《改行表示》 9.《ネタバレ》 評価が低いので驚きました。絶妙なバランスの大人向けクライムサスペンスアクション。妙なこじつけや予定調和もなし、CGアクションもほぼ無いのに予想外によくまとまったストーリー展開は素晴らしいの一言。まさに監督リドリー・スコット、脚本コーマック・マッカーシー、主役級キャスト5名が高次元できちんと融合している作品です。 「あなたは今岐路に立っていると思っているかもしれないが、あなたの決断はずっと前にすでに終わっているのだ」 この作品を一言で表現するならば「不条理」でしょうか。淡々と静かに、、野うさぎであるカウンセラーが捕食(破滅)させられてゆきますが、描かれていない部分をあれこれ詮索して「意味がわからない」というのはナンセンス。あえて詮索しないのが正解であり、映像特典でも監督自身が人物像の背景や人間形成上何があったのかは知らないと発言しています。見せられた一つのシーンから前後を想像するのがこの映画の正しい見方であり、一般人にはおよそ想像もつかない”悪の法則(恐ろしい世界)”があるというおとぎ話でもあります。 そもそも、カウンセラーは一流なので自分の考え方や行動に絶対的な自信があり、何度も遭遇する説教じみた会話も軽くスルーする描写は反面教師そのもの。また、過去の商売相手からは恨まれ、現在進行中のメキシコの女死刑囚は見下して軽く扱う。カウンセラーの人と成りがよく表れていて結末は十分予見できます。そして案の定、気付いた時には「時すでに遅し(因果応報)」という非常にシンプルな流れがリアル過ぎて本当に素晴らしかったです。あと、随所で見られる無駄話や与太話は一見無駄なようですが、相手の価値観を知るための腹の探り合いという意味で非常に重要です。根本的にタランティーノのそれとは異なり、ブラピとの緊張感あるやり取りなどは生々しく色んな意味でゾクゾクさせられました。 これほど贅沢な配役と救いのないマジ結末な映画も珍しいです。ある程度自分でイメージを膨らませ、様々な状況を脳内で想像できる方でしたら高評価ではないかと思います。強いてマイナス点を書くならば、ほぼ全ての演者が哲学を長々しゃべるのには少々違和感を覚えました。何名かサッパリした人物を混ぜておけばよりリアルだったと思うのでその点は少し残念でした。 あと、拡大版と劇場版を比較しましたが、追加された人体欠損表現やバイカーのしゃべりなんかはなくても良かったと思います。しかしトラックのドアを直すシーンだけは拡大版のほうがずっと判り易かったですね。 一見さんお断りの雰囲気も含めて、リドリー・スコットの切れまくった演出と、コーマック・マッカーシーの多くを語らない脚本が最高にマッチした大人向けの素晴らしい作品でした。 【アラジン2014】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2014-08-13 18:57:05) (良:2票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 主人公の恋人ローラに、マルキナが「その指輪の値段、教えて欲しい?」と聞いたとき、ローラは値段を聞くのを断ったけど、あそこで聞けてたら、その後の運命は変わったかもなぁと思いました。普通の弁護士が買えないほどの値段の指輪、そんなもの買うにはどんな悪事に手を染めているのだ~と思ったら、怖くて逃げたかもしれない。 ストーリーは、大人向けの「まんが日本昔ばなし」のようでした。 最初から最後までドキドキして観ることができたので8点です。 【たぬき野郎】さん [ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-06-30 00:01:00) (良:1票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 ああーやだ。やな話だよーこれは。一点の心地よさも見出せないので、体調のすぐれない人には絶対すすめられません。 綿々と語られるのは、慈悲だとか情だとか、そういう人間の正なる部分が一切無い世界が存在するのだよということ。それはウサギを捕食するチーターの如く、命を葬ることに何の躊躇も無いということで、ああそんなこと知りたくねえっ。こってりと交わされる勿体つけた会話にペネロペ救出の希望など全然なくて、こちらの眉は八の字になりっぱなしだ。世にもおぞましいメキシコマフィアの闇世界。 でもさ、人は、少なくともワタシは因果応報ってものが好きなんだ。マルキナにも回り回って何らかの落とし前が巡ってくる、そんな続きがあってほしいような。せめて。 【tottoko】さん [DVD(字幕)] 6点(2014-09-22 23:57:59) (笑:1票) |
6.《ネタバレ》 世の中には色々な世界が存在している、、、のはみんな知っていることだけど、知らない方が、あるいは関わらない方が良い世界があることはすぐに忘れてしまう。血迷って悪事に手を染めた男の悲惨な末路を描いた映画で、エキサイトするわけではないが、なかなか良い映画だった。 【lalala】さん [DVD(字幕)] 5点(2014-09-21 18:42:30) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 麻薬組織と繋がりのある企業の顧問弁護士として、今まさに引き返せない悪の道へと手を染めようとしている男。何も知らない美しい彼の妻。金と女のためならどんな手段でも平気で行う強欲な経営者。淫乱で謎の多い怪しげなその彼女。そして、何もかも分かったように斜に構え全てを冷笑的に見つめる男…。果てしない欲望と愚かで醜い性欲を抱えたそんな彼らが互いに騙し騙され破滅へと向かってゆく姿をシニカルに描き出すピカレスクロマン。「エイリアン」や「ブレードランナー」といったSF映画の名作を数多く残してきたものの、「グラディエーター」辺りから世間での高評価とは裏腹に僕の中では確かにその映像の美しさやスケールの壮大さなどは認めるものの、いまいち心に響くものが乏しい作品ばかり撮ってきたリドリー・スコット監督。現代アメリカ文学の重鎮マッカーシーの原作を映画化したという今作も、やはり哲学的で難解な作品でありました。でも、この華がありながらちゃんと実力も兼ね備えた豪華な役者陣が織り成すミステリアスなストーリーと、 淫猥な雰囲気がこってり濃厚に漂うこのダークな世界観はけっこう良かったかも。特に、フェラーリのフロントガラスに無毛つるつるのあそこをねっとりぐっちょり擦り付けて絶頂を迎えちゃうキャメロン・ディアスの文字通りのカーセックスシーンはめちゃくちゃエロかったっすね~。久し振りに、映画を観ながら僕の股間がエキサイトしちゃいました(笑)。まあ、見事なまでに最低の人間ばかりが登場する、胸糞悪~い後味最悪な映画ではあったけど(最後に送り付けられるあのDVDの中身なんか、想像しただけで吐きそうやし笑)、全ての人間の根源には必ず悪があるという事実を冷徹に見つめながらもどこかコミカルでエネルギッシュに描いたこの作品、うん、けっこう見応えあったっす。リドリー・スコット、ちょっぴり見直したよ! 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 7点(2014-07-01 08:40:18) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 COUNSELOR=相談役、顧問=ミケル・ファスベンダー、が主題なのか;邦題「悪の法則」を話していたキャベロン・ディアスがメインなのか。いずれも一度悪の道に手を染めたら二度と這い上がれないと言っているのか。愛する人のために始めた稼業とはいえ、自業自得でもある。えげつないことがたくさん、思い出すのも不快な映画です。 【HRM36】さん [DVD(字幕)] 4点(2014-05-12 13:45:07) (良:1票) |
《改行表示》 3.豪華俳優陣を集めたにも関わらず興行的に振るわず、批評面では『G.I.ジェーン』や『レジェンド/光と闇の伝説』をも下回ってリドリー・スコット史上最低評価を受けた本作ですが、酷評を受けるほどの内容ではなかったと思います。事件の全貌をあえて見せないという構成や哲学的なセリフの応酬、エロでグロな内容なのに、本当に凄惨な部分はごまかしてしまうというトリッキーな演出など、全体を通して見るべき点は多かったのです。豪華俳優陣によるパフォーマンスのレベルは総じて高く、スコット印の美しい撮影も健在であり、映画としては非常に充実していました。現状では酷い評価となっていますが、10年も経てば巨匠による傑作のひとつとして数えられるだろうと思います。。。 ただし、映画として面白かったかと言われると、そこは少々厳しかったです。観客を傍観者にする映画なのでハラハラさせられるような展開に乏しく、娯楽性の点で大きな問題を抱えていました。上記の通り、本作については今評価しておかなければ数年後に恥をかく映画だとは思いますが、現状では面白くないと感じたため、6点がせいぜいかなと思います。何度か鑑賞を重ねるうちに、その印象も変わっていきそうな気がしますが。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-04-03 01:07:16) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 ラストシーン、或る人物が「お腹がすいた」と一言発し、暗転、この映画は終焉する。 その瞳は、愉悦を覚えているようにも見えるし、欲望を満たすことを続けなければこの「世界」では生き続けられないということを、この映画に登場する誰よりも“正確”に理解している人間故の深く暗い悲哀に溢れているようにも見えた。 非常に哲学的で、極めて奇妙な映画であることは間違いない。 豪華キャスト勢揃いによる麻薬取引を軸にした“犯罪エンターテイメント”と高を括って観てしまうと、虚をつかれることは避けられないだろう。 マイケル・ファスベンダー演じる主人公が、終始ただ「カウンセラー(弁護士)」と呼称されることに表れている通り、この映画ではキャラクターのバックグラウンドに踏み込むような描写は一切無い。 それどころか、彼らがどういう経緯と理由で「悪」に手を染めているのかということも明確にならないし、描き出されるストーリーの“顛末”においても、「誰がどうしたからどうなった」という、普通の娯楽映画であれば当然ある筈の「事の真相」も抜け落ちている。 もちろんそれは描き手の明確な意図によるものであり、この映画で真に描き出したいことが、表面的にショッキングなバイオレンス描写やセックス描写などではなく、善悪の境界すらも超越した、彼らが生きる「世界」の本質的な「仕組み」の話であることに他ならない。 それはまさに、野うさぎを本能的に追うチーターの姿と何ら変わりない。 「捕食者」と「被食者」というたった二つの立場しか許されないピラミッドの縮図と、その真理だ。 そこには慈悲もなければ、憎しみすらない。ただどちらかが生きるために、どちらかが死ぬという極めてシンプルな「法則」があるだけ。 そのあまりに意欲的で野心的な映画世界を、「最新作」として送り出す大巨星リドリー・スコットの映画監督しての意識の“若々しさ”と“雄々しさ”には、毎度のことながら感服せずにはいられない。 映画作品としてのクオリティーを鑑みればそんじょそこらの映画監督が撮れる作品でないことは明らかだが、御歳76歳の大巨匠が描き出すような類いの作品ではないこともまた然り。 「衰え知らず」とは、まさにこの人のためにある言葉だと言っていい。 とても誤解されやすいタイプの映画だとは思うが、だからこそ、含まれた「真意」に対しての戦慄は殊更に際立つ。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-12-08 22:47:11) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 その「黒幕」が統べるように「七つの大罪」の一つ一つをまとったような存在として頂点に君臨し、それはまるで悪魔の具象化とも言えます。その影響や誘惑を受けた者がそれぞれに様々な形で罪を犯し、それが各々の破滅に繋がってゆく、そしてそれを予言するかのような象徴的なセリフの数々。そう考えるとこの映画、どうも宗教的な説教クサいシロモノって感じがします。 この世に悪魔ってモノが存在するのならば、それはやはり人の中から生まれるものですよ、発端はごく小さな選択であっても誤りは誤りであって、過程にいかなる分岐を持とうとも、到達する結果は最初の誤りが導くものですよ、自らの欲望は他者の欲望と決して調和する事なく果てなき諍いを生むのですよ、まあ、そんな映画。 作品世界はなんていうかハリウッド版『もう誰も愛さない』、あるいはセリフいっぱい版北野映画、もしくは残虐版テレンス・マリック映画みたいなもんで。 描かれる事自体はごくごく単純で特に難解ってわけではなくて、元々あまり物語のディティールなんかは伝えようとしていないように思います。 ひたすら鬱々とした展開が続くのですが、その魔性とか残虐性とかに何らかの抗い難い魅力があるのか?というとそうでもなくて、ただひたすらにグロテスクな生(或いは性)と死とがあるばかりで、それはリドリー・スコットって人のカラーなのでしょうかねぇ。『ハンニバル』や『ブラックホーク・ダウン』『プロメテウス』にも通じる、即物的描写が生み出す露悪趣味っぷりに辟易。主人公が受け取ったDVDの中身のように「見せない事で伝える残虐さ」もありはしますが、ならばそのスタイルを通しても良かったんじゃないかと。せっかく長々とセリフで説明しているのですから、それをわざわざ具体的に映像でトレースするのは悪趣味としか思えません。 大量の象徴的&説明的セリフに埋められる事によって逆に映画に生まれる隙間、その密度の無さを「独特の空気感」とか表現するよりは(元々そこまでのセンスを最近のリドリーが持っている気はしないんですよね)、なんか退屈なモン見たって言っちゃった方が私としては自分に正直かな。 見終わって「これからの人生、決して長くはないのだからなるべくならもうこういう映画は見たくないなぁ」としみじみ思わせてくれる作品ではありました。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 4点(2013-11-18 23:04:47) (良:1票) |