7.《ネタバレ》 「海よりもまだ深く 空よりもまだ青く」。本作のタイトルのもとはテレサテンの「別れの予感」です。人をそこまでに愛することは不可能なのかもしれないが、みんなそんなふうに愛し合っているのかもしれない。他人のワタシには冷凍ヤケしてんじゃないかと心配しちゃう食材を使ったカレーうどんをおかわりしながら食べる家族は、海よりも深く愛し合っているのではないか。父親がしてくれたように、台風の中公園の遊具にもぐって息子といっしょにおやつを食べるのは空よりも青く愛しているからではないか。淑子はいつかこの世を去り、真悟を通じてかろうじてつながっている良多と響子がよりを戻すことはまずない。真悟もいずれは自分の世界に旅立っていく。そこはかとなく別れの予感が漂う中に、それでもぎこちなく愛し合う家族を描いた良作だと思います。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-06-05 07:54:11) (良:4票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 家族の変化、とりわけ父親像の変化。昔なら成り立っていた家族の形が現代では成り立たなくなっている。(それは不満はありながらも、死別するまで夫に添い遂げた樹木希林と阿部寛との別れを選んだ真木よう子の対比に象徴される) そして昔よりも、家庭を持たない個人を許容する事になった社会。 それらを、肯定も否定もすることなく、ただ今ある現実として描き続ける。 是枝監督の映画において「歩く」という行為は大きな意味を持つ。一人で歩くか、誰かと一緒に歩くか、またその時の相手との距離感、歩き方など。 それはそのまま人物の心情、状況、他者との関係性を表す。 今作においても、冒頭一人で歩いていた道を終盤息子と歩く阿部寛。それぞれのシーンのカットは同じアングルから捉えられる。遊具を見るショットも反復して映される。しかし、阿部寛の思いや視点は最初のそれとは全く変わっている。それは、子供の視点から親の視点への変化ともとれる。 食事のシーンにおいては、家族全員が椅子に座り、食卓を囲むシーンはない。ここにも家族の形の変化が見て取れる。そしてうどんを食べるシーンでは、阿部寛は真木よう子の方を向いているが、その反対はない。それは元夫婦の心の距離感、心の向きを表しているように見える。 そして自分なりの夢の形(宝くじ)を、息子に託す父親。 台風という不可逆的で否応なく巻き込まれ、いつの間にか過ぎ去っていくものを人生と置き換えるなら、嵐が過ぎ去った後は晴れるという考え方は、あまりにも都合がよすぎるのだろうか。 【ちゃじじ】さん [映画館(邦画)] 7点(2016-05-27 01:12:36) (良:3票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 阿部寛が良い。そして樹木希林さんが途轍もなく良い。だから終始心地が良い。 ずっと見ていたい親子関係でしたが、117分で終わってしまいましたか 残念、もの寂しい。 元嫁:キョウ子との関係などにしても まだ見ていたい気持ちもありましたが、映画とはいつまでもダラダラと続けてしまってはいけない これはこれでちょうど良いとこでのフェイドアウトになっていたかと思えます。 くたびれた先輩相手に突き放すことなく それが当たり前のように寄り添う心優しい後輩役の池松壮亮クンも良い味出してた。 総じて、懐に余裕が無い家族のお話であり、一万円の大きさやありがたさが分かる真っ当な庶民的観察映画のその代表。 お互いにぼそっと囁く日常会話が多い中、台詞がほぼ完璧に聞き取れ何の不自由も無かった事がまた素晴らしい。 是枝監督作品で阿部寛が樹木希林の息子という設定は2008年の《歩いても 歩いても》に続く第二章。 あれもよかったのですが、これも良い。だが、もう第三章は実現不可能となってしまいましたね 阿部寛と樹木希林さん、複数回に渡って良い親子コンビだった。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2018-10-24 21:33:12) (良:2票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 いいね。と言うボタンがあるなら押したくなるような映画。 皆、日常会話が上手すぎるという不自然になりそうだが実に自然。 阿部寛はプライドを捨てられず見栄っ張りでどうしようもないヤツだが どこか憎めない良さがある。池松壮亮も良い距離感で描かれて居る。 最後のシーンで子供が「宝くじかと思った」と言うシーンが何か好きだ。 【デミトリ】さん [DVD(邦画)] 6点(2017-04-27 00:28:41) (良:2票) |
《改行表示》 3.観終わったあと、少しだけ元気が出た。 僕は23歳の大学生。4年間大学に通ったけど、友達はあまりできず、サークルにも入らず、勉強も適当にやり過ごしてきた。周りの人たちの真似をしながら続けたしょぼい就職活動の末、なんとかとある会社から内定を頂いたものの、なんか自分の人生が気に食わなくて、卒論を書かずに留年し、現在休学中。絶賛親の脛齧り中のダメ人間だ。 そんな自分に、この映画は「ダメでも生きていて良いんだよ」と優しく微笑みかけてくれたような気がした。とりあえずは生きてれば良いんだよ、と。今の自分のために作られたんじゃないかと思うくらいバッチリとハマった。 映画の中で、ダメダメな阿部寛を樹木希林が温かい心で包み込むというような親子関係が描かれているが、ちょうどこの映画そのものが樹木希林で、観ている僕が阿部寛になっている感じだった。不思議な感じだった。でも、そんな感じを味わったのは僕だけじゃないと思う。僕以外にもダメ人間はいっぱいいるはずだ。いっぱいいてほしい。そして、その全員がこれからちょっとずつ幸せになってほしい。なんとなく僕も頑張ろうと思った。 【Y-300】さん [映画館(邦画)] 8点(2016-06-16 00:14:50) (良:2票) |
2.《ネタバレ》 近年の是枝監督作品はかつての小津監督の映画を彷彿させます。共通していることは、「家族」がテーマであることはもちろんですが、特にその時代を象徴する家族の姿を適格に、少しの哀愁を以て描いていること。本作で言うなら、もはや珍しくもないバツイチ 、低収入の中年男、ダンナより稼ぐ女性などは、今よりもむしろ何十年か経ってから、あの当時はこんな家庭が多かったなあ、としみじみ感じさせるような、そんな予感がするのです。 阿部寛の小悪党のようでもあるが、まったく憎めない魅力的なキャラを含めて、登場人物全員、人生の成功者ではないが人間味のある描き方をされていて、それはとても好感が持てました。 人生にも「台風」があるとすれば、それはたぶん離婚だったり死別であったりします。(要するにあまりよい出来事ではないということ) 台風の最中、深い海の底に潜むタコの姿は、彼が今人生のどん底であることを示唆しています。でも台風一過に覗いた晴れ間は明るくて、暗闇を抜けた先に見えた一筋の光明 (アカルイミライ) にも見えました。 彼は父親になれなかったのではなくて、愛はあったがお金が足りなくて父親稼業に失敗しただけ。だから彼のために一言だけ言わせてもらおう。「失敗も、一度は許そう、父親稼業」 ・・どうか彼の第二、、いや第三の人生に幸あれ。 【タケノコ】さん [映画館(邦画)] 7点(2016-06-03 23:54:05) (良:2票) |
《改行表示》 1.いつものクオリティを期待して早速見に行ったけど、 奇跡、そして父になる、海街〜の完成度と比べると一段階落ちる出来栄え。 いつもはっとする映像の美しさに出会うのに、今回はそれが見られなかったのが残念だった。 とは言っても、じっくり映画の世界を堪能させてはくれるところはさすが是枝さん。 【aimihcimuim】さん [映画館(邦画)] 7点(2016-05-22 23:42:29) (良:1票) |