5.《ネタバレ》 この映画はストーリーを楽しむというよりは映像を見て凄い。美しく幻想的な世界観を見て楽しむ映画である。まるで本当に竹取物語の世界の中へ入り込む様だと思うぐらいの美しい映像に圧倒させられる。その美しい映像は初めて溝口健二監督の映画を見た時の様な驚きと一緒で、ただただその美しい映像を見て、凄い。凄いと見るのが正しい。高畑勲監督の作品全てに共通する人間だけでなく動物、昆虫に対しても優しさを感じることができる。空を飛ぶ鳥、木の枝に舞う蜂、かぐや姫が嬉しそうに桜の木の下で身体全体で喜びを表現して踊る姿は人間の感情のが全てを見せてくれている。捨丸が殴られているのを見て、泣きくずれるかぐや姫の切なさ、人間の生命、生まれてきた以上は必ず向かえる死、別れ、日本人なら誰でも知っている竹取物語、かぐや姫の姿を通して訴え掛ける作品として見応え十分です。高畑勲監督、もっと評価されていいし、評価されるべきだと声に出して言いたい。最後にもう少しだけ!宮本信子のナレーションを聞いてると、あまちゃんが見たくなる。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2018-04-08 10:52:30) (良:2票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 「ジブリの新作は高畑勲で『かぐや姫』だぁ?おいおい大丈夫かよ?」…大変申し訳なかったです。素晴らしかったです。 絵巻物を思わせるような独特の作画も、この映画全体に流れる“お伽噺の空気”の表現としてグッドでした。 そして自分も昔から知っている『かぐや姫』の物語ですから、もちろん最後に月からのお迎えが来ることは分かっているワケです。 かつての映画化でモロにUFOが登場して失笑を買ったりしていたコトを覚えている身としては「どんなのが来るんだろう?」とドキドキしていたら、やってきたのが凶暴なまでの優雅さと冷酷さを体現した“あの世軍団”…非暴力という名の暴力というか「うわ、コイツら絶対俺たちのコトを虫ケラぐいらにしか思ってないだろうな~」と思わせる怖さを出していました。 そして捨丸兄ちゃん…女房子供いるのに姫との逃避行に即答…しかも最終的には「夢か…」と子供を肩車…うーん…苦い…。 “やさしいおじいちゃん”だった翁が権力欲に取りつかれて俗物になっていく様子(しかも瞳キラキラ)も怖かったです…。 気になったのは…物語の中で延々とこの世の醜さにブルブルしていた姫が、何故そこまでこの世に残りたかったのがちょっと俺には分かりにくかったコトかなぁ…。そしてラストは“ただの月のショット”で終わってヨカッタのに…。「ああ!もったいない!」と俺には思えてしまいました。 あと個人的には…クライマックスで、姫の最大のマブダチ?だった女童(ちょっと萌w)の“ナギナタで待機、からのワンパク大行進”に、ちょっとオジサンは涙腺やられました…。←涙腺ユルすぎ(笑) 【幻覚@蛇プニョ】さん [地上波(邦画)] 8点(2015-11-29 07:36:50) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 「月に帰る」とは「自殺」の暗喩なのか? と、この作品を観てはじめて考えました。この世界にいたくない=この世を去る。あの世には思い出も持って行けないでしょうしね。日本最古の物語で、しかも日本最古のSFで、もし本当に自殺の物語だったら、その比喩表現の感性があの時代にあったというのは凄いことだなと思う。考えてみればオチは『コクーン』に近いのかも。 【だみお】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-01-29 17:20:53) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 高畑勲監督の本当に久しぶりとなる新作。「竹取物語」は以前にも市川崑監督が沢口靖子主演で映画化しているが、こちらはあの映画のようなSF色はなく、ファンタジックな印象の強い映画になっている。それに、娯楽性よりも芸術性の高さを感じさせる作風はこれまでのジブリ作品ではあまり見られなかったような気がして、こんなジブリ作品もいいなと思った。高畑監督の前作「ホーホケキョ、となりの山田くん」でも水彩画のような画風が印象的だったのだが、本作でもその水彩画のような画風で作られていて、その優しいタッチが本作の雰囲気にとてもマッチしていて美しかった。ストーリーは原作の「竹取物語」から大きく逸脱することなく、忠実に進んでいくが、それが何か懐かしい。かぐや姫の視点から描いたことにより、深みが出て、そのことで、きちんと見ごたえのある映画になっているのがいい。山では優しかった翁が都に出てきたとたんに欲が出て、見栄を張るというふうに変貌を遂げたり(本人はかぐや姫の幸福のためと言っているが、あまりそんなふうには見えない。)するのは見ていてリアルだし、かぐや姫に求婚する男たちも今見るとどこか支配欲に満ちているというふうに見えるのは自分の見方が変わったせいだろうか。本作ではかぐや姫が地球に来た理由が描かれていて、これを見るとこのかぐや姫がとても純粋無垢な女性であることが分かるし、そんな彼女が帝に求婚されたときに思わず「月に帰りたい」と願ったのもその純粋さをこれ以上奪われたくないという思いからだろう。汚らわしいものもあるが、それと同時に素晴らしいものもこの世界にはあるということを知っているかぐや姫は帰りたくないと言って涙を流す。かぐや姫の心理描写がうまく、ついかぐや姫に感情移入して見てしまうし、昔読んだ絵本などを後年に思い返してみるとクライマックスの展開が少し唐突に感じる部分ではあったのだが、これならじゅうぶん納得がいく展開だ。迎えに来た者たちにそのことを訴えるかぐや姫(途中で羽衣を着せられるのが無情。)や、自分たちも連れて行ってくれと懇願する翁と媼の姿が切なく、今までさんざ知ってる話のラストシーンにも関わらず、思わず泣きそうになってしまった。高畑監督が東映時代から企画していて、ようやく実現した映画だと聞くが、それに見合う出来の傑作になっていて、間違いなく高畑監督の代表作の一本になる映画だと思う。それからもう少し、いつもファンタジックな映画を作る宮崎駿監督が「風立ちぬ」でリアル路線の映画を作ったのに対して、ジブリでは「火垂るの墓」などリアル路線の映画の多い高畑監督がファンタジー路線で映画を作っているのは面白いなと思った。 【イニシャルK】さん [地上波(邦画)] 8点(2015-09-23 17:15:19) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 期待していなかったので度胆をぬかれました。近年稀にみる素晴らしい作品です。エンターテイメント性はないから本当に「アニメ」という媒体を通して人々に「伝えたい」という情熱だけで制作されたのだろう。「利益の為の映画」が山のように作り出される昨今、奇跡のような作品。これは完全に「大人のアニメーション」。「13歳で結婚、14歳で出産。恋はまだ知らない」という言葉に代表されるような女性差別の世界の現状を実感していたり、ある程度の人生経験がないと胸に迫るものが少ないないかもしれない。少し大人になると知るのです。自分が心が壊れるような悲劇を経験したとしても、空は青く、四季は巡り、桜は咲き、地球は回る。自分の悲劇に共感するように空が赤く染まることはない。変わる事なくそこにあり、私たちを包み込む(故郷のように)だからこそ、また立ち上げれる。「なんてことはない」のだと。かぐや姫の愛した人の情熱とそれを包みこむ自然の美しさを今の人間はどうしているのか?女性の物語、というだけでなく、蕾のまま枯れる桜が出現し、500年以上分解されない毒を作り出して垂れ流す現代に問いかけてみる事が必要かもしれない。 捨丸ですが赤ちゃんが「父ちゃん」と言っているだけで父のいない親戚の子がそう呼んでいるだけかも? かと言って捨丸といっしょになって幸せになれたとは思えない。竹の子は誰のものにもなりたくない筈と思う。月の衣をまとった途端「忘れる」のは原作にも書かれているようで。何百年も前から「忘却」の意味は変わらないのですね。 【果月】さん [地上波(邦画)] 8点(2015-03-14 01:21:40) (良:1票) |