12.《ネタバレ》 原作にある力石戦後のエッセンスのいくつかを前倒しにアレンジして、この一作だけで「あしたのジョー」にしようとした努力は買います。同時に、丈は野性味が抜けて、かなり素直なボクシング青年に見えたことが残念でもあります。ストーリーに無駄は感じない。段平との大喧嘩、鑑別所→少年院という流れ、段平のプロライセンス再取得のエピソードなどがカットされたのは惜しいけど、これが限界でしょう。丈と力石のライバル関係だけに比重を絞っても見応えを担保できる原作の懐の深さに改めて思い至る。丈、力石、段平を演じたお三方には拍手です。原作やアニメ版をよく知る人からも不満が出ない役作りが出来ていると思います。体を作り上げた二人も見事ですが、香川照之は丹下段平にしか見えなかった。現場でも段平そのものだったらしい(笑)。これは凄いことです。原作をバイブルにしていた元青年としてひと言。「あしたのジョー」は力石戦の前後でテーマが変化します。丈が持つ闘争心や反発力は抑圧からの解放を目指したときフルパワーを発揮する。最初は力石の存在も、丈にとっては抑圧のひとつでした。それはルールに縛られた社会へのアンチテーゼでもありました。力石という目標を失ったあと、自身の青春を燃焼し尽くすことを最終的なコンセプトとしたのが力石戦後の「あしたのジョー」。この丈の変化と成長が、数多ある青春漫画の中でも特異な存在であり続ける所以だと思っています。今回の映画化は原作のひとつ目の山まで。このスタッフ・キャストなら、物語後半のテーマの実写映像化にも挑戦して欲しいと思いました。本来、そこまで描いてこその「あしたのジョー」です。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-02-11 16:18:57) (良:3票) |
11.矢吹丈は野良犬です。もちろん雑種の。鋭い目つきで唸る、今にも咬みつきそうな狂犬。これに山下のイメージがどうにも一致しません。例えるなら彼は、毛並みの良い血統書付きの猟犬だから。見事な筋肉も引き締まったボディも、所詮は飼い犬のそれ。あしたを約束されている飼い犬と、あしたを掴み取らなければ生きて行けない野犬とでは、放つ雰囲気が違うのは当然です。このミスマッチは如何ともし難いものがありました(なお、演技力や役作りの問題ではありませんので、非は山下にはありません。単純なキャスティングミスと考えます。)では誰なら適任だったかと考えてみたのですが、窪田正孝は如何でしょうか。柱となる主役がキマれば、多少(いや大いに)無茶な漫画・アニメの実写化でも、それなりにサマになったのではないかと思われます。 【目隠シスト】さん [地上波(邦画)] 4点(2015-01-06 19:57:00) (良:2票) |
《改行表示》 10.ストーリーは知ってるんだから、改めて感動したりすることはないだろうなって思ってたけど、減量シーンでは思わず泣けた。 映像的な再現性が高いので、意外と感情移入できたようだ。 特に伊勢谷友介と香川照之はよく頑張ってたんじゃないでしょうか。 山下智久はちょっとクールに演じ過ぎていて、ジョーの持つ本来の荒々しさのようなものが感じられなかった。 香里奈の葉子もちょっと弱さを露呈し過ぎで、その演技は2に取っておいて欲しかったところ。 続編の製作があるのかどうかは知らないけど・・・。 何にしてもあしたのジョーという物語は、ここから始まるジョーと葉子の壮絶な命懸けのラブストーリーがメインテーマだと思ってるので、葉子の描かれ方は気になるところなのだ。 そういう意味ではジョーにはもっと葉子を侮辱しておいて欲しかった。 それが2への伏線になっているわけだからね。 そして、誰がのりちゃんを演じるのかも気になる。 まあ、飽くまでも続編があるのならって話ではあるけど。 この作品単体で見るなら、よく纏まった構成になってるんじゃないでしょうか。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-09-10 14:22:48) (良:1票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 二人の役者の、役に対する思いとそれによる体づくりは凄まじく、「楢山節考」のおりんをやるために歯を抜いたという、田中絹代のエピソードを思い出す。二人の普通の拳闘シーンは、その筋肉美も相まって、素晴らしい迫力で、スローモーションがやかましく感じるほどだ。 明日、あした、それぞれのあした。段平さんの明日は、世界ランキングのボクサーを育てること、ジョーの明日は、力石を倒すこと、力石の明日は、ジョーを倒して心置きなくチャンピオンになる事、葉子の明日はドヤ街の出自を消し去って過去に打ち勝つこと。ドヤ街の連中の明日は、たぶんドヤ街の誇りと希望をジョーによって取り戻すこと。 今回、白木葉子が、ただの支援者(またはジョーを愛する人)という、受動的な原作での役割を一歩進め、彼女もまた目指すべき「あした」を持つ、言わば「選手登録」をした。結果的には巧く描けたとは言い難い状態だが、物語としてバランスが良くなった。おっちゃんとジョー、葉子と力石。タッグ戦だ。これで、西がいなくなれば、かなりスッキリする。(今回の西の要らなさは、半端じゃない) 数少ない難点を言うと、映画の描写的に、クロスカウンターの説得力がない。TVアニメ版で説明されたような、「テコの原理で力が倍増」なんて事はあり得ず、普通に考えても外側から打つ腕のほうが、距離を取られて不利であることが、作画マジックで押し通せたアニメ(マンガも?)とは違い、明白に映像で判ってしまっている。あしたのジョーにおける、このクロスカウンターは、言わば「大リーグボール」であり、ここをどうそれらしく見せるかが、この物語の大問題、それが出来なければその設定は捨てて、普通のボクシングドラマにするしかないほどの重要事項だ。でも世間が許さないか、クロスカウンターのない「あしたのジョー」は。今回の映画は、それを成し遂げられるだけのポテンシャルがあったと、私には思えたんだが。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-08-06 01:18:22) (良:1票) |
8.リアルタイムでコミックを買い続け全巻揃えたド真ん中世代ですが、アレはアレ、コレはコレ、当時の思い入れを持ち込むつもりはさらさらありません。『ピンポン』『ICHI』でCGを巧みに操りキャラクターの顔が活きるマンガチックなアクションを見せきった曽利監督がどんなボクシングシーンを見せてくれるのか、そこだけを楽しみに見ました。そのポップで綺麗なボクシングシーンは確かに新鮮ではあった。しかし超スローで歪んだ顔を映し出すことになんの意味があるのか。笑うところかと思ったぞ。全体を見てもカメラ揺れ揺れアクションなんかに比べりゃはるかに良心的なんだけど、キレイすぎてボクシング本来の泥臭さみたいなのが消されてしまってイマイチ盛り上がらない。あと、基本アイドル映画なんだろうね、これ。ボクサーではないただの喧嘩屋のころから山Pかっこよすぎ。ストーリーも駆け足なので説得力に欠ける。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 4点(2011-02-28 18:27:07) (良:1票) |
《改行表示》 7.白木葉子についてはドヤから出て財閥の養女になった小公女と言うのが原作の設定だとしたらかなり無理筋のように思えます。これでは女優としての役作りは難しすぎるし、数少ない登場場面でそれを表現するのは難しい。しかし、力石と矢吹と言う二人の男に対する自分でも揺れ動く恋愛感情を持つ女性と単純化してしまったほうが(ドヤの件を抜きにして)判り易かったと思われます。原作を読んでいる人には不満だろうけれど映画と言うメディアを通して広く社会に流通させることこそがこの漫画をより多くの人たちの間に伝えるための有力な手法であり、そのためへの商業的な妥協は許容しなければならないことです。ちなみに連休直後の月曜日とは言えシネコンの入りは閑散としたものでした。その人たちでも原作漫画を手にしたひとはほとんどいないような雰囲気でした。しかし、スローモーションではあれほど人間の顔って変形するものなのですね。 【たいほう】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-02-14 23:56:53) (良:1票) |
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《改行表示》 6.矢吹丈のストレートが力石徹の頬にめり込む。力石徹のアッパーが矢吹丈の身体を宙に持ち上げる。 拳がゆっくりと顔にめり込む、震える表情筋、乱れる毛髪、吹き出る体液……。 あの宿命の好敵手との決着と悲劇を、映像として具現化出来た様を観た時点で、この映画の存在価値は揺るがないと思った。 原作が長年語り継がれてきた“伝説”である以上、やはり評価における「比較」は避けられない。 この映画は、ある部分では原作を越え、ある部分では大いに物足りない作品だと思う。 まず前述の通り“対戦シーン”は、申し分ない。メインキャストの二人はしっかりと映像に映える身体づくりをし、それをCGクリエイター出身の監督が文字通り「縦横無尽」のビジュアルで切り撮っている。 山下智久の“丈”は、猛々しさは物足りなかったが、重圧をはね除けるための彼なりの努力と意地は見られた。 香川照之の“丹下”は、原作のキャラクターそのもののビジュアルと存在感を、流石の演技力とボクシングへの造詣の深さをもってして見せてくれた。 が、この映画におけるすべての要素の中で最も価値が高かったのは、伊勢谷友介の“力石”をおいて他に無い。 その体躯、眼差し、立ち振る舞い、存在感、そこに居たのはまさしく「力石徹」だった。 役者のパフォーマンスと、監督の創造性よって映し出されたビジュアルそのものが確固たるエンターテイメントであり、そこには「人気漫画を映像化する」ことの意義が確実に表されていたと思う。 一方で、圧倒的に欠けていたのは、対戦シーン以外の「情感」だった。 どうしても映画化における尺の制約があるので、ストーリーが端折られてしまうことは仕方が無い。 ただ端折られているはずの各シーンのテンポが悪く、展開が稚拙だったため、本来そこから伝わってくるべきキャラクターたちの感情の描き方が希薄に思えた。 丈と丹下との絆だったり、丈自身の心情そのものが薄っぺらに感じてしまう部分があったことは、ドラマとしては致命的だったと思う。 そういう意味では、ドラマ性の部分においても、「力石徹」に食われてしまっている印象も受ける。 トータル的には、伝説的な人気漫画に真正面から挑戦し、しっかりと映画化した作品だと思うし、面白い映画であることは間違いない。 ただし、「力石徹」を登場させられない以上、続編には挑むべきではないとは思う。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-02-14 00:00:24) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 会話式レビューA『まず役者陣はよく頑張ったと言いたいですね。』B『特に力石役の伊勢谷くんは思った以上に力石的存在感が上手く出せていたな・・山Pのジョーは確かに頑張ってはいたけどジョーの獣的な感じには程遠かったな・・昭和40年代頃の時代設定に合う顔じゃないから違和感がどうしても残った』A『ただ初めてこの実写版で「ジョー」に触れた人だったら、割と好印象を持たれるのではないかと』B『丹下のおっちゃんは恐ろしく丹下っぽくて好感持てたな』A『少なくとも役者の熱演に関しては不満は少なかったです。試合もなかなかのもので「おおっ」と思いました』B『問題なのは、話とキャラ描写の浅さだよ。ジョーの登場から力石の死まで131分で描き切るなんて困難なんだからどうしてもエピソードを大幅にカットしてジョーと力石に焦点を絞るのは最もなんだけど・・』A『個人的に好きなマンモス西とかウルフ金串のキャラが薄いのは残念ですが実はジョーという男の背景の描写も薄いですよね、時折セリフで自分について語りますけど取って付けた感じでいまひとつ感情移入が出来なかったです。セリフじゃなく彼の佇まいでその背景を匂わす事も出来てないと思います』B『力石とジョーの関係も力石があそこまでの執念を実らすほどの積み上げも不足してるので唐突感は否めず・・難しいね』A『段平に関しても同じですね、白木葉子と過去のドヤ街エピソード、ドヤ街とジョーの繋がりがすべて描写不足です』B『試合も色々映像加工して工夫はしてるけど肝心のクロスカウンターの場面は凝りすぎて逆に迫力に繋がってないかなぁ、漫画やアニメと同じようにしたいのは良く分かるんだけどね。』A『色々不満もありますが観て損をしたとは言いません、でも素直に誉めたい感じもしませんでした』B『かつての「ジョー」好きが本作をきっかけにアニメや原作を再び目にしたり、あまり知らない人が本作を入門編にして原作、アニメに触れてもらうなら本作は役割を果たせているかな』A『言うまでも無いですがやっぱり「ジョー」は漫画、アニメだからこそ輝けた作品ですね』 【まりん】さん [映画館(邦画)] 5点(2011-02-13 16:56:08) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 漫画にはじまり、2度のTVアニメ、映画版でまさに時代を越えて愛されている作品の実写化は、監督、スタッフともプレッシャーだったと思う。他の方も書いている通り、伊勢谷友介の力石は迫真の演技で、他を圧倒します。ストーリーは、力石の死まで、コミックスで8巻、TVアニメで50話150時間を2時間にまとめるのだから、無理があって当然、更に如何に思い入れがあっても漫画的描写をカットしていく必要がある為、あらゆる人に納得がいくようにするのは不可能です。そんな中、ストーリーに破たんをさせず、ジョーと力石に話の中心を持っていき、力技で最後の試合まで持っていたのはぜんぜんありです。 原作にはありませんが、控室での力石と丈の会話はよかったし、暗くなってしまう力石の死でエンディングを迎えなかったところも良。 原作の「あしたのジョー」の力石戦までは、ジョーの荒々しさばかり目立ちますが、ふと見せる寂しさや優しさを山下くんはうまく表現していたと思います。大ヒットとは行かなくても毛嫌いせずにまずは観てほしい作品に仕上がっていると思います。 【hee】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-02-13 14:37:03) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 予告で見た丹下段平にやり過ぎだろって思ってたので、ヤマトばりのズッコケを覚悟してましたが、丹下段平も違和感無くちゃんと最後まで見れるものになってました。山Pも頑張ってましたが、他の方も書かれてる通り完全に力石の映画で、伊勢谷友介が主役でした。ところで、ストーリーの方ですが駆け足な感じで薄味。思い切ってもっとある部分を濃く描いても良かったかもです。 【nazu】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-02-13 00:41:08) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 何十年も語り継がれた物語を、しかもその漫画のファンと称する脚本家が映画化したのに、どうしてこんなつまらない改変がなされたんだろう。ドヤ街の立ち退き騒動、白木葉子の過去、そして何よりも酷いのがエンディング、いくら一本の映画としてまとめなければならないとしても、あんな安っぽい終わり方をされたんでは、力石とジョーとの物語が台無しです。。 ただ、それにも関わらず、実は上映中は夢中になってトイレに行くのも我慢して熱中してみてました。 何と言っても、キャスティングの素晴らしさ。山下君はちょっと顔が良すぎるかなという最初の印象も、あの顔を完全に腫らしての熱演は素晴らしかったし、香川さんは映画の中では100パーセント丹下会長そのものだった。ここであまり評判がよくなかった香里奈も昭和30年代~40年代の金持ちの令嬢っぽい雰囲気は出てたし冷たさも良かった。 ただ、何と言っても伊勢谷、本当に素晴らしかった。ジョーとの初対面のシーン、ノックアウトのシーン、握手のシーン、一つ一つがまるで漫画をそのまま映像化したように、塚、そこに本当に力石徹という一人の人間がいるように感じられた。 伊勢谷友介という俳優は、この役をやるために存在したんだといったら言い過ぎか。 映画におけるキャスティングの重要さ、重さをつくづく感じさせる映画だった。 あとCGに頼らないドヤ街や泪橋をつくりあげたスタッフにも感服。平成25年5月3日追記。生まれて初めて心から男の俳優が好きになった。(もちろん、その気は全然ありませんがw) 伊勢谷友介!本当にかっけー。彼が出てる全シーン、画面に釘づけになった。 平成27年6月15日追記 つくづく困った扱いに困る映画。少年院のシーン、あるいはウルフ金串戦から力石の減量 そして最後の戦い。原作が忠実に再現されているシーンは素晴らしい。一瞬たりとも画面から目が離せなくなる。ところが猥雑に挿入される脚本家オリジナルのシーン、もうこれが観るに堪えないくらいつまらなくて。つまりは自分にとって、最高のシーンと最低のシーンが複雑にからまりあった映画。 【rhforever】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-02-12 18:46:54) (良:1票) |
1.試写会を鑑賞しました。伊勢谷友介と山下智久の腹の割れ具合度=10点。香里奈の白木葉子度=2点。香川照之の段平度=8点。その他の脇役陣はちょっと存在感が希薄でした。ボクシングシーンは映像技術の進歩もあって、なかなか迫力があり、悪くないです。原作と比べて、思ったより違和感の少なかったのは、ジョーの前髪と帽子姿ですね。これは合格。シナリオは力石戦までをまずまずうまくまとめてあります。しかし、あれもこれも見せたいといった冗長な編集が映画全体のテンポを悪くしています。結論;一番得をしているのはやっぱり、伊勢谷友介=力石徹。格好いいです。 【ジャッカルの目】さん [試写会(邦画)] 7点(2011-02-04 02:01:06) (良:1票) |