4.《ネタバレ》 始めから終わりまでとことん切ない話だ。廃墟が連なったような町並みのなかで、ガサついた気持ちを抱える人々が織りなす日常の日々。しかし、抑えた演出や無駄が無く時折ハッとするようなセリフで、登場人物達の心の底に置かれた瑞々しく光るものを見せてくれる。青春の切なさ以上に、人間としての営み重さを漂わせている。そして、人間が愛しい存在だということに改めて気付かせてくれる。いつまで経っても、行きつ戻りつしながら生きているのは自分だけじゃない、一筋縄じゃ行かないから人生も面白い…いろんな気持ちを再確認できた。「アメリカン・ビューティー」や「ギルバート・グレイプ」よりも遥かに前に、こんなに素敵なヒューマンドラマが存在していたんですね。出会えて良かった。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-04-11 00:14:25) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 世界の片隅で、しかも、廃れていく一方の町で、自分の人生、これでいいのかと誰しも悩む。特に青年は悩む。嫌いなんだけど愛しているから辛い。このアンビバレントな気持ちの目盛り上のどこを針が指すかで、飛び出す者、留まる者、が別れる。親の世代は、まだ、栄光のテキサス時代(劇中映画の「赤い河」の有名なヒーホーシーンが示唆している)の名残(サムがその代表)があり、留まる。彼らの世代には、もう引き留める魅力はない。最後の最後の砦、映画館も閉じた。だから、ラスト・ピクチャー・ショー。映画もその閉店の寂しい外観で終わる。一人青年が残るが、母の代役のような、彼女の元に戻る。しかし、その若さですでに、幸福がそこにはないことは知っているかのようだ。 【K-Young】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-01-21 21:53:17) (良:2票) |
2.《ネタバレ》 50年代のテキサスが舞台。舞う砂埃。プールバーと映画館だけが娯楽という田舎。そして若者はやっぱり閉塞している。狭い共同体の中でせっせと恋情をもよおし、だけど色恋沙汰では未来は拓けない。お金持ちで美人の女の子は都会へ行くし、友人は軍隊へ。頼れる先人は死んでゆき、澄んだ魂の知的障害の子は無残な最期を迎える。膠着した現実を打破できぬまま、一人取り残されたソニーが向かうのはかつて不倫してたコーチの妻であるオバサン。なんてこった。こんなにやり切れないものか青春て。苦い苦いどこまでも。 この後アメリカはベトナム戦争を経験し、80'バブルもやってくる。ソニーはその頃どうしていただろう。 21世紀の今格差は広がり、アメリカの田舎の若者は車も持てなくなっている。繰り返す時代の流れ。71年当時に20年前の世相を描いたこの作品は全く不変の青春を見事に切り取ってみせ、少しも色褪せていない。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-02-16 17:57:25) (良:1票) |
1. 映画評論家から転身した変わり種、ピーター・ボグダノビッチ監督による何ともホロ苦い青春映画の秀作。さびれた場末の映画館オーナー・サムを演じたベン・ジョンスンが味わい深い名演でオスカー助演男優賞を、主人公ソニー(ティモシー・ボトムズ)と肉体関係に陥る、体育教師の妻役のクロリス・リーチマンがオスカー助演女優賞を各々獲得。特にベン・ジョンスンはジョン・フォード西部劇での派手な乗馬アクションしか取り柄のない大根、という先入観を覆す見事な演技で男の渋さを体現し痛快。取り壊しが決まった映画館での最後の上映作品は「赤い河」(1948年・監督:ハワード・ホークス)。ジェフ・ブリッジスと旧交を温めつつソニーの観るラストショーは余りに切ない。個人的には結局結ばれることなく終わったサムとの若き日の恋を、イタズラっぽい表情でソニーに告白するエレン・バースティンも鮮烈な印象を残す。 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-29 12:44:30) (良:1票) |