24.《ネタバレ》 そうだったんです、ゴジラをリブートする映画作家は日本では庵野秀明しかいなかったんですよ。庵野にゴジラを撮らせる決断を下した東宝には、最大級の賛辞を贈りたいです。そしてたった15億円でこんだけの作品が製作できたってことも、ある意味で日本映画界の偉業だと思います。だって15億なんておカネは、ハリウッドではブラピやトム・クルーズなんかの一人かせいぜい二人分のギャラに過ぎないんですよ。ハリウッドでこれだけの大作を撮ったら、100億円単位の予算になることは必定です。エンドタイトルに延々と流れる俳優たちの名前を観ていると、この人たちのギャラははハリウッドの何分の一なんだろう、と製作費から逆算したらなんか可哀想になってきました。 平成の世にゴジラを蘇らせたらゴジラは何を暗喩する存在になるだろうかと夢想したことがありましたが、この庵野ゴジラはわたくしのイメージを超えるメタファーとして登場したと思います。原発事故や自然災害の象徴とは誰しも考えることですが、このゴジラは日本という国が身をさらす国際情勢をも象徴していた気がします。そういう意味ではまさに究極のシミュレーション映画だとも感じました。ただひとつ不満だったのは、この災害が引き起こした人的損害については映像でもセリフにも言及がなかったことで、どれだけの人命が犠牲になるのかもシミュレートしてほしかったところです。でもいくら庵野にまかせたといってもさすがに東宝もそれはあまりに生々しすぎて、譲れなかったのかもしれません。 「怪獣は皇居を破壊しない」という有名な不文律通り、今回もゴジラは東京駅八重洲口どまりで皇居のある丸の内側には足を踏み入れませんでした。「皇室のことに触れないのではシミュレーションにならない」という意見もあるみたいですけど、私はこれは日本の怪獣映画の文化だし構わないと思っています。それよりも心配(?)なのは独特な日本の政治意思決定がこれでもかと描かれているので、はたして海外の観客に理解されるんだろうかということです。海外上映では字幕付きか吹き替えでしょうけど、あの登場人物たちの緊迫した状況での猛烈に早口なセリフの洪水は、日本人でも圧倒されてしまいます。でもこの監督独特のブラックなユーモアは私にはツボで、途中から表舞台に登場する羽目になった農林水産大臣はおかしくてしょうがなかったです。邦画の大作や特撮映画にはこのユーモアのセンスが欠落していることが常々不満だったので、ここは大変満足でした。 正直これからまたシリーズ化することにはすごく抵抗がありますけど、これで日本の特撮映画に新たな地平が拓けたことは間違いないでしょう。自分でもなんかヘンなんですけど、ゴジラが放射能を初めてまき散らすシーンではあまりの荘厳さに涙がこぼれてしまいました。 【S&S】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-09-01 20:58:45) (良:3票) |
《改行表示》 23.《ネタバレ》 2度目に進化したゴジラが上陸した後は絶望感たっぷりで、「日本ガンバレ、自衛隊ガンバレ」とか思いながら手に汗握って観てたんです。ところがどういうもんですか面白いもので、米軍が参戦してきたとたんに「ゴジラガンバレ、鬼畜米英に負けんな」「ゴジラを倒すのは俺たち日本人なんだよ。出しゃばんなよばーか」と完全にゴジラ応援モードに。そんなわけで背中のビームで米軍のステルス爆撃機が撃ち落とされた瞬間が一番盛り上がったなあ。あれに石原さとみも乗ってれば言うことなしだった。 最後の決戦では、ウルトラマンもミラーマンもモスラもいないから使える物は何でも使う。新幹線だろーが山手線だろーが民間のビルだろーが容赦無くゴジラにぶつけまくる。勿体無いなんて遠慮は一切ない。一国の存亡がかかってるんだから当然だ。こういう問答無用の演出が人気の原因なのかな。でもあのシーン鉄ちゃんたちがどう思ってるのかちょっと気になったりする。この作品観た翌日自衛隊にお勤めの友人にたまたま近所のスーパーで会ってその時に思わず「昨日はご苦労様でした」と言ってしまった。友人目が点でした(実話) 【S.H.A.D.O.】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-09-01 19:13:07) (良:4票) |
《改行表示》 22.《ネタバレ》 なんか全部かっこよかった!庵野監督ファンと言われればそれまでですが、、、かっこいいものはかっこいいし、しびれるものはしびれる!長い専門用語が多い早口なセリフとか、構図とか、演出とか、場所が文字で出てくるところとか、ゴジラが光ったりとか、第一形態からの第四形態とか、ヤシオリ作戦っていう名称とか、電車が突っ込んでいくところとか、なんかもう全部ツボ!なんですよねー。人はそこに重みがないとかストーリー性がないとか言うけれど、こんなかっこいいだけのもの映画以外でどうやって表現するの?映画だからこそじゃん! だから映画って好きだわ。 【小星】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-31 13:48:15) (良:2票) |
《改行表示》 21.《ネタバレ》 熱い映画だ! これは、庵野秀明氏で無ければ絶対に撮れない作品だ。 もし今後、本作を発端に相次ぐゴジラの来襲により日本のみならず世界が崩壊、その対抗策としてエヴァンゲリヲン製造に繋がる物語が作られたとしても、私は何も違和感を感じないだろう。 劇場で販売していたパンフレットにも記載されているが、この作品を世に出す事が庵野秀明氏に取りエヴァンゲリヲン作製で疲弊しきった心身をリハビリする事に繋がっている事を切に願うばかりだ。 作品の中身に関しては他レビュアー諸氏の熱い記述が既に沢山有るので重複は避けたいのだが、心の琴線に触れる部分は皆さん同じ様でありご容赦願いたい。 ①オープニング CGなど使わないオリジナルに沿ったもの。予想通りでスクリーンを観ながらニヤニヤ。 ②音楽 伊福部昭氏の音楽は偉大で有る事を強く再認識した。 余計な新曲を使わない製作陣の姿勢にも拍手。 ③構成 エヴァと同じ! 嫌味では無く褒めている。東日本大震災で露呈した政治経済の拙さが否応無く反映されている。余分な虚飾を配した分リアリティが感じられた。総理大臣、ご苦労様です。 ④ゴジラ 水生生物からの進化型としての設定は面白い着眼点。いきなりあの様な巨大な生物が二本足でノッシノッシと歩いてきたらやはり興ざめだったろう。 口・尻尾だけ出なく背びれからも攻撃を仕掛けてくるとは・・・ これは庵野秀明氏で無ければ出てこない発想。ゴジラ=使徒、これは確信犯だ。 ⑤放射能への畏怖 オリジナルもそうだったが、東日本大震災を経てゴジラ=放射能に対する日本人の畏怖の念はより強まった筈で、それが作品に色濃く反映されている。 と同時に、人知を結集すれば道は開ける事も描写してくれており、鑑賞していて一筋の光明を見るかの様だった。 ⑥兵器 自衛隊の通常兵器が悉く歯が立たない描写はショックだった。 これで本当の脅威に対抗出来るのか少々心配になった。その一方、電車の活用には新鮮味を感じた。 ゴジラが線路の上に居なければ成り立たない話だが、そこを突っ込むのは野暮だろう。 好き勝手にだらだら書いたが、久々に面白い日本映画を観させて貰ったと思う。 最後に、私は庵野秀明氏のエヴァンゲリヲンは「序」「破」は素直に面白いと思ったが「Q」は大嫌いだ。 冒頭に述べた様に、本作の作成が庵野氏に取ってポジティブなリハビリとなる事により、今後控えているエヴァンゲリヲン次作が、観客に妙な謎掛けをしたり、「判る人にだけ判れば良い」的な作品にならず、「Q」で投げ掛けた巨大な『?』を見事に収拾してくれる作品になる事を心の底から強く願うばかりだ。 【たくわん】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-22 13:19:19) (良:1票) |
《改行表示》 20.《ネタバレ》 ハリウッドよりだいぶ少ない予算でよく頑張りました!大切なのは予算じゃないんですね。ゴジラファン(戦闘機マニア、エヴァファンも含む)をいかにニヤニヤさせる演出をするか!です。再上陸シーン、かっこよすぎー!懐かしのゴジラの声ダァァァァ!!ゴジラが光線はいてるのもかわいい、しびれる。戦闘機かっこいー!自衛隊になりたーい!アメリカの武器すげー!入閣して長谷川博己の隣で働きたーい! 物語を見ながら、あれこれ考えるのはやめにしませんか?ただ、この景色に、音に、溶け込み身を任せましょう!あれこれ考えながら見るより、よっぽど楽しめます。それがこれからの映画です。 政治的な要素も面白かった。あぁ、ゴジラを○○に置き換えたら、日本はこうなるのかなぁと思考をあれこれ巡らせるのも楽しい。あとね、よれよれの疲れ切った長谷川博己が素晴らしかった。疲れれば疲れるほど、色気がはんぱないね。なんすか?あれ。汗臭い?なにそれ、かっこいい。 石原さとみはすっごいかわいいんですけど、大統領候補はさすがに無理があった。可愛すぎる大統領候補、が惜しいのでマイナス1点。(ひがみじゃないよ) 【ギニュー隊長★】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-20 21:45:16) (良:1票) |
《改行表示》 19.なんてパワフルな映画なんだ。本作の作り手たちの、スクリーンからはみ出すほどの気迫に興奮せずにはいられなかった。 制作陣の「面白い映画を撮りたい」という気概が、劇中の世界にいる官僚や自衛隊員たちの「ゴジラから日本を守りたい」という意思にそのまま昇華されているように感じた。 むしろ、「もし、今の日本にゴジラが上陸した場合、政府は、自衛隊は、日本は、一体何ができるのか」を徹底的にリサーチ・取材し、その結果を基に作り上げた映画なのだから、本作に登場する人間たちは、この映画の制作スタッフたちそのものだと言って良いだろう。 人間であることを誇りに思えるというわけでもないけど、人間って凄いなと思った。 地球上のありとあらゆる資源を搾取し、それが枯渇したら新たな資源を自ら作り出す。それによって自然環境のバランスが崩れ、我々は異常気象や自然災害に見舞われる。 しかし、多くの仲間や物資を失ってもなお、我々は立ち上がり、これを乗り越えて、元通りの生活に戻していき、更に資源の搾取を続けていく。 そんな人間の我儘さと気丈さをも描いている(と僕は思ってる)映像作品が、人間に観てもらうためだけに産み出されていること。それを観て心を躍らせている人間(=僕)がいること・・・それらがとにかく異様であるような気がしてくるのだ。人間の歩んでいる歴史の凄まじさに今更ながら驚いてしまった。この気持ち、自分の文章力ではどうも上手く表現できないのだが・・・。 【Y-300】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-18 20:43:38) |
《改行表示》 18.《ネタバレ》 初代「ゴジラ」の素晴らしい音楽と咆哮が“そのまま”響き渡るシンプル・イズ・ベストな黒一色のオープニング。 世界よ、これがゴジラだ…と自信を持って言えるのは、上映からしばらく経って“ヤツ”が真の姿を見せた時である。 それまでは能天気な人々の言葉が大量に吐き出され続け、下から映されるペンの山、画面を覆いつくす夥しい文字、押し寄せ川を上る船、道路を埋め尽くす車、飛び散る瓦礫、一枚一枚揺れ落ちる屋根瓦、振り回される人、人、人の群がその瞬間まで徐々に緊張を積み重ねていく。 石原さとみの人をイラつかせる喋り方と微妙な発音も(ry 画面の黒さも怖さを引き立てる中々のもの。 初代「ゴジラ」が怪獣という「個」とそれに立ち向かう人間の「個」の激突だったのに対し、本作は岡本喜八「日本のいちばん長い日」の如く一つの出来事をめぐり「組織」が混乱し立ち向かう。 会議で高みの見物をし、行動を起こす者の意見は軽くあしらわれ、対策が後手後手に回り続ける苛立ちが、画面の向こうで人々が災厄に見舞われる中で募っていく。喋る人間の言葉やそれを紹介する字幕・説明文も高速で過ぎ去っていく。 この辺の件を見るだけで、庵野たちが喜八の傑作のリメイクを撮るべきだったと思わざる負えない。極端なクローズ・アップが多様されるのはかなりうっとおしかったけど。 一隻の小型艇が海面を漂い、そこに乗り込んだ人々の視点ごと吹き飛ばすように巨大な水飛沫が出現する。 紅く染まる水面、“ヤツ”は気づくと背びれを突き出しながら川を上り、また気づくと地中を這い市街地を粉砕しながら前進を続ける。「キングコング」のように激しくのたうち、眼をギョギョロ動かし、苦しそうに叫び、血を流しながら。 観客は突然現れた得体の知れない存在に「誰だお前っ!?」と会議室の面々と共に困惑し、侮り、警戒を続ける。 ソイツが突然“進化”するように起き上がり、眼を小さく鋭くして立ちはだかるのである。動き続けた物体が急に止まる…次に何をしでかすか解らない恐怖と緊張が画面に奔る。 接近する武装ヘリの一団との睨み合い、、引き金を引く指の動き、警笛は列車の接近を告げるのではなく攻撃を躊躇う“理由”が路上を通過することを予告するため。 そして気づくとまた“ヤツ”は消え、海から黒い姿になって再度現れる!初代「ゴジラ」のように徐々に、ゆっくり確実に進んで来る巨大な体躯、自由自在にうねり市街地を横切り蠢く尻尾が語り掛ける得体の知れない恐怖。 口を引き裂かんばかりに顎を開き、コンクリート・ジャングルの底を走るように吐き出される泥のような爆炎、それが光の束、線となって放たれ戦闘機を切り裂きビル群を薙ぎ払い焼き払う瞬間の戦慄! 今まで喋り続けた人々を、暗闇から静かに迫り来る不気味な戦闘機を沈黙させるような圧倒的絶望。コレだ!コイツだ!一切合切何もかも破壊する恐ろしき災厄の化身!ヤツこそが「ゴジラ」だ!!!!!炎に包まれる東京を背に君臨する後ろ姿がもう最高にたまらない。怖いんだけど物凄くカッコイイ。 ゴジラはどんどん熱を上げていくのに対し、人間側は感情的になるのを押し殺すように冷静に仕事を続ける様子が描写される。一滴の汗を流すことさえ許されないほどだ。 拳をあげて怒りを発する者をなだめるように、激高しそうな者に冷たいペットボトルを突き付けるだけでその姿勢が伝わって来る。万の言葉に勝る瓦礫の中に消えた人々への鎮魂、生きている者に向けた首(こうべ)をたれる礼、祈り。 どんな状況でも闘う者たちは飯を喰らい、水を飲み、食事で出たゴミをまとめ、洗ってないシャツを取り換え、資料を整理してひたすら勝機を探ることをやめない。 政治家は政治をし、記者はネタの取引をし、自衛隊は前線で抵抗し続ける。自衛隊は伝統行事のさだめから逃げられないのである。 アメリカも手段を選ばず、ドイツは一言で快諾して協力してくれる。流石元同盟国! 観客を励ますように高らかに響き渡る鷺巣詩郎「ヱヴァンゲリヲン」の音楽、折り紙が導くヒント、過去の悲劇を繰り返さないために、たとえ放射能で埋め尽くされようがマスクをつけ踏みとどまり立ち向かう! 動くはずの無いビルが、本来人を運ぶための列車が生き物のように敵に襲い掛かる頼もしさは何なのだろう。“切り札”をブチ込む様子もあえて見せず効いているのか?いないのか?と思わせ安心させない演出がバツグンだ。 次のゴジラvs人間を期待させるかのような締めくくり、伊福部の旋律に始まり伊福部の旋律に終わる物語。 【すかあふえいす】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-11 23:00:40) (良:2票) |
《改行表示》 17.《ネタバレ》 なーるほど。エヴァンゲリオン第〇〇使徒「ゴジラ」登場・・・って映画ですね。これ。 これまで種々のアニメーションで、リアルな日本を舞台にして、カッコイイアクションなりSFなりの映画が作られてきて、そのレベルは決してハリウッド映画に劣ることはなかった。でも、それを実写化するととってもダサいことになるんだろうなあ、なんて勝手に思っていましたが、その思い込みは完全に裏切られ、すごい完成度になっていました。正直驚きました。 オリジナルとの違いは、被害を受けた人に殆ど寄り添わないこと。もう少しそのあたりの描写があれば、主人公の作戦前の演説などにも苦悩が感じさせられることができたのでしょうが、だいぶドライでしたね。ただ、オリジナルでは、終戦から9年の時間がたっていたのに対し、今回がまだ震災からたったの5年だから、そこを詳細に描くのは生々しすぎて難しかったか。 【Northwood】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-11 17:55:31) (良:1票) |
《改行表示》 16.《ネタバレ》 酔ってるんで後日書き直すつもり(結局、他の方々同様クソ長くなったんで、別記事にしました)。 極めてメタ度が高い映画で、観客をあざ笑うかのような字幕多用・映画人の理想をぶち壊す説明セリフ85%の展開も心地良い。 個人的には『スターシップ・トゥルーパーズ』と並ぶ多値構成の奇作。 ラスト、そびえ立つゴジラを睨む人々はいない。そう。現実にもいないんだから…。 「真摯なバカ映画」の称号をお贈りします。 最後に、島本組の同世代ゆえに。 庵野先輩やめろおォォ! わあああぁ~~~! …別に俺の下に行ったことはないけど…。 【エスねこ】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-10 01:45:03) (良:1票) |
《改行表示》 15.《ネタバレ》 33年前に庵野秀明が監督した自主製作特撮映画「帰ってきたウルトラマン」を観た事がある方はいるだろうか? その映画のあらすじはこうだ。 「突然地球に降ってきた隕石がしばらくすると動き出し街を破壊しはじめる。その正体は最強と言われる宇宙怪獣バグジュエル。MATの攻撃は全く歯がたたず、ついに熱核兵器を使用する事が決断される。しかし、市街地にはまだ多数の生存者が…」という内容であり、そう!話の骨格は今回のシンゴジラと同じなのである。 「三つ子の魂百まで」とは言うけれど、今回のゴジラは33年前に撮った自主製作映画「帰ってきたウルトラマン」を(意図してか知らないけど)下敷きにして、怪獣を今までの怪獣ではなく一個の巨大自然災害として再解釈し、それに力強く立ち向かっていく日本人を描いている。 実際エンドロールを確認すると多数の取材対象の中に東日本大震災当時最前線で対応していた枝野や、女性防衛大臣経験者である小池百合子の名前が上がっており(つまりあの女性防衛大臣のモデルが誰かは明らか)、当事者に対し真剣に取材を行いリアリティのある日本の行政対応を描こうとした事がよくわかるし、実際「未曽有の巨大災害のときの政府の中はこんな感じなんだろうな」と納得させてくれるだけのものが描かれていた。 逆に言えば今までわりと国際的なコンテンツだったゴジラを、今回は完全に「日本人専用」と割り切った内容になっていて、それは国際的なゴジラはもうハリウッド版があるし、日本では日本人のためのゴジラを創ろうぜ!なんて意図があったんじゃないだろうか? 今回のシンゴジラは日本国内での高評価もあってか海外100以上の国での配給が決まったらしいけど、こんな日本国内用に特化した作品を向こうの国の人が観て面白いなんて思うわけがなく「けちょんけちょん」に言われる事は目に見えている。 しかし、それがいいのだ。 日本人のためのゴジラ。いろいろな問題がある中で日本人が改めて前を向いて進んで行きたくなるゴジラ。 それがこのシンゴジラなわけで、改めて新しいゴジラ像を提示した本作が、東宝社内の事前評判を覆すように高評価されヒットしているのを観るとなんとなくうれしくなるのだ。 一方で、社内試写会でこの映画をけちょんけちょんに言っていたと噂される東宝の幹部の方は…上がそんなセンスしか持ってないから日本の特撮娯楽映画は…と悲しくなってしまうわけだけど。 で、この映画は最終決戦をいきなりアゲアゲにしてくれた爆笑列車爆弾(最高ww)など庵野というクリエイターの色が随所によく出た映画で、そのせいもあって「エヴァじゃん!」と言われる事が多いわけだけど、別に庵野はエヴァしかないわけではないし、巨大な無敵生物を描いたときに同じクリエイターであればどうしても似ちゃう面があるというだけの事だと思う。てかみなさんこの映画についてエヴァエヴァ言い過ぎ。どんだけエヴァ好きなんだ。 一部で「使徒じゃん!」と物議をかもしている意味深な最後のしっぽのシーンは、ゴジラを神と解釈して「神は自分に似せて人を作った」という言葉をそのまま表現してるだけなんじゃないかなぁ、と個人的には思った次第(だから人っぽい姿のものとゴジラっぽい姿のものが入り混じってる) もう一つ書けば、劇中重要なポイントでかかる伊福部のゴジラ音楽の数々。涙が出るくらい素敵な事に、なんとオリジナル版じゃないですか。いまどき劇伴がモノラルとかもう最高!そしてあそこでかかる怪獣大戦争マーチは「もうこの曲しかない」という選曲であって、誰がなんと言おうとこの映画が「ゴジラである」事を高らかに宣言してくれるのだ。庵野と同世代であり東宝チャンピオン祭りでゴジラに親しんだ世代の自分はもう昨日は一日中ずーっと怪獣大戦争マーチの鼻歌が止まらなかったわけだけど、実は今日もそのブームは続いていて、いつ曲が止まってくれるかはまさに神のみぞ知るところなのです。 【あばれて万歳】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-09 09:13:19) (良:6票) |
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《改行表示》 14.《ネタバレ》 最初の上陸シーンからある意味「サプライズ」でした。 しかも悪い方向でのサプライズ・・・見るからにB級映画臭が漂い一気に先行き不安になりました。 結論をいえば、そんな不安は見終えるころにはほぼ吹き飛ばされていました。 とりわけ、夜間シーンではなく、真昼間の映像で真っ向勝負を挑んだことは基礎点が高いといえるのではないでしょうか? 全体として、いま災害や国際情勢などの脅威にさらされている日本の状況が凝縮されていたと思います。 危機に対する日本の無防備さは、あまりにもリアリティがありまったく笑えません。 そして怒られるのではないかというくらいの無能な内閣の描写についても、リアリテイがありすぎて笑えませんでした。 こうした日本の短所を皮肉りつつ、打ちのめされても黙々と立ち上がる日本の長所も忘れてはいません。 最後の作戦に挑む際の長谷川のシーンには、ID4の大統領演説のような派手さはないものの、日本らしい高揚感を覚えました。 ゴジラ自体は単なる脅威として描かれ、その感情すらもよくわかりません。 "敵か?味方か?”という生ぬるい要素は一切排除し、単に人間にとっての脅威という王道を行きつつも、かなり斬新な印象を受けました。 終盤の退治作戦の大雑把さは大きなマイナスポイントに思えましたが、核兵器に頼らず働く車で解決するところがこれまた日本らしい。 荒削りな部分は多々あります。 しかしながら、ハリウッドように莫大な予算を使えない邦画が懸命に挑んだ力作といえます。 ゴジラ続編やハリウッドに常につきまとった「これじゃない」という感覚はなかった、、、拍手を送りたいと思います。 【午の若丸】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-07 16:50:24) |
《改行表示》 13.《ネタバレ》 もっと焦らすかと思いましたが、始まってすぐ大暴れしていました。 ホームドラマ要素を極力避けて、ゴジラシュミレーション映画に徹していたのが良かったですね。 東京のど真ん中で自衛隊が撃つの撃たないのというのは小説や漫画ではよく見るのですが、実写映画で役者さんを使ってやると非常に緊迫感があります。 特に総理役の大杉漣さん。 次々と重要な決断を迫られて気の毒なくらいやつれて行くのが可笑しかったですね。 彼がこの映画の裏MVPであると私は主張します。 【4吉】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-07 16:10:56) (良:1票) |
《改行表示》 12.《ネタバレ》 【初見の感想】「爽快」 1954年の第一作を原型に庵野秀明監督得意の様々なカッコイイオマージュカットの連続。(エヴァ的と批評されるのは、氏に厳選された過去の特撮作品のカッコイイ場面の再構築こそが映像面での庵野スタイルであって氏の各作品の表現がルックス的に酷似するのは当然なのです。特に今回は本家東宝作品だけに、より堂々といつもの10倍増しの大サービスとなっています!) 私にとって衝撃だったのは・・・シン・ゴジラが見ためはゴジラだけれど、ヘドラ的だということ。第一形態は巨大オタマジャクシ(という設定があったらしい)。怨念を持った破壊神を〝進化する化学物質〟のように設定している点もそう。 映画自体の後味が爽快なのは〝如何にも日本人らしい日本人たち〟が不器用だろうが何だろうが最善の方法を考え、寝食さえ忘れて黙々と実行し、闘いに泥臭く勝利する映画だったから。 そして・・・、ギレルモ・デルトロの「PACIFIC RIM」やギャレス・エドワーズの「GODZILLA」が世界的に大ヒットし、あぁ怪獣もゴジラも海外の大資本映画の独壇場になってしまった・・・と伝統の終わりを感じていたのを、庵野監督と特撮の職人達が最後に生み出した、魂の咆哮『シン・ゴジラ』の熱線が見事に焼き払ってくれたからです。 【最終的感想】「映画監督」 ※以下の感想は【それを言ったらオシマイ】的な話です。ネタバレとは違いますが『シン・ゴジラ』について「内容の考察」で盛り上がりたい人に水をさす可能性があります。ご注意ください。 私は、庵野監督のことを「特撮好きのアニメ職人ビジュアリスト」だと解釈しています。 しかも常人と違って、視覚・聴覚的に経験した「傑出した事象」を完璧に記憶し、純度を高めて新たな表現として構成する「再現力」が突出していて、同時にその脳内映像を1/30秒単位で描きだす(=絵にできる)技能を有した、超・映像職人だと。 おそらくですが、氏が創作の喜びを感じるのは「映像を表現すること」それ自体であって、大衆へ向けて「社会的メッセージや思想を伝えることでは無い」と考えます。 只ただ「自分の好きな映像を徹底的に創りたい人」だと思うのです。 さて、シン・ゴジラの膨大な台詞や表現、意匠、ゴジラの造形に「何かの意図やメッセージ性を感じる」のは何故でしょうか? 観客に何かを伝えたいのであれば、劇中で明確に主張するべきではないでしょうか? 普通の映画ならそうします。過去のゴジラ映画もそうでした。その点、シン・ゴジラには何かの意図を感じさせる演出=「不完全に書き込まれた情報」が多すぎます。 これは、明らかに意図した「不完全な情報の提供」です。 私たちは、SNSなどに流れている大量の情報に対して、怒り悲しみ、考え、共有し、自己主張することが日常化しています。国民総批評家のような時代に生きています。 シン・ゴジラの膨大な台詞や意匠、ゴジラの造形の中に、社会的な課題、学術的&オタク的知識、重層的意味を持つ台詞や音楽、過剰な文字情報などなどを「大量の断片情報」として監督は散布しています。 だから映画の鑑賞後・・・まるで試験問題を前にした学生のように、その意図を模索せずにいられなくなるのです。 庵野監督は「持てる限りの手法を駆使した映像」で、観客が映画館で楽しめる作品を創りました。同時に、「埋設した断片情報によるパズルゲーム=思考による考察と議論」で、観客が映画館から現実に帰った後も永く楽しめる作品にしたのです。 しかし、知識量の多い現在の観客が相手ですから、現実的かつ、容易に解決できない問題を準備する必要があり、その為に大変な努力を費やしたに違いありません。そんな過剰サービスを普通の監督はしません。監督業を越えた信念か、オタク魂の成せる技です。(ハリウッドの大資本が作る映像と競うには『知恵と努力と根性で奇跡を起こすしか手が無い』のです) 創ることに全力投球。ですから「正解」まで用意したとは思えません。 そもそも、哲学者でも科学者でも評論家でもない、一(いち)映画監督が大衆に向けて専門外のメッセージなど発信できません。「監督はただ、考えるに足る物語を見せるだけ」なのです。 それは、宮崎駿然り。スタンリー・キューブリック然り。議論される自作について監督たちが多くを語らないのはその為です。「問題を考える材料は映画として語った。後は皆さんが各自で自分なりの結論を模索して欲しい。」それがメッセージです。 これは・・・映画の冒頭で、牧悟郎が残したメッセージ「 私は好きにした。君らも好きにしろ。」と同じことです。 【墨石亜乱】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-07 11:26:12) (良:3票) |
《改行表示》 11.《ネタバレ》 キャッチコピー通り、「日本VSゴジラ」の死闘を描き切った快作だと思う。 ハリウッド映画的な飛びぬけたヒーローはおらず、あくまで官僚”たち”、自衛隊員”たち”、科学者”たち”、政治家”たち”、といった 集団の力の集合が未知の脅威ゴジラを打ち負かすところが何より日本的だ。 やたらめったら集めた「328+1」人の豪華出演者は最初「大丈夫か?」と思ったが、そういう有名人が”端役”となって出てくると 個々にパワーを持った彼らでさえ「石垣の中のほんの一つの石」にしてしまう「”集団”というものの力強さ」が浮き上がってくる。 高度経済成長を象徴する新幹線や在来鉄道車両が自走ミサイルとなってゴジラの足元を崩し、 ゴジラより高くそびえる超高層ビル群が崩れかかってその巨体を押しつぶさんとする。 (62年前、日本の建物はゴジラに踏みつぶされる障害物でしかなかった。今の高層ビル群はまさに 半世紀強の間にゴジラを追い抜いた日本の暗喩ともとれないだろうか?) そして勝負を決めるのは日本が世界に発信する<OTAKU>たちの作戦であり、それを裏から支えるのは日本をしょって立つ 弱腰でありながら老獪な政治家たちだ。 まあ、米軍の力や海外のスパコンを借りたりする場面もあるが(^^;)おおむね”日本という国、日本人の力”が ゴジラという外敵に打ち克ったストーリーは、右翼左翼といった偏狭な考え方とは別の次元で純粋に血をたぎらせてくれる。 この作品に出てくる日本人たちはある部分はリアルであり、ある部分はマンガチックな理想像(フィクション)である。 その両極端な像が絶妙のバランスで融合され、僕にはそれが非常に楽しかった。 日本人として、オタクとして、庵野秀明という才能と同時代に生きられたことを至福に思える120分間だった。 【大鉄人28号】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-04 13:32:37) (良:4票) |
《改行表示》 10.《ネタバレ》 庵野秀明と樋口真嗣がゴジラの新作を撮ると聞いてあまり不安に感じなかった。ビジュアルはそれなりに見せてくれるだろうと思ったし、特撮オタクの彼らが作ってもダメならこれからもきっとダメだろうという思いがあった。いわゆる最後の砦のような感があった。 不安要素は人間ドラマの方だったが今回のゴジラは人間ドラマと呼べるものはない。ゴジラという脅威に対応しようとする人間は数多く登場するが彼らの間にドラマはほぼない。高速で早口で行われる政治家、官僚、専門家の会議ややり取りがただただ積み上げられる。一人一人が積み上げていったものが最終的にゴジラを倒す力になりうるという構成は人間ドラマとしては乏しいが非常にドラマティックに感じられた。偏った作り方だがこれしかないと思えるほど今作にはマッチしていると思う。 「あれ?ゴジラ以外にも怪獣が出てくるの?」とは初めて現れるキモいクリーチャーを目にして思ったこと。進化していくゴジラとは思いもしなかったが今作のゴジラはただただ「異形」。ギョロっとしているが小さな目は何を見ているのか分からない。何をしようとしてるのかも分からない。ゴジラが動く度に緊張感がある。安い人間ドラマが入り込む余地が無い。これは本当にゴジラなのか?使途じゃないのか?いやイデオンじゃね?ゴジラが炎を吐き出す前の動作が良い。吐き出した炎が収束してレーザー状になっていき大惨事を巻き起こす。あのシーンだけでハリウッドのゴジラを吹き飛ばすくらいのインパクトがある。ビジュアルはそれなりに見せてくれるという予想は覆された。見事に期待以上のものを見せてくれた。 石原さとみが浮いているだの、エヴァをゴジラに持ち込んだ感、この音楽まんまエヴァ!等言いたいことがないわけではない。会議シーンの多さに辟易する人もきっといるだろう。だが今の日本でこの作品を作った意味は大きいと感じる。日本に大災害や脅威が起こった場合のシミュレーションとしても楽しめるが、積み上げていくことを否定しない物語は現代日本にとっては希望ある物語だと言える。それと同時に現代日本への問題提起をしている作品にもなっており意外と懐の広い作品になっているのではないだろうか。今作のゴジラは何のモチーフかを考えるだけでも人の心に何かは残るでしょう。今という時代を切り取ったまさに日本にしか作れない「ゴジラ対日本」お見事でした。 【⑨】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-04 01:21:40) (良:4票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 2014年版のゴジラのレビューに、「平成ガメラの後に本来東宝が作るべきだったゴジラ」と書いたのだが、まさに本作がそれである。およそ20年の遅れである。だけど、まだまだそこかしこに嘘くささが残ってはいる。例えば石原さとみ。いろんな人に指摘されていて可哀想とは思うが、頑張ってはいても国を代表している感じゼロなのは悔しい。それでも飛べるはずもない格好した新兵器とか、訳の分かんない光線兵器などは登場せず、通常兵器と驚くべき流用の爆弾と、工事現場でお馴染みのポンプ車を使った「毒殺」作戦は面白い。 また、序盤で小さな川を登ってくるおかしな怪獣は、ゴジラの背びれだけ似せた別の巨大化生物(東宝怪獣映画でよくあるやつ)なのかと思ったら、そこからの進化がゴジラだというのも斬新で良い。 さて、ゴジラといえば「核(兵器)の象徴」という性格付けが付いて回る。今回も核廃棄物を食べた、と言う事になっていておそらくそれ故の異常生物だと。しかしながら、それが核の恐怖に繋がっている感じがないのが残念。周辺の状況はそれっぽい。例えば「直ちに影響はない」と言いながら次第に事態が深刻に推移した現実を茶化すように、専門家が進言する言葉が次々に覆されたりする描写は笑う。いや笑っちゃいけないが。 まあ、そう考えると「固めてしまう」という方策は、たしかに核のトラブルっぽい。所謂内部からの「石棺」であろう。 「逆襲」で人間がゴジラをやっつけたのを評価した自分だが、今回は通常兵器(厳密には化学兵器だけど)で、自衛隊が核の脅威を封じ込めるというのは、なかなか良い展開だと思ったが、よくよく考えるとゴジラはやられてはいけない存在のような気もする。そうしないとゴジラという物語が核批判にならないのではないのか。結果ありきで物事語るのは良くないとは思うが「頑張れば知恵と勇気で核は制御できる」なんてメッセージになりかねないのではないか。それでは原典を否定してしまう。 監督の発言(何かで読んだ)によると、うろ覚えだが「日本もまんざらダメではないゾ、頑張れ日本」というメッセージらしい。それはそれでアリとは思うが、世間(少なくともアメリカ版ゴジラを批判する一部の人達)の期待の反対を主張してしまう。 自分としては、続編『シン・ゴジラの逆襲』であの石棺(血液凝固)が崩れて、再び大暴れするゴジラを期待したい。そうすると、監督のメッセージを否定してしまうかな? 【Tolbie】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-03 18:48:03) (良:3票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 監督!あんたはわかってる。 ゴジラはもとより円谷特撮映画、ゴジラ、ウルトラセブンの本当の魅力ってやつを!逆にわかりすぎちゃって、客に悟られ恥ずかしくならないかな。 ゴジラ、ウルトラセブンの魅力ってのは実はフェティシズムだ。 女性のピンヒールとライン入り黒ストに興奮する輩がいるように、自衛隊の出動、指揮系統のピシッとした言い回し、制服、肩書きそのもの、銃器や兵器の名称やら型番号、自衛隊マーチに代表される音楽。ただそれだけでもある種性的快楽の匂いを感じる変態性的倒錯、それこそが実は円谷ゴジラ、ウルトラセブンの真髄なのである。 他に例を挙げればガッチャマンにおけるベルクカッツェの紅い唇、仮面の忍者赤影の赤い唇などがその付近を狙ったものであることは間違いないであろう。ウルトラセブン変身時の音など、あれでイってた男の子もいたはずだ。男の子向けのこういう特撮には必ずこういう要素が必要なのだ。 このゴジラでは監督がそこを、そこだけをデフォルメして、痒いところに手が届く、フェチどもをイカセテくれる映像を作ってくれた。この映画はフェチ的要素の固まりである。石原さとみの英語、厚めの唇もそれであるし、わけのわからない医学、生物学的用語をまき散らし不気味さを醸し出すのもそれである。このフェティシズムを刺激することに主眼を置いた監督の頭のなかをみてみたい。俺はフェチではない・・・けども。 【小鮒】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-02 23:47:26) (良:5票)(笑:5票) |
7.《ネタバレ》 「邦画史上最高の、CGを駆使したSF・アクション系の映画」だった。ほぼ全編で出てくる肩書きや状況説明のテロップは作品にリアリティを与えることに成功している(まあ、ゴジラが実際にいるわけではないので、現実の再現という意味でのリアリティではないが)。加えて、ゆっくり読ませることなくすぐに消えるテロップは日本政治の事の進め方がいかに手続き重視かということを如実に物語っている。圧巻だったのはやはりゴジラによる東京の破壊の凄さだ。巨大生物が街を破壊するシーンを見て恐怖感や絶望感を味わったのは初めてだ。日本のCGもアメリカに肩を並べるようになったと思うと感慨深いものがある。成長(変態)するゴジラという設定にも驚いた。さらに最後の最後、尻尾がああいうことになっていることにもびっくりした。なるほど、無生殖での増殖ね。いい考えだ。ただ、石原さとみがアメリカ大統領特命大使ってのはいただけなかった。石原さとみが悪いということではなく(英語の発音とか悪いところがないわけではないのだが)、あんな若くてキャリアも浅そうな人間が特命大使になるわけがない。あと、こういうときアメリカは純粋なアメリカ人を派遣するように思えてしかたない。軍やCIAやNSAの動きを簡単につかむことにも違和感がある。そんな若干のアラはあるものの、この映画は絶対に映画館で見るべきだ。こんなに面白くて凄い映画なのに入りが半分くらいだったのは残念だ。受けた衝撃が大きすぎてうまく文章をまとめることができない・・・ 【MASS】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-02 20:31:03) (良:1票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 これは好きな人と嫌いな人が別れるタイプの映画だと感じた。 そして、自分は好きな人の方。 「ゴジラ」という名を関しているものの、内容は怪獣が大暴れするようなものではなくフェイクドキュメンタリー。 日本に正体不明の巨大生物がやってきたらどうなるんだろう?というのを真剣に作った感じ。 誰もが対峙したことがない巨大生物に対抗するため各界のオタクたちが集結!オタクアベンジャーズ結成!もうこの流れで燃える。 そして飛び交う謎の専門用語とハイテンションで芝居がかったセリフ。読ませる気もないテロップ。完全なおいてけぼり感。 …いいじゃん! どうせ、見てる我々は何言われても理解は出来ないし、そもそも現実に存在するような物質でもないだろうから、なんとなくの雰囲気を感じられればいいんです。 多くのモンスター、怪獣モノとの圧倒的な違いとして感じたのは、現場の先端を徹底的に見せたこと。 例えば平成シリーズのメカゴジラ。これはもちろんメインの主人公がゴジラと戦うことが中心となって話が進んでいく。 でも、今作はそうではない。メカゴジラの武器を設計する人、ゴジラに効果的な戦略を練る人、メカゴジラを動かすエネルギーを作る人、メカゴジラの整備・修理をする人…そういった、端の人たちを描いている。 あえて言うなら、みんな主人公。普段、社会の歯車の一つとして特にクローズアップもされない自分は、深く感動してしまった。 今回の映画は対ゴジラはメインでない。ゴジラとどう戦うのか考えるのがメインであって、あとはその通りに進めるだけなのだ。 だから、感動的な逆転劇なんて無い。泥臭く、それでいて一歩ずつ、ゴールに向かって進む…いいじゃん! 気合だとか謎の力だとかパワーアップだとかご都合的な展開が発生するとかより全然いい。 失敗したら後が無い感を凄い感じた。常に絶望感が漂う分、最後の最後に大きな開放感を感じる。 ただ、ゴジラでなくてもよくないか?感はあった。 他の方もおっしゃている方もいますが、使徒だし。巨神兵だし。 最後に個人的考察。 劇中、唯一ゴジラの存在を認識し、独自に研究をした博士がいたわけですが、残念なことに行方不明になった彼がどうなったかは描かれていない。 私はあの博士がゴジラをなんらかの方法で日本に呼んだのだと思う。博士の船の近くにゴジラは現れたし。 日本と放射能に対し恨みを持っていたし、どういう経路か不明ですが、ゴジラに対する有効策も生みだしていた。 それに加え「私は好きにした、君たちも好きにしろ」のコメントである。 過去の負の遺産をゴジラという分かりやすい姿にした、日本人ひいては人類への未来に対する監督なりのメッセージが込められているのかな、と勝手に解釈した。 4DMXで見て正解。 電線を挟んで移動する人目線のカメラワーク、炎からレーザーに変わっていき街が一瞬で破壊されていく描写。 ゴジラの圧倒的巨大さ、残酷さを存分に体感できた。 家で見るより大画面で見ることをお勧めします。 【HIGE】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-02 18:49:13) (良:3票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 1984年「ゴジラ」公開当時にこういう「絵」が見たかった、どうしたらもっと本物に見えるのだろうか、と寝ても覚めても考えていた当時中学生の自分にとっては、庵野・樋口両監督が長い年月をかけて経験を積み、その願いを実践してくれたことにまずは感謝したい。 「シン」の意味は様々あろうが、これが真のゴジラかと言えば、良くも悪くも多くのゴジラの一つのバリエーションであろうと思う。 初代を超えるかどうかという問題は、初代が厳然と存在している以上そのインパクトは誰が作っても超えようがない。 しかし間違いなく3.11を逃げないで踏まえた現代の「ゴジラ」であろうと思う。 自分は最近の表現の過剰な自粛を悲しく思いますし、その中でこういうフィクション性が高いジャンルの映画を傘にして、多くの人が語りにくいことを表現していることがこの作品の最大の収穫だと思います。 非常事態に際して、誰が悪いのか、誰が責任を取るのかという短絡的な指摘ではなく、この国の構造的な問題を客観的に極めてわかりやすく指摘していると思います。(情報が多すぎてわかりにくいという点が逆に役所の本質をわかりやすく表現している) 例えば危機に際して首相が「都民を置いて避難はできない」と啖呵を切るが、その直後の側近の提言でいとも簡単に「わかった」と納得するシーンも実に含みを感じる。こういうやりとりがあったというアリバイがあって避難できるという政治家の腹も読めるのだ。これも避難するための役所の手順にすぎないと自分は感じた。(だからほとんどの政治家に感情移入できないような見せ方になっている) 自衛隊の攻撃はまさに膨大な「手順」の連続である。射撃の意思決定までの手順をこれほど正確に描いた邦画は初であろう。 重大な行動のためには膨大なハードルが用意されているという役所の本質がわかりやすく、非常に勉強になった。 若い人たちには風刺という概念すらないかもしれませんが、こういう切り口で風刺のきいた社会派映画を作る余地はあるのだと感心しました。 ヒロインのカヨコの役作りも自分はOKと思います。上手い下手という以前に、仕事で男性と対等に渡り合える女性はもっと邦画で描かれるべきだと思います。 ゴジラ映画としては多くの方と同じように細かいツッコミはいくらでもしたくなりますが、今回は明らかに怪獣映画という範疇には収まらない内容で、映画のセリフと同じように「日本のクリエーターはまだまだやれる」ことを少し誇りに思います。 【どっぐす】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-02 02:15:10) (良:4票) |