《改行表示》 9.《ネタバレ》 すごい映画だ。勢いがあってテンポもいい。緊張感も抜群。終盤の盛り上がりも稀有なものだし、こういう瞬発力のある映画はもしかすると映画の理想系なのではないかと思わせるくらいだ。監督が撮影当時28歳だったのは驚きだが逆に若いのが功を奏したのかも知れない。歳をとって落ち着いてからではこういう映画は撮れない気がする。 天才はどうやって生まれるか。血の滲むような努力とありえないほどの困難に直面しなければならない。かどうかは知らないが少なくともフレッチャーはそう信じている。彼には自分の手で天才を生み出すということしか頭にない。主人公のニーマンはそれに喰らいつく。ガールフレンドを捨て練習に没頭する。彼には友人らしき人間がいない。親類をも罵倒する彼はドラムで大成することしか頭にない。それが成就するなら孤独に早死にしてもいいと思っている。だからフレッチャーのありえないしごきにも喰らいつく。彼は恐ろしい人間だが自分を高めてくれる存在と信じたからだ。この二人には我欲しかない。ニーマンは間違いなくフレッチャー側の人間と言える。普通の人間からすれば二人ともクソ野郎だ。 終盤のフレッチャーの梯子を外すような行動。恐ろしい。あんなことをされたら常人なら一瞬で消し飛ぶ。あれはしごき?それとも復讐?結果的にニーマンはありえないほどに追いつめられあのラストが生まれる。見送った父は何を思うのだろう。過保護とも言える父の抱擁から離れた後あのラストが生まれる。あのラストの後この師弟がどうなったかは知る由もないが、あの一瞬だけはあの一瞬だけは二人は望んだものを手にしたのだろう。 【⑨】さん [映画館(字幕)] 9点(2015-04-28 02:07:59) (良:5票) |
8.《ネタバレ》 ジャズってなんかプレイヤーたちが感性に導かれるままにフリーダムに演奏するものだと思っていましたら、ビッグバンドになるとまるで交響楽団みたいにガチガチの指揮になるんですね、ほんと知らなかった。このフレッチャーという男は鬼教師なんて次元を超越してエゴの塊みたいな悪漢というレベルです。指揮者や映画監督などの巨匠たちは、黒澤明や溝口健二の例を出すまでもなく自分が芸術と信じるものに対しては絶対妥協しないものですが、この映画でのフレッチャーにはストイックさと同時に人間としての嫌らしさが前面に出ていて実にリアルなキャラです。ニーマンを三時間も早く呼びだすなんてもう単なるイジワルとしか思えないし、教え子の死を伝えるにしても自分に都合が悪いとなると自殺を交通事故だと偽るし、実際こういう人よくいるんですよ。この二人は、良く考えると物語の中盤からはもはや師弟ですら無くなってるんです。フレッチャーは復讐のためにニーマンをフェスに呼ぶし、ニーマンの方はもはやスカウトされるという目的などどっかに吹っ飛ばしてフレッチャーにひと泡吹かせるためだけにドラムリズムを機関銃みたいに浴びせかける。これほどムダを削ぎ落して男同士の対決というかケンカを見せてくれる映画というのも珍しいです。ニーマンという男の描き方も、自意識過剰だし酷い仕打ちをした元カノに自分が苦境に落ちるとすり寄ったり、この平凡な弱さがとてもリアルです。 そして何よりも気に入ったのが、観客の総立ち喝采なんてクサイものをいっさい見せずあのタイミングで暗転させる閉め方です。なにも語ってはいないけど、きっと元カノは観に来なかったろうし二人は決して和解はしなかったんだろうと確信しています。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-03-15 23:18:04) (良:4票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 CGオンパレードのドッタンバッタン巨大予算映画の100倍のド迫力! 血と汗にまみれて、最期は最高の演奏で師匠と感動のハグ!というアメリカ人が喜びそうなラスト・・・じゃなかった。 別れた彼女、実は新しい彼氏などおらず、客席のすみでステージを見つめて・・・いなかった。 凄い吸引力!素晴らしい作品! 音楽通らしき人が、あれこれ言うのは筋違い。 若い監督の今後の作品に期待。 【ブタノケ2】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2015-10-01 18:57:59) (良:4票) |
6.《ネタバレ》 ○まるで映画自体がフレッチャーのように飴とムチ(と言ってもムチメインだが)を巧みに使ってくる。○鬼教授のフレッチャーの厳しさに対し、たまに顔を出す恋愛要素と父親とのシーンだが、そちらも徐々に緩衝材としての役割を失い、どんどんフレッチャーに支配されてくる。○そのフレッチャーに対峙するあか抜けない主人公というのもグッド。○こちらのアドレナリンも全開になりつつあった発表会での失態からどう展開するかと思えばまさかの再会。○再び訪れた発表会でのフレッチャーのえげつない仕打ち。意地とかプライドとかを凌駕するラストの演奏シーン。これほどまでに惹きつけられ、かつこっちまで疲弊してしまうような演奏シーンはかつてあっただろうか。○なかなかオシャレな音楽こそ流れるが、そのおしゃれな音楽を作り上げるまでの泥臭い、汗の滲む努力が感じられる。主演・助演の二人の演技にも脱帽。 【TOSHI】さん [映画館(字幕)] 9点(2015-07-27 21:39:09) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 まあ、すごいですよね。見終わった時、映画で過去に味わったことのない感覚を覚えました。 こういう種類のカタルシスがあるのかと… 鬼教官の時折見せる人間らしさが、狂気を引き立たせるだけでなく、この先どうなるんだろうと気になっていきグッと映画に入り込ませてくれます。入り込んだまま、息もつかせずあのラストの展開。 忘れられない1本です。 【ハービィ】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2018-06-10 00:12:16) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 中学生とか高校生ぐらいの人に是非見ることを薦めたい映画。 この先、生きていくうえで、望まずとも上下関係や師弟関係でフレッチャーとニーマン(自分)のような人間関係が生まれる可能性はいくらでもある。 その時、自分ならどうするのか・・・ニーマンのように一度は折れたけど立ち向かうという選択も有りだし、劇中の生徒のように死んでしまうぐらいなら逃げるという選択も有りだしなんだと、いざとなった時どうとでも立ち回れるぐらい柔軟に考えられるよう、こういう状況に置かれた時の事を一度じっくり考えてみるきっかけとして見るなんてのも有りだと思う。 ぐだぐだ書いたけど、フレッチャーこえ~(笑)って感じで見ても、普通に面白いです。 【Luckyo】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2016-09-20 00:19:00) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 「セッション(ウィップラッシュ)」。 ドラムの猛烈な連打に始まり、廊下の向こうでひたすら打って打って打ちまくる青年の演奏からすべてが始まる。 扉は誰かが聞きに来るのを待っているかのように開け放たれており、音に誘われ接近する存在、師と弟子…いや音楽のために争い憎み合う宿敵同士が出会うのである。 男が上着を脱ぐのは暑いのではなく魂に火がついたことを告げるため。 夢が詰まった写真に想いを馳せ、恋人たちを羨み実力が中々認められない方が幸せだったかも知れない日々。 選ばれ勇気を出した途端に笑みがこぼれる手応え。ニーマンはただ音楽が好きなだけだったのに。だがその「音楽」が彼を狂気のドラムマシーンへと変えていってしまう。 クソ野郎は嘘つき、向うからやって来たチャンスは地獄への誘い、薄暗さが息苦しさを伝える練習場所、秒針が揃った瞬間に黙り視線を避け静止する演奏者たち、張り詰める緊張。 機関銃の如くツバと暴言を浴びせまくる鬼教師フレッチャー。打ち震わせながら両手を振り上げ、椅子を投げ付け、平手打ちを浴びせまくり、ドラムを投げ飛ばし蹴り飛ばし、大恥をわざとかかせて精神的に追い詰める。「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹もここまでしねえ。 かと思うと涙を浮かべて悲しみ寂しげな姿を見せたりもする。その二面性が怒りを爆発させ襲い掛かる恐怖をより引き立てるのである。 ニーマンも青春、友情、恋愛、学生生活…すべてを破壊するようにドラムを叩き続ける。無数の弾痕の様に刻まれたドラムスティックの痕。彼がBフラットで締め、打ち込めば打ち込むほど周囲の人間への関心は希薄になり、恐怖に怯える群衆の一部と成り果てる。 フレッチャーの生徒たちが他人を責めるのも「自分が殺されるではないか」という恐怖からだ。犯人がわからないというのが一番怖い。みんな巻き込まれるのが嫌だから敬遠し、奏者たちの孤独が加速していく。 手や指をマメだらけにし、それを絆創膏で潰すかのように貼り付け、痛みに耐えながら音の一つ一つを肉体に刻み叩き込んでいく。怒り狂いドラムを叩き壊し、血まみれになろうが氷水の中に手を突っ込んで冷やしてまで打って打って打ち続ける。リチャード・ブルックス「最後の銃撃」を思い出すような狂い振り。 家族の団欒も罵り合いで台無し、映画を親子で見ても気分はそれどころじゃねえ(ジュールス・ダッシン「男の争い」の音楽がちょろっと聞こえてくるだけ)、トラックとぶつかり血まみれになろうがこの音楽キチガイを止める事はできない。 不意に現れるライバルと過酷なドラムス争い、喪服のように彼等を包み込む正装、動かない手を無理やり動かし続けようとする痛ましさ、涙、滝のような汗、シンバルに飛び散る鮮血を流し自らを燃やし尽くす壮絶な演奏。音楽を楽しんでいる余裕などない。 野郎を黙らせてやる!俺の音楽で叩きのめしてやる!!ブチ殺してやる!!!…そんな憎悪すら感じさせる。 すべてを失い氷の様に冷め切った姿、思わぬ再会、謎の密告者、悪魔の誘い、席に座った瞬間に戻り出す感覚と手応え、騙し討ち、追いかける者、見守ってくれていた者、クソッたれへの反撃の合図!それに演奏で、シンバルをぶつけて、目玉をくり抜くどころか手助けし、真剣な眼差しを送り、上着を脱いで応える!! 理由なんてもうだうだっていい、誰のためでもない、ただただ音楽が大好きだからこそ笑い、演奏を、指揮を続け、肉体の、魂の、すべてのエネルギーを注ぎ込む。 キャメラはそんな男のドラムスティックを追いかけ回し、楽器が生き物のように力強く動く様を、雨の様に注がれる汗をフィルムに刻む。 ●セッション(短編) 長編「セッション(ウィップラッシュ)」の原型となった短編。 ドラムと無数のスティック痕、扉から近づく者の姿、おもむろにシンバルを撫で椅子に座る。そこには期待と夢を見る青年の笑みが浮かぶ。 雪崩れ込む演奏者たち、挨拶、Bフラット、秒針が合わさるとともに姿勢と視線を正す。 上着を脱ぎ、視線を交え指導が始まる。 唖然としてページめくりに遅れ、水を吹き出す楽器、汗を流す奏者たち。 部屋の白さがまだ息苦しさをあまり感じさせないが、視線を合わせないのは恐怖の現れ、追い付こうと必死に楽譜と睨めっこ、アドバイス、自信を持たせるようなことを言って徐々に苛烈になっていく指導、椅子を投げつけ暴言とツバと平手打ちを浴びせまくり徐々に息苦しく胃のキリキリするような空間に。 厳しい現実の前に涙を流し途方に暮れる青年…しかし本当の地獄はここからだった。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2016-08-24 16:15:59) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 これぞセッション! いや パッション!! なりっ!! 【午の若丸】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2015-10-28 21:36:17) (良:1票) |
1.ホラーではないのですが、それくらいの緊張感と100分の上映時間がちょうどいい作品です。お金を使った壮大な作品も映画の醍醐味だと考えますが、この作品を見て思うことは、けしてお金をかけなくても、心に響く作品が出来るのだと痛感させられるということをです。終わった時に拍手がおきたのは初めての体験でした。 【naniwahito】さん [映画館(字幕)] 9点(2015-05-13 11:16:47) (良:1票) |