1.ネタバレ ペドロ・コスタの記念すべき監督第一作。1989年の作品ですが、モノクロ&スタンダードで撮られていることも含め、もう少し古い時代…50年代か60年代位の、方々の(アートみのある方の)映画に近い質感を端的に感じ取れるし、作品全体としても特に「ノワール」としての構成や雰囲気が強く感じられるのです。しかし一方で、ポルトガル映画史上最も「美しい映画」であるとの評価を獲得したこともあって画づくり(⇒特にその黒・暗さを活かした表現)の卓越ぶりは処女作とは思えないレベルで洗練され、かつ少~し(年代相応に)モダンなエッセンスもまた覚えられるトコロではあります⇒それこそ、70年代以降の、隣国のヴィクトル・エリセの諸作品に倣ったかの様な絵画みが、やはり感じられて已まない。コスタの後年の作品群と比べれば、それでも今作は、筋書き自体の可読性という意味では大いに上回ると言ってしまえるかとは思いますが、それでも、コトの真相の部分は謎のままであるし、本質的にも(少なくとも)主人公ヴィセンテとクララの心情や辿り着いた境地に対しては、劇中の他登場者とも&我々鑑賞者との間にも、確実に大いなる隔絶が存在する⇒それそのモノを、ニヒルに描き出して「突き放すコト」が今作の一つの目的にも思える…と言ってしまえば、その部分こそもまた「ノワール」の系譜にあるモノだったのかな…とも(個人的には)思われましたですね。非常に静かな=観ているコチラ側の意識も静かなまま(あまり波風が立たない)という映画ではあったかな、とも思われますが(=その意味でも、個人的には再び絵画的な作品だと思いました)評点は少しダケ上の方に寄せておきます。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 7点(2025-05-04 23:04:01) ★《新規》★ |