4.《ネタバレ》 シリアスさとユーモアのバランスが非常に良く、何より感情表現が実に繊細。この心地良い温度感は、流石ワイハである。 娘であったり、浮気相手側だったり、親族や友人であったり、登場人物の細かい感情の見せ方が繊細で秀逸。やっぱ、言葉よりささやかな表情で語らせる映画は良い。クドさが全然ない。クドいのはジョージ・クルーニーの顔だけ! 尊厳死という、かなり重いテーマも扱いながら重すぎも、軽すぎもしない真面目で面白い映画であった。 一連の物語を経て、微妙に変化した関係性をさらっと描いちゃうラストシーンが素晴らしい。 【すべから】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-07-09 23:10:36) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 この監督は何でこんなに哀れな中年を描くのが上手いのだろうか。主人公はどう仕様も無い状況に置かれている。妻には不貞を働かれ、長女はグレて訳の分からない奴と付き合っている、次女は妻に任せていたから今更どう接していいか分からない。そんな人生のどん底の男の捉え方が実に上手い。特に妻の不貞を知った主人公がハワイを無様に走り回り咽び泣くのをロングショットで捉えたシーンは、哀れさと可笑しさが絶妙に同居した名シーンだ。また主人公を演じるのが本来は二枚目のジョージ・クルーニーであることが面白さに拍車を駆けている。そしてハイライトとなる浮気相手との対面。浮気相手のスピアーの肩越しに主人公を捉えたショットは如何に主人公が矮小な存在で、妻に愛されていなかった哀れな夫であると認識させられる。つまり彼は何も持っていなかったのだ。原題『The Descendants』の通り主人公は自分がカメハメハ大王の末裔であることを何度も繰り返す。しかし親族会議の場で彼は何も得ていなかった自分を見つめ直して、自分に最後に残されたもの"血統"だけは失わんとしてあの決断をしたのだと思います。だから親族らに自身の決断を説明しようとする彼を背中から映し出したショットは不安が満ちていると同時に勇気と自信に満ちている様に感じるのでしょう。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-06-26 07:48:53) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 奥さんが植物状態になったことを切っ掛けに、今までよりも家族や親戚に向き合わなければいけなくなったジョージ・クルーニー。次女に朝食を作っても、「卵嫌いなんだけど」と突っ返される。長女に「卵好きか?」と聞くと無言で拒絶される。このときの長女の表情。「このオッサンわかってねえなあ!」という絶妙な表情がいいですね。劇的な事件ではなく、こういうほんの些細なところで決別しそうになるのはリアルだなあと思いました。奥さんの不倫が発覚した後のクルーニーの疾走は地味ながらも見せ場です。サンダルをつっかてドタバタ走る姿はもはや立派なコメディ。「人生はヨリでみると悲劇だが、ヒキでみると喜劇だ」とはよく言ったものです。ただガムシャラに、理由もなく全力疾走させて感動させようとするア邦画よりも、よっぽど切実な走り。終盤、義理の両親が訪ねてくる場面も良かったなあ。辛く当たりながらも哀しみを見せる義父はもちろん、前半ちゃらんぽらんだったボーイフレンドも、なにげに成長してるのが感じられました。最近、シリアスになりそうな題材を、軽妙なコメディタッチで描く映画が増えましたね。遺産相続や家族の死など、形は違えど、多かれ少なかれ誰にでもやってくる問題だからでしょうか。中途半端にシリアスにすると「こんなのウソじゃん」とバレちゃうんでしょうね。 【ゆうろう】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-06-03 07:07:40) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 半年ぶり2度目観賞。浮気していた妻が昏睡状態に、美しいハワイの自然と陽気なハワイアンミュージックが悲愴感を温かく癒します。走る、走る、父親役のジョージ・クルーニーがドタバタ走る。母の状態を知り水中で泣く長女、しみじみむせび泣く次女。ナマイキだけど実は結構いい奴の長女のカレシ、悔やんでも悔やみきれない妻の両親、全てを受け入れつつも嫉妬心を抑えきれない妻の浮気相手の妻。それぞれの思いを乗せて物語は進行します。失ったものは大きいけれど、二人の娘とこの地で生きていくと心に決めた父を映したエンドロール。今年有数の傑作です。 【獅子-平常心】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-05-22 00:17:23) (良:1票) |