4.《ネタバレ》 この作品の監督であるジェームズ・ガンはこれまでに「スリザー」で監督・脚本を勤めた他に「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本を勤めたことからもわかるように、この人のホームがホラーであることがわかります。フランクなノリで始まる作品のコメディっぽい雰囲気とは裏腹に、この作品に強く反映されているのはホラーで、レイン・ウィルソン演じるフランクとI LOVE エレン・ペイジ様演じるリビーから感じるのは人の狂気です。神からのお告げで始めた制裁の行為が知らず知らずの内に、腹いせや個人的な感情に昇華されてしまい、沸き上がる快楽と共に理性が追いつかなくなっている姿にぼくは恐怖を覚えました。それは「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」にある、ホラーエンターテイメントが本来持っていた人間の狂気へと変わりゆく様の恐怖が、この作品には見事に描き出されていました。特に如実に描かれているのがエレン様演じるリビーの興奮し過ぎてアドレナリン出過ぎで、理性を見失い、快楽おバカちゃんに急速になって行く姿には、まさにSuperがしっくりきました。この作品におけるSuperはスーパーマンのような英雄的な憧れではなく「過度、超過」で、つまり「そこまでしなくても。やり過ぎじゃない?」だと思いました。この作品は奪われた妻を取り戻す為に始めたそれが、やりすぎてしまい、結果的に最愛の妻と真の友人を失う話だとぼくは思いました。人類がそれぞれの正義の名の下に始めた数々の争いの歴史は、常にやり過ぎの歴史で、後に残っているのはいつだって悲しみなのです。まぁ、深読みかも知れませんが、正義と倫理、結果と責任、理想と現実、つまり生きることに付きまとう表裏を問う話なんだと思いました。あと、蛇足ですが「JUNO」でカウンターに立っていたレイン・ウィルソンと、妊娠検査機を買った(買ってはないけど)エレンちゃんの立ち位置が逆転し、そんな二人がSEXすることに関連性がある気がして無駄に興奮したりしました。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-01-12 00:01:42) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 ゼブラーマンのUS版 観る前からその位置付けはわかっていたものの 内容がこうなるとは予測できていなかった 僕の甘いところだ おかげで血を見るのさえ苦手である可憐な後輩女子ちゃんが恐怖の時間を過ごす事になってしまった なんもかもやる気が過ぎる 武器の選び方から結末に至るまでやる気が過ぎるのだ 銃社会であるお米の国でリアルヒーローを描こうとすると 劇中に出てくるファンシーでアホなヒーローでなく クリムゾンボルト はたまたクレイジーな相方のボルティーなのだろーが・・・ 悪いことはアカン!って伝えるのと同時に かといってそれをヒーロー的にとっちめることの恐ろしさアカン加減も伝えようとする手の込みようがスゴい ラストにしても上々だと思う しかし なんだって真剣に取り組むとヒット作ではなくなってしまうのか・・・ ベタな言葉ではあるが 日本に生まれてよかった・・・これに尽きる
※R15 この映画はズッコケ系コメディーかと思いきやエログロマジ有りのスプラッタブラックコメディーシリアス社会派映画のため 一部の可憐な女子には too へヴィー 要注意!!! 【おでんの卵】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-10-11 01:03:16) (良:2票) |
2.想定を大いに超越する“トンデモ”映画だった。 同時期に製作された「キック・アス」と殆ど同じプロットだと思っていたが、これはまさに“似て非なるもの”で全く「別物」の映画と言っていい。同様のカタルシスを得られると思って観てしまうと、とんでもないしっぺ返しを食らうこととなるだろう。実際そうだった。
この映画で描かれているものは、「キック・アス」のような新たなヒーロー像を構築したエンターテイメントでは決してない。 己の人生に絶望し、それを歪んだ正義感に繋ぎ合わせ、悪に対する憎しみを最大限に増幅させてしまった凡人の“狂気”の様だ。 主人公の想定外の暴走は、観ている者の心を問答無用にかく乱し、「衝撃」なんて飛び越えて、唖然とさせる。
自ら去った愛する妻の奪還、心のよりどころである神への信心、主人公を突き動かす要因は様々だが、そのすべてはほんの小さなきっかけに過ぎなかったのではないかと思う。 “ヒーロー”の「仮面」を被り、悪の抹殺行為が過剰に加速していく様は、主人公の男がそして人間そのものが元来持ち得る「衝動」が、膨らみ、弾けてしまった結果のように見えた。
あらゆるものを失い、主人公は“一応”目的を果たす。 ラストではそれでも何かが救われたように描かれているけれど、それこそがまさに“フェイク”で、偽物のヒーローが辿り着いた先はやはり「悲劇」だった。
映画において、何と言っても衝撃的なのは、エレン・ペイジである。 即席ヒーローと化した主人公に呼応し、相棒役“ボルティ”に扮するリビーを演じた彼女のパフォーマンスは、文字通りに終始“弾けている”。癇癪玉のように突如として弾け、これでもかと弾け続け、ふいに弾けとんで終わる……。 主人公が徐々にその狂気性を高めていくのに対し、リビーはそもそものキャラクター性が暴走的で狂気じみている。 リビーの行動を引き起こしたのは主人公だが、主人公の行為を破滅的に深めたのはリビーであるという絶妙な関係性が、この映画の肝と言っても過言ではない。
その重要な役所を、相変わらずの小さな体で“妙ちきりん”に魅せたエレン・ペイジこそが、この映画の最大の見所と言ってもいいだろう。
前述の通り、決して気分の良い映画ではない。ただ、批判も肯定もとにかく観てみないことには何も始まらない。 【鉄腕麗人】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-01-29 10:46:48) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 映画の内容は「ダメダメな男がヒーローに成りすまし、自分の信じるもののために戦う」というもの。この設定だとどうしても大傑作「キックアス」を思い出しがちですが、作品のベクトルはキックアスとは少々異なります。 なにせこっちの主人公は自分の人生は不幸だと思い込んでいる中年男です。ヒーローへの憧れによりヒーローになった少年よりも、一層の悲哀を感じざるを得ないのです。
結末に関して、暴力を正当化するような描き方をしたことに違和感を覚える方もいると思いますが、自分はこの映画は暴力に対して中立的だと思います。フランクは自分の行動を完全には正当化していません。それどころか罪悪感を持っています。 TVでクリムゾンボルトへの世論が良い方向へ変わったときも、リビーが大いに喜んだのに対してフランクはちっとも喜んでいません。さらにリビーは暴力を振るうことに対して歓び、その結果死んでしまうのです。暴力によって幸せも手に入れたフランクですが、それにはリビーの死という犠牲が伴ったのです。それこそがおぞましく、イタいヒロインを登場させた理由でしょう。
そしてラストシーンが素晴らしすぎる。 たとえ自分のそばにいなくても、大切な人の幸せを願えるようになった彼の姿にはただ、涙。「ウサギ」もいて本当によかった。
エロい、グロい、下品と3拍子そろっていて好き嫌いのわかれそうな映画ですが、「主観によって世界は変わる」ことを描ききったこの作品が、自分は大好きです。 【ヒナタカ】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-08-21 23:51:37) (良:1票) |