《改行表示》 9.エニグマ、知れば知るほど怖いくらい。 この映画は余分なこともなく、足りないところもない、素晴らしい映画でした。 ストーリーが事実だったことに仰天し、そして同時に連合軍が勝たせてもらっていたことに、英国がいつまでも「偉大」とされていることに納得。恋の駆け引きが何かを知らない主人公が戦争の駆け引きに勝った。忘れられない一本になります。 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-03-02 12:17:09) (良:3票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 エニグマの解読機、ついに成功! でも物語の焦点はここからでした。 解読して、すぐに対応策を実行に移すと、敵に暗号を解読していることがバレてしまうため、助ける命と見捨てる命を選別。その結果、戦争を早く終結させることができ、多くの人の命を救いました。現代に生きる私たちからすると、その判断の良し悪しよりも「戦争を起こしたこと自体が悪」という結論を下すかもしれません。ですが、その当時の人々にとっては、命を選別することも、この事実を機密事項としたことも、同性愛を犯罪として扱ったことも、すべて「正しい判断」だったのだと思います。 過去の選択を「過ち」と判断するのは、現代という時代性。その価値基準や行為も、数十年後・数百年後から振り返ると「とんでもない過ち」なのかもしれません。正しい判断というのは「時代に合っている」ということなんでしょう。 いつの世も、必要なのは、天才よりも天才を上手に活かすことのできる人なのかもしれませんね。アランのような天才的頭脳を、この時代は「暗号解読」にしか使えなかったバカバカしさ、同性愛者ということで心身をボロボロにされて、果ては自殺させてしまう愚かさ。 いろいろなメッセージを、興味深くしっかりと感じさせてくれる本作品は、映画として非常に優れていると思いますが、個人的には、彼の功績が後の社会に大きな影響を与えていることの救いよりも、時代の巡り合わせが悪かったとしか言いようのない彼の人生の哀しさがズッシリと胸に残り、重苦しい気持ちにさせられました。 【ramo】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-03-05 18:39:11) (良:2票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 映画のラストでは、チューリングの悲劇的な死は直接描かれず、書類を燃やす映像に重ねられるテロップでのみ示されます。 勿論、書類が焼かれているのは、直接的な理由としては「用済みの極秘書類だから」ではあるのですが、それにとどまらず、このシーンには独特の楽しさと果敢無さが漂っています。一つの大きな仕事を成し遂げた後の、ひっそりとした有終の美。「個人的なお祭り」とでもいいますか、ちょっとキャンプファイヤーみたいなイメージから来る楽しさ。しかしその一方で、この映像にはナチスの焚書のようなイメージも感じられて。後にチューリングが同性愛を理由として社会的に抹殺されたように、ここでは彼の業績が、燃え盛る炎の中で消されていく、という果敢無さと哀しみ。 アラン・チューリング個人をコンピュータの始祖みたいに言うのが適切なのかどうかはちょっとわかりませんけれども、チューリングと言うと、ゲーデルの不完全性定理の「後日談」的に紹介される、チューリングマシンの停止問題(ゲーデルが因数分解の一意性を用いてあらゆる命題をゲーデル数に置き換え、対角線論法によって不完全性定理を証明したように、チューリングは対角線論法により、計算機が計算を完了しうるか否かを完璧に判定することはできない、ということを示した・・・超曖昧でテキトーな理解です、間違ってたらゴメンナサイ)、あるいは、AIの注目度が高まってる昨今では、チューリング・テストなどによって、名前を耳にする機会がありますが、我々庶民からすると、浮世離れしてて、どうもピンと来ない。 しかし実は、浮世離れどころか、我々の今があるのももしかしたら、彼の抹殺され(かけ)た業績、戦時中の暗号解読のお陰かもしれないのだよ、というオハナシ。これとは別途、暗号解読されまくって大勢の命が失われた日本の立場からすると、複雑な気持ちも無いでは無いけれど、それはともかく。 主人公を無闇に美化したり逆に過度にエキセントリックに描いたりすることなく、ちょっと風変わりで周囲になかなか溶け込めない人物の、いわば「居場所探し」みたいな物語として、映画は彼を描いています。しかし、戦時中に自分の居場所を見つけた彼、社会もまたその才能に多くを負ったはずの彼を、戦後、社会の一方的な価値観が追い詰めることになる、という皮肉。 映画は、子供時代、戦時中、戦後の時間軸を行き来して描いており、見てて混乱するという程ではないにしても、戦時中と戦後とはもう少しうまく描き分けて欲しかった気もするんですけどね。しかしこの構成自体は対比として効果を上げており、見応えのある力作、であることは確かだと思います。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-09-14 09:19:52) (良:1票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 暗号キーが毎日変わる上に暗号元の平文の内容が分からないのに 解読する為に論理回路もそうだし 平文が正しい文章である事を解析する為の構文解析が必要だから 絶対無理だよなぁって思いながら見てました。 手でこれをやると結果を見て文章だと分かりますが 機械にはわかりませんからねぇ。 今ならGoogle翻訳使えばよいですが。 なので、定型文がある事を気づいたシーンは あぁー、これなら総当たりでいける。 と、個人的にかなり熱い展開でした。 で、そこで終わると思いきや それを全部使わう事によるリスクにすぐ気づくのが あぁーなるほどって感じでした。 確かにばれたら詰みますね。 高校野球でサイン盗むが問題になるのも やりすぎるからですからねぇ。 で、その後のパートはだいぶ重すぎて なかなか爽快感のある終わり方ではなかったですが、 途中の展開はかなり好みの映画でした。 ってことで8点で なお、コンピューターの元はノイマンだけ知ってましたが、 チューニングもそうだったのですね。 【シネマレビュー管理人】さん [地上波(吹替)] 8点(2019-07-22 21:10:18) (良:1票) |
5.「誰も想像しない人物が、想像しない偉業を成し遂げる」に始まり、「ドイツは愛で戦争に負けた」とか、「運が良ければ2度と会うことはない」とか、「あなたが普通じゃないから、世界はこんなにすばらしい」とか、そしてラストの「今、我々はそれをコンピュータと呼ぶ」まで、セリフの1つ1つが実に洗練されていてグサグサ来ます。派手なドンパチのシーンより、言葉の選び方が強い印象を残すこともある。文句なく秀作。 【眉山】さん [インターネット(字幕)] 9点(2017-03-04 03:10:29) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 中学時代に母親にシネスイッチ銀座へ連行されてイギリスのホモ映画「モーリス」を見て以来、イギリス人のホモ文化には違和感のない私。 いやそれ以前に、小学生からリアルタイムファンだったボーイジョージもジョージマイケルも同性愛だったし(ファンとまではいかないがクイーンのフレディもエルトンジョンもそうだし)大学の卒論でとりあげた英文学者モームも同性愛(厳密に言えば両性愛だが)だし(ついでにオスカー・ワイルドも同性愛だし、「モーリス」書いたE.M.フォースターも同性愛だし)とにかくイギリスは同性愛者で成り立ってるんじゃないのかとさえ思うほどにイギリスの同性愛に違和感のない私。 そんな私から見ると、この映画は、”叶わぬ初恋を引きずり、亡き恋の相手の後を追ったホモ男の生涯”という見方もできる。 学校で初恋をした、暗号が得意な男子生徒クリストファーは心打ち明ける前に病死 ↓ そのトラウマを引きずりながら大人になると、手がけた暗号解読マシンに亡き初恋のクリストファーと名づけ彼の幻影を復活させる ↓ 戦後にそのマシンが極秘作戦の証拠として残らぬよう破壊を命じられたが「ボクのクリストファーを殺さないで!」と言わんばかりにコッソリ自宅保管 ↓ ホモ有罪判決を受け「服役で部屋にいるクリストファー(というマシン)と離れるのイヤ!」と言わんばかりに、服役代わりのホルモン治療の刑を受け入れる。 ↓ でもやっぱりホルモン療法で同性愛癖が消されたとして、それでクリストファーへの想いまで消えてしまうなら、「今クリストファー(というマシン)と共に命を絶つほうがマシ!」と言わんばかりに自殺し、天国にいるクリストファーのもとへ昇天 といった流れである。 この物語は 「へー、エニグマ解読マシンてのがあったんだー」 「へー、開発して有効利用されるまで紆余曲折があったんだー」 という表面的な”しらなかったー”、”おもしろかったー”だけではすまさせない、開発者が同性愛であるがゆえの、もうヒトヒネリなドラマ性が、単調で終わらない面白さを生み出していると思う。 この映画がただの暗号解読マシン開発者の奮闘話だったら5点だったけれど、同性愛要素が入ってひねりがきいていたので7点である。 ちなみに映画冒頭で盗難にあった彼の部屋で彼が青酸カリを掃除してる場面があったので、ひょっとして自殺は青酸カリかな?と思って調べてみると興味深いことにやはり青酸カリで、しかもベッド脇にかじりかけのリンゴがあったことや、彼が「白雪姫」の毒リンゴを模した自殺をほのめかしていたことから、リンゴに塗った青酸化合物を口にしたのではという分析があるらしい。 とすれば、彼は同性愛の男としては”女役”(同性愛でもやはり男役と女役の役割分担がある)として、自分をいじめから守ってくれた”男役”クリストファーを愛していたのだろう。 「リンゴをかじって死んで、次に目覚めたときには目の前に王子様(クリストファー)がいるはずだわ」なんて、乙女な思考だったに違いない。 アランはリンゴを口にする前に、暗号解読マシン(クリストファー)にそっと最初で最後のキスをしちゃってたかもしれない。 【フィンセント】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-22 14:17:04) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 アラン・チューリング。浅学にして”コンピュータの父”と呼ばれるこの人のことを知らなかった。人類の発展にこんなにも寄与し業績を残したのに、大戦中の軍事機密に関わったゆえ秘匿扱いにされた。挙げ句 彼に対する国家の余りに不当な仕打ちにはこの映画の製作に立ち上がったスタッフのみならず、作品を観賞した外国の一市民のワタシも憤激のあまり涙が出そうになった。 B・カンバーバッチの精魂込めた丁寧な演技が素晴らしい。変わり者でクセがあって協調性は皆無だが、悪意なく正直で生真面目なアランの人物像を見事に立ち上げていると思う。ちなみに彼の少年時代の役者さんもなかなかの好演だった。 K・ナイトレイも知的でウィットに富んで素敵な女性だった。”仲間に頼る”ことの大切さをアランに説き、傍にいてくれた。どうしても添い遂げることの叶わぬ二人だったけど、アランの人生に彼女がいてくれたことに感謝したくなった。 エニグマの暗号を解くまで、解いた後、さらにその後のアランの人生を周囲の人間模様と絡めて重厚なドラマにまとめあげた。胸にずっしりと溜まって、忘れ難い作品だ。 【tottoko】さん [映画館(字幕)] 10点(2015-06-28 23:56:34) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 エニグマを解いた後のほうが、人の生き死にのジレンマに翻弄される。その様子が興味深かった。 【no_the_war】さん [映画館(字幕)] 7点(2015-03-20 23:34:25) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 アラン・チューリングという人物も知らないし作品の情報もあまり入れずに観たが面白かった。 エニグマの解読にここまでの苦労があったとは…、そして解読するためにチューリングが作り上げたあのマシン。まるでコンピュータだと思っていたらやっぱりそれの原型だったんですな。しかし、そのマシンに「クリストファー」と初恋の人の名前をつけるのは怪奇映画みたいな話。まあ「モンスター」と言われたのは作った本人だったが。 解読に成功してもそれでめでたしとはいかない。解読した情報の取捨選択、情よりも効率や効果を優先しなければならないところがつらい。MI6が二重スパイと知りながら泳がせていたことも驚いた。戦争とは情報戦なのだ。 しかしこの映画で印象的なのは孤独だった彼が同じ目的の仲間と出会い心を通わせても、結局孤独のまま死んでいったところだろうか。同性愛者にはあまりにも生きづらい時代。戦争という時代によって功労者にもなった彼が結局時代に殺されていく。なんともやるせない。 ベネディクト・カンバーバッチやキーラ・ナイトレイの演技も良いが、マーク・ストロングの渋い雰囲気も良い。エニグマ解読と平行して学生時代や戦後の話が何度も挟みこまれるが混乱もせず良い効果を出せていたと思う。娯楽映画としても伝記映画としても秀作な一本だ。 (それにしても公開館数の少なさはどうにかならなかったのだろうか。アカデミー賞効果で増えるかと期待したが、結局地方に住んでいる自分はいつもの3倍の時間がかかる映画館へ行くハメになった。近所の映画館がアカデミー賞受賞作を一本もやる予定がないことに絶望している昨今である。) 【⑨】さん [映画館(字幕)] 8点(2015-03-15 14:42:35) (良:1票) |