5.《ネタバレ》 人生50年~と信長は舞ったわけですが、私もとうに製造から50年を過ぎてしまいました。 で、そんな私が小学生の頃、リアルタイムで初めて聞き覚えた荒井由実の歌が「ひこうき雲」だったのです。荒井由実の初アルバムのタイトル曲で、この歌が話題になったのは1974年ころだったと思います。いやぁ懐かしいですね。 ちなみに一見きれいなイメージのこの歌ですが、実は投身自殺をした少年の事を歌ったものである事はあまり知られていません。 「空にあこがれて空をかけていく あの子の命はひこうきぐも」ですからね。命といっちゃってますし。空かけられませんよね人間だもの。
…と、その歌の出自を知っている自分としては、そもそもこの映画の主題歌として「ひこうき雲」が流れていた事にはかなりの違和感がありました。 「ちょおま」状態です。イメージ先行もいかがなものか、ってとこでしょうか。
さて、そもそもヤマトガンダムのリアルタイム世代でアニメ少年だった私は、昔、宮崎駿が大好きでした。 「未来少年コナン」や「ルパン三世カリオストロの城」で魅せる「職業漫画映画監督」としての力量は当時から素晴らしいものがあって本当にワクワクしたのです。 彼の作品に出てくるヒロインはどれもこれもそっくりの「うんちもおしっこもしないような可憐な美少女」で、これは当時のテレコムアニメーションフィルムの若手アニメーター座談会でも女性アニメーターが話題にあげてました。 ある日の事、「監督ってうんちもおしっこもしないような女の子しか出しませんよね」とその若手女性アニメーターが宮崎監督に言ったら「じゃぁ君は、うんちやおしっこをするような女の子が出るアニメが観たいのか」と言われた、というエピソードです。 (女性にはこのヒロイン像に抵抗がある人がそこそこ多いわけです(製作サイドの中でも)。まぁその気持ちはわかりますが)
この宮崎監督の理想とするヒロイン像は終始一貫していて、何十年もの創作活動の中、ついに最後の作品となったこの「風立ちぬ」まで貫かれています。 典型的な「男にとって理想的な都合のいい処女で女神な」この映画のヒロインが嫌いだという人も(特に女性には)いると思いますが、これは監督のまさに主義主張(そもそも昔からただのオタクなのです、この人は)なのですから、むしろぶれてない事を評価すべきでしょう。
と、まぁ宮崎駿についてはいろいろ語りたい事もあるのですが、しかし、ジブリの作家となってからの宮崎駿は個人的には結構嫌いなのです。 周囲からのなんらかの制限がある職業監督の頃と違い、映画を自由に撮れるようになった事により彼の内なる作家性が全面に出てくる事になったわけですが、その結果作られる映画は残念ながら「僕が観たいのはこういうのと違う」という方向になってしまっているからです。まぁ僕のために映画を作ってるわけじゃないから、それはしょうがない事なのですが。
で、そんな宮崎監督の最後の作品となったこの映画ですが、結論から言えば、この映画、ぶっちゃけさして面白い話ではありません。 展開も地味ですし「え、そこで終わりなの?」ってとこで終わるし、肝心の二郎(庵野)のセリフは棒読みすぎて笑ってしまうレベルです。 ズブの素人を映画の主演に使うような映画なんて企画ものでもない限り普通はありえないわけですが、なぜかジブリのアニメ映画ではそれが許されてしまうのは、よくわからない風潮ですよね。
また、世代的なものもあって、私自身子供の頃から「レシプロ戦闘機が大好き」ですし、当然、零戦の開発者である堀越二郎についてもよく知ってる人間なわけです。 で、なまじいろいろ知っている航空機マニアだからこそ、映画を観ていて「何を描きたかった」かがわかるシーンもあるし「なぜこうしたか」がわかるような気がするシーンもあるし、また一方で「なぜこうしなかったのか」と必要以上に疑問に思ったりもしてしまう、なかなか罪作りなテーマだったのも確かです。 しかも主題歌は小学生のときにリアルタイムで聞き覚えた「ひこうき雲」なんですから、個人的には自分の小学生の頃の、そして宮崎駿が好きになったころの原体験を思い出させてくれる、きわめて個人的な意味で感傷的な映画だったと言えます。
しかしそういう個人的な原体験をはずして考えれば、この映画、役者の演技はまるでダメだしストーリーも地味でさして面白くありません。とても高評価できる映画ではない、としか僕には思えないのです。 【あばれて万歳】さん [地上波(邦画)] 4点(2016-12-08 02:05:51) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 正直なところ何故堀越二郎の零戦開発物語に堀辰雄の「風立ちぬ」をプラスしたのか意味がわからない。映画全体が堀越二郎サイドに引っ張られすぎていて、堀辰雄サイドは堀と矢野綾子(里見菜穂子)が軽井沢で出会ったことや女子美出身の綾子が絵画を描いていたこと、綾子の父親が銀行の頭取で実家が裕福であったこと、そして(婚約の後)綾子が結核で夭折してしまうというモチーフ以外はどこが「風立ちぬ」なのだろうと思わざるを得ない。「風立ちぬ」のテーマはひとが終わりだと思っているところから、懸命に生きようとする堀と綾子の過酷な愛の姿を描いている点であって、この映画の描き方とは真逆の世界だ。実際、堀は綾子がサナトリウムで亡くなるまで病室に泊りがけで献身的に看病し綾子の下の世話までした。堀(彼も同じ病を罹病していた)の不治の病である結核患者への求愛はそこまでの覚悟があってのものだった。綾子の死後、堀に妻帯をすすめたのは綾子の父親であり(綾子の遺言でもあった)、終生様々な形で堀を支援し続けたというから余程感謝していたのだろう。「風立ちぬ」を描くのであれば、少なくともその世界観を描いてほしかった。単にお涙頂戴的に夭折した薄幸の佳人のロマンスを描きたいのであれば他にいくらでも方法はあったのでは。まさか「風立ちぬ」というタイトルにこだわったわけじゃないだろうし。以上野暮と思いつつ。思い余って後略のまま。 【kainy】さん [地上波(邦画)] 4点(2015-03-15 01:24:03) (良:2票) |
3.映画館には多くの家族連れや子供がいたが、その期待を裏切った。 【TERU】さん [映画館(邦画)] 4点(2024-09-18 21:50:57) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ふだんアニメは滅多に見ないのですが、風とか雨とか影とかの細かい描写は熟練のワザにようなものを感じます。それから飛行機とタバコに強い思い入れがあることもわかりました。 しかし残念なのは、登場人物たちにまるで人間味がないこと。容姿も含めてキレイなところだけを切り取り、ひたすら品行方正で上っ面の会話をしている感じ。今どきSiriとかAlexaのようなAIのほうが、よほど味のある回答をしてくれるんじゃないでしょうか。 同時代ということで言えば、かの山本五十六は愛人との関係を部下に咎められたとき、「君たちが屁も糞もせず、女も抱かないなら話を聞こう」と一蹴したそうです。汚い例で恐縮ながら、主人公たちは屁や糞とは無縁の世界で生きている感じ。つまり人間ではなく、無機物でしかありません。 しかも、しばしば荒唐無稽な夢の世界に逃げ、奥さんもキレイな印象だけ残して去り、技術者としてがんばるほど戦争に協力することになるという主人公の苦悩や葛藤もまるで描かれていません。結局、この作品の製作者は何を伝えたかったんでしょう? 「タバコぐらい自由に吸わせろ」という現代への批判かな。 ただ、「ひこうき雲」は名曲ですね。 【眉山】さん [地上波(邦画)] 4点(2021-09-04 19:55:18) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 面白さでいったらぜんぜん面白くない。白昼夢のごとく冷めた口調で語る主人公が、天才的な飛行機設計者なのは分かるけど魅力がないったらありゃしない。ジブリなのに、観ててもぜんぜんワクワクしないのだ。子供のときにこれを観てたらどう思っただろう。 作中おっと思えたのは、祝言をあげるシーン。忍ぶ川よろしく、美しい花嫁の登場シーンと仲人とのやり取り自体は素晴らしいのだが、でもこれってヒロインの独りよがりかなとかいちいち引っかかるのだ。理想の女性像を入れるのはいいけど、結核なのに一度も咳のシーンがないのも違和感があった。やたら頻繁にタバコを吸うシーンも入ってて、これもどうかしてるんじゃないか。街中いたるところで禁煙になってるのに。夢オチも多すぎる。若いころに名声を得て飛び抜けたものの、時代についていけなかった老監督の最後のやりたい放題、という感じ。 点数を4点にしたのは、それでも飛行機の描写とか迫力があったし、ヒロインの生き方にも共感できたから。 ではさようなら、宮崎駿監督。 【mhiro】さん [地上波(邦画)] 4点(2019-04-16 21:34:55) (良:1票) |