 何も出来ていない彼らは、きっと何も成し遂げることなく終わるのだろう。 それは、悲劇でもなんでもないあまりにフツーの現実だ。 「夢を追う」ということの愚かさとほんの少しの素晴らしさが入り交じった現実。 映し出される映像世界はとてもチープだけれど、それを不器用なまでにまっすぐに描いているこの映画の在り方はきっと正しい。 場末の焼肉屋で、ようやくバイトを始めたに過ぎない主人公が、夢を諦めかけている友人と自分自身に対して熱くライミングをするラストシーンは、それまでと変わらず、いやそれまで以上に格好悪く滑稽だ。 ただ、僕には彼を嘲笑うことなんて出来るわけがない。 P.S.みひろが良い。エロくて良い。当たり前だけれど。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-03-04 23:32:41) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 雑誌BRUTUSの特集で、錚々たる名監督と名作の中に入江悠監督とこの作品の名が。以前からこの監督のことはこの作品と共にあらゆる雑誌やネットでその名を見かけており、気になってはいた。 確かに訴えてかけてくるものがあったし、インディーズでしかできないような内容であることから多くのファンに支持されるのも頷ける。特筆すべきは、公民館のライブシーンとラストの飲み屋のシーンだ。ワンシーンワンカットがうまく効果を上げており、その痛々しさも相まって最高の名シーンとなっている。また、グループ内派閥の雰囲気というのがすごくリアルで、最初のSHO-GUNG内のやりとりからグループの人間関係というのが見えてきて、後の衝突がなんとなく予想ができるところに演出の上手さを感じた。 しかしその反面、映像と音響がとてつもなく安っぽい、ワンシーンワンカットを多用しているためテンポが抜群に悪い(ワンシーンワンカットは前述の2シーンのみ必要性を感じた)、みひろ演じる千夏という登場人物を持て余している、など重大な欠点がいくつかあるのが残念。 【eureka】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-01-21 00:24:59) (良:1票) |
2.本物のダメ人間だけが共感できる、というよりも身の詰まる思いで、胃が痛くなる。もうちょっとだけ夢みさせてくれ! |
1.《ネタバレ》 確かに映像は安っぽいし音も不自然。役者もパッとしない。けれど、ラストシーンは思わず感動してしまいました。この映画で描かれていたことが、商業劇映画で描けているかと考えると、はっきり言ってその数は少ないと思います。よく『「笑い」(お笑いにしろコメディ映画にしろ)は「笑われる」のではなく「笑わせる」ものでなきゃいけない』、なーんて言いますが、昨今映画やテレビで表現されている「笑い」はそれ以下の「他人を笑い者にする」ものが本当に多く、ゲンナリしています。この映画の主人公たちも周囲からは「笑われる」存在ですが、作り手は決して彼らを「笑い者」にして嘲笑っているわけではありません。そんな彼らがラストで歌うラップはまるで「音楽が音楽になる瞬間」でした。恐らくこの映画を職場で勧めて「このシーンが良かったんだ!」と言って見せても、「これが良かったの?wwへえーっwっっw(ププッ」という反応しか返ってこないだろうなあ。けどいーんだ、だからこそ俺はこのラストで感動したんだから。 【ゆうろう】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-03-01 22:56:29) (良:1票) |