4.《ネタバレ》 植物が育たない灰色の世界がめちゃくちゃにリアルに映し出されて、その生々しくも強烈な終末観に圧倒された。それもそのはずで、この死の世界はCGを一切使っておらず、実際にハリケーンで被災した土地なんかで撮影されたとか。いやはや凄い。途中からこれってホラー映画か?てな展開になって映画館を途中退席するおばさんまで続出。展開はともかくとして映し方がそれまでのだだっ広い死の世界にちっぽけな人間という構図から一転、擬似ドキュメンタリーで流行のアップで揺れる画面という慌しい恐怖演出に変わってしまってがっかり。それでも現在二児の父親という境遇のせいだろうが、ただ生きることが困難な時代になにがなんでも子を守り、おそらくは生まれ持ったものであろう善を育もうとする親としての本能に引きつけられた。ラストはこの世界で描ける精一杯の希望を見せる。人が食べられる世界においてペットですら食べない家族との遭遇という。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 6点(2010-11-29 13:51:03) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 原作既読です。荒廃未来系の作品が大好きで原作に非常に唸らされパンパンの期待で鑑賞しました。活字の合間から立ち上がる灰色の荒廃した世界を見事に映像化したことにまずは拍手を贈ります。小説の映画化はえてして脳内映像に勝ることが少ないなかではよく作りこまれています。ただ決定的に掛けているのはその見せ方。深い谷をつなぐ荒廃した高速道路、同じ角度で傾き連なっている電信柱など、親子ドラマの背景にしておくには余りに惜しいように思います。荒廃した世界にはショットを固定し、幾何学的な文明の遺物を連ねて映すだけで満腹になったと思うのですが何とも残念です。また、越冬するため荒廃した世界を南に歩いて下るという極めて途方のない感覚は映画では欠落しており、ストーリーは原作に忠実ではあるものの、ハプニングを連ねて飽きさせないように腐心した脚本家の苦心が伺えます。ただ、原作と異なる心地よい感動を得て映画館を後にできたのは、ラストでガイ・ピアース一行の女性(妻?)と少年が会うシーンです。女性が少年に笑いかけながら「あなたを見ていた」と告げたとき私は強烈な母性を覚えました。回想部分も含め全編を通して少年と母親との交流を描いた場面は(原作でも)皆無であり、父親に庇護され命を保証されてきたとはいえ、母親という存在がいかに子供にとって不可欠であるかを感じました。父親とは明らかに異なるやわらかな輪郭と全てを肯定するようなまなざしが非常に印象的です。荒廃した世界に生まれ、父、母、通りがかりの老人とカートを盗んだ男性が世界のすべてだった少年にとって、まさに新しい世界が開けたこのエンディングは素晴らしい余韻をもたらしてくれます。 【さめがい】さん [映画館(字幕)] 6点(2011-02-05 22:33:56) (良:1票) |
2.この世界で自分ならどう生きるのだろう?という疑問が生まれ、そのヒントを知りたくて最後まで集中を切らさず観ることが出来ました。そりゃあ最後に出てきた家族を守る男のように生きたいですよ・・・。人が人を喰らう世界で犬を守るような人間でありたいですよ・・・。素晴らしい美術スタッフにも支えられた力作だとは思いますが、陰鬱な気分にもなりました。観た人それぞれに何かしらの思いが浮かぶ映画だと思います。8bitさんのレビューを拝見して思ったのですが、確かに最近のガイ・ピアースはちょい役が多いですね。ルックスはもちろん、眼の雰囲気なんかも独特なものがあって好きな俳優なんで、そろそろまた主役で観たいです。 【マリモ125cc】さん [DVD(字幕)] 6点(2011-01-18 10:22:42) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 文明崩壊後に、親子が二人で南を目指して彷徨うだけの映画。 悪人から逃れるために隠れて、食べ物や物資を探し求めるだけで目立ったストーリーがないだけに、好き嫌いが分かれそうな作品に仕上がっている。 素晴らしい作品とは思うが、正直言って自分の好みの作品ではなかった。 ただ、本作に描かれているメッセージは深い。 生き残るために他人を襲い、あるいは人間ですら食べるということが当たり前の世界の中で、善という“心の火”を灯し続け、その精神を息子に叩き込もうとする父親の姿が心を打つ。 文明が崩壊して秩序が崩壊して混乱した世界になっても、人々が“心の火”を灯すことで秩序が回復できるのではないかと、かすかな“希望”が感じさせる。 唯一の“希望”が自分達を撃つための銃弾という設定も泣かせる。 平和だった日常生活が随所に回想として挿入されているが、何でもないようなことが実は幸せだったと思わせる。 ラスト間際の父親の幸せそうな夢を見たときに、「悪夢を見る者は生きる希望を失っていないから」という言葉を思い出して、彼の死期を悟ることができるようになっている。 本作中においては、文明が崩壊した理由も明らかもされず、最後に楽園に辿り着くわけでもない。 そういった映画らしい展開を無視する辺りも本作の個性ともいえる。 むしろ、そういったお約束を描かない方が本作にはプラスといえるだろう。 “心の火”を灯した親の子ども達が出会うことが、自分には希望と感じられた。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 6点(2010-12-28 23:16:56) (良:1票) |