《改行表示》 9.《ネタバレ》 はっきり言って好きなタイプの映画ではありません。ただこの映画は、私のどーでもいい好き嫌いなんか乗り越えて、とにかく惹きこまれてしまう強さがあります。 永作博美演じる希和子は唯一の犯罪者。でもこの映画で一番優しく描かれている存在でもあります。そして主人公の母親として描かれているのもやはり希和子です。なんだか『悪人』に似たプロットです。 ただこの映画では森口瑤子演じる恵津子の存在も目を引きます。恵津子は恵津子で、やはり自分のお腹を痛めて生んだ我が子だからこそ、恵理菜に母親としての愛情を注ごうとします。ですが娘の自分を見るその目は他人をみる目。それは普通の人だったら精神を病んでもおかしくないくらい辛い現実でしょう。だれが恵津子を責められましょうか。恵津子は実の母親でありながら我が子を奪われてしまったせいで、母親となりえる機会を奪われてしまいました。もしかするとこの作品中最も悲惨なのは恵津子かもしれません。 恵理菜は恵津子の前では娘を演じ、希和子の前では本当の娘としていられたのでしょう。 劇中ずっと本心を見せない主人公。この人物は恵理菜なのか薫なのか。 千草と記憶をたどる旅を続けるにしたがって、少しずつ当時の記憶がよみがえる。そして遂に封印していた自分の本当の気持ちと向き合う。『私は本当はこの島に帰りたかった。でもそんなこと思っちゃいけないと思った。』 三つ子の魂百までと言いますが、この映画を見ると本当にそうなんだろーなーと思います。 『私はお腹の子に美しい景色や世界を見せる義務がある。』『まだ会ったこともないのに、私もうこの子が好きだ。』 なんて力強く感動的な言葉なんだろう。 【たきたて】さん [DVD(邦画)] 7点(2022-02-27 22:48:29) (良:2票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 揺さぶるなあ。自分の中のいろんな価値観を。 他人の子を誘拐して良い訳が無いのに、なんだろう、この気持ちは。 あんなにも悲しい「よろしくお願いします」は、未だ見た事が無い。 女性は単に産んで母になるのでなく、乳幼児期を共に過ごしてこそ精神が母になるのだろう。 その機会を奪われる残酷さ。他の人も書いているが、森口瑶子さん見事だ。 奪われた時間は、希和子が死んでも取り戻しようが無い事だと分かっている。 それでも「死んでしまえ!」と。それ以外に叫びようの無い実母の苦悩。 この映画は「今にも壊れてしまいそうな女」ばかりが登場する。 恵津子(実母)、希和子、恵理菜、千草。それにしても、マシな男が全く登場しない。 ここで誰も触れていないようだが、冒頭の「お詫びの言葉“も”ありません」は、 「謝罪の言葉“は”、ありません」と真逆の意味ではないのか?。 原作未読だが、あのタイミングで実母から罵られると、 「ひと言の謝罪も無い・謝罪する気持ちが無い酷い犯人」に見えてしまうが、 そこには、日本語のトリックもあるのでは?。 「謝罪の気持ちは言い表せないほどある。本当に申し訳なかった。 しかし、薫と過ごした日々を思うと何より“感謝”を言わずにいられない」 そういう逆説的と言うか、複雑な立ち位置ではないのか?。考え過ぎか?。 揺さぶられた勢いで、余計な事も書こう。 不謹慎かも知れないが「一夫一妻」の価値観って、本当に正しいのか?。 一夫一妻、多夫一妻、一夫多妻。もう、こうなったら「選択制」じゃダメ?。 【じょるる】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-07-11 20:28:27) (良:1票)(笑:1票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 この映画の幸せ感って、何かを「見る」ことのか。 希和子が薫に言った「綺麗なものいっぱい見ようね」が、幸せの一つの実現とすると、八日目に他の蝉が見られなかったものを見た、つまり成長した薫が”八日目”に見た「綺麗なもの」は、十数年間憎んでいた育ての母の、自分への愛情と、その思い出だったのだろう。 それが、最後に「まだ見てもいないこの子のことが~」となる結末は、巧い。 運命に翻弄されたこの少女が、母親の愛情を知った事を、希和子に教えてあげたくなった。「良かったな、お母さん」と。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-01-15 17:25:18) (良:2票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 原作未読。「大好きだったお母さんは私を誘拐した人でした」。この一言で、大体映画のアウトラインはほぼ説明されてしまっているのだが、この母子(ではないが)のたどる運命はなかなか興味深く、ぎっしりと二人の思いが詰まっており、2時間半という長尺にもかかわらず、まったく退屈することなく観られた。 野々宮希和子は秋山丈博との不倫の末にできた子を堕胎し、それがもとで子供を産めない体になってしまう。その後、丈博の妻江津子が子を授かるが、その子を希和子は誘拐して「薫」と名づけ、4年にわたって共に生活する。結局、警察は希和子を発見し、薫は本当の両親のもとに戻り「恵理菜」として育てられる。そして十数年が過ぎ、恵理菜は大学生になった。 この複雑な育ち方をした恵理菜を演じた井上真央、そして彼女をさらってしまった希和子を演じた永作博美の演技がこの映画の肝になるわけだが、それが素晴らしいのだからこの映画はその時点で成功している。加えて、脇を固める小池栄子もかなり重要かつあくの強い役どころだったが堂々の演技だった。一方、残念だったのは薫役の女の子だ。子役全般に言えることだが、なぜか海外のほうが圧倒的に自然に感じる。余貴美子、田中泯の演技も演出のせいかもしれないが、わざとらしすぎてちょっと抵抗があった。 一方、原作は読んでいないが、脚本では江津子がすこしヒステリックに過ぎ、悪役になってしまっているのが少し残念だった。分かりやすい悪役がいないほうがこういう映画は楽しめると思う。彼女は彼女で可哀想だが、わざわざ希和子に妊娠を誇示しに行くくだりは少しやりすぎではと感じざるを得ない。美しい小豆島の景色を背景に描かれる希和子と娘の交流シーンも良いが、幕切れのあたりが気に入った。ちょうどいいところで終わって深い余韻を残す。 総体的には良質な脚本(原作)に良質な演技。まっとうな映画を観たという満足感に浸れる作品だ。「おくりびと」以来だ。もっとこういう邦画が観たい。 【枕流】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-05-09 22:39:02) (良:2票) |
5.誘拐犯を決して許してはいけないのだが、自分もこの子供くらいの年齢の子供がいるので、確かに今、この子が別の親元へいってしまった場合、本人も相当戸惑うだろうし、自分自身もおかしくなるほど悲しくなるだろう。そのくらい、0歳から4歳までの時間というものは短いようで長い、思い出のたくさん詰まった時間である。それは手間もかかるし、学校にも行かないでずっと一緒という、毎日が常に新たな発見の生活のため、親子の絆が一番深まる時期になるからであろう。この映画はその辺をきちんと抑えており、誘拐された側の悲しみはあまり描いていないので、不謹慎ではあるが、誘拐した側に共感してしまうという作りになっている。まあ、映画なのでそれでもいいのだが、なんとなく、誘拐した側に正当性を感じさせる作りなのは、後から振り返るとこれでいいのか?と疑問を持ってはしまうのだが、内容的には面白かった。 【シネマファン55号】さん [インターネット(字幕)] 7点(2015-01-26 14:09:56) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 子供がいない自分はどうしても希和子に感情移入してしまう。結婚して子供を産んだ(元)友人から思いっきり見下し目線で見られた事があるから余計;(あなたは結婚も子供も持ってないわよね~みたいな) 結婚も出来ない(不倫男は最初から責任とる気なし)子供も持てない希和子の絶望が分かる気がする。マロンちゃんの「これからも一人なんだ」という孤独も。 薫といられた4年間はすべてを引き換えにしていい程幸せな時間だったに違いない。それは誰かの犠牲を伴っているものだから、当然彼女は罰を受ける。それは刑に服する事ではなく「もう薫に会えない」という事ではないだろうか? 実母の不安定さは「罪悪感」からきている気もする。「あの時、車に乗せていたら…」 エリナ自身も実母を苦しめている自分に罪悪感を覚える。 最後のシーンでは「誰も自分を責めなくていいのだ」と言っているように思える。そのことに気づかせてくれるのが「赤ちゃん」だったのではないか。その事に未来への希望を感じるのです。 希和子の再会シーンはなくてよいと思う。あったら安っぽくなったと思うから。 【果月】さん [地上波(邦画)] 7点(2013-04-27 17:22:23) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 特に興味もなかった映画だったのだが、見ているうちにだんだんと引き込まれた。他人の子どもを赤ん坊のときに誘拐して育てながら逃避行を続ける女・希和子(永作博美)を描いた過去と、成長した娘・恵理菜(井上真央)の葛藤を描く現代が交互に出てくるが、二つのパートとも丁寧で秀逸なつくりで、日本映画らしい日本映画になっている。本当は永作博美演じる希和子は憎らしい存在なはずなのに、話がすすむうちにこの二人が愛おしく微笑ましく見え、本当の親子ではないことをつい忘れてしまうほどだった。それだけに希和子が逮捕されるシーンは切ない。赤ん坊を誘拐された家族にとっては一刻も早くわが子に戻ってきてほしいという気持ちは分かる、でも誘拐された赤ん坊にとってはこのまま本当のことを知らずに育てられるほうがしあわせかもしれない、ふとそんなことを考えてしまった。あまり出演作を見ていないせいか現代パートで主人公を演じる井上真央には明るいイメージがあるのだが、暗い過去を持ち、その過去を肯定するまでの主人公をうまく演じており、幅の広さを感じた。ラストの恵理菜の決意も泣ける。暗く重苦しい映画だが、女性の強さや希望といったものを感じられるいい映画だったと思う。また、現代の希和子をあえて出さずに終わったのはいい意味での裏切り。後半の舞台である「二十四の瞳」でお馴染みの小豆島(二十四の瞳映画村が撮影協力としてクレジットされている。)の美しい風景も印象的だ。おそらくここでの生活が二人にとってもっとも幸福な時間だったのではないだろうか。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-05-24 18:02:04) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ○これだけの上映時間でも多少なりとも物足りないと感じるのは人物描写がもう少しほしいと感じるからだろうか。○井上真央も小池栄子も女優として、これから更なる成長をされるのだろうという期待感というかそんなものを感じた。特に小池栄子は今まで女優としての認識がなかったこともあり、異質なまでの存在感はすごかった。 【TOSHI】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-07-24 20:10:38) (良:1票) |
1.これ観たら、小豆島に行きたいと思いたくなりますね。 【Yoshi】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-07-22 01:50:02) (良:1票) |