《改行表示》 5.《ネタバレ》 ごめんなさい。 何か仕出かしたとき、その一言を口に出すのがどんなに難しいことか。 そして失敗が大きければ大きい程、あれの所為これの所為と言い訳を探し自分は悪くないと逃げ、ますます言い辛くなってしまう。 しかしショーン・ペン演じる死刑囚は、いよいよ自身に及ぶ死の恐怖に全身を震わせながらも、声を振り絞り、被害者遺族へ謝罪する。 善いとは言えない育ち、同じ悪事を働いておきながら死刑を免れる友人。殺人を犯すまでに行き着いてしまった環境に言い訳せず、「自分の死で少しでも安らげるなら」と償う姿に涙が止まりませんでした。 なぜこんなにも泣けるのか。心の奥に、言わなければならなかった「ごめんなさい」が積もっていたのかもしれません。(とか言いつつ別のレビューで簡単に書いちゃってますけど) 刑罰の在り方を考えさせられる素晴らしい作品でした。 【ぱいなぽ】さん [地上波(字幕)] 9点(2016-04-14 13:23:02) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 この年のアカデミー主演女優賞、本作と競合したリービング・ラスベガスのE・シューを個人的に押していたので、彼女が受賞できなかったのは残念に思っていたのですが。今頃になって本作を観てみればS・サランドン、ああーこんなに凄いことをやられてはエリザベスが負けても仕方ない。“これから殺される人間”を前にして人間としてありったけの誠実さと、先人たちが築いてきた“宗教”という知恵を携えて真正面から向き合うシスター・ヘレン。こんな難役をどうやって演じたらいいのだろう。役者というのは自らの経験値の引き出しを開けて役に臨むんだろうか。だとしたら私には到底無理だ。大きな瞳を真っ赤にして最後まで死刑囚に手を差し出すシスター。浅学にしてカトリックの教義には疎いけれど、“神の愛”たるへレンの信念がついにマシューに届いたときはS・サランドンが静かに燃えさかる炎のように見えた。青い浄化の炎。いや凄い。 【tottoko】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-04-24 17:56:44) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 日本では死刑執行直前の死刑囚に僧侶が説教をするそうです。坊さんは何をどう話すのか、魂を救済することが宗教家の仕事だとすればこの役割はやりがいがあるのかどうか、といった疑問にこの映画でキリスト教のシスターの役を演じたスーザン・サランドンが答えてくれます。日本と異なり、長期間この役割を果たします。サランドンの大きな目に湛えられた無言の訴えかけに引き込まれました。「あなたは一人ではありません。私はあなたの魂を救うためにやってきました・・・。」でも、ふてぶてしい面がまえの死刑囚(ショーン・ペン)は心を開こうとはしません。「この男は恥ずかしがり屋で自分の問題を人に話さなかったから悪の道にのめりこんでいったのに違いない。」と説明することはできてもこの男に殺された人は戻ってはきません。シスターが車をとばす周囲の田園風景が美しく、「あの男はもうじきこんな風景を見ることもできない暗闇に追いやられるんだ。」と理不尽な気持ちになり、その後で「あの男は自分の手で複数の人間をこんな風景を見ることもできない暗闇に追いやったんだ。」ともっと理不尽な気持ちになります。この映画の製作者は映画という媒体ができる全てをし尽くしたといえます。ただ、作品中のセピア色の回想シーンは現実には神と真犯人しか知りえない視覚イメージだということだけは忘れてはならないと思います。法曹制度上、あるいは道徳的に事件に関わる全ての人間は証拠の積み重ねと論理によって判断を下すことしかできません。神ならぬ人間がそこで間違いを犯さないと言えるでしょうか?それでもなお、本当の意味での裁きや贖罪は真犯人が非難や拷問などの外的な圧力なしに自分の犯した行為を釈明した時にしか実行されえないし、また、されるべきではないと思います。だから、この作品中の死刑囚は制限時間ぎりぎりで生きて贖罪を果たして州法によって正しく裁かれましたし、死刑囚をその境地に導いたシスターの役割には大きな意義があると思います。 (☆アメリカの死刑制度について「エピソード・小ネタ」をご覧ください。) 【かわまり】さん 9点(2004-02-02 08:23:15) (良:2票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 被害者と加害者の両方の味方になることはできない。 宗教者として突きつけられたことにシスターがどう向き合うのか。 罪を告白した後の死刑囚にも誠実に向き合い、被害者の遺族にも共に努力が必要だと言い、教会で共に祈る。 被害者遺族の憎しみを解放するために必要なのは、加害者の死か、心からの悔恨か。 死刑の是非論は今でも結論は出ないけど、死刑への向き合い方を示唆する重い一本だった。 一番印象的だったのは、被害者の若い二人と、死刑囚がオーバーラップするシーン。 ガラス越しに執行を見守る二人が現れ、森に置き去りにされた遺体を俯瞰で撮る。 そこに重なる死刑囚の十字架。 当事者にならない限り、いや、当事者になっても結論は出ないのかもしれない。 ショーン・ペン、スーザン・サランドン共に素晴らしい演技で引き込まれた。 【roadster316】さん [DVD(字幕)] 9点(2019-01-02 11:14:50) (良:1票) |
1.てっきり「ザ・ハリケーン」とか「ショーシャンクの空に」みたいな、冤罪の映画かと思ってたら、贖罪がテーマだったんですね。多くの方が指摘されてらっしゃいますが、製作者としては死刑に賛成であれ反対であれ、まず死刑というものそのものを見せようという意図があったんではないでしょうか。賛成の立場の人は、死刑囚も家族を持ちそれなりの人生を歩んできた一人の人間であるということを再認識するだろうし、反対の人は改めて被害者の悲しみを見せつけられ、いずれにせよ死刑という制度について改めて考え直さざるを得ないと思います。こういう言い方はちょっと卑怯な感じがして嫌なのですが、そう簡単に白黒つけられる問題ではないんですよね。ラスト近くで被害者のお父さんが「あんたは信仰があるから(迷ったり苦しんだりはないだろ?)」というのに対してスーザン・サランドン演じるシスターが「信仰で片付くなら簡単です」と答えるシーンがありましたが、これは宗教というものの「ありよう」について深く考えさせられる言葉でした。信仰というのは(本来)解答を手に入れることなのではなく、答えを探し続ける勇気を持ち続けることだと思います。僕は基本的には無神論の人間なのですが、こういう表現を見ると、改めて宗教というものの意義を考えさせられます。・・・ってあ、しまった。映画そのものについてあんまし語ってないや。スーザン&ショーン、最高!曲も、良かった。 【ぐるぐる】さん 9点(2003-07-05 21:11:29) (良:1票) |