5.《ネタバレ》 次々と映し出される片田舎の風景。風にざわめく木々。そして不安感をあおる音楽。この片田舎で何かが起こりそうなことを充分に感じさせ、あっという間に視聴者を物語の中に引き込む、先ずこの冒頭から素晴らしい。 母子家庭の親子と脱走犯の交流。この奇妙な共存関係が成立し得たのは、親子には足りなかった父親の愛情、フランクには足りなかった家庭の温もり、このぽっかりとあいた心の隙間を、お互いが与え合い満たされていくことによって得る安堵感が、脱走犯と人質という関係からくる緊迫感に勝ったからと思います。 野球、車といった素材や会話によって伏線を張り、要所要所でそれを回収していく展開の中、特に "ピーチパイ" はただの小道具ではない何かを感じさせたが、まさかヘンリーの人生を変えて、フランクの未来をも救ってしまう代物であったとは驚きました。 映画の内容には満足でしたが、唯一残念なのはこの邦題です。原題も内容のよさも全く伝わってこない、この安っぽいメロドラマのようなネーミングは毎回いかがなものか。 【タケノコ】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-06-08 20:22:15) (良:4票) |
4.《ネタバレ》 「さて、次のニュースです。今朝、刑務所から逃亡した凶悪な殺人犯は現在も逃走を続けています。彼の名はフランク・チェンバーズ、殺人罪で懲役18年の刑でした。警察発表によると彼はいまもまだ逃亡を続けており、近隣住民は不安な日々を過ごしています」――。1987年、アメリカの蒸暑い片田舎で思春期を迎えたばかりの息子と2人で暮らすアデルは、過去の辛い離婚が原因で精神的に不安定なシングル・マザー。生きる支えである最愛の息子ヘンリーと近所のスーパーへ買い物に行った彼女は、駐車場で逃走中の脱獄犯フランクに強引に車へと乗り込まれてしまう。息子の安全と引き換えにフランクはそのまま、アデルの家へも乗り込んでくるのだった。降ってわいた事態に、当然のように怯える親子。だが、フランクの殺人犯とは思えないその誠実な人柄に、母子はいつしか心を許していく。やがて、息子は離れていった父親の面影を、母は失われた愛を投影するかのように、そんな今にも壊れてしまいそうな危うげな日々に身を任せていくのだった……。脱獄した殺人犯に人質として囚われた親子が、いつしか擬似家族のような絆を結んでいったそんな刹那的な5日間を濃密に描き出すヒューマン・ストーリー。この監督の過去の作品は何度か鑑賞してきて、その人生の生き辛さや理不尽な現実をあくまで軽くポップに描くその作風は、まあ意図してのことではあると思うのだけど、なんだか妙に鼻について正直あまり好きではありませんでした。そんなわけであまり期待せずに彼のこの新作を観始めたのですが、これが意外や意外、男女の愛憎が濃厚に入り乱れる人間ドラマの佳品へと仕上がっていていい意味で裏切られました。いやー、なかなか面白かったですよ、これ。セックスシーンらしきものはほとんどないのに、この全編に漂う濃厚な性の匂いに僕はもう完全にノックアウトでした。この擬似親子関係を作り上げた3人が、手を混ぜ合わせてピーチパイを作るシーンなんて、そんじょそこらの官能小説より充分にエロティック!!対する思春期を迎えたばかりの悶々息子(笑)が、かなりおませな同級生の女の子にファーストキスを奪われ、「これであたしはあなたの忘れられない女の子になれたわ」なんて言われるシーンとかすんごく印象的(話はずれるけど、この女の子の蓮っ葉ですれたロリビッチな雰囲気、もろ自分のタイプっす☆笑)。最後の展開は確かにやり過ぎな感もあるけど、これはこれで良かったと僕は思います。うん、なかなかの良作でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-06-12 02:23:20) (笑:1票) |
3.《ネタバレ》 「Labor Day」労働者の日。夏休み最後の休日。つまり、新学期が始まるその前の日ということ。本作が描き出すのは人生の再出発までの三日間。見事なタイトル。 【ボビー】さん [試写会(字幕)] 8点(2014-09-25 16:53:44) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 合衆国の祝日 “Labor Day” は9月の第一月曜で、その翌日火曜日に新学年が始まります。つまり、逮捕劇があった日の前日で、フランクとアデルが互いの身に起こったことを打ちあけあい、カナダへの逃亡を決めた日。だから定冠詞がついて、原題の “The Labor Day” になるわけ。ケイト・ウィンスレットは「愛を読むひと」あたりからおばさんが板についてきて、もともと持ってたムッチリ感におばさん的にくずれた感じが付加されてめちゃリアル。隣人たちが訪ねてくるシーンでのサスペンスが何度もくり返されて、適度に緊張感が持続するところは好演出だったと思います。フランクの子どもがその後どうなったかわからないところ、よそから町にやってきた女のこが何度も出てくるのにその後のエピソードがないこと、冒頭のタイトルロールにトビー・マグワイアの名前があることから、彼が成人後の役を演じると推察できてしまうところが残念。そうそう、音楽はよかった。レコードに針を落としてかかるのはアーロ・ガスリーだし、クラシック・ギターの名曲もうまく配置されてましたな。バッハの演奏は「あの」セゴビア。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-05-18 13:39:44) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ネタバレ含みます。ストーリーと出演者の演技が良かったです。ストーリーについては少し無理がある部分もありましたが、それでも映画全体の方向はしっかりしていました。物語が進むうちに、これはハッピーエンドはないんだろうなって予想し、その通りの悲しい結末になってしまったけど、実は映画はそこで終わりませんでした。映画の中で象徴的な存在のピーチパイが数十年後にまた彼らをつなぎ合わせ、最終的には幸せな結末へ導くというエンディングにちょっとうるっと来ました。 【珈琲時間】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-05-01 20:05:12) (良:1票) |