《改行表示》 6.人によってはただの退屈な映画としてしか感じないかもしれない作品。 なぜならシーンごとの「間」をとても長く取っている映画だから。 でも自分は不思議なくらい引き込まれました。 なぜか、それはシーンごとの役者の演技が優れていて、かつ心理描写が抜群に上手いからなのです。 なによりひとつひとつのシーンが美しい。どのシーンを切り取ってもポストカードになりそうな素晴らしさ、ため息がでるくらいです。 それは親子がTVゲームをしているようなシーンでも例外ではありません。全ての画づくりがものすごく丁寧なのです。 そして終盤、ある事実が突きつけられます。 ここで 「必要以上に長いな」と思ったシーンや、 「あのシーンは微妙だったな」と思ったところが 全部必要不可欠のものと思えてくるのです。 なので「退屈な作品だった」と思った方も、是非観たシーンを思い返してみてください。きっと思うことがあるはずです。 日常描写を淡々と描いているだけの作品ですが、相当に脚本が練られているのではないでしょうか。 これと似ていると思ったのは邦画の「歩いても歩いても」。 日常を描くだけで映画を作るのは相当難しいはずです。それだけで賞賛に値する作品だと思います。 【ヒナタカ】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-21 22:22:15) (良:2票) |
5.そのむかし。 酔った勢いでキャバ○ラで数時間豪遊して、終電が無くなり、始発まで漫画喫茶で数時間を潰す。 そして次の日、二日酔いの寝不足でふらふらとデートの待ち合わせに向かう。 そして現れた、聡明でイノセントな彼女の姿を見て、僕は「ハッ」となった。 オレは一体何をしていたのだろう? その時の虚しさ、後ろめたさ、何より大切なものに気づいたこと・・・ クレオが画面に登場するたびに、その瞬間を思い出さずにいられない映画だった。 【タケノコ】さん [DVD(字幕)] 7点(2024-07-16 22:29:29) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 車がブーンと走ってぐるっと廻ってまた戻ってきて・・・という冒頭の長回し。この時のカメラ、片側が切れててフレームがオープンになっているので、車が走ってる途中で画面から消えてしまう訳です。この不安定さ、不確実さ。ぐるぐる回ってそのうちピョーンと外側に飛び出していなくなってしまうかもと、ちょっとドキドキしながら見守る数分間は、決して長くは感じられなかった。作り手としては退屈やルーティンの隠喩だったかもしれず(たぶんそうでしょう)、となれば自分の観方が外れているんですが。でも、これが映画の面白さだと思う。そのものが持つ「意味」以上の「意味」を放ってしまうテクストの豊饒さこそが、自分にとって映画の魅力なのです。 そんな訳で、この作品は全篇にわたってそうした「多彩な語り」が散見され心地よかった。何気ないシーンの一つひとつが観る者に様々な感慨をもたらす、余韻と余白に満ちた画作り。こういうの作れちゃうってやっぱりソフィア・コッポラという人は才能あるのだなぁと思う。 まぁ、そうは言っても「セレブ男の孤独の行方」という題材を、どこまで上手いこと料理できてたのかは疑問。泣いて心情を吐露しても高級車を乗り捨てても、この主人公に実存の深み重みは見えない。 なんか、酒と女の日々っていう主人公の日常が、あんまり現実感がなくてキレイなんですよね。生臭くない。ポールダンスなんかぜんぜんエロくない(苦笑)。この感じはヨーロッパ映画みたいで、思えばこの人の作品ってみんなそうかもしれない。すごく冷めた目線。世界を対象化して眺めている感じがする。 娘が対象化されているのはトーゼンで(主人公は父親なので)、目の前に現れたり消えたり、氷上で妖精のようだったりドレス姿で大人の女のようだったり、主人公の日常生活とこれまで纏ってきた価値観を揺さぶる「外部」であるのは、物語の定石で新しくはないんだけど。エル・ファニングの個性がそれ以上の効果を出しているので、とてもスペシャルな時空間を創り上げていて、映画を観る喜びに浸れた。ところが、娘と一緒に過ごす男のほうも「外部」的な気がしたのです。なんかヨソヨソしいというか表層的というか。だいたいスティーブン・ドーフがあんなにカッコいいって驚きだし(苦笑)。そういうところが「物語」としてはどーなのかなぁと思ったりもしたのだけど、ま、最終的には「SOMEWHERE」はそーゆー作品なのだ、それでいーのだってバカボンのパパ風に納得しました。なんとも言えず風合いが良いので。 【ポッシュ】さん [DVD(字幕)] 8点(2017-07-26 00:42:33) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 残念ながら想像を上回るほどの出来ではなかったです。セレブである父と娘の心の交流を描くという視点は面白そうだし、実際、映像も本当に美しくて息を呑みました。恐ろしい金を取られるんでしょうが、あのホテルには泊まってみたいです。女の子を綺麗に撮るのも本当にうまいですね、この監督は。 また、ちやほやされるくせに満たされない主人公の気持ちはよく理解できますし、お金はあるけど家族に恵まれず、寄る辺無さを感じる娘の心境も痛切でした。静寂のポールダンスや顔の型取り、誰からか分からない嫌がらせメールの齎す孤独感。名声を手にしながらも、「おれは誰でもない」と別れた妻に電話してしまう寂寥感。主人公の気持ちは他人事ではありませんでした。 しかし、もう少しお話(脚本)を書きこめたのではないかと。偶然、誰かと出会うとか、どっかに行くとか。何かほら。この映像の自然さが若干損なわれるかもしれませんけど、ほんと、もう少しでいいんです。お願いします。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 6点(2011-05-05 21:28:33) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 somewhereで、someoneと共に、日々somethingしている主人公ジョニー。その顔には虚無感が伺える。離別中の妻から預かった娘クレアと過ごした平凡なひととき、そして別れを通じ、感じつつも見ぬ振りをしていた、自分もまたsomeoneであるという事に苦悩する。 そしてある決断によって全てのsomeが取り払われた瞬間、主人公の顔にはなんとも言えない晴れ晴れしさが浮かんでいた。 【njld】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-04-16 11:29:30) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 俳優として成功し、金と名声を得てフェラーリを乗り回し、高級ホテルのスイートで豪華ではあるが享楽に溺れ堕落した日々を送る主人公の男が別居中の妻の元で暮らす娘をしばらくの間預かることになる。娘と共に生活するうちにもっと大切な何かに気付くという、ハリウッドの成功者を冷静な目で見つめた作品。 前半は享楽に溺れるこの男の派手な日々を見せる。中盤以降は娘と共に生活する静かな日々を、退屈なほどに実に淡々と綴っていく。そこには大したストーリーすら存在しませんがこの男が娘との日々で得たものが伝わってきます。娘をキャンプに送り届け、一人ぽっちになる。自分がいかに孤独であったかを思い知り、別れた妻に電話をかける。スイートを引き払い、何も無い荒野でフェラーリを乗り捨てて一人歩き出す所で実にあっけなくエンディングとなりますが、これは今までの自分を脱ぎ捨て、新たな人生を歩き出そうとしていたと思いたいラストでした。 娘役はエル・ファニング。日本で言うとまだ小学生ですが、とてもそうは見えない大人びた表情も、父と遊ぶときの無邪気な表情も、淋しさを父にぶつける表情もとても良かったです。監督はソフィア・コッポラ。父は言うまでも無く巨匠フランシス。ハリウッドの成功者を父に持つという点でエルが演じた娘と共通するのが興味深い。本作の父の描き方はさておき、自身が子どもの頃に感じた思いが投影された作品なのでしょうか。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-04-05 21:01:20) (良:1票) |