7. チャップリンの「ニューヨークの王様」やアラン・レネの「二十四時間の情事」を編集したコトで知られていたエディター、アンリ・コルピの初監督作にしてカンヌ映画祭グランプリに輝く傑作。夫の名を叫ぶアリダ・ヴァリの妻。記憶喪失の夫ジョルジュ・ウィルソンの脳裏にフラッシュ・バックしたのは忌まわしいゲシュタポの記憶。「撃たないでくれ」と哀願するかの如く、両手を上げて立ち尽くす余りにも悲惨なラストに戦慄を禁じ得なかった。残酷な戦闘描写なしに戦争の恐怖と戦後の傷跡を一層感じさせる見事な手腕。マルグリット・デュラスの脚本、ジョルジュ・ドルリューの音楽いずれも絶品。コラ・ヴォケールのシャンソン「三つの小さな音符」がジュークボックスから流れる中、二人が踊るダンスの切なさに胸が締め付けられた思いであった。正に極上のフランス映画! 【へちょちょ】さん 9点(2003-01-21 02:02:00) (良:2票) |
6.なんというつまらなさ。 苦痛の100分だった。 もし本作が生まれて初めて観たフランス映画だったなら、二度とフランスを映画を観たいとは思わないでしょう。 なんでこんなに肌に合わないのか・・・と思案していたら、アラン・レネ監督の名を思い出した。 下の方のコメントを読んでびっくり。 やはり、この監督はアラン・レネ絡みだったのか。 フランス映画は数多く観ているけど、自分的にフランス映画ワースト5に入る程の退屈さだった。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 1点(2008-03-10 22:06:32) (良:1票) |
5.映画『かくも長き不在』に関しては生まれて来る前の作品ですが、 修行不足の方々に対して少しでもお役に立てればと思います。 便宜上、この物語は序章プラス4つの重要な場面で構成されているものとし、 主演の二人(テレーズと浮浪者の男)の位置関係を中心に説明すると判りやすいんじゃないでしょうか。 まず序章。オープニングでは小説を読んでいる時に誰もが思い浮かべるイメージを印象的な映像として映し出す。 それはあたかも絵画や写真を観ているようで、これから始まる物語に否が応でも期待してしまうし、決してその期待を裏切らない。 ①彼女はカフェの女主人として働き、接客姿勢は少々ぶっきらぼうで男勝りな印象を受けるし、また、 恋人がいることから、戻ってこない夫を待つだけの女ではない自立した女性を表現しているようである が、どことなく陰のある暗い表情を浮かべているような気がする。 そんな折りに、ナント、長い間戻ってこない夫にソックリな浮浪者の男が目の前に現れる。 彼女の記憶の片隅にある、忘れようにも忘れられないどうしても引っかかっていることを解決してくれそうな出来事だ。ここから忘れかけていた時間を取り戻そうと 彼女は変化していきます。 ここでの二人の位置関係は手が届きそうで届かない距離にある。 そこで彼を店に連れて来ようと試みるが、男勝りな性格は鳴りをひそめ、 第三者を介して行い自分は店の裏に隠れているといった姿はあたかも思春期の 恋する女性のようである。 ②一緒に食事するシーン。「チーズ好きでしょ?」過去の記憶が走馬灯のように駆け廻る。 もう彼は手を伸ばせば届く距離にいる。 夫に違いない。でも、様々な感情が入り乱れる。 ③一緒にダンスするシーン。 とうとう彼に手が届いてしまった。ふと彼の後頭部に手をやると大きな傷がある。 これは彼が記憶を失ったんじゃなくて、ナチスによってロボトミー手術を施されたと僕は勝手に解釈します。 この時、彼にもたれかかり哀しい表情を浮かべる彼女にはどうしても心が打たれてしまう。 彼女にとって、もはや夫でも夫じゃなくてもどちらでも構わないんでしょう。いや、話の流れ上、夫であって欲しいと思います。 ④ラストでホールドアップする男。 戦争シーンなんてなんにも無いにも関わらず、戦争の悲惨さはひしひしと伝わってくる。 反戦映画・恋愛映画・ドラマとして胸を張ってオススメします。 【Fatman】さん 9点(2004-12-09 14:06:39) (良:1票) |
4.映画によって、戦争を描くとき、さらにはその非人間性を描こうというとき、果たして、このような「幻想的」なアプローチをしてみようと、普通、思うでしょうか? しかも、まさかこのアプローチがこれほどの効果を上げるとは? 一人の女と、記憶喪失の旦那(とよく似た男)のやりとりが、時にはセリフを抑え、回りくどいほどじっくりと描かれ、気だるいような弦楽の響きの音楽ともあいまって、幻想的な雰囲気を醸し出しています。もちろんこの幻想性を根底で支えているのが、「男は夫なのか、他人の空似なのか」という謎(ミステリー)。そう、「戦争」への対比として「日常」を持ち出すのではなく、この映画では全編が、戦争とは別の一種不安定な「非日常」で貫かれてます。そしてクライマックス、その「非日常」が突然断ち切られ、裏返される、この衝撃。その先にあるのは結局、絶望的な「日常」なのか? ラスト、主人公がまだ何か言いたそうにしてるのにプツンと終わっちゃいましたね(笑)。なんだか、これ以上見せるに忍びないと言わんばかりの終わり方で、印象的でした。 【鱗歌】さん 8点(2004-08-01 01:12:51) (良:1票) |
3.私はフランス映画はよく理解できないことが多いのであまり見ないのですが、このサイトで評価が高かったので見ました。でもやっぱり肌に合いませんでした。前半はストーリーが進むようで進まなくてものすごく退屈、後半はストーリーが少し進みますが、曖昧模糊としていてすっきりしませんでした。虚学図書之介さんと同じように私も修行不足かもしれません。平均点下げてごめんなさい。 【チョコレクター】さん 5点(2004-06-06 16:11:47) (良:1票) |
2.記憶の無い男と、彼を自分の記憶の中に何とか引き込もうとする妻。二人の心のすれ違いが静かに進んでいきます。男は妻に対する感情は無いに等しいが、妻は夫への感情が不在であった期間を超えて大きくなっている。かみ合わないじれったさ、受け入れてもらえない悲しさ、いつか必ずといった希望が、さり気無く描かれる戦争の傷跡や条件反射のように断片的によみがえる記憶により、重く心に響きます。記憶に縛られ、記憶を生きがいにするしかない人間の本質が悲しい。 【パセリセージ】さん 8点(2004-06-02 20:05:20) (良:1票) |
1.まず浮浪者風の男のシーン、次に大音響と共に軍隊のパレード(パリ祭だろうか)が映し出される。そしてアコーディオンが流れる陽気なタイトルロールへとつながる。この映画は戦争が背景にあるということを暗示させており、切り口早々から監督アンリ・コルピのセンスの良さにヤラれてしまう。本作では、アリダ・ヴァリが主人公の中年女性を魅力たっぷりに演じており、これが抜群に素晴らしい。記憶を失った夫(実は夫ではないかもしれない)に向ける情感を込めた優しい眼差し、何とか夫の記憶を呼び戻そうとあれこれ試みる姿などなど…まさに大人向けの愛のドラマ。後頭部にある深い傷の跡、名前を呼ばれ一瞬記憶を取り戻したもののそのまま悲劇につながるラストシークエンス…たったこのふたつのシーンで、この男が戦争の狂気に巻き込まれ記憶を失ったことが分かる。切々と描いた夫婦愛の名作にして、見事な反戦映画。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-05-13 10:43:35) (良:1票) |