6.ロメロをプロデューサーとして迎えているだけのことはあって、オリジナルをかなり尊重したリメイクに仕上がっています。細かいエピソードにはオリジナルから引用したものが多くて、「ゾンビ」とは似ても似つかぬ映画になってしまった「ドーン・オブ・ザ・デッド」などと比較すると、その製作姿勢には大変好感が持てました。その一方で、ただオリジナルをなぞるだけではなく21世紀版としての適度な改編がなされている点でも本作は評価できます。細かいネタはオリジナルから拾いつつもその味付けを変えており、オリジナルとはまた違う楽しみが出来る作品に仕上げているのです。オリジナルはかなり体制批判的な作品でしたが、その作風は公民権運動やベトナム戦争を経た70年代という時代背景を反映したものであり、そんな作風をそのまま現代に復活させても時代錯誤なリメイクが仕上がるだけ。そこで本作は体制批判的な面をバッサリ落とし、ソリッドなサバイバルアクションとして「クレイジーズ」を再構築しています。最大の変更点は軍隊の指令系統をまったく描かなかったことで、これにより社会派作品としての魅力は失ってしまったものの、映画の視点を逃げる主人公のみに絞ったことでアクション映画としての面白さは倍増しています。主人公は、自身がウィルスに感染するという脅威だけでなく、感染者による襲撃と軍による追跡という複数の脅威と戦うこととなるのですが、描写を限定したおかげで主人公の苦境がオリジナル以上に鮮明となっています。アクションの面白さやショックシーンの作り込みはオリジナルを凌駕しており、電ノコを持った感染者、鍬で人を串刺しにする校長先生、洗車場での襲撃等、気合いの入った描写が目白押しです。アクション映画として作り直したことで映画全体のテンポも変わっており、序盤からサクサクと話が進んでいく点でもオリジナルより見やすい娯楽作となっています。オリジナルを尊重しながらも時代に合わせて作風を変える、これは理想的なリメイクの形であると思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2011-10-21 01:13:36) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 好きなタイプのパニックホラー。小さな田舎町で急におかしくなる住民たち。その原因は軍が密かに開発していたウイルス兵器やら化学兵器やらなんかそんなやつ。それを輸送中の墜落事故が原因。リメイクともあって使い古された設定ですが、ホラーやらパニックやらはこれで良い。とにかく『どう生き延びるのか』のサバイバル感やスリル感を味わえるのが大事なのです。 田舎町なのでみんな顔見知りってのも良いです。そんな牧歌的な雰囲気で始まるからこそ、惨劇や悲劇が起こったときの絶望をより強く感じます。 この映画の長所は、なぜか暗くなりすぎないところです。住民が良い人ばかりで、そういった人たちが理不尽に犠牲になっていくのに、なぜか不思議と後味が悪くありません。最後主人公夫妻がなんとか生き延びられたときに感じる安堵感のほうが強いです。 それに、こーゆー映画であるあるなんですが、最後はミサイルできれいさっぱり町が焼き払われるのが妙にスッキリしちゃいます。 今作は感染者に襲われるいわゆるゾンビ系映画のスリルが味わえる一方で、軍の脅威もしっかり描かれています。 ベッカの彼氏とその母親が銃殺されて焼き払われてしまうシーン。そして納屋に隠れ、軍に見つからないようにするシーンで、感染者たちとはまた違うスリルを味わえます。 軍のヘリから隠れるため洗車場に逃げ込んだところを感染者に襲われる。複数の脅威をバランスよくミックスさせ、手に汗握るパニックホラーの出来上がりです。 三つめの脅威は感染しているのかどうかよくわからない保安官補佐。彼の描き方がうまい。次第に凶暴になっていく保安官補佐。それが感染によるものなのか、この異常な状況が彼の精神を不安定にしたのか、どちらともとれる絶妙な匙加減がうまいです。 正直この手のパニックホラーとしては秀作に入ると思います。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 8点(2021-11-26 04:51:03) (良:1票) |
4.ロメロの元映画の方を観てみたいのですが、レンタルビデオ屋さんに置いてないので、代わりに、っちゃあ何ですが、リメイクの方を観させていただきました。代替品扱いでゴメンなさい。いや、面白かったです。まずそもそも、適当にカメラを揺らして臨場感出しとこう、みたいな安直な事をしてないのがうれしいところ。見せ方へのこだわり、という映画が本来持っているべきものを、ちゃんと感じさせてくれます。 ある小さな田舎町を突然襲う異変。人々の挙動がおかしくなり、他者を襲い始める。いくら映画だからって、ただ病気に感染してしまっただけの気の毒な人たちを、ゾンビ扱いしていいのか~っっってのは、もともと、ロメロのゾンビ映画が持っていた毒、というか、後ろめたさ。「人間そっくり」だけど人間ではないと「信じられる」何か(=ゾンビ)を虐殺する、虐殺してもよいと考える、その後ろめたさ。この作品でも、人が人を襲う、というその構図において、もはや、襲う側、殲滅される側が、もはや感染者かどうかは問われなくなっていく。身近に迫る感染者の襲撃の恐怖、その一方で、遠目に目撃される、非感染者を含めた虐殺の恐怖。 感染者を「クレイジーズ」などと呼んだりしているけれど、このラストシーンの後では、一体、真の「クレイジーズ」は誰のことなのか、と言いたくなる訳で、しっかりと皮肉も込められたホラー作品でした。 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 8点(2016-10-27 13:28:39) (良:1票) |
3.ショッキングなシーンも入れつつかなり手堅く作っているので極端につまらないと感じる人は少ないのではないでしょうかね。ゾンビではないけどほぼゾンビといった感じですが、こちらの方がリアリティがあるのでゾンビ映画に食傷気味の方でも見れると思います。 【映画大好きっ子】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-11 10:06:34) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 可もなく不可もなく、まぁまぁといった感じですかねぇ。家の中でかつての知り合いに襲われるシーンや洗車場で襲われるシーンなど、なかなか見応えはあったのですが、軍の兵士達があまりに無機質で魅力に乏しく、軍がバラまいた細菌でああなったしまったのだからもっと理不尽に描いても良かったと思いますね。個人的には、保安官の補佐がいい味出してたように思います。少しずつ凶暴になって、保安官夫婦にも銃を向けながらも、最後には役に立ちたいと自ら儀性になる。あのシーンだけ、唯一ぐっときたシーンでした。 【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 6点(2011-07-15 17:33:23) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 作品の雰囲気は、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」と「28日後」を足したような感じでしょうか。一言で表すなら『知性をもったゾンビ(厳密には感染者)に襲われる映画』。 70年代に製作されたロメロ版がオリジナルにあたり、「28日後」自体もそのオリジナルを意識したそうだから似てるのも必然なのでしょうか。 ロメロ作品といえば、ゾンビよりも本当に怖いのは人間の性であったり、社会風刺をきかせた皮肉めいた演出が特徴。本作でも、感染の発端となった事故の隠蔽や非人道的な軍の封じ込め作戦など一応そのあたりは踏まれており、何というか軍隊がすごく無機質な集団の塊(命令どおり、マニュアル通りにこなす)のように描かれて怖い。今の日本政府や某企業の情報の不正確さなどずさんな震災対応とダブってしまう。また、感染してるかもしれないと疑心暗鬼になり、普通に振舞っても常に心の中では警戒をする主人公たちも次第に狂気に染まっていく様も怖い。他にも、感染者狩りをしていた連中がいたが、こういうバカ連中は社会秩序の崩壊時に必ずでてくるが、感染者の仲間入りをし、キッチリと落とし前をつけられるので良い。オチはありきたりなのだが、ああいうオチにしてしまうと、それまでの軍隊のすべての行動や作戦に一貫性がなくなってしまい興醒めする。 オリジナルに比べ大衆向け、娯楽性は高まったと思うが、わざわざリメイクした意義はその点だけなのは残念かな。
【シネマブルク】さん [DVD(字幕)] 5点(2011-06-07 10:14:01) (良:1票) |