5.小学生の時、母親に連れて行かれてみたときは「暗い映画だな」ぐらいに思っていたが、19になって見直したとき、猛烈に感動した。むずかしい芸術映画でもなく、派手なエンターテイメントでもないけれど、静かでいて力強く、見ごたえのある作品だと思う。ファックスがこの世にある限り見つづけられるべき映画。 |
4.《ネタバレ》 東京でサラリーマン勤めの長男、そしてその嫁の本音が一言ズバッと刺さる「長男の嫁なんかなるんじゃなかった」 つまり、この一言により、父はお荷物扱いされてゆく事が確定する台詞。気の毒だ。 一方、山奥での独り住まいを心配される父ちゃんが放った台詞「俺は自分の始末は自分でつける(だから心配するな放っておけ)」 とても頼もしい言葉だ。この言葉を聞く限り、まだまだ2〜3年は自由に放っておいてもよいんじゃないかと思えるとこですが、 だが、そこは観てる側の自分が長男であるか否かで大きく見方が変わるはずです。 長男ってその思いは大変なんです ただその嫁には更に大変な思いをさせる事分かりきっているからこそ色んな決断鈍ってしまうし、尚更辛いのです。 そんな親子・長男・嫁・姑問題を嘘が無く現実的にしっかりと描いてしまったこの作品。結果、到底後味よいもんではなく終えてしまうんですが、そんな家族共々の思いがしっかりと描かれています。その嘘の無さが清々しい。 その結果、もしも、長男よりも父親思いだと思えた次男哲夫が後に父と一緒に暮らしてゆく気になってゆくなんて事がもしもあるならば、それはそれでよいのです。ただこのドラマでは答えを見せない。そこが憎いところです。
だけども、湿りっぱなしでは終わらせません そのラスト。父親照男は心配していた次男哲夫が東京で人並みに自立した生活を送っている姿を確認出来た、尚且つ、最高に嬉しい知らせまで受け、心踊らされながらの家路。景色は雪であれ、彼の心はきっと暖かいはず あとは長生きしようが、ぽっくりと自然死しようが彼の自由であることを感じさせられます。部屋に明かりがポッと点いたところでパッと終わってしまうラストショットは物足りなくは無いです。逆にそれがよかったのかなと思えます。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2022-09-25 22:48:00) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 年老いた照男や聾唖の征子は周りの人達から腫れ物のように扱われます。 一応福祉制度が確立されているこの国の社会では要介護老人や障害者は等級を付けられて区分されます。 制度運営の効率上、必要な事だと思います。 しかし、システム化が進む程、対象の人達も人格を持った一個人としてではなくシステムの一部として扱われがちになってしまいます。 本作はそのような社会へのアンチテーゼを訴えている様に感じました。 しかし、作中ではそんな社会に対する不満はタキさんや寺尾に怒鳴らせておいて、当事者たちの問題は身近な人間関係の中で展開されます。
田舎で一人暮らしをしている老いた父親を引き取ろうとする忠司の行いは立派ですが、長男の責任や世間への体裁以上の感情は感じられませんし、征子の周りの人達も彼女を気の毒な女性としか見ていません。 そのように扱われる彼等には、同じ目線で接してくる哲夫の存在は生きる喜びの本質を感じさせてくれているように思えたのではないでしょうか。 哲夫が照男に征子を紹介する時に「この人には俺が必要で、俺にはこの人が必要なんだ。」という台詞や、照男が哲夫に「お前いつまで俺に心配させるんだ。」という台詞で表されているように思います。 他人から頼りにされる事は自分の存在意義と、それだけで生き甲斐にも通じます。 そのような彼等を特別に清らかな存在とはせずに、頑固者の爺さんであったり、彼氏と別れる時に自分からキスをする積極的な面のある女性であったりと、監督も普通の人間と同じ目線で描いています。 また、この様なテーマを東京で苦労しながら暮らす息子の哲夫を通して極めて自然に溶け込ませ、且つ丁寧な情景描写として描く演出は、見ている側の感情に深く染み込んできます。 東京で頑張って自分の人生を切り開こうとしている息子に対して、不器用な父親が夜中にビールを煽って歌い出すプリミティブな感情表現は至極とも言えます。 特にこのシーンの黙々と歌う三国さんと、初めは少し驚きますが俯き加減で口元を緩める長瀬さんの表情と演技には引き込まれます。
ラストの出稼ぎから戻った時の家族が揃った回想シーンは、作中で一番色が鮮やかでありながら柔らかいトーンの画で描かれ、家に戻った一人ぼっちの照男の心境的対比となっているのと同時に、私には汲み取り切れないであろう彼の人生の重さや量の様なものを想像して感傷的になってしまいました。 【しってるねこのち】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2015-05-26 21:53:32) (良:1票) |
2.ここまで登場人物の情感に共感できる映画を知らない。三国連太郎が長男の家で感じるぎこちなさ、次男の汚いアパートで感じる妙な居心地の良さ、こんな微妙な感覚を表現できる監督、俳優陣に脱帽。和久井映見の可憐さ、おくゆかしさにもぐっと来た。山田監督、こういう映画をもっと撮ってくださ~い。 【かけ】さん 9点(2003-11-18 22:36:15) (良:1票) |
1.うちの母方の実家が岩手なので妙な親近感を覚えた映画。とにかく主演の永瀬正敏と三国廉太郎が好演している。和久井映見もカワイイし、田中邦衛も田中邦衛だし…、癖のある俳優がかなり出演しているにもかかわらず、誰もが自然な演技で話の中にとけ込んでいて、見ていて違和感がないところもすばらしいと思う。そして何度見てもラストシーンでは黙ってしまう。 【キャリオカ】さん 9点(2003-05-16 14:55:51) (良:1票) |