4.《ネタバレ》 人は誰しも挫折を一度は経験し、それによって成長していく。この映画の主人公の二人、男も女もお互い挫折しながらも相手を思い、そして、人として必ずいつかは直面する「死」という大きな問題について考えながら生きている。娘を置き去りにしたまま出逢った自分と同じような落ち零れ状態の男と旅に出る小泉今日子演じるゆり子が雪の中で「死」に向おうとする時、川の向こうから走って助けにやって来る簾司(浅野忠信)の姿にはそれまで二人で旅してきた者としての男の優しさ、かっこ良さが見られる。そういう場面をきちんと描き、見せてくれている相米慎二監督の優しさが感じられて「ありがとう!相米慎二監督」と言いたくなった。遺作にしてもこの何とも張り詰めた重たい空気の中でこんな優しさを見せてくれる相米慎二監督、監督自身が既に「死」について自分の命が短いということを察していながらもこの映画における小泉今日子と浅野忠信の二人だけには自分の分までも長生きして欲しいという何かそんな願いが感じられる。娘との再会で娘の手から飛び出して去っていく蛙の姿が親子ともう一人、浅野忠信の未来を託している象徴であるようにも思えるし、それを離れた所から見ている浅野忠信を映すシーンなど良い場面が多いのもこれまた相米慎二監督の他の映画に共通して言えるし、そして、私が一番のお気に入りの場面は旅先での宴会の場面での柄本明の「座頭市」の物真似をする所!勝新「座頭市」ファンの私にはあの場面を見て、時代こそ違えども同じ日本人として、日本映画を支えてきた者同士、あの場面、勝新がもっと長生きしていれば見せてあげたかった。相米慎二監督もきっと同じである。相米映画における空気、季節感、美しい映像美、話としての面白さよりもこの映画を観て、相米映画とは何か?物語だけが映画ではないということを教えられた思いでいっぱいです。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-07-17 10:20:32) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 いきなり4分以上の長回しオープニング。相米さんですなー。さて、カエルの鳴き声で始まるそのオープニング。これが映画全体を支配していることに最後に気付きます。ラスト、子どもの手から飛び出すカエル。カメと対比させながら、人と出会うことで時間はかかったけれどもピョンと弾んだ心的変化。そしてあっさりとした別れ。ここが2人のこれから、不器用ながらも人との距離感が確実に変わるであろう未来を感じさせてくれてとても温かくなりました。人生なんぞ、風花のようにどこからともなくやって来て、はかなく輝き消えるものなんですぞ、ゲロゲロ。 【彦馬】さん 8点(2004-05-30 11:27:05) (良:1票) |
2.相米監督の遺作、という先入観があるからかもしれませんが、この作品からは「死と無常観」の匂いを強く感じました。というか、特に90年代に入ってからの相米作品では、「死」の匂いが際立っているように思うのです(「お引越し」では誰も死なないけど、主人公の少女がさまようシーンは「少女時代の死」と「再生としての成長」が描かれているような気がします。こじ付けかもしんないけど)。ただ「死」と言ってもネガティブな捉え方ではなく、生きる上で不可避な、厳粛な存在としての「死」、それを確かめることで、より「生」を実感できる存在としての「死」という気がしました。だからこそラストのエンドロールはああいう人を食ったような感じになった気がします。ところで僕は小泉今日子のファンではないのですが、この作品の彼女はとってもいとおしい感じでした。特に温泉宿で「プロ」として抱かれるシーン(鈴のように鳴る腕飾りで表現されている)ところは胸が「きゅっ」となりました。 【ぐるぐる】さん 8点(2004-01-12 16:32:20) (良:1票) |
1.少し平均点を上げましょう。この映画は一つ一つのシーンを大切にしていて、なかなか好感が持てます。今の日本映画界には無いと言ってもいいくらい、「正に映画」というくらい1シーンごとの演出がもの凄く丁寧です。確かにストーリー自体は、さほど面白いものではなく全体的に間延びはしているけど、今の映画界の中ではこんなシンプルな映画は貴重だと思う。それだけに監督の急死が惜しまれる。 【チャーリー】さん 8点(2002-02-11 14:08:47) (良:1票) |