14.最初に「他人の子供を誘拐しておいて、何の反省もない女」って、じっくり説明しているわけですよ。 だから犯人に、何の同情も思い入れも感じない。 ところが、見終わった後は、最初の場面に納得して涙してしまう。 つまり、最初の印象を2時間半でひっくり返してる。 これはもちろん狙ってやってるわけだけど、凄いことだ。 当然、脚本は素晴らしいけど、出演者では小池栄子が良かったな~。 あのうさんくささ、最高。 さて、見終わって数時間たった今、よくよく考えると「井上真央はこの後本当に幸せになれんの?」とか「井上真央の父親は結構ひどすぎない?」とか思わないわけでもない。 でも、見ている途中はそれを感じさせなかった。 力強い、映画らしい映画という印象。 【まかだ】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-01-08 14:46:39) (良:3票) |
13.3年前に小豆島へ行った。当時付き合っていた彼女との初旅行だった。 思い返してみれば、「小豆島へ行きたい」と思ったきっかけは、角田光代の「八日目の蟬」を読んだことだった。 幼子を誘拐した主人公が逃亡の果てに安住したのが小豆島だった。文体からは、偽りの母娘を包む優しい島の光と空気と香りがありありと伝わってきた。
あれから3年が経ち、あの小説の映画化作品を観た。
いつぶりだろうか、映画館で号泣した。泣いた。めくり上げていたパーカーの袖を手首まで戻して、とめどない涙を拭った。もれ出そうな嗚咽を必死に抑えた。
素晴らしい小説の映画化は非常に難しい。ただし、それが成功した時、その映画は特別なものになる。 この映画は、映画が好きな人、小説が好きな人、その両者にとって幸福な奇蹟だと思う。
子を産むという愛、子を育てるという愛、本来合致しているべき二つの愛が分断されてしまったことによる悲哀。 もちろん、それは「幸福」なことではなかった。 ただそれが、そのまま「不幸」でもないということに、二つの別々の愛を受けて生きた娘が気付いたとき、この物語はその真の意味に辿り着く。
文体が映像化されることにより生まれる“差異”は、多くの場合弊害となる。でも、この映画にはそういう弊害がまるでない。 それはこの映画が、良い意味で原作に依存していないからだと思う。 文体が伝える情感に寄り添いつつも、映画表現として一線を画し、映画作品ならではの新たな情感を生み出している。
決して消えることのない悲しみを抱えながら偽りの母を演じ、子を育てる幸福を心の底から感じた女の心情。 子を育てる幸福を奪われ、戻ってきた子にまっすぐな愛情を注ぐことが出来なかった女の心情。 その狭間で苦悩を抱えながら成長し、自らが宿した子への愛に気付いた女の心情。
それはもう、喜びも悲しみもすべてひっくるめた眩しい光のようだ。あまりに眩しいその光を覆うように、涙が溢れた。
男の僕は、子を身籠るということの本当の意味を一生理解できない。絶対に。 それでも、それぞれの激しい心情の吐露に、胸が締め付けられた。
3年前に小豆島へ行った彼女は、妻になり、もうすぐ母になる。 僕自身が親になるこのタイミングで、この素晴らしい映画を観られたことを幸福に思う。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 10点(2011-05-09 17:06:20) (良:3票) |
12.人間の本性をしっかり感じとれる映画です。3女優の熱演とサスペンス感に酔いしれました。特に罪人希和子への共感度大です。逮捕後の希和子が描かれていませんが、却っていろいろ考えさせられます。実際の事件からの発想らしいですが、原作とシナリオの力強さに感服します。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2014-08-06 17:37:23) (良:2票) |
11.涙もろいから泣いてしまったけど、犯罪者が狂わせた人々の人生は取り戻せないわけで。。。美談のように描いてはならないと思います。 【HRM36】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2014-07-16 09:59:35) (良:2票) |
10.この話は、不倫相手の子を何度か堕胎した挙句、その男の家庭に男と妻が留守中侵入し放火して夫婦の幼子2人が焼死するという、実際にあった話からインスパイアされたと思われる(実際は知りません。原作未読)が、どちらも悲惨なお話という意味では甲乙つけ難い。本作について言えば、母親とは何か、ということが問われるのか。正直、私は希和子にも恵津子にも1ミリも共感できる部分がないので、非常にキビシイものがある。特に、希和子は、服役後の描写が全くないので、「あんた、一体、この落とし前どうつけるんだよ」という疑問が消えず、非常に消化不良な感じが残る。基本的に、妻子ある男の不倫話の場合、男の身勝手さに呆れるのが常なんだけど、本作に関して言えば、女2人(妻と愛人)の嫌らしさが男の愚かさをはるかに凌駕しているというのが特異である。この2人の女性は、子どもを愛しているのでも、男を愛しているのでもなく、自分だけが可愛いという恐ろしく幼稚な人間であり、そんな女性2人に挟まれた子どもが、真っ当な人間関係を築けない大人に成長しても無理からぬ話。写真館で自己憐憫の涙に酔いしれて記念撮影をする希和子には、心底吐き気を覚える。エリナさんには、ちゃんと避妊していてほしかったねぇ、オバサンとしては。ま、どーでも良いが・・・。しかし、NHKのドラマも時折見たけど、あちらの方が、まだ雰囲気がドロドロしてなくて良かったかな。この話のどこにそこまで映像化の欲求を掻き立てられるのかが理解できなかったんだけど・・・。原作を読んでみるとするか。 【すねこすり】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2014-02-11 23:34:25) (良:1票)(笑:1票) |
9.投稿前の段階で平均7点ジャスト。俺が6点つける事によって7点を割ってしまうのは申し訳ないが、ストーリーはそんなに凄い訳でもない。女性なら共感出来るのでしょうか…主要キャラみんなしょうもない人ばかりで。アウトレイジみたい。良かったのは永作の演技。これに尽きる。小池栄子も良かった。本人のイメージと真逆な、コミュ障っぽい人を見事に表現されていた。全体的に普通だけど役者の力量にプラス1点。 【にしきの】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-07-21 08:10:12) (良:1票) |
8.誘拐犯を決して許してはいけないのだが、自分もこの子供くらいの年齢の子供がいるので、確かに今、この子が別の親元へいってしまった場合、本人も相当戸惑うだろうし、自分自身もおかしくなるほど悲しくなるだろう。そのくらい、0歳から4歳までの時間というものは短いようで長い、思い出のたくさん詰まった時間である。それは手間もかかるし、学校にも行かないでずっと一緒という、毎日が常に新たな発見の生活のため、親子の絆が一番深まる時期になるからであろう。この映画はその辺をきちんと抑えており、誘拐された側の悲しみはあまり描いていないので、不謹慎ではあるが、誘拐した側に共感してしまうという作りになっている。まあ、映画なのでそれでもいいのだが、なんとなく、誘拐した側に正当性を感じさせる作りなのは、後から振り返るとこれでいいのか?と疑問を持ってはしまうのだが、内容的には面白かった。 【シネマファン55号】さん [インターネット(字幕)] 7点(2015-01-26 14:09:56) (良:1票) |
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7.決してすごい展開があるわけでもないし、衝撃的な演出があるわけでもないのに、飽きることもなく見れてしまう。 予告で「心揺さぶる」という表現がでてくるんですが、 みなさんご存知の通り大抵の映画は揺さぶられずに終わりますね(笑) しかしこの映画はほんとそのとおり、揺さぶられる。 日本映画はこういう方向性なら突出した感じがありますね。 正直、邦画でこの点数をつける日がくるとは思わなかったですよ。 愛だなあ愛。ラストシーンの台詞に心打たれる。泣くわ。いや泣いたわ。 テーマ的に年取れば取るほど評価はあがるんではないでしょうか。
もはやおなじみ永作博美さんの確かな演技。小池栄子さんの「屈折していてものすごくいいやつで猫背」なんてていう作りこんだ見事な演技は出すぎてないけどキャラたってる(いつのまにかすごい女優さんになってるねぇ)。語りすぎることなくあざやかにおわらせる脚本。映画全体の空気。ちょっと舞台演劇がかった演出のつかみもいいし、重要な人物であるはずの男や実母の存在が空気なのも潔くてブレてない。 いい映画ってなぜかいろんな要素がそれぞれ輝いてる。 【つんつん】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-05-10 13:23:57) (良:1票) |
6.序盤は救いようのない残酷な物語だと思っていたけど、終盤に向けて印象が変わって行った。 法的に誰が悪くて、倫理的には誰が悪いとか色々考えさせられたけど、終盤はもうそんなことはどうでもよくなりました。 何も悪くない恵理菜が如何に立ち直って、如何にして本当の母親になっていくのかを見守る物語だったんでしょうね。 そのサポート役となった千草の存在が良い味付けになっていて、物語を成立させていたと思う。 恵理菜、希和子、恵津子のどの視点から見ても割り切れない不幸さが付き纏うし、男どもの視点からじゃ申し訳なさ過ぎて罪悪感に耐えられない。 そんな中で千草の存在が唯一の希望になってたと思う。 直接的な関係者ではないので第三者の立場から見ることができるし、全くの部外者というわけでもないので、この深刻な問題に関与する資格もありそう。 そういう絶妙な立ち位置を成立させた設定と小池栄子の演技力に拍手を送りたい。 どう転んでもバッドエンドにしかならないと思えたこの物語をハッピーエンドに導いた功績は大きい。 そして、千草が恵理菜を救ったことによって、千草自身も救われたなら嬉しい。 そういう後日談的な描写はなかったけど、そう信じさせてくれるだけの説得力はあった。 あと、八日目の蝉は可哀想という話があったけど、あれはやっぱり恵理菜自身のことを言ってるんでしょうね。 自分だけが生きてる寂しさや死んでしまった薫への罪悪感が入り混じった言葉のように感じられました。 その考えも終盤には肯定的に変化したようで、薫の分まで生きて幸せになろうという前向きな姿勢に感動しました。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-12-20 16:35:06) (良:1票) |
5.泣けるレベルじゃない、中盤以降から嗚咽が止まらない。DVDで良かった、映画館で醜態を晒したかと思うとチトこっ恥ずかしい。 実親の元に戻った後、気まずくなり関西弁で「お母さんごめんなさい!」と連呼する少女に、この物語の多くは集約されている。 そして小池栄子!なにもそこまでと思うような込み入った役作り、振る舞いだけでなく途中でその訳も解るのだが、それを納得させるに十分な演技力、素晴らしい。肝心なときには主役に画面を譲って小さくフレームから消えてゆく演出にも泣ける。 いろんなシーンが記憶に残るとても良い映画。2011年で1番かも。 【カーヴ】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-11-21 10:26:07) (良:1票) |
4.これ観たら、小豆島に行きたいと思いたくなりますね。 【Yoshi】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-07-22 01:50:02) (良:1票) |
3.邦画も捨てたもんじゃないという思いを強く感じさせられた一作。フィクションの中に見せたノンフィクションの伝導率の高さ、原作を映画に最善の方法で料理し直した手腕は監督の力量の顕れ。母であるとか女性であるとかを越えた、生きることのきびしさと救いがよく表現された傑作だと思う。細かい不備を越えたそのメッセージの強さと表現力に素直に10点。 【ムッシュ★いち~ろ!!】さん [映画館(邦画)] 10点(2011-07-02 21:28:30) (良:1票) |
2.この映画を見た後、何とも嫌な気持ちになった。心が痛む。子供にとっては親の都合、大人の身勝手さの前には何もすることが出来ない。ただただ親の言う通りに従うだけしかないのである。それは自分が誘拐された娘であるということを何も知らずに偽の母親である誘拐犯の希和子(永作博美)と共に行動している時の薫と名付けられた少女の姿からも見ることが出来る。自分の本当の母親でない女を本当の母親だとばかり思う薫は果たして本当の事を知った時、どう思うであろう?という気持ち、同じく本当の母親に対しての感情というものが幼い薫にはあるのだろうか?という気持ち、どちらの母親も薫にとっては母親なんだと思わなくてはならないのか?大人たちの都合により犠牲となる子供の気持ちを思えば例え、それがどんなに母性愛なるものを見せようとも私には感動なんて言葉は沸いてこない。子供は子供なのである。大人達のようには行かないのである。そういう何とも惨酷な人生感のようなものを役者達の演技力によって見せる演出の上手さなどもこの映画が一般的に高い評価を得ている原因だと思う。私もそれはそれで大いに認めつつもこの映画に対する評価としてはこれ以上の点数は付けられない。作品のテーマは「母」と「娘」そして、「母性愛」なる映画として色々と考えさせらる作品である。原作者は女性であり、主役も女性である。つまり女性映画なのである。それを男の監督が撮っている点に注目して見たし、もしも女性の監督だとしたら別の意味で「母性愛」とは何なのか?というような作品になっていたと思うと女性監督の演出による映画としても観たいという気持ちにもさせらた。寧ろ、男の監督よりも女性監督でこそ撮って欲しかった映画である。 【青観】さん [映画館(邦画)] 6点(2011-06-15 22:27:30) (良:1票) |
1.「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」って、こんなキャッチコピーにやられて期待せずに見に行きました。が、いい意味で期待を大きく裏切られました。お決まりの展開のお涙頂戴ものかと思いきや、2時間半以上の長時間にも関わらずまったく飽きの来ない展開、重いテーマなのに語りすぎずにスーッと入ってくるし、、、名作です!役者さんもみんな名演技でした! 【ぬーとん】さん [映画館(邦画)] 9点(2011-05-10 00:46:09) (良:1票) |