8.もっと軽いタッチのコメディだと思って見始めたのですが、思っていた以上にシリアスなドラマでした。
勿論いい思い出や懐かしい思い出もあるけど、多かれ少なかれ青春時代のトラウマのようなものってあるんじゃないのかな。それが後の人生に与える影響。僕もドがつくほどの田舎町の出身。そんな田舎が厭で都会に出てきた。若い頃は故郷に帰ると、故郷に残った友達に仕事のことや都会の暮らしを思いっきりカッコつけて着飾って話していたっけ…。
僕とシャーリーズ演じるメイビスは全然違うけど、分らなくもない。シャーリーズのかなりイタイ演技は素晴らしかった。本作は彼女にこれといった解決策を見出している訳じゃないけど、それでも生きていかなくちゃいけない。ジェイソン・ライトマンは「マイレージ・マイライフ」といい、本作といい、まだまだ人生これからだけど、もうそんなに若いわけじゃない。そんな人間ドラマを独特の切り口で見せる監督さんですね。ちょっと考えさせられるドラマでした。そんな僕もいまだに実年齢に精神年齢が追い付いていないと思う今日この頃です。 【とらや】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-06-28 21:12:22) (良:2票) |
7.自己チューで嫌な女の典型なメイビス。でも、そんな彼女にかなり共感した。田舎から出てきて東京でそれなりに活躍していたつもりの自分は、田舎でくすぶっている旧友に潜在的な優越感を感じていたように思う。結婚もせず独身を謳歌し、やがて不況の波にもまれている自分にとって、静かに幸せに暮らしている旧友たちがうらやましく思うようになったこのごろ。なーんて考えさせられる映画でした。単なるラブコメだと思って観たけど、予想外の収穫、良かったです! 【kaaaz】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2013-01-19 01:01:28) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 平凡な日常よりも、華やかで刺激のある生活に憧れる。若い時分には多かれ少なかれ、誰だって思い描いたはず。でもやがて、遠い幸せよりも近い幸せに価値観を見出していく。それを自然とできる人とできない人がいる。この主人公はまさに後者だ。だけど彼女は過去の自分と向き合い、知り、感じ、捨てるでも共存するでもなく、新たな自分を探すことにした。人間そう簡単に変われるもんではないけれども、まずそう思うことが大事。その1歩が、愛犬に優しくするというのが無理がなくてよかった。それにしてもシャーリーズ・セロン、恐るべき!です。はい。 |
5.《ネタバレ》 序盤にて(うわぁ、嫌な女だなぁ……)とゲンナリ。 中盤辺りで(あぁ、でも結構可哀想だな。彼女なりに幸せになろうと頑張っているんだな)と同情。 そして終盤にて頭を抱え込まされるという、良くも悪くも、観賞中ずっと主人公に釘付けになってしまった映画ですね。
基本的には暗い作風なのですが、何処か軽快でオシャレな匂いも感じさせる辺りは、この監督さんの持ち味なのだと思います。 過去作の「JUNO/ジュノ」に比べると、どうにも主人公の成長を感じられない内容だったりするので、それが意図的なのかどうかも気になるところ。
印象的な場面は幾つもあるのですが、特に「離婚した旦那との写真が、実家に今でも飾られている」件なんかは、本当に上手いなと感心させられましたね。 その一事だけでも、主人公が実家に帰るのを忌避する理由が把握出来たし「失敗した結婚なんだから、何時までも飾っておくのは止めて」と訴える気持ちも分かります。 帰省する車内にて、楽しそうに聴いていた「元カレとの思い出の曲」を、彼の奥さんが歌ってみせるのを目の当たりにして、呆然とするシーンなんかも良い。 それらの積み重ねがあるからこそ、主人公が単なる「嫌な女」で終わらずに、感情移入出来る存在となっているし、無茶苦茶な行動を取っても、何処か納得させられる説得力があるのですよね。 主人公が元カレの家に乗り込んで、二人で駆け落ちしようと迫るも、当然のように断られてしまう件なんかは、本当に痛々しくて目を背けたくなりましたが、彼女が何故そんな行動を取るのか理解出来ないという事は無く、混乱せずに見守る事が出来るのだから、凄い脚本なのだと思います。
ただ、彼女の最大のトラウマが「流産した事」というのは、少々安易に思えてしまって残念。 それほど独創的なネタでもないでしょうし、それなら終盤にて、さも驚きの真実のように告白させる形ではなく、もっと前の段階で分からせていても良かったんじゃないかな、と感じられました。
元カレに固執する理由が「一番良い時の私を知っているから」というのは、過去に囚われた彼女を表す台詞として、非常に良かったと思いますね。 その後、友人の妹から「この町は最低。都会で暮らす貴方が羨ましい」と言われて元気を取り戻す事になるのですが、正直そこに関しては、どうしても賛同する気持ちになれず、カタルシスを得られませんでした。
「相手の男を放ったらかしにして、一人だけベッドから抜け出す彼女」というシーンを、序盤と終盤とに挟む事によって、彼女が成長していない事を描いてみせる表現技法などには感心させられるのですが、それが感動にまでは結び付かない。 事故で傷ついた車のまま走り出すラストシーンなんかも「傷付きながらも生きていく女性の力強さ」を象徴しているようで、爽快ではあるのですが(結局、彼女って他人を思いやる優しさを持たないまま終わっているよなぁ……)と、ついつい考えてしまいます。 最後の最後で主人公を救う解決法が「他者を否定する事によって自己を肯定する」という形であった以上、どうしても後味が悪かったですね。
丁寧に作られた、クオリティの高い品である事は、疑う余地が無いと思います。 だからこそ、ラストシーンの主人公に共感出来ない事が、勿体無く感じられる映画でした。 【ゆき】さん [DVD(吹替)] 4点(2016-06-23 15:45:08) (良:1票) |
4.いたたたた!痛い!印象的なのが2シーン。①地元の町並みを、鼻に皺を寄せんばかりに忌々しく見回すところと②実家にまだ結婚式の写真が飾られていたところ、バツ1なのにーー。そういうのもまた彼女を刺激してしまうのよね。ゴーストライターの、「ライター」ではなく「作家」と呼ばれたいのよね、よく切り取られた大人になりきれないプライドが高い女の一編だと思いました。 【HRM36】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-10-22 09:48:15) (良:1票) |
3.幸せになれない肉食女子を描いた痛いブラックコメディなのですが、『JUNO/ジュノ』でオスカーを受賞したディアブロ・コーディによる脚本が相変わらず素晴らしく、男女を問わず楽しめる作品に仕上がっています。あらすじはかなり現実離れしているのですが、過去の栄光を懐かしんだり、初めての恋人を特別視したりといった主人公の心理には一定の普遍性があり、この点が観客と映画との間の共感の接点となっています。また、主人公の職業を小説家とし、彼女の歪んだ性根を小説によって明快に表現するという映画的工夫も素晴らしいと感じました。単なるバカ女にしか見えなかった主人公が、実は苦しい過去を抱えていたことが判明する終盤の急展開にも驚きと意外性があり、隅から隅まで計算し尽くされた脚本だと思います。。。 ジェイソン・ライトマンによる演出も安定しています。皮肉家で嫌味な性格なんだけど、どこか愛嬌を感じさせるキャラクターを描かせると、毎度この人は素晴らしい仕事をします。主人公のやっていることは最低で、その言動には同情の余地ゼロなのですが、それでもこのキャラクターを好意的に見てしまうのです。ハッピーエンドでもバッドエンドでもないクライマックスはいかにもライトマンらしい終わり方で、観客に何も押しつけてこないラフな姿勢に好感が持てます。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2012-10-13 02:47:36) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 うわ!面白い!アメリカ的偽善を映画丸ごとで睨み返している。ダレダレな生活を通して、場違い且つしおれかけの大輪の花メイビスの哀れさを浮き彫りにしている。でも、側に来れば煙たい存在なのは間違いないけれど、負け犬が彼女なのかへたくそ嫁さんバンドなのか、田舎で小さくやり過ごしている私には正直判断がつかないよ。シャーリーズ・セロンの「モンスター」以上の熱演と「あなたはここにいなさい。」のシーンの辛子たっぷりの味わいに痺れ、これまた見よう!と心に誓った映画だった。 【のはら】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-13 22:06:55) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 冒頭の連鎖していくショットのテンポの良さに惹き込まれる。 そしてカセットテープをカーステレオに入れる。 再生ボタンを押すと彼女にとっての懐かしの音楽が流れ出す。 そして更に何らかのボタンを押すと、テープがきゅるきゅるとなる。 これが、早送りなのか、巻戻しなのかは説明されてないのだけど 絶対に巻戻しなのだ。巻戻すことに意味があるから。 そこで更に惹き込まれるのだ。
ベッドで寝ているということだけを撮るにしても 意味を持たせる為の演出と撮り方の選択。 ひとりではうつ伏せ、ふたりでは仰向け。 そして反復する構図で、物語が動き出す直前であることを演出すること。 簡単であるようで、そこに辿り着けるひとは少ないのだ。
あとはもうシャーリーズ・セロンをどう見せるのか ということに徹した映画であって、もうそれだけで充分だ。 綺麗な女優が歪なビッチを演じきり、周りが盛り立てる。 こんな贅沢な話はないじゃないか。 【すぺるま】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-04 00:28:03) (良:1票) |