6.《ネタバレ》 ロンハワードらしいしっとりとした絵作りで荘厳さを感じる。白鯨との戦いというより、海の厳しさという印象だった。鯨油の時代背景とか捕鯨シーンとか勉強になるシーンも。いまいちメインの飢餓のシーンの壮絶さが映画向けにマイルドにされていた感も。チェイス航海士が最後で白鯨を見逃したシーン。印象的。畏敬の念を払ったんだろうかと解釈。 【タッチッチ】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-05-04 12:14:41) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 原作、メルヴィルの『白鯨』ともに未読です。 職業映画を撮らせるとピカイチのロン・ハワードが監督しただけあって、19世紀初頭の捕鯨船の様子が描かれる前半部分はかなり面白くできています。また、エリート家系出身ではあるが経験のなさゆえに見栄を張りたがる船長と、身分は低いものの叩き上げで船員達からの信頼も厚い一等航海士との対立などは月並みながらもよくできており、見せ場、ドラマ、ともに充実しています。 ただし、海難事故を経て漂流が始まる後半になると、作品のテンションは一気に落ちます。職人的な航海士達が知恵を出し合って難局を乗り切るのではなくただ潮に流されているだけなので、ロン・ハワードが得意とする職業映画という領域から外れてしまうのです。飢えの中で人肉に手を出すという展開も作り手が意図するほど衝撃的ではなく、これだけ何もなければ仲間の肉を食うしかないでしょとしか感じませんでした。もっと容赦のない描写ができる監督が撮っていれば後半パートの訴求力はより強いものになったと思うのですが、ロン・ハワードでは無難にまとまり過ぎたように感じます。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-08-10 00:43:48) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 なかなか面白かったです。巨大な白鯨と戦うシーンとかほとんどCGなんだろうけど、映像的にすごく良く出来てました。 こちらのページを見て、あぁなるほどそういうメッセージが込められているのかと納得いたしました。 人間の尽きない欲望。際限なく資源を食い漁る人間に対する戒めのような存在なのですね。 白鯨の目を見た時、なぜオーウェンは戦うことをやめたのか。白鯨の目に映る自分の姿を見て、自分を省みたのかなと思いました。 オーウェンは最初から最後まで見識高い人間でありましたが、ジョージ船長は最初は嫌な奴でしたね。 でもだんだんと変わっていって、最後には彼は真っ当な人間になる。 そういう変化を考えると、オーウェンよりむしろこの船長の方が物語の主人公かなという気もします。 【あろえりーな】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-06-28 21:01:49) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 捕鯨問題で揺れるこのご時世、長い時間をかけて本作に挑んだロン・ハワードに敬意を表したい。 個人的には中々の力作。あの精悍な漢たちをげっそりするほど追い込み練り上げたのだから!
映画は冒頭の海中を突き進む主、男がある宿に訪ねてくるシーンから始まり回想形式で過去の“闘い”について語っていく。 窓の外で手紙を見せ、小説の創作ヒントを求めて瞳を輝かせる若き作家、過去を封印する老人、扉の外でそれを見守る長年連れ添ったであろう妻。
男たちを海に誘う未知への恐怖と冒険への好奇心、生活を支える脂や肉、名声。野望を抱く男たちの船出は、死にゆく者を送り出すような人々の喪服と鎮魂歌で包まれる。
序盤の冒険へのワクワク感。ヒヨッ子船長に船乗りの身のこなしをアピールする対抗意識、船酔いの荒療治、張り合おうと嵐に突っ込む無謀さ、ベテランと新米の対立、船上で人種や身分を超えて海を生きる者たちの競争・意気投合、銛を打ち込んで海を駆けるような狩り。 経験者は語り、未体験への好奇心が海の男たちを狂わせ、復讐者と冒険者たちを引き合わせる。
勇ましいハンティングの後に描かれる血肉の生々しさが、息をしている者の横に転がる変わり果てた無言の船員が、仲間同士で喰らい合った地獄を容易に想像させる。鯨の臓物を引きずり出して脂を得意気に掻き集めていた男たちですらだ。 富となるはずの脂がもたらす“灯り”、近代兵器が何の役にも立たない大自然で人間も鯨も関係なく平等に殺し合い、くたばり果てる。キャメラも激しく動く船乗りたちを追いきれずに振り切られたり波に飲まれたりと忙しすぎてこっちまで酔いそうになった場面も。
そんな極限状態でも腐りきらないプロフェッショナリズム。 野獣の如きむしゃぶりつき、尊厳も何もかも投げ捨てられ失ったはずの男たちが得たもの、求めるもののため、獲物を発見した瞬間に水を得た魚のように息を吹き返す瞬間!そこにはどんな状況でも最善を尽くそうとする意地が彼らを奮い立たせる。
彼らを支えるエネルギーはなんなのだろう。愛する妻が渡したお守り?生き残るチャンスをかなぐり捨ててまで貫きたかったもの?様々な支えが彼らを散々危険を味わったはずの海原に旅立たせてきたのだろう。過去を背負う老人にしても机の上に刻み込まれた地図! 鯨にとっても大勢の仲間を串刺しにして殺しやがった憎っくき仇。何度も繰り返したであろう怒りの頭突きの痕、執念深い追跡。
“あの眼”を見た男は、一体何を思ってすべてを終えたのだろうか。 【すかあふえいす】さん [映画館(字幕)] 8点(2016-01-30 00:34:40) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 「白鯨との闘い」とはなかなか吹っ掛けた邦題である。モビー・ディックとの死闘を描くアクションかと思いきや、この映画で語られるのは「白鯨」のモデルとなった凄惨な海難事件を描いたドラマである。白鯨の課した過酷なサバイバルとの闘いを指しての邦題だろう。アサイラムあたりが「白鯨VSメカシャーク」とかを作ってしまいそうなところ、ロン・ハワードはこれを奥深いドラマに仕上げている。
石油という燃料にあやかる私たちにとって、産業革命を支えた一昔前の燃料のストーリーは充分に通じるテーマといえる。ましてや米国の技術革新によりシェールオイルが増産され、OPECはじめ世界にきな臭い影響を与えている昨今である。この映画においてオイルが示すもの、それと人類との関係性が胸に突き刺さるはずだ。
そもそも本来の捕鯨とは食用に行う狩猟であったはずである。しかし鯨油がもたらす恩恵に気づくと、捕鯨は生活を豊かにするための行為へと変貌した。いかに立派な帆船と言えど鯨油以外を置く場所は無いので残りは海に捨ててしまうのだ。
街の灯を絶やさぬために海洋の心臓部で鯨油を追う。人間の英知を象徴する物が火なら、それを動かす燃料の一つは人間の傲慢である。これを悪とは思わないが、しかし同時にこのような行為に伴う業の深さを忘れてはいないか。知っていても、普段意識したりすることもないのではないか。
そこで白鯨は、鯨油を求める船乗り達に試練を与えた。油はもちろん食べるものもない。ただ一つの渇望は飢えを満たすことである。 生きるために食べる。至極単純ながら苦渋の決断を下さなければ乗り越えられない試練だ。だからこそ再び白鯨と対峙したときにオーウェンは武器を置き、ジョージは自らの行為の業の深さを話したのだろう。
クジラの数も減り、海の果ての宝を求める捕鯨も衰退期に入った。しかし映画のラストには新たな燃料の存在を匂わせる。今度は地の果てまでオイルを求める時代が来るのだ。知っての通り、これは豊かさと同時に人類に混乱や破壊をもたらすことになる代物でもある。つまり現代人も、豊かさに伴うエゴや、それが引き起こす悲劇を、意識せずとも実は知っているということだ。 【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕)] 8点(2016-01-25 13:26:41) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 「白鯨との闘い」という邦題は映画の趣旨からはズレている。白鯨に出逢うまでは海洋スペクタクルを思わせるが、襲われたあとの展開はトラのいない「ライフ・オブ・パイ」だからだ。人間の尊厳と生への欲求を主題としながら、たまに白鯨がタイミングよく出てくるのは中途半端な印象を受けるが、ロン・ハワードの無難な作りで飽きることはない。残念なのは、船や海の描き方が不十分なこと。長い航海に出港する高揚感、美しさと恐ろしさを秘める海の魅力と邪悪さ、そういったものが伝わらない。ロン・ハワードは特に海に興味がないように思える。 【カワウソの聞耳】さん [映画館(字幕)] 6点(2016-01-16 16:33:21) (良:1票) |