6.《ネタバレ》 12年同じ俳優を使い撮影する。この手法がやはり特別に取り沙汰される本作。この手法がどういう効果をもたらすのか気にしながら観ているつもりだったが、いつの間にかこの世界に惹きこまれていた。
描かれるのはある少年の12年間だが基本的にはアメリカの家族のよくある風景を切り取っているのだろう。もちろん母の離婚など家族や少年にとってショックなシーンはあるがそれもじっくり描くことはせずあくまでひとつのシーンとして流される。そう。この映画ではなにげない、そしてさりげないシーンが流れていくように描かれる。断片と言ってもいい。それが素晴らしい。家族の誰かが泣いたり笑ったりする姿に反応している自分に気づく。それはこの家族のそばにいて自分も体験しているのに近いというのは大袈裟かもしれないが、そう感じるくらい感情移入できていたのだとしたら上記の手法の効果は絶大だ。
母が息子を大学に送り出す日、彼女は嘆く。「こんなにあっけないとは思いもしなかった」と。時間のあまりの早さを嘆くものだが、それは積み上げたものがあるからだろう。積み上げたのはこの映画に描かれた瞬間。いろんなものを積み上げて育ててきた息子は巣立っていき家に残されるのは自分だけ。積み上げた時間が長い人ほどこのシーンに共感するのではないだろうか。特に母親は。
「瞬間とは今」とはラストの会話。なにげない今だがくだらないものではない。それは私たちにおいてもそうだと語りかけているようだ。 【⑨】さん [映画館(字幕)] 9点(2015-04-06 03:30:07) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 12年間の日常が約2時間半に圧縮されたときに、日常がいとおしく輝いてくるという感じの映画なのだろうとは察するのだが、見放題で観てしまったため、ものの数十分で退屈し、あとは10日間くらいかけでぶつ切りで観たため、大切な圧縮感がなくなり、ほんとに退屈な映画になってしまった。こういう観方をしてはいけません。たぶんパトリシアのような親の立場で観ると感動する気がします。6才のときの親子シーンをもう一度観て18才の親子シーンを観るととても印象的ですから。観る側の問題が大きいように思うので点数気持ち高めで。演技はみんな自然で良いです。配管工のように時間を飛び超えて出てくる人がもう少しいたら良かったのに。。 【woo】さん [インターネット(字幕)] 6点(2020-06-03 00:18:58) (良:1票) |
4.「3時間は長いなー」と思ったが、見終わったらあっという間でした。人生って、一瞬、一瞬の積み重ねで、そうして老いていくわけだよね。この映画は、親であるかどうかで見方が変わると思いますが、あとは葬式しかないとは思いたくないな~。 【木村一号】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-02-21 22:43:16) (良:1票) |
3.人物の成長というドキュメントと物語というフィクションが境界なく混ざり合っているので、観る側がそれぞれの登場人物の実人生をも想像し、話しの進行との相乗効果で物語、もっというと人間の人生を味わい深いものにしていた。 またそれぞれの人物が独立して生きていて、物語、他者(親子や姉弟という関係)に奉仕していない。そこもリアリティーに繋がるし、物語自体が常にどこか冷めた視点を持ち、登場人物の誰かしらが批評的な立場をとっているので、視野が狭い甘い話になっていないく話に厚みが出ていた。 その時々のそれぞれの心情、成長の切り取り方も絶妙で、セリフだけでなく、行動、仕草、表情から上手く切り取っていたので、自然に自分自身の人生を振り返り、重ね合わせ、追体験した気分になった。また時には、これからの自分の人生をも想像した。 人生の酸いも甘いも、彼らと体感できる素晴らしい映画だった。 【ちゃじじ】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-10-29 08:58:44) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 12年かけて撮られたそれはフィクションでありながら、一方で少年と姉の成長と周囲の人々の変化がリアルに刻まれ、観客は虚構とリアリスティックの狭間で不思議な感覚を抱きながら、一人の人間の生に寄り添ってゆきます。
少年が大人になってゆくまでの道のりは波瀾万丈ですが、それは主に大人達の言動の影響によるもの。別れた父親に新しい父親、新しい兄弟、そしてまた離婚。そのたびに環境が変化し、少年と姉は波風にさらされます。 子供はただ大人の都合によって翻弄される、それがとても痛く、創作なのに本気で心配しちゃったりして。特に2人目のダンナの連れ子が可哀想で。あそこまでで描写は終わってしまいますからね。
大きくなるにつれて自分の意思から物事が動くようになって、それが自我が芽生える、大人になるという事、だけどそれが必ずしも上手くいくものではない、親という人間も、その失敗の理由も見えてくる、と。
『ハリー・ポッター』やiPhoneといった時代を映す要素を盛り込んでその生を身近に感じさせてゆく、彼の人生のひとときに触れる映画でした。
ただ、そりゃ12年もかければ当たり前に撮れるモノってのがあるわけで、それは映画のマジックとは別のものですから、映画ってモノの力を意外と信じてなかったりする側面があったりするのかなぁ?という気もしました。その有無を言わさない姿勢に天邪鬼な私としてはちとケチを付けたくなったり。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 7点(2015-02-12 22:36:07) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ビフォア3部作のファンとして鑑賞しました。 一言で言えば、やはり3時間弱ともなると長いです。主人公のメイソンが6歳から18歳になるまでのストーリーですが、けっこう時間経ったかなーと思ってもまだ15歳でまだ中学生のシーンだったりします笑。
一方である意味では、人が成長していく過程っていうのは、3時間で語れるものではないということなのかもしれません。ビフォアシリーズもそうであったように、この作品でもリンクレイター監督は、人生のドラマチックな「場面」を映画にするのではなく、ドラマチックな場面を経た「人」を作品にしています。シーンが切り替わるといつの間にか登場人物たちの関係が変化していたり、そうした変化がセリフベースでそれとなく観る者に知らされたりする展開が、映画的というよりは人生的でとても自然です。映画はいつも人生の山や谷を大げさに描こうとするものですが、人生の中のほとんどは抑揚を欠いた平穏な時間のはずで、リンクレイター監督はその事実に逆らわずにこの作品を作っているように見えます。
そのためこの長い作品を退屈に思う人もいるかもしれません。それでも主人公の成長の過程や、折に触れてやってくるライフイベントのシーンに感動してしまう人は少なくないはずです。主人公が複雑な家庭環境の中で大きくなっていく様子や、自分の意見を主張するようになっていく様子、自分の好きなものを見つけていく様子を見るたびに、観客は自身の幼かった頃を振り返ることになるでしょう。こうした描写が観る者に自然に響くのも、同一の役者が長い時間の中で演じていることでなせた技なんだと思います。その事実を思い起こすたびに、12年間にわたって継続して映画に関わってきた多くのキャストやスタッフに敬意を抱かないわけにはいきません。
そしてラストの母子のシーン、(あまり多くは書きませんが)私はかなり感動しました。子供を育てて社会へ送り出したことのある人、今子供を育てている真っ最中の人、あるいは私のように、愛のある親に育てられてきた人のすべてに見て欲しい映画です。 【Thankyou】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-11-23 23:16:04) (良:1票) |