6.《ネタバレ》 ナタリーポートマンの簡単な経歴です。ハーバード大卒(日本で言えば東大)、テストは常に90点以上、4歳から英才教育。そして彼女が常に野心的な作品に出演し、ディカプリオ同様に悲願のオスカー獲得に執念を燃やしてきたことも周知の事実です。その点を踏まえると、白鳥の湖の主演に抜擢されることに執念を燃やす秀才バレリーナのニナは、オスカー獲得に執念を燃やす秀才女優のナタリーと見事に重なってくる。テーマは、「優等生キャラからの脱却」 すなわち秀才から黒鳥への変貌でオスカー獲得です。すべての女優は、美人であることは当然で、その上にプラスアルファー(+α)が求められている。当該+αの隠喩が黒鳥であり、女優のだれもが黒鳥を目指して演技しているのだと思う。演技力NO1の努力家バレリーナーのニナに不足しているものは、酒場で、リリーの周りに自然と男たちが集ってくるあの状況、つまり男を魅了する才能が不足していた。「魅力」は努力では克服できない。コーチはただのスケベやろうではなく、ニナに「女」になることを求めていた。彼は仕事人としては、本質を見抜く力のある優秀な男だった。しかしニナは母の作った箱の中でしか生きてこなかった、ゆえに自分を解放する術を見出すことができなかった、白鳥が限界だった、黒鳥にはなれなかった。その反動が殺意となって母親に向った。さらに秀才の主人公を襲った恐怖は、目の前に黒鳥になれる自由人のリリーが登場したことに他ならない。ちなみに母親やリリーの、主人公に対する嫉妬はありえない。それはあくまで主人公の被害妄想だと私はみる。被害妄想にとらわれた主人公は、白鳥にしかなれない自分を殺すことによって黒鳥に生まれ変わろうとしたのだ。そしてその行為そのものが悲劇を意味している。万年ノミネートどまりの秀才女優のナタリーが、ついにオスカー女優(黒鳥)に変貌した。これがナタリーのメタファーに満ちた純小説だと言われても私は驚かない。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-01-04 20:23:59) (良:4票) |
《改行表示》 5.“バレリーナ”という人種をカテゴライズするならば、「芸術家」と「アスリート」どちらが適切か? 「バレエ」というものをまともに観たことは無いが、それに関する物語や、実在のバレリーナのドキュメンタリーを見る度に、そのカテゴライズに戸惑う。 一流のスポーツシーンを観たときに感じる芸術性を踏まえれば、「バレエ」という表現は、「芸術」と「スポーツ」それぞれの究極が重なり合う領域に存在するものなのだろうと思う。 そして、「芸術」と「スポーツ」その両方を愛するからこそ敢えて言いたい。“両者”が行き着く先は、果てしない「自己満足」の世界だということを。 詰まりは、「バレエ」という“表現”の到達点は、究極の「自己満足」であり、「自己陶酔」だ。 だからこそ、その「究極」を追い求める過程において、精神世界の屈折、そして自我の崩壊は、往々にして避けられない。 そういうことこそが、この“異質”な映画が描き出す本質だろうと思う。 ひたすらに純粋で無垢な欲望を追い求める主人公の望みが叶った瞬間、自らが抱える闇が蠢き始める。 そこには、芸術と肉体が融合した「バレエ」という表現の特異性と、バレリーナという生き方における破滅的な精神世界が入り交じり、言葉にし難い「混沌」が映し出される。 究極の「完璧」を追い求め、次第に“崩壊”していく主人公。 自分を取り巻くすべてのものを傷つけ、嘆き、その“ダメージ”がすべて自らに向けられたものだと知った時、彼女が見たものは何だったのか。 とても、色々な捉え方が出来る映画だと思う。 目が離せないシーン、とても観ていられないシーン、それぞれが連続して波打つように展開する。決して心地の良い映画ではない。 ただ、振り返ると、様々なシーンが脳裏に浮かんでは消え、その時々の主人公の心情に思いを巡らしていることに気づく。 「どういうジャンルの映画か?」と問われると、返答に非常に困る作品であるが、観る者それぞれの心理に直接訴えかけるような“一筋縄ではいかない”映画であることは間違いない。 儚さ、脆さ、危うさ、愚かしさ、そして悍ましいまでの恐ろしさ。それらすべてを包括した主演女優の美しさに圧倒された。 「レオン」から16年、よくもまあ凄い女優に成ったと思う。素晴らしい。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-15 01:46:01) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 恐ろしい映画を観てしまった。この映画、カメラが一貫して主人公と行動を共にしているため、こちらが観ることが出来るのは主人公に見えている事のみとなり、それが現実なのか幻覚なのか判断するのは観ている人次第。これがもたらすものすごいリアリティで、人間の理性とそれに覆い隠される本性をホワイトスワンとブラックスワンに置き換え全編スリリングに描いている。ラストのブラックスワンを演じるナタリーの気迫あふれる演技は観ているこちらも鳥肌もの。必要以上の手ぶれカメラの多用が唯一の難点。劇場でやっている間にもう一度観ておきたい。 【ふじも】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-06-05 16:08:18) (良:1票) |
3.バレエって単語で拒否反応が出てスルーしてましたが、全然バレエの知識に疎くても観られます。むしろバレエのバの字も知らない人間でさえグイっと映画の世界へ引き込む官能と狂気が入り乱れるすごく力強い映画でした。圧倒されました。役者、映像、演出、音楽、どれをとっても文句なしの出来で満足です。エロシーン満載ですが決して下品ではなくむしろ美しささえ感じる。これぞエロス。芸術品みたいな映画ですね。ラストシーンの演出なんかはゾっとするぐらい良かったです。オーケストラの音楽が凄いので是非映画館で観ることをお勧めします。 【ケ66軍曹】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-27 19:05:50) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 優等生のニナ、バレエダンサーとしての高みを目指すニナ、母親の期待を一手に背負うニナに押しかかる重圧はいかばかりか。ニナがダークサイドに取り込まれた瞬間、真っ赤に充血した目を見た瞬間、作品のテンションが一気に上がった。私のテンションが上がっただけなのだろうか。そこから先はブラックスワンパートをダースベーダー卿の如く踊りきり、悪の権化として君臨した。しかしその直後のホワイトスワンパートでは、宇宙一の悪であるベーダー卿の頑強なマスクはあっさりと割られ、真実の自分が現れる。そう、ラストに繋がる一連のシーンでエピソードⅢからⅥを一気に見せていただいた感じ。けなしているのではない。もの凄く感動した。ブラボー。 【ちゃか】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-21 22:56:38) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 ホラー描写は「丁寧」ではなく「一気に突き崩す」よう。 すさまじい描写の勢いに圧倒されました。 現実と妄想が入り乱れる内容ですが、本筋は意外と分かりやすい映画だと思います。 ライバルのリリーがニナを追い詰めるシーンは、全てニナの妄想だったのでしょう。 ニナとリリーがパーティからニナの家に帰り、セックスをしたのも、女好きの団長・トマから「歓び」を教えられ、迫られたせい。代わりにリリーで妄想したと考えれます。 トマとリリーがセックスしているシーンでも同様。リリーに役を取られるのではないかと怯えが、それを見せたのでしょう。 トマの言った「君の道をふさぐのは君自身だ、自分を解き放て」という台詞が最後の引き金となり、あの結末になったのだと思います。 もしかすると、ベスがナイフで自分の顔を刺してしまうシーンも、ニナの妄想かも。 ベスの言う「私は完璧じゃない」も、ニナの思ったこと。 そしてラストでは自分は「完璧だった」というニナ。 妄想の中でベスを完璧じゃないと見下し、その比較で自分は完璧だったと言っているのかもしれません。 【ヒナタカ】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-12 21:16:05) (良:1票) |