《改行表示》 8.《ネタバレ》 結局変な人たちの映画だったの? 【以下バレ】 映像的には飽きもこないしなかなかいい線いっていると思わなくもないのだが、いかんせん殺人の動機が弱い。あのくらいの台詞でいちいち切れてたら社会人なんぞやってられんだろう。差別や格差を無理くり作り出して物語を捏造するという意味でなら、時代を写実しているといえなくもないが(皮肉だよ)。 物語の転換点となる重要なアクション描写(妻夫木と深津との最初の出会いや、殺してから橋の下へ落としたはずの行為)がどういうわけか端折られている。おかげで逃避行にも説得力がない(まるで「おかしな二人の旅日記」)。さらにどうしようもなく皮相的な大学生の会話や態度など気に入らない点はいくらもある。最後の灯台シーンも、人生崖っぷちの象徴のつもりならなんで崖そのものを映さんのかと思う。青い空に広い海じゃ心象風景と真逆じゃねーか。 妻夫木はその変態性を出すのが遅すぎるし、深津はまるで普通のおばさんで田舎の嫁き遅れの暗さをちっとも出せていない。ただ光る点もあり、とても丁寧なカメラマンの仕事もさることながら、満島ひかりの演技。方言を駆使しての快活なOL役は見事にどハマりだったし、何より死後橋の上で柄本の呼びかけに応じて出現した際の、(これは撮影の妙もあるのだろうが)筆舌に尽くせないほど多義的な表情。まさに映画でしか表現できないものであった。もし賞に価するとしたら、満島の方だったであろう。 【アンギラス】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-10-01 00:51:52) (良:3票) |
7.《ネタバレ》 「出会い系」というツールが結ぶ男女の出会いを発端に、一人は殺され一人は初めて人を愛する。一つの出会いが運命的な出会いとなる。それが二つあるわけだ。なんて映画的なんだろう。となると「出会い系」という安易で軽薄なツールを使う登場人物たちの孤独さを象徴するシーンの連なりがこの作品の肝となってくる。原作どおりとはいえ、GT-Rに三連メーターなんていう車オタクぶりを見せる妻夫木。居酒屋で友人に対して虚勢を張る満島。妹カップルの出て行ったあとの乱れた寝室をぴしゃりと閉める深津。それぞれの孤独を表すなにげないシーンが効果的に配されてゆく。なのに「国道のあっちとこっちを行ったり来たりするだけの人生」(正確じゃないけど、そんな感じのこと)という決定的な孤独環境をセリフにしちゃう安易さよ。「レイプされたと訴えてやる」と声を張り上げるそのときの「絶対」を連呼する満島の短絡思考表現の絶妙さに比べて岡田のわかりやすいだけの人物造形のスカスカさよ。そしてやっぱり出てきたバカの一つ覚えのようなマスコミの描き方。とどめは一生懸命に何かを語ってくる音楽の鬱陶しさ。いいところも多々あるのに、どうしてそんなことしちゃうのってのがもっとある。 【R&A】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-09-21 16:31:11) (良:3票) |
《改行表示》 6.あっさり薄味の映画でした。無理やり感動系にしたかったようですが、ちょっとズレている気がします。だいたい出会い系で会ってたちまち入れ込んでしまうインスタントな主人公2人より、「誰のクルマにでも平気で乗ってくる女は嫌いだ」と言って美女を蹴り出してしまう大学生君のほうが、よほど筋が通っているし男気がある。彼はスパナを持つ柄本明に対し、「おたくの教育方針が間違っていた」と説教してやるべきでした。 と、いろいろ考えてみると、実はコメディー映画にしたほうがよかったんじゃないかという気さえします。「もし出会った彼が殺人犯だったら」みたいな。けっこう笑えると思うのですが。 【眉山】さん [地上波(邦画)] 5点(2011-12-19 14:55:15) (良:2票) |
《改行表示》 5.キャストは豪華だし、映像的にも完成度が高い。 でも、僕はこの手の作品が苦手だ。 この物語はフィクションであり、特定の事件をモチーフにした作品ではないのだろうけど、世の中にこういった事件が存在することも事実。 そんな被害者や被害者の遺族のことを想うと、多少なりとも被害者を悪く描写することに抵抗感がある。 もちろん、殺人事件の被害者はすべて聖人であるとは言わないけど、敢えて悪く描く必要もないんじゃないかと。 何の罪もない女性がたまたま事件に巻き込まれてしまったという設定じゃ駄目だったんだろうか? そういうことをつい考えてしまう。 殺人事件の加害者であっても根っからの悪人ではないかも知れないというメッセージには納得しつつも、やっぱり被害者は悪く描かないで欲しかったというのが正直な感想です。 そんなことをいろいろと考えさせられる深い作品です。 【もとや】さん [映画館(邦画)] 5点(2011-05-19 15:25:23) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 原作は未読です。映画全体は冗長で、全編グジュグジュと煮え切らない様を延々見せられ、人物表現に多少、見られた陳腐さも気になり、最終的には『何だかなぁ・・』と複雑な印象になりました。まず『悪人』の妻夫木演ずる祐一の殺しの動機の真相は、どう見ても『元々悪いのは被害者の娘、佳乃。こうなるのも仕方がなかった』というような感じで、祐一のおばあさんを恐喝する業者をはじめ、被害者・佳乃の本来の相手の増尾のような『悪人』として描かれるキャラとはまるで違う一線を引いて『祐一は他とは違って悪人ではない』と見せてますが・・・でも祐一は佳乃の正気を失った行動に激情して殺害に走ったと言ってもやはり自分の意思で身勝手に殺したのだから、やっぱりどう同情的に表現しようとも彼もまた『悪人』なのです。フェアじゃないよな・・いいじゃない彼も元々『悪人だった』でその為の深津絵里演ずる光代がいる訳です。彼女の存在で彼は灰色の人生に潤いを与えられ変っていくと描写している訳なのにねぇ・・。でも光代が祐一を悪人呼ばわりする妹に対し『彼は悪人じゃない』と電話で言いますが、最終的に祐一に娘を殺されひどい心の傷を付けられた家族の姿を見て『理由はどうあれ、彼は世間的には悪人でしかない』と言うような感じで終わるのは何とか良かったと思います(色々な解釈の余地はありますけど)。あとはこの映画の仕組みは被害者と加害者とその家族の描写が主軸ですけど、特に樹木樹林のおばあちゃんのエピソードは何か繋がってないような浮いている感じがしましたね。樹木樹林の存在感で何か重点を置かれてる気がしますけど、実はあまり関係がなくね?と・・。そしてさらに気になったのはそれを追っかけるマスコミの描き方・・あれって『誰も守ってくれない』と同じで本来、事件に関係のない加害者の家族を執拗に追い詰めるようなマスコミの姿に閉口。しかも老いた普通のおばあちゃんに対して・・現実にあり得る?かと、こういう所はガッカリしますね。もちろんそれぞれの役者陣の演技は素晴らしいと思いましたし良かった所はありました。でも、諸々の散漫さと展開の冗長な感じがどうしても否めず作り手が強く伝えたいであろうテーマが薄ぼけてしまったような作品でした。 【まりん】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-09-26 16:34:03) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 九州の片田舎で暮らす無口で不器用な土木作業員が、出会い系サイトで知り合った保険会社のOLを痴情のもつれから殺してしまい、同じく出会い系サイトで知り合った紳士服店に勤める内気な女店員と結託して、ゆきずりの逃避行を繰り広げるという社会派クライムサスペンスラブロマンス。まず役者の皆さんはそれぞれの持ち場で相当がんばっていると思うのだが、この映画の押し付けてくるメッセージらしきものが全くもって気に食わない。私のおしゃまなバイアスを通してこの話を要約すると、地方都市の閉塞感に耐えながら心を閉ざして生きてきた可哀想な妻夫木君は、出会い系を使った買春まがいの行為でガス抜きをやってきた中で、勢い余って小面憎い銭ゲバビッチを1人ぬっ殺しちゃったんだけど、深津さんという「大切な人」と出会って「失うもの」が出来たんだからもう悪人じゃないよね、と言っている様にしか思えないのである。そもそも「大切な人」がいなくて何が悪いのか?「失うもの」が無くて何が悪いのか?そんな人間はみんな犯罪者予備軍か人殺し以下の悪人だと言いたいのか?とんでもない暴論ではないか。余りに馬鹿馬鹿しくてテーマに関してはこれ以上触れても不毛なので、私の個人的嗜好のバイアスを通してこの話を更に要約すると、車から蹴り出された満島ひかりが鉄製のガードレールに顔面を強打するシーンの為だけに存在する映画である。愛の逃避行の行く末とか心からどうでもいい。ちなみにこの顔面強打シーンは短いのだが、角度を変えて2回出てくる所がポイント。蹴り出されるタイミングと速度、ガードレールに当たった時の音、当たった後のリアクション、どれをとっても完璧という他ない。最初に地上波で観た時に大笑いしたので、このシーン観たさにCSで録画し直して、このシーンだけを何度も巻き戻して繰り返し観ている。落ち込んだ時とかにこのシーンを観ると、鬱屈が晴れて明日もがんばろうという気分になれるのである。 【オルタナ野郎】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-01-16 14:49:48) (良:1票) |
《改行表示》 2.期待し過ぎなのか、、、あまり感ずるところのない映画だった。 ストーリーの展開のテンポや映像やキャスティングは確かによいのだけれで、「それで?」と思ってしまう。 人間が持つ「孤独感」がこの映画のテーマなのかな?と個人的には思う。 【MS】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-05-01 11:32:37) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 主人公の男と女。出会い系サイトで知りあった二人は、いつしか互いを祐一、光代と呼びあうようになる。だがそこには、肝心の説得力が伴わない。彼らがそうして親密さを深めるに至った経緯が物語からきれいさっぱりと抜け落ちているからだ。それは、観客の想像を刺戟するような映画的表現としての「省略」ではない。本来あるべき必要なシーンが強引に割愛されてしまったかのような、単なる唐突さだ。食卓に並ぶイカ(奪われた生命)の目に罪悪感を喚起された祐一が殺人の回想へと至る場面のひとりよがりな上滑りも、さらには祐一の祖母が自分を騙した漢方薬詐欺の事務所に敢然と乗り込む薮から棒な描写にしてもそうだ。巧みな演者が見せる登場人物たちのゆらぎ移ろい変化する多面的な心情も、その過程や余白が綿密に描ききれていないため、まるで一貫性のない突飛な言動に見えてしまう。李相日監督は前作『フラガール』もそうであったように、俳優たちから最上の演技を引き出す術に実に長けた映画監督だ。本作でも、主演から助演に至るすべての俳優から瞠目に価する素晴らしい芝居を導き出すことに成功している。妻夫木聡のこんな表情を、今まで一体誰が想像できただろう?自転車置き場で涙する深津絵里のせつないたたずまい、あるいは雨に打たれる満島ひかりと柄本明の、傘一つに万感の思いを託した鮮烈な切り返しなど、特筆すべき描写だっていくつもある。水準を下回る映画では決してない。だが、だからこそ、残念なのだ。ラスト、花束を抱えた光代がいつまでも車中に留まり続けるのは、彼女が悪人と被害者の狭間に立ちすくむ非力な存在だからだろう。ここでも深津絵里は、悪人を愛した女の、被害者にはなりきれぬ苦悩や葛藤をその表情に滲ませ見事だ。しかし、やはり映画としては最後まで消化不良で上滑りした印象が拭えない。 【BOWWOW】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-12-04 16:21:24) (良:1票) |