8.《ネタバレ》 トーマス・ハーディのもう一つの厭世的な作品「ジュード」(「日陰のふたり」)と同様に悲劇的内容ながら、ナスターシャ・キンスキーのあでやかな美しさとドーセット地方の緑ゆたかな田園風景が淀んだ水の中の白い石のごとく光を放つ。 天井より滴り落つ血は運命に翻弄され続けたテスが一矢報いたと言うべきか。 されど断罪さるべきは粗暴な支配者アレックよりも天使の名をもちながら身勝手な理想主義者であったエンジェルかもしれず、されば彼がテスとともに罪人として牽かれてゆく結尾には納得がいき、原著のテスの妹の存在を抹消したのは頷ける。(テスの望みとはいえ彼女の処刑後に彼がその妹と添うのは如何なものか) 朝霧流れるストーンヘンジの岩に身を横たえるテレザ・ダーヴィフィールドは、その呪わしき名と共に自分を苛んだこの世から消え去る時を静かに待っているかに見える。 【レイン】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-07-09 23:59:59) (良:2票) |
7.貧しい農村の中でひときわ輝く清楚な美少女の中に、苺を食べるシーンや口笛の練習のシーンで強調された唇の描写で女を映し出してゆく。はるか昔のことを「異教の時代」と言うこの作品はキリスト教世界に被われている。そしてその世界が一人の女を悲劇へと導く。牧師の要らぬ一言が悲劇の発端となり、私生児には洗礼を受けることが許されないだとか秘密を持った結婚は許されないだとかという戒律に、またその戒律に従う信仰心に翻弄されて悲劇の道を転がり落ちてゆく。エンジェルがテスの告白を受け入れることができなかったのは、単なる嫉妬心以上にキリスト教世界の中で生きているという大前提があったからではなかろうか。宗教でもなく合理主義でもなく愛を選んだテスが行きつくところがストーンヘンジという異教の遺跡というのが皮肉である。太陽を神と崇める石の遺跡の前で太陽が昇る前に連行されてゆくというのも二重の皮肉だ。幸薄いヒロインを演じたナスターシャ・キンスキーの純朴な中にも意志の強さを漂わせる瞳が印象的。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-04-20 16:35:44) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 観たいと思ってから40年。 この世にこんな美しい人居てるのか!ランキング第5位ナスターシャ・キンスキーは絶頂の美しさであり、ロマン・ポランスキーのS性が浮かび上がる数々の演出を受けて立つティーンエイジャーとは思えない堂々とした演技にも喝采。ポランスキー印の重厚幽玄な映像美にもウットリ。エンジェルのステレオタイプなちっちゃい男ぶりは当時の宗教観を映し出しているような。彼の苦悩が示されていないのでノコノコ帰ってきて何を今更と白けた点が残念。テスの起承転結に於いて泥にまみれて遮二無二働いている時が一番幸せに見えたのが何とも切なくラストショットにやるせなさが募ります。
貧乏暇無しで4回に分けての鑑賞となりましたが、続きを観るのが待ち遠しかった、シャロン・テートもあの世で満足しているであろう傑作。 |
5.《ネタバレ》 美しい。冒頭の夕焼けの空の色の美しさ、更に音楽の美しさ、そんな美しい音楽に乗せてダンスする大勢の女性達、美しいと言えば映像もさることながら主演のナスターシャ・キンスキーのあまりの美しさに眼を奪われる。そりゃあ、男ならアレックスやエンジェルだけでなく誰だって心を奪われそうになる。出てくる二人の男が全く別のタイプだがどちらも嫌な奴である。こんな嫌な男なんかに関わらない方がテス(彼女)の為だ。それでもやはり美人であることが致命傷となり、どんどんと不幸へとなっていくのだが、それでもひたすら生きようとするテスの姿が悲しくあり、楽しい映画なんかではないけれど、この映画のテスのように自分が凄い美貌の持ち主であることを知らない女性というのは世界中に多くいると思う。美しいということはとても罪であるとばかり言わんかのような映画です。ナタリーシャ・キンスキーが苺を口にする場面のあの唇の美しさとエロさ、そして、アレックスとの間に生まれた子供に乳をやる場面にはそれが例え嫌々な形で産まれてきた子であっても母としての真の姿が見える。エンジェルがもっとマシな男だったらと思うと余計にテスが哀れでならない。誰もテスを救えなかったのか?作品全体の空気、張り詰めた感じ、あまりの美しさが生んだテスの人生、これを観ると自分は男であり、しかもかっこ良くもなく、美男子でもなくて良かったと思えてならない。そんな映画です。 【青観】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-01-12 21:48:01) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 18世紀の田園風景が見事な色調で堪能できる作品である。ポランスキー監督がこの映画を撮るきっかけとなったのは、彼の妻シャロン・テートの薦めである。なぜ、シャロンが原作に惚れ込んだかは定かでないが、少なくとも、主人公の生き方に惹かれるものがあったのではないかと想像できる。シャロンは、ハリウッドが誇る女優の中でも抜きん出た美貌を持っており、夫は才能豊かな映画監督で、世間からは羨望の的となっていた。方や、テスは、類まれな美貌を持ちながらも、世間体に縛られる環境や一族の境遇と相まって、力のある者のエゴイズムにより追い詰められて、幸せとは程遠い一生をおくる。映画でも忠実に描かれているが、純粋で自分に正直な少女が法律や社会に滅ぼされていく様は哀れである。しかし、それでも愛に生きようとする強い意志は感動的である。正に、シャロンが惹かれた女の行き方だったのだろう。運命とは残酷である。自ら認めた魅力的な役を夫の演出で演じると思われたシャロンには、「テス」にも増して残酷な運命が待っていた。結婚から2年後、愛する夫の子を宿しながら、狂信集団によって自宅で惨殺されてしまう。夫が監督する映画で「テス」を演じることは叶わなかった。享年26歳。悲劇から10年、妻の代役としてポランスキーは17歳の少女を抜擢する。「テス」に関わるもう一人の主役であるナスターシャ・キンスキーは、この映画で一気にスターとなる。シャロンが惹かれた「テス」は、ナスターシャの代名詞となることで、彼女と共に輝き出すことになったのだ。 【パセリセージ】さん [地上波(字幕)] 10点(2008-08-09 22:10:56) (良:1票) |
3.トーマス・ハーディの原作小説をポランスキーが映画化、ということで原作にはかなり忠実に作っています。19世紀イギリスの美しい風景、そしてヒロインをN・キンスキーが演じている事が原作の雰囲気を十分に伝える事に成功していると思います。原作の名シーンもしっかりおさえてありますし。結局、彼女にとって一番の悲劇は自分が貴族の一族だった、ということではないでしょうか。ただ、原作に比べて惜しい、と思うところは妹のライザの存在がまったくと言っていいほど無視されている事。原作ではテスが最後ストーン・ヘンジでエンジェルに死後、彼女と結婚するよう頼む貴重なシーンがあったのです。それともう一つはエンジェルの苦悩のシーンがないこと。あれがないせいで、この映画は原作を知っている私にとってもエンジェルがよけい身勝手なだけに思えてしまいました。ラストもどうせならエンジェルが義理の妹のライザと去っていくシーンで終わったほうがよかったです。そういうことで、評価は7点にしときます。 【マイカルシネマ】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2004-10-24 10:44:35) (良:1票) |
2.女遊びをしていた過去があるエンジェル。テスの真摯な告白を受け止められなかったエンジェル。路頭に迷うと知ってながら、テスを置き去りにしたエンジェル。彼を慕っていた別の女に、海外出稼ぎに同行しないかと口説いていたエンジェル。病気になってノコノコ戻って来てはテスを捜すエンジェル。人畜無害を装ったこのボンボンは、力と金で女をモノにするアレック(少なくとも彼はテスとその家族の扶養実績あり)や、家名に溺れテスを売り飛ばしたも同然の父親よりもタチの悪い、この物語最大の科人だと断定し、21世紀の法廷は、テスのかわりにエンジェルに絞首刑を命ずる。 【トバモリー】さん 5点(2004-03-29 18:20:40) (笑:1票) |
1.大っ嫌い、生理的に受け付けない。こんな前々時代的な原作を、わざわざ映画にして残さないで欲しい。映画の方も退屈な絵画的「美」と、ナスターシャ・キンスキーの絶頂期の「美」を、ただ冗長に映してるだけ。「美人は3日で飽きる」って諺を知らんのか? 演出も甘いし解りにくい。袋叩きを覚悟で断言、これは駄作です。衣装担当者とロケハン担当者とナスターシャの「美の記録としての価値」に1点ずつ、3点献上。 【sayzin】さん 3点(2002-09-01 00:32:16) (良:1票) |