《改行表示》 5.『ジャッキー・ブラウン』までは緻密な構成力とオタクらしいおふざけのバランスが素晴らしかったものの、『キル・ビル』辺りからB級マニアを意識しすぎた映画作りが鼻につくようになり、『グラインドハウス』でとうとう自家中毒に陥ってしまったタランティーノですが、その後の2作(『イングロリアス・バスターズ』と本作)ではオタク趣味を控えめにし、純粋に面白い映画を作ろうという姿勢にシフトしたように感じます。どちらの映画も時代劇であり、得意の音楽談義や映画談義ができない舞台を設けることで自身に制約を課したようなのですが、それでいて、従前からの選曲センスで観客の意表を突いてくるという遊びは面白く、タラの個性が非常に良い形で出た娯楽作として仕上がっています。。。 本作で感じたのは、私たちが思っている以上に、タランティーノは引き出しの多い監督さんだということです。かつて、タランティーノと言えば捻れた構成が第一の特徴として挙げられていましたが、一方本作は驚く程シンプルです。ジャンゴという男の物語が一直線に進むのみであり、時間軸の解体等のテクニックで観客の目を誤魔化したりはしていません。また、演出についても笑いに逃げている部分が少なく、正統派のウエスタンをやってやろうという気概に溢れています。90年代にはオフビート専門でオンビートの映画を撮れない監督だと思われていたタランティーノが、ここまで真っ当な娯楽を追求したことは意外であり、本作はこれまでの彼の作風の正反対をいく企画だと言えるのですが、これをほぼ完璧に作ってきたことには驚かされました。ジャンゴのかっこよさ、生理的嫌悪感を抱かせる敵、そしてガンファイトの迫力、そのどれもが非常に高いレベルで仕上がっています。長い上映時間がまったく苦にならないほど展開はスピーディであり、さらには農場での食事の場面など、アクション以外の部分にも只ならぬ緊張感が漂っています。これだけやってくれれば大満足です。。。 さらに、黒人奴隷の物語でありながら、人種問題を過度に扱い過ぎていない点でも好感を持ちました。ジャンゴのパートナーは白人だし、敵方にも黒人のブレーンがいる。余計な政治的要素を排除したおかげで、純粋に楽しめる娯楽作となっています。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-09-30 01:03:54) (良:2票) |
《改行表示》 4.燃え盛る巨大な炎をバックに黒い肌のヒーローがニカッと笑う。 そこには、ありとあらゆる葛藤を超えた映画的カタルシスが満ち溢れ、「ああ僕は“映画”を観たのだ」という真っ当な満足感に包み込まれた。 正直、何をまずピックアップすべきかどうか非常に迷う。 歴史に虐げられた黒人たちのすべての怨念が凝縮し爆発したようなヒーローの存在感か、確固たる歴史的事実として存在するアメリカ奴隷制度の目を覆いたくなる残虐性か、稀代の映画作家が生み出した個性的なキャラクター達を文句の付けようも無く演じ切っている俳優たちの素晴らしさか。 どの側面から捉えても、この映画の価値は高く、揺るがない。 ただやはり、これがクエンティン・タランティーノの映画である以上、特筆すべきは「会話劇」の妙だと思う。 今なお鎮まるはずもない歴史的な“怒り”を礎にした荒ぶるバイオレンスアクションでありながら、この映画の構造の中心に存在するものは、最初から最後まで登場人物たちの「言葉」のやり取りだ。 あらゆる思惑の人間たちの対峙から生まれる会話によって、娯楽性に溢れた緊張と緩和が繰り広げられる。 それはもちろん、デビュー作以来貫き通しているタランティーノのスタイルであり、彼が映画史に残る“脚本家”でもあることの証明に他ならない。 「憎しみは何も生まない」だとか「憎しみの連鎖に終わりはない」ということを描いた映画は今とても多いし、僕自身本当にそう思わなければならないと思う。 しかし、結局そんなのは、自分自身が本当の憎しみを抱いていない者が言える綺麗事に過ぎないんじゃないかとも思う。 本当に深い憎しみや怒りは、ただ一人の人間の中で断ち切れるようなものではない。 この映画が生んだカタルシスのすべては、詰まるところそういう人間の純粋な感情に端を発している。 裁かれない悪に対して正義の鉄槌を下す。 あまりにありふれたそのプロットは、世界中の人々が映画をはじめとする愛すべき“作り物の世界”に求め、そして唯一許された「復讐」の手段なのかもしれない。 “映画”という娯楽の何が面白いのか、人々が観たい“映画”は何なのか、そういうことを誰よりも良く知っていて、誰よりも追求し続けているクエンティン・タランティーノという人間の真骨頂。 今、この時代に生きていながら、その彼の最新作を映画館で観ないのは、あまりに勿体ない。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 10点(2013-04-13 16:31:48) (良:2票) |
3.165分、この長丁場の間ワタシの心臓はばくばくしっ放し。常日頃の1.5倍速で血流が体内を巡っていたと思われるわけで、身体にいいんだか悪いんだか。でも面白かった。凄く面白かった。長いのに中ダレしないのは、やはり脚本の力か。掴みの5分でこの話の虜になるし、全パートにわたってぴりぴりと緊張感がある。どの場面も、ストーリーに絡む“意味”がある。タランティーノ一流の無駄話シーンも健在。kkkの前身のような荘園の一味が目出し袋をめぐって阿呆を炸裂させる場面は個人的にこの映画の必見場面ベスト3に入る。そして、クリストフ・ヴァルツ。オスカー受賞おめでとうございます。遅咲きの名優、かのランダ大佐。大好き。この人は役を完全に自分のものにする。口から出る言葉が、完璧にこの人の思考に基づいて発せられている。“会話”が大きなポイントになるタランティーノの作品にあって、台詞を滑らかに筋に乗せることができるC.ヴァルツはまさに適任。Dr.シュルツが生き生きしてたパートまでなら10点あげたい。 【tottoko】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-09-15 01:00:07) (良:1票) |
《改行表示》 2.2時間45分とアホほど長いけど、めっちゃ面白かった!!タランティーノの作風好きなら間違いない!こんなに長くする必要のないストーリーだけど、なんだかんだ楽しいので大丈夫。(2時間以内で納めればもっと絶賛してたと思うけど) ジェイミー・フォックスの眼力!そして、クリストフ・ヴァルツさんは、軽薄そうなのに強そうで、好きだわー。悪いレオ様も素敵だわー(手痛そう)。サミュエルさん憎たらしすぎだわー。 タラさんお得意の会話の多さも今回は無駄な雑談と感じさせない自然さで、かなり良い感じ。突然のバイオレンスや、音楽の使い方も切れ味衰えず。全編掴まれっぱなしでした。タラ作品で一番好きかもしれない。(もっと短ければ確実に!) ジャンゴジャンゴ!! 【すべから】さん [映画館(字幕)] 8点(2013-04-29 12:55:36) (良:1票) |
1.★3時間弱はやっぱ長いかな。食べてる間はウマイナー、のラーメンなんだけど、食べ終わってみたらちと量が多すぎて・・・みたいな感じ。 ★たぶん、ジャンゴとシュルツがコンビを組むまでと、クライマックスの銃撃戦でカタを付けずに後までひっぱったの・・・つまりイントロとコーダが長すぎるかな。だいたいディカプリオが悪役やるってのが話題の一つなのに、初登場がまだなの?って。最期も少し肩透かしなような。 ★「イングロリアス~」に続き、ケレン味暴力描写たっぷりなものの、わかりやすさ見やすさでは初心者にも十分な作り。引用とかオマージュとかわからなくっても十分楽しめました。ただそろそろネタ的にはワンパターンな感じもする。 ★それならそれでもいいけど、別にあれほどの長さで大サービスしてくれなくってもいいよ、第一必要な尺とも思えないしね、ってことで。ええと、水戸黄門や必殺仕事人の年末ワイド版みたいな感じ?いやちょっと違うか・・・ 【wagasi】さん [映画館(字幕)] 6点(2013-03-10 13:52:05) (良:1票) |