4.クリス・カイルという人物の実人生の最終的な“事実”を知らぬまま、今作を観たので、映画のラスト、敢えて感情的な表現を排除して描かれた「顛末」に対して、虚をつかれた。 そして流れる「無音」のエンドクレジットを目の当たりにして、しばし呆然としてしまった。
このあまりに印象的なエンドクレジットにクリント・イーストウッドが込めた思いとは何だったのだろうか。 戦場の内外で命を落としたすべての人たちに対する鎮魂か、それとも戦争という愚かさの中で生き続ける全人類に対しての無言の怒りか。
いずれにしても、その「無音」の中に何を感じるかということを、この映画は観客に対して問うているように思えた。
この映画は、本国アメリカにおいて政治的な両極端の立場の人たちから、それぞれの思想において賞賛され、また批判されている。 それは両極の者たちが、あまりに利己的に自分の考えをこの映画に重ね合わせ、都合よく解釈している結果だろう。
ちゃんとこの映画を観た人ならば極めて容易に理解できることであると思うが、監督がこの映画に込めたものは、戦争の正当化や戦意の高揚でもなければ、安直な戦争批判でもない。
これは、現在のこの世界に生きる一人の男の「運命」の物語だ。 一人の男が、アメリカという国に生まれ、父親に育てられ、成長し、愛国という名の正義に盲進し、妻となる女性を愛し、戦場に立ち、子を授かり、また戦場に行き、人生に苦悩する話だ。
その一人の男の虚無的な瞳の中に如実にあらわれた戦争というものの真の様。 それは、正義も悪もなく、“それ”を起こした「世界」に対する罪と罰だと感じた。 「敵国」とされる側のスナイパーにも、主人公同様に家族がいるのだ。
この映画で描かれた「事件」が発生してから僅か2年、製作期間としては実質1年余り。 そのあまりに短い期間で、これほどのクオリティーの戦争映画を撮り上げてしまうクリント・イーストウッドという映画人は、その信念の強さもさることながら、やはり「映画」そのものに愛されていると思わずにはいられない。
そして、この映画の「現実」が今なお続くこの世界の“日常”だからこそ、完成を急いだ製作陣に賞賛を送りたい。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 8点(2015-02-21 21:43:18) (良:2票) |
3.クリント・イーストウッド監督のいつもの重いやつ。 個人的にはあんまりこの手の重い作品、得意じゃなくて…。
内容の割りに冗長で、消化不良感。 山場を迎えた後もだらだらと低調で続くのがつらい。 終わり際を見失った頃に、脈絡のない突然の閉幕という腑に落ちなさ。 事実は事実として、映画としての見せ方が何とかならなかったか。 主人公の心の変遷の表現不足とか、弟の話が投げっぱなしとかも。
例の事件とはいえ、アメリカ至上主義・絶対的正義がやや鼻につく。 あと、やっぱり「殺し合い」の映画は見てて気持ちよくない。
後味が悪く、消化不良感で、スッキリせず、重い。 もっと胸を打つ感動が欲しかったです。 救いは、無い。 【愛野弾丸】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-03-22 21:28:06) (良:1票) |
2.実在した人物をモデルにしているわけだが、一にも二にもブラッドリー・クーパーの役作りが光る作品。ラストに実物の写真が出てくるが、劇中のクリスと違和感がほとんど感じられなかったくらいだ。内容はイラク戦争を舞台に「戦争がいかに生身の人間を壊していくか」という古くて新しいテーマに沿って描かれており、その点は「フルメタルジャケット」にも描かれているし、近くは「ハート・ロッカー」にも似ている。敵地で包囲される近代戦の恐怖としては「ブラックホーク・ダウン」にも既視感がある。その意味でとりわけ新しいメッセージは感じられなかったわけだが、最後まで緊迫感を失うことなく物語を展開させ、意外な結末で終わりを迎える構成にはそれなりの見応えがあった。 【田吾作】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-07-13 16:17:42) (良:1票) |
1.核兵器があるおかげで大国同士の全面戦争はなくなったが、こういう風な局地戦はこれからも続いていくんだろうな。これは一見アメリカの英雄を称え国威発揚させる映画に見えて、アメリカ国民に厭戦気分を味あわせる映画だと思った。 【Yoshi】さん [映画館(字幕)] 6点(2015-03-06 10:15:12) (良:1票) |