5.《ネタバレ》 舞台は南部アトランタ。50年代から70年代にかけて、ユダヤ人の老婦人と、黒人の運転手との交流を描いた作品です。ミス・デイジー役のジェシカ・タンディと、ホーク役のモーガン・フリーマンの素晴らしい演技で、忘れられない佳作となっています。それを評価した上で、私は敢えてシナリオに苦言を呈したい。頑固なデイジーが、徐々にホークを受け入れていき、かけがえのない親友となる、というのが物語の肝です。ラスト間際では、「キング牧師の夕食会」→「館でアルツハイマーにかかったデイジー」→「老人ホーム」とシークエンスが続きます。夕食会では、お互いの理解がすれ違っていました。一方老人ホームでは、人種という枠を越えて「老い」を共有した二人が、気持ちを通じ合わせます。この流れにおいて、館のシーンが特に重要なのは明らかです。ところが、錯乱状態にあるデイジーにかけるホークの言葉は、「金持ちで幸せ」「精神病院に入れられる」という月並みなもの。ここは、20年以上彼女と一緒にいた、ホークならではの言葉が欲しいところ。デイジーの身をおもんばかり、彼女が幸せであることを冷静に諭してこそ、「お前は一番の友達よ」という言葉が生きるのではないでしょうか。デイジーがその後に発する上のセリフは、錯乱状態がまだ継続しているようにも解釈されるので(興奮している老人は、感情表現がおおげさになりがちですから)、効果が薄れてしまっています。残念です。 【円盤人】さん 5点(2004-02-13 20:57:26) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 今日はじめて観た。いろいろと思い出してしまってまとまらないので得点のみ。(以下2004/2/7追記)攻撃材料を与えることになるので奥さんには絶対に見せないほうがいい。なにしろこのストーリー、使用人を雇えるくらい裕福な男の妻になっていれば、自分は姑の面倒を全くみなくてもうまいこと回っていくという、この国のほとんどの嫁が憧れを抱く、まさに夢のような物語なのだから。 【南浦和で笑う三波】さん 10点(2004-02-05 22:30:53) (笑:1票) |
3.人生短いんだから、色々な事をしたいと思う。色々な人と知り合いたいし、たくさん旅行に行きたいと思う。でもこの映画を見ると、一時の感傷かもしれないけど、大切な人と、自分の住む場所を愛し、日々がごくありきたりである事に感謝する生活の美しさに憧れてしまう。モーガン・フリーマン演じるホークの生き方に、とても感銘を受けた。あまり上品ではないし、時にはチクリと言い返し、案外狡猾だったりするのに、その人格は愛に満ちている。また柔らかな光が、落ち着いた色調の建物や車、庭の草花に美しく反射する映像の美しさも格別でした。「友情」と平行し、「老い」「差別」といった重いテーマを扱っていながらも、カメラとコミカルな台詞まわしで常に明るく描いた作風にも好感が持てた。地味な作品だけれど、大人の観賞に耐える名作だと思う。 【ともとも】さん 9点(2003-12-18 12:23:17) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 いろんなところで笑ってしまった後で、いつしかそれが涙に変わっていくという卑怯な映画。派手な映像や凝った設定がなくても、人の心の動きや変化が的確に表現できて、それが見ている側に伝わったら、感動は生まれるのです。文盲の問題や黒人差別の問題など、ベタな演出をしたらいくらでもできたと思いますが、この話の中心的主題はそんなところではないし、あえてそれをせずにこのレベルに達したのは素晴らしい。人物については、デイジーおばあちゃんは救いがたいほど頑固なのに妙に憎めないし、ホークの方も、単に有能なだけではなく、言動は結構俗っぽいところが面白い。最後、ボケたデイジーがホークの手を握るところでいつもぐっときます(2人の身体が接するのは、この場面だけなんですよね)。 【Olias】さん [映画館(字幕)] 8点(2003-03-12 00:32:36) (良:1票) |
1.‘89年アカデミー賞受賞式を前に、映画評論家たちが集まり予想会を行っていた。凡そは本作を挙げる中で、水野晴郎氏だけが「7月4日に生まれて」を候補にしていた。理由は“体制がそうなっているから”だそうだ。あまり頭の良い評論家では無いが、珍しくこの時だけは水野氏に賛同した。自分も「7月4日~」が取るはずは無いと思っていた(?)。賛同すると言うのは、「ドライビング~」が他の作品、「フィールド・オブ・ドリームズ」「いまを生きる」「マイ・レフトフット」「7月4日に生まれて」そしてノミネートされなかった「ドュ・ザ・ライト・シング」と比較して、そんなに優れた作品とは思えなかったからだ。老い(痴呆症)と人種問題をテーマにしているが、障害と言う点なら「マイ・レフトフット」には敵わないし、人種問題なら「ドュ・ザ・ライト~」には遠く及ばない。この作品が好きだと言う女性を良く聞くが、個人的には上映時間も100分を切り、ノミネートされた5作品の中では一番相応しくないと思っていたが・・・アカデミー賞としては、主演したジャシカ・タンディが史上最高齢の受賞(80歳)で話題になったが、同時に黒澤明監督が特別賞を受賞し、“老人デー”であったことも事実。もう一つ話題になったのは、ブルース・ベレスフォードが、監督賞にノミネートすらされずに作品賞を獲得したこと。この不名誉な記録と共に本作は名を残すこととなった。例年になくレベルの高い“オスカー取り”をしていただけに残念である。 【☆】さん 8点(2001-02-08 00:35:53) (良:1票) |