《改行表示》 4.《ネタバレ》 なんてことのない手垢のついたようなストーリーなんだけど、泣けてくる。 親子というのは人間関係の最も基盤となるもの。 誰にでも思い当たる経験の中での普遍的なものに訴えかけてくるからだろう。 テレビを集中して見たいのに、空気を読まずに話しかけてくる母親のうざったさ。 個人的に思い入れのあるものを勝手な判断でゴミとして捨ててしまう無神経さ。 本気で何度も腹を立てて怒鳴った覚えがあるが、全然懲りずに同じことを繰り返すのが子供心に理解できなかった。 当時は嫌がらせでもしているのかとずいぶん憤ったが、今思い返すと、呆れると同時にかわいそうになってくる。 親のうざったい行為は死ぬまで変わらない。 変わるのは子の受け止め方だけ。 子はいつか自分の親にも若い時代があったという当たり前のことに思い至る。 夢があり、挫折があり、恋をし、子供を産む。 親の昔の写真を見て、何ら自分たちと変わらない一人の人間であることに気づく。 そうして初めて子(自分)を育てる親に思いを重ね、親としてダメな部分、不満な部分も飲み込めるようになる。 それが、ガキから大人になるということなのだろう。 掘北真希は良かったが、余貴美子がうざったい母親を演じ切れていない。 一般人の母親はもっと小汚くくたびれていて色気がないが、やっぱりそこはキレイ系の女優なので芸能人オーラが抑えても漏れ出てしまう。 もっとうざったくて頭にくるような本物のババア感を出さないと、リアルな切なさが生きてこない。 【飛鳥】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-11-16 22:44:36) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 麦子と母、2人でTVを観る場面。麦子は(アニメを)観ている最中は黙っていて欲しいと母に告げました。それでも話しかけてくる母に対し彼女は「観ている最中なんですけど」ではなく、「観てるんですけど」「最中ですけど」と返しました。この言葉選びのセンスが絶品です。2人の微妙な距離感が伝わってきます。兄のネチネチ愚痴や、お祭りでのバンド名紹介「ペニ…?」「フェニックス」なんて遣り取りもそう。極上の“親近感”のおかげで、抵抗なく物語の世界に入って行けるのです。私の住む世界と同じ重力、同じ空気濃度と実感出来ました。荒唐無稽な“お伽噺”に感情移入が適うのはこのため。そう、麦子が訪れた母の故郷はファンタジーの国でした。陸の竜宮城。自動車人身事故が不問にされ(笑)地面に落ちたたこ焼きでも平気で食う(苦笑)ミラクルワールド。其処で垣間見る“母の人生”。どんな人にも歴史があることを麦子は知りました。麦子にとっては母、亡き父にとっては妻、そして町民にとってはアイドル。誰にだって立場があり、それぞれの顔があります。どれか一つが落第でも、全てを否定することは出来ません。いや、してはいけません。少なくとも母はひとりの人間として、多くの人々から愛されました。それだけは間違いなく。よそ者の麦子が優しくしてもらったのは“彩子の娘だから”に他なりません。母親失格でも、人間として合格なら、それでOK。さて、今度は麦子の番です。彩子の娘ではなく、小岩麦子として愛されるような、認めてもらえるような生き方をしなければなりません。声優になれるかどうかは関係なく。それがきっと母の願いでもあります。これまでの吉田恵輔作品に比べると(実は『さんかく』『ばしゃ馬』は未見ですが)かなり地味な印象を受けました。物語にダイナミックな起伏はありません。でも溢れる人間愛に胸が暖かくなりました。皆さんも、麦子さんと一緒に楽しい日々を過ごしてみませんか。 【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-10-18 07:45:38) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 まず、麦子さん。 麦子さんとは ひょっこり帰ってくるお母ちゃんの事かと思っていたらば違ってた。堀北さん自身が麦子さんだったのね(あらら ) そして吉田監督、やはり早速やってきました 得意の主演女優に鼻血ブー。 だけどこれはフェイント さすがに堀北さんは引き受けなかった 鼻血ブぅ~ (次回はも少し口説き頑張れ吉田監督。主演女優の鼻血ブーは次回の誰かさんに持ち越しだ。) そして親孝行したくなったとき既に親は無し。 既に親を亡くした経験なくして分からないだろう その感覚。かといって麦子の場合は二十年近くも放置され 逢いにさえ来てもらえなかったというかわいそうな状況であり事情は全く違いますけどね。麦子の思いと言動及び行動は当然のものであったと思います。ただ、そのへんの確執やメラメラしたものを吉田監督、さらっと心地よく上手く描いてますよね 母親の退場させ方にしたって唐突にあっさりで こちらにジメジメ感を全く与えなかった テーマ自体としてはすごくあれなのに、結果、すごく心地よい出来になっていました。なかなかの出来映えになっていたかと思います。 ただ兄貴については論外で、彼の人間性は相当疑ってしまいますよね 母親から二人の生活費として十五万円もの大金を二十年近くに渡り受け取っておきながら それを麦子に伝えていないとは。(≧σ≦)... 母は母らしい母にこそなれやしなかったが、陰ながらちゃんと親としての役目を果たしていたではないか でも十五万という設定にはちょっと無理があるよな (十万円くらいのほうがリアリティあったっぽいんですが) なんでそんな大それた金額設定しちゃったのとか思ってしまったことはいちいち言わない事といたします。(^^;) 【3737】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-10-09 21:01:37) (良:1票) |
《改行表示》 1.本作の脚本は巧みです。 ちょっとした登場人物の行動を、後になって他のキャラクターが反芻をします。 なんでもないようなシーンが、後に重要な意味を持つようになります。 いろいろなことが「後で気づける」のです。 脚本家になりたい方、将来映画の仕事に携わりたい方は、この映画を観て学べばよいのではないでしょうか。 地味な映画に思えますが、凡百のお金をかけた映画よりも細かな工夫がされているため、全く退屈することがありませんでした。 本作で描かれるのは①母と娘の確執②夢に破れた&向かう人へのエールです。 ①は普遍的なもので、多くの人の共感を呼ぶでしょう。 本作で描かれる母親は、いい母親ではありません。 離婚をしてから長年子どもの前に姿を見せなかったため。娘と息子からうっとおしく思われてしまいます。 母親役の余貴美子の演技がまた素晴らしく、端々に「母親特有のウザさ」がにじみでています。 おかげで娘役の堀北真希に感情移入しまくり、気持ちがわかりまくるのです。 母親に対して「うっとおしいと思うこと」「素直になれないこと」は、後の主人公の想うことに強く関係しています。 そのことがわかる終盤の展開は、涙でスクリーンが見えないほどのものでした。 ②は監督の前作「ばしゃ馬」でも描かれたことです。 主人公の麦子はアニメオタクで、声優学校の進学を希望しています。 バイト先のアニメショップでは勤務中にノリノリでアニメ声を練習(?)しています。 堀北真希がアニメオタクとして描かれる作品は、おそらくこれが最初で最後でしょうね。 麦子は「これから夢に向かおうとしている(ちょっとダメな)若者」の象徴でしょう。 母親も、かつてはある夢を持っていました。 現在はくたびれた中年女性になっており、その生活はいいものとは到底思えません。 夢に破れた彼女が、どういう人生を歩んでいたか、その人生に意義があったのか、そして幸せだったのか・・・ 観た後は、そのことを考えてみることをおすすめします。エンドロール後にもおまけがありますよ。 【ヒナタカ】さん [映画館(邦画)] 9点(2014-01-13 16:54:17) (良:1票) |