4.《ネタバレ》 京都の舞妓文化の再生に一役買おうという主旨で、それなりの取材をしたうえで作ったのはいいと思うけど、残念ながらさほど面白い物語にはなってないし、ミュージカル映画としても中途半端にすぎる。たんに「マイフェアレディ」のダジャレという以上の意図を感じません。実際のところ、長谷川博己の役どころはただのヒギンズ教授のパロディであって、訛り音声の波形分析などは出鱈目なフィクションだろうし、ミュージカルの演出部分もまったくの素人じみた出鱈目にしか見えません。 京都の舞妓の世界をミュージカル仕立てで描くアイディア自体は悪くないと思うし、地元訛りを封じられて言葉を失なう主人公の心の声を歌で表現する手法も有効だとは思うけど、どうせやるならミュージカル映画として成立させるだけの技術的な前提が必要なはずです。それがまったく揃っていないように見える。 音楽の周防義和も、振り付けのパパイヤ鈴木も、ミュージカルの経験はほぼ皆無だったようだし、キャスト陣にもミュージカル俳優は含まれていません(全キャストのなかでミュージカルの基礎を学んでるのは、おそらく新人の上白石萌音だけ)。どんなにベテラン俳優勢を並べたところで、歌や踊りについては素人なのだから、スタッフ側にもミュージカルのプロがいないとなれば、どうしたって「なんちゃってパフォーマンス」にしかなりませんよね。 主演の萌音は「ド素人の田舎娘」という設定だからヘタでもいいと思うけど、脇を固めるキャストやエキストラがそれ以上にヘタじゃ話にならないでしょう。唯一まともなミュージカルとして見れたのは大原櫻子のシーンだけです。それ以外は、音楽にせよ振付にせよ舞台装置にせよ、せいぜいマツケンサンバみたいな歌謡ショーのレベルにしかなっていない。 演出に「ミュージカルらしさ」が欠けているため、たとえば序盤で舞妓さんたちが出迎えるシーンなどは、たんなるパレードの場面なのかと思ってしまうし、竹中直人のシーンなども、たんに悪ふざけで踊りながら歌い出しただけかと思ってしまう。せっかく東宝の制作で東宝の俳優を起用したのなら、スタッフやキャストにも宝塚や東宝ミュージカルのプロの人材を入れて、もっとちゃんとしたミュージカル映画に仕立てるべきだったと思います。 【まいか】さん [インターネット(邦画)] 6点(2024-04-14 06:13:06) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 上白石萌音さんは、本作のために“あつらえた”ような女優さん。まさに注文通りのハマリ役でした。こんな極上の素材を手にして、監督もさぞや緊張したことでしょう。”ど真ん中のストレートは意外と打ち損じが多い“とまでは申しませんが、『マイ・フェア・レディ』を下敷きに、型通りに手堅く創られた印象はあります(なんて『マイ・フェア・レディ』観てませんけど)。その結果、ミュージカルとして上質であっても、コメディとしての楽しさ(遊び)が足りなかった気が致します。ラスト、岸部一徳氏の舞妓評「一生懸命の若さに人生の春を見る。」=アイドル論は言い得て妙ですが、上白石さんが上手すぎてアイドルを応援する感覚を持てなかったのが皮肉なもので。欠点が無いことが逆に足枷となるなんて、アイドル業は難しいものです。 【目隠シスト】さん [インターネット(邦画)] 6点(2019-12-10 19:19:43) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 まずなによりも「緋牡丹のお竜」へのオマージュでスタートしたこと。この作品の通奏低音は富司純子つまり藤純子だってことです。そのうえに、なんと緋牡丹博徒の主題歌以降絶対に歌わなかった富司さんに歌わせたのがすごい、よくOKしたな。この2点だけで評価は上がりますね。個人的に「ムーンライト」のシーンがMGM(たとえば「雨に唄えば」とか「バンドワゴン」に特徴的)というか、クレージーキャッツ映画的で素晴らしかった。配給が東宝だから似たのかな?このシーンに出てた大原櫻子は逸材だと思います。ちょっとトロくなるとこもあるけど、よろしいんじゃないでしょうか。もっと「ピグマリオン」でもよかったかも知れない、ラストの台詞がちょっと浮いてるから。京都弁ネイティブ二人と、京都の学校と撮影所に通ってた富司さんだから言葉的な破綻がなかったのは見事。主演の娘は掘り出し物だとは思いますが、この先がむつかしいね。舞台方面に行っちゃうしか日本では活躍の場がない気がするけど、少し背が足りないから舞台映えしないんじゃないかな? 【shintax】さん [映画館(邦画)] 8点(2014-09-18 17:04:03) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 この映画には二つの大きな軸があります。一つは京都の芸者、舞妓のジャンル映画としての側面。もう一つは方言ギャップコメディとしての側面。それにミュージカルを加えて、かつ違和感なくどちらの要素も充分に描いている、これは大変凄いことだと思います。丁寧な脚本じゃなきゃ絶対にどちらかがお座なりになるか、どちらも半端な出来になることでしょう。 私は濱田岳演じる大学院生と同じく舞妓さんも所詮は水商売の一つと思っていて、キャバクラや接待など、仕事が介在する酒の席は正直気苦労しか感じたことがないので、所謂芸妓さんの世界には興味も憧れも無かったのですが、舞妓さんのお稽古の大変さ、男衆という芸妓・舞妓の身の回りの世話・着付けをする専門の職業があること、なぜ一見さんは断られるのか、舞妓さんのアルバイトを雇わないといけない状況、等舞妓さんにまつわる薀蓄は初めて知って面白かったです。 またミュージカルでありながら、着物でお遊びをする芸妓さん・舞妓さんの美しさはキチンと描いている点が非常に好印象でした。着物で現代的なダンスをする舞妓さんも面白かったけど、要所要所で入る舞妓さんの舞踊の美しさも忘れていない。特に富司純子さんは素晴らしい立ち回りで、その舞踊の一挙一動の艶やかな動きには惚れ惚れしました。まるで上村松園の美人画を見ている様で眼福でした。歌舞伎もそうですけど、ああいった舞踊ってキメがあって見栄を切るから、独特の美しさがありますよね。現代的なミュージカルシーンに安直に混ぜず大正解。 ちょっと残念だったのは主演に抜擢された上白石萌音さんが大変歌が上手であるのに、その歌の尺がやや物足りないこと。特に長谷川博己演じる言語学者への恋を自覚した時に、花街の真ん中で歌うシーン(照明が実に良かった!ただの街がいきなり舞台に変貌する感じ!)は物語上でも重要な筈で、そのスコアも良かったのに結構あっさり終わってしまう。もう少しじっくり歌を聴かせてほしかった。 後はややストーリーが予定調和に進み過ぎる感もありますが、真っ当な青春映画としてはこれくらいが丁度良いかも知れません。芸に厳しい人はたくさんいるけど、真の悪人が一人もいないというのも良かったですね。舞妓さんの魅力を今に伝える良作だったと思います。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 8点(2014-09-14 22:48:21) (良:1票) |