5.若さというエネルギーは時にどこまでも人を愚かにしてしまう。老いは不器用さばかりを際立たせてしまう。親がどれだけの想いをこめても子は賢明な生き方を歩むとは限らず、ただ深い慈愛と忍耐をもって受け入れるしかない哀しい責務が親にはある。親と子の対峙には、相手の中に自分の限界を自覚せずにはいられない何かを否応なくつきつけられることがあり、血の濃さ・血の繋がりは窮屈で息苦しく逃げ場がない。でも最後に辿り着くところはやはりそこである。実話・冤罪ものは胸がつぶれるほど辛い思いにさせられるが、ポスルスウェイトの真実と正義を見据えたまなざしが救い。守るべきものがあればどんな辛酸をもなめることができる、失って初めて気付く、というテーマは語り尽くされているが、肉体は失っても父の執念・魂は確実に息子の血の中に生きている。気付くことが遅すぎてもいい、そうやって子は受け継いでいけばいいと思う。 【宝月】さん 9点(2004-09-15 08:56:13) (良:3票) |
4.まず実話だという事に恐ろしさを感じた。それに何もしていない人間が突然、犯罪者にされてしまう。これは現代の世界中、何処にいても起こりうる災難だと僕は思う。まさに恐怖だ。権力と嘘によって、15年間という長い時間を苦痛と怒りだけの世界へ連れこまれた主人公達。あまりの怒りと憎しみによって観ている僕が奴等を殺してやりたくなった。そして、ラストはとにかく嬉しかった。僕でさえこれだけの喜びを感じたのだから、彼等は一体どれだけの喜びを手にしたのだろう?僕には計り知れない。 【ボビー】さん 8点(2004-09-09 18:47:19) (良:2票) |
3.うーん、評価しづらい作品。冤罪モノと一括りにしていいのか。容疑もないのに7日間の拘留を認める法律が出来ちゃったからこそ、この話は起きたんでしょう。これはものすごくヒステリックな法律だけれども、ヒスってのは、ある種の過剰な正義論から生まれもするわけで、背景が不透明な事件事故でも、必ずや誰かを犯人なり責任者に仕立て上げて「血祭りに上げる」ことで、当事者及び大衆が溜飲を下げる、みたいな現象はよく起きる。そこで本来は、背景を含めた事の本質を見ようとする冷静さが問われなければならないはずだが、起きた事象だけに耳目が集まり、ヒスへの流れを止められなくなる。翻って、本作は、そもそも、アイルランドの複雑な歴史的背景が一切排除されているので、警察の横暴振りだけが前面に出ているが、宗教的対立に根差す理屈で語れない「民族感情」が根底にあったことが軽視されている。これは結局、本作自体、起きた事件を「実話モノ」として事象だけなぞってしまうことで、ヒスの流れに乗ってしまっている気もしなくはない。実話モノってのは、見る側の良識度というか、冷静さが問われる気がするので、作品自体の評価は本当に難しい。父子が同じ房に入っていたり、鑑賞会で「ゴッド・ファーザー」がかかっていたりと、これも事実だったのなら、この刑務所は、ある意味かなり鷹揚な刑務所のようにも感じる。映画としてみれば、ダニエル・デイ=ルイスは相変わらず素晴らしいし、表現も抑えた感じでよいとは思うけれども。いずれにしても、製作者の立ち位置としては疑問符がつく。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 5点(2010-08-22 17:41:17) (良:1票) |
2.IRAと警察当局双方の卑劣さに怒りで煮えくり返った。この作品を見た翌日歯は痛いわ胃は痛いわでかなりなダメージだった。こんな抗争には必ず一般市民に犠牲者が出る。父の淡々としているが、どんな苦境にあっても節を曲げない強靭な心を持ち心底息子を想う姿に胸が熱くなった。その生き様が自分は力尽きても遺志を受け後に続く者を残したと思う。凄い作品だった。 |
1.先にコメントされている方の感想で、「主人公がただの悪だったので同情できない」とか「あまり感動できなかったのは(中略)主人公があまり良い奴に思えなかった」とかありますが。。。私の感想はまったくの逆です。映画の前半、主人公がチンピラまがいのコソ泥で、愚かだからこそ、感動したのです。もっとも、私自身がこの年(34)になって、自分自身を「愚かだな」と感じるようになったからかもしれませんが。強くて正しい人が正しいことをする。うん。それもいいでしょう。しかし、愚かな者が苦難に会い、少しでも強くなろうとすることは、もともと強く正しい人がそうするよりも、もっとたいへんなことだとは思いませんか? |