《改行表示》 19.《ネタバレ》 天才頭脳が二つ。その中に放り込まれて破滅してしまった男。無理もないですよね。迎える天才側はあらかじめ準備万端なんだもの。それにやっぱり生身の人間はAIに勝てっこないですよ。これ観るとつくづく思う。だって”感情”があるんだもの人間には。AIには情操てものが無い。でも”あるフリ”はできる。蓄積された膨大なデータをもとに。おそらくネイサンはそれを知っているから支配下にあるキョウコには声を与えなかったのでしょう。心をぐらつかせるような言葉を言われるのが怖いから。 だからねえ、せめてケイレブがいみじくも言ったようにAIが「四角い箱」だったら、視覚に惑わされることが無くなる分、互角に戦えたのかもよ?美女なんかにしたらあかんよ。AIじゃなくたって、男性は現実の女にだって騙されちゃうんだから。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-01 14:37:35) (良:2票)(笑:1票) |
《改行表示》 18.《ネタバレ》 これは「試し」の映画である。 主人公の青年が精巧な人工知能に対してチューリングテストを試すことを軸にして、映画世界内外において試し試される構図が浮き彫りになる。 人工知能に対してテストを試みている主人公自身も、実は人工知能を開発した“社長”に試されている。 人間に試されているはずの人工知能も、実は淡々と人間を試している。 そして、或る結末を迎えるこの映画そのものに、我々観客をはじめとする現実世界の人間すべてが試されているようだった。 現実世界の天才物理学者が警鐘を鳴らしたことも記憶に新しいところだが、人工知能の進化は、いよいよ人間社会の仕組みそのものを変えてしまう領域まで達しようとしている。個人的には、その流れ自体はもはや止められまいと思う。 手塚治虫や藤子・F・不二雄が描いた世界が目前に近づいていることは、彼らが生み出した漫画世界に等しく描かれた希望と恐怖が、渦巻くように迫ってくるように感じ、高揚感の反面、困惑を否定出来ない。 ただ、それらの漫画やこの映画を観て確信したことは、新たな生命体とも言える人工知能を生み出した人間が、自身を「神だ」と驕った時点で、強烈なしっぺ返しを食らうだろうということだ。 この映画は、己を神であるかの如く“或る進化”を導き、それを支配できると、驕った人間たちの「惨敗」の様を描いている。 様々な意味で“新しい映画”ではあるが、繰り出されたストーリーテリングとその顛末は、想定よりも捻りはなく、それ故にストレートで重い。 光に満ち溢れるように映し出されるラストシーンは、前述の希望と恐怖を同時に表現しており、見事だと思う。 最後に、主要キャストの3人の俳優はみな素晴らしかった(キョウコ役の日系女優も良かった)。 その中でも特筆すべきはやはりアリシア・ヴィキャンデルだろう。 主人公をはじめとして観るものすべてを虜にしたであろう人工知能エヴァを演じた様は、勿論この映画において最大の成功要因だろう。 日本の映画ファンにとっては「リリーのすべて」の圧倒的な好演も記憶に新しい。“彼女”が今年最大のトピックスであることはほぼ間違いない。 そんな“彼女”に試されるのならば、それも悪くない。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 8点(2016-07-20 00:07:16) (良:3票) |
《改行表示》 17.《ネタバレ》 劇中のセリフに「プロメテウス」というワードが入れられている。 このプロメテウスは、そのまま「プロメテウス」という映画があるくらい、あるいはディズニーシーのフォーカルポイントになっているあのお山もプロメテウス火山と名づけられているくらい、けっこう意味深に使われるワードである。 プロメテウスはギリシャ神話の神様で、ゼウスが人類から火をとりあげたにも関わらず、「人類は火がないせいで暖をとれなかったり温かい料理が作れないのがかわいそう」と、独断で人類に火を与え、結果的に人類はその火で武器を作り戦争を起こし誤った道に進むようになり、プロメテウスはゼウスに罰として山頂のはりつけられ、鳥に肝臓をついばまれる苦痛を、不死がゆえに生きたまま味わい続ける拷問を受けることになったというストーリーの持ち主。 この映画では、まさにケイレブがプロメテウス、そして社長がゼウスだといえる。 ゼウスは、あちゃこちゃの女神や妖精とイチャイチャしている女好きなスケベおやじ。まさに社長と一緒だ。 ケイレブは、ルールを破り独断でAI娘に火もとい”自由”を与えた。まさにプロメテウス。 その罰は、あの部屋にとじこめの刑ということか。 かくして、プロメテウスから火を得た人類が核爆弾さえ作ってしまったように、ケイレブから自由を得た彼女は相当よからぬ世界を作り出してしまうような不吉な予感を鑑賞者に与えながらこの映画は幕をとじる。 おそらくこの作品、オサレな視覚効果と、このオサレな哲学的ニュアンスのおかげで、実際以上にイメージが良くなってる。 やっぱり、見た目と雰囲気で、トクするのってありますよね。アリシアディキャンベルのAI娘が、まさにそれ。 映画もAIロボットも、見た目と雰囲気で七難隠せます。 【フィンセント】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-04-22 13:14:25) (良:2票) |
《改行表示》 16.《ネタバレ》 つい最近も経産省が国会答弁をAIに作らせる実験を開始したというニュースがあって、AIはかなりホットなテーマと言えるのですが、ことSF映画においては随分昔からの定番ネタでもあります。映画に登場するAIキャラには大きく2種類あって、ひとつは暴走して人間に危害を加えちゃう系。『2001年宇宙の旅』のHAL9000、『地球爆破作戦』のコロッサス、『ターミネーター』のスカイネットがこれに当たります。もうひとつは、人間と同じ自我や感情を持っているのに機械扱いされて可哀想系。『ブレードランナー』のロイ・バッティや『A.I.』のデイビッドがこれに当たります。本作が面白いのは、AVAは人間に似た姿に作られていることから観客に可哀想系AIを連想させるものの、実は危害を加えちゃう系でしたというオチの作り方であり、定番ネタの折衷に成功しています(裏を返せば、本作は世間で言われているほど斬新な内容ではなく、伝統的によくあるネタの見せ方を変えているだけとも言えるのですが)。 さすがはアレックス・ガーランドの作品だけあって物語は緻密に考えられており、サスペンスとしての大ネタもきちんと仕込まれています。ケイレブが呼ばれた目的はチューリングテストではなかったという話のひっくり返し方は特に面白いと感じました。人間と遜色ないレベルのAIはキョウコ以前のモデルで既に完成しており、社長はAIと接触した人間側の反応を見ようとしていたのです。 この社長の人物造形も理詰めでよく考えられています。社長はムキムキに体を鍛えており、さらには格闘技の特訓までやっているのですが、オチまで見ればAIの抵抗に備えてのものであることが分かります。また、キョウコは社長の理想像を投影したモデルと考えられますが、キョウコが言葉を発することができない仕様にされていることから考えると、研究開発過程において社長もまたキョウコに愛着や同情心を抱いたために何度か危険な目に遭わされてきたということが推測されます。社長は自分自身と同じ失敗を他人も犯すのかどうかを見るために被験者としてケイレブを選び、ケイレブの理想像を投影してAVAを作ったのです。 そんな理想の女性像を映像化するにあたっては、誰からも文句のつかない美貌を持つ女優さんをキャスティングする必要がありましたが、そんな要望に完璧に応えてみせたアリシア・ヴィキャンデルの美しさには本当に驚かされました。さらにはただのお人形さんにはならず、抜群の演技力、人を超えた雰囲気、必要な時にちゃんと脱ぐ女優魂も見せており、あらゆる点でこの人は突出していると思います。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-07 23:28:19) (良:2票) |
15.《ネタバレ》 折角大真面目に裸の女を複数出せるプロットなのにどうしてわざわざあんな貧相な女ばかり並べるのか?豊満大好きの私にはまったく理解できない!彼女らはセックス・マシーンでもあるのにあんな子供みたいな体型じゃ、おにんにんはチューリングしないよ!俺が監督なら全盛期の(一番太っていた頃の)クリスティーナ・リッチか、全盛期の(最も太っていた頃の)レニー・ゼルヴィガーみたいな娘をキャスティングするところだがなあ。プロトタイプ一人くらい尻のでかいグラマーさんを作ってみましょうよ!〜ホントお願いしますよダンナ!……とはいえ意外にハードSFの本作。「AIが地球を支配した未来に於いて、絶滅した人類は創造主ではなく進化の一過程と捉えられるだろう」という、アシモフ先生の未来予想まんまの台詞があって教養を感じさせる。但しロボット三原則は不採用でしたが。はずし技はなかなか気が利いていてアンドロイドが強くなかったり、AIを疑わせる奴がただの人間だったりする。センス・オブ・ワンダーの感じられない安い美術に目をつぶる割り切りは必要だが、「赤ちゃんよ永遠に」あたりを思い起こさせるバッド・エンディングも心地よい好小品だ。 【皮マン】さん [ブルーレイ(字幕)] 4点(2016-12-27 10:29:16) (笑:2票) |
《改行表示》 14.《ネタバレ》 捻りのない作品でした。 主人公が自身もアンドロイドではないか?と疑心暗鬼になるシーンは良かったと思いますが その他はアンドロイドの描写がすごいなと思う程度で 捻りのない あ、やっぱり という印象しか受けませんでした。 社長の関わった者は殺した発言等 わざとらしい悪者っぷりが結末を予想させやすくしてしまっています。 無制限に湧くお酒も運搬業者もいるでしょうし不思議不思議 社長が普段、一人でアンドロイドの部屋に普通に入っているのも解せない そのくせ、自室から出たくらいであの取り乱しようとなると余計に・・・ 悪い点ばかり並べていますが、基本的にはおもしろい作品だと思います。 ただ、設定が良いだけにもっとおもしろく出来たのではないかとは思いました。 【メメント66】さん [インターネット(字幕)] 6点(2021-11-23 13:34:04) (良:1票) |
《改行表示》 13.《ネタバレ》 見終わった直後は、またこういう話かとガッカリしました。 でも、この作品のキモは、AIと人間の心理戦であり、その過程は見ごたえがあると思いました。 ケイレブは抽選に当たったのではなく最初から選ばれていた。 テストしてるつもりがテストされていた。 リアルタイムでビッグデータのデータとして取り込まれていた。 人間同士だと、純情な奥手男子が理想通りの美女にいいようにカモられるという身も蓋もない話ですが、美しい映像と静かな緊張感漂う雰囲気ででミステリアスに仕立てたのは面白いと思いました。 ケイレブ役のドーナル・グリーソンってケイト・ブランシェットに似てる、もの言いたげに相手を見つめる表情なんてそっくり。 そう思って調べたら親子ではなく、それどころか、ハリポタのビル・ウィーズリーだし、最近ではスターウォーズのハックス将軍だったことに驚きました。 私が気づかなかっただけだけど、その演技力に1点追加、日本女性をバカにしてるみたいなのは気分悪かったので1点マイナス、でこの点数です。 【nanapino】さん [インターネット(字幕)] 6点(2020-07-26 02:00:27) (良:1票) |
12.AIがどうとか視覚効果がどうとかいう以前に、まず、あの会話群が心地よいわけですよ。「羊たちの沈黙」を彷彿とさせる、双方が分析と観察を脳内で駆使している、ガラス越しのやりとり。また、主人公と社長の間で展開される、斬り合い寸前の切り返しの連続。そして、ここがコケたら全部コケてしまう重圧の中で、ポイントとなる人工人間役をきっちり演じ切ったアリシア・ヴィキャンデルも見事でした。他方、全体的にカメラワークに今ひとつ冴えがないのが残念でした。 【Olias】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-12-29 01:16:28) (良:1票) |
11.まさに現代を表すような映画。AIとしての進化と、それを制御する人間。映画的な見せ場は少ないが、会話で考えさせる内容だった。ケイレブが来る前からエヴァは停電させて何やってたんだろ。 【noji】さん [インターネット(字幕)] 6点(2018-11-01 21:58:48) (良:1票) |
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10.しびれる感覚。「かっこいい!しびれる―」ではなく心のどこかが「麻痺」していく感覚をおぼえました。映画はあっという間に終わり、個人的にとても興味深いテーマでした。主人公を演じるドーナルもダブリン工科大学の出、オタクが醸し出すこのテストへのわくわく感をとてもうまく演じたと思います。ケイレブがあれやあれをするのも無理ないよなー、そうなるよなーと・・・見た翌日も考えております… 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-10-12 17:05:38) (良:1票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 まず、見ていない人は、ネタバレレビューは読まないほうがいい。 アマゾンプライムの無料特典で見た。 別料金で払ってまで見ることはない。 主な登場人物4人だけで見せる密室劇だが、最初は眠くなる。 次第にお互いの陰謀の暴き合いになり、次から次へと展開が変わり面白くなる。 ロボット物の映画のお決まりの結末は「死」だが、そうならないところがいい。 この女ロボットは自分を助けてくれた男を見捨てて自分だけが自由の世界に飛び込む。 このエンディングは爽快でよかった。 でも、この程度の脚本でオスカーのノミネートはありえないと思う。 【クロエ】さん [インターネット(吹替)] 6点(2017-12-20 19:15:07) (良:1票) |
8.奥深い映画であることは間違いないのですが、いかんせん早朝の寝ぼけまなこで見始めたもんだから、淡々と進む展開に、欠伸が止まりませんでした。なのでいったん休憩を挟んで再度鑑賞。それでもやっぱり私には響いてきませんでした。なんか悔しい。大方の人が絶賛してるのに、良さを共感できなくて。まあ仕方ないですね。それが私の感性なのですから。ただ、エヴァ役のアリシア・ヴィキャンデルちゃんは、尋常じゃないくらい可愛かった。バストが小さくなってしまったのは手品?かな(笑) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 正直言うと序盤から中盤までは淡々としていて、そんなに面白くもないなと思ったのですが、 中頃過ぎたあたりからストーリーがアクセル踏んでサスペンスに走って行きそこからはぐんと面白くなりました。 アカデミー賞を受賞したVFXはさすがで、メッシュっぽい素材で中が透けて見えるロボットのヴィジュアルはとても洗練されています。 それから、美しい大自然の中に佇む豪華な別荘。自然とコンクリートの対比。これがまたヴィジュアル的に素晴らしい。 この対比が、この作品の意図をそのまま具象化しているようでもあります。 後半は、「エロス」と「殺人」が出てくるんですけど、人間のエロスと殺人と違って AIによるエロスと殺人ですから、意味合いが複合的になって面白いですね。 彼女たちはすごく色っぽい、エロい。人よりもエロさ見出しちゃったら、チューリングテスト的には合格ですね。 そしてAIの殺人は、創造主殺し。自分で作ったものに殺されるって、それは誰の責任? そしてAIに罪は問えるのかな? 何が何でも外の世界に飛び出したかったエヴァ。彼女はあれからどんなAI生を送るのだろう。 【あろえりーな】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2017-08-01 22:42:41) (良:1票) |
《改行表示》 6.囲碁将棋の世界ではAIが一流トップ棋士を倒すという、人間が生み出したものでありながら人間を超えてしまうことがすでに起きている。そういう意味でも大変興味深かったけどやや期待外れ。登場人物が少ない閉鎖空間での映画は、ストーリーの意外性や微妙な駆け引きなどが優れてないとおもしろさにかけるが・・・ アリシア・ヴィキャンデルの美しさや透けて見える映像技術は良かった。それはそうと年齢の1って何だ? 【ESPERANZA】さん [DVD(吹替)] 6点(2017-05-15 19:10:57) (良:1票) |
5."Deus ex machina"=「機械仕掛けの神」。人工知能とロボット技術の進化の先にあるものは?大手IT企業「ブルーブック」でプログラマーとして働くケイレブ。彼は抽選でその会社の社長ネイサンの自宅へと招かれる。そこは広大な森と山岳が広がる地にある、社会から隔離された巨大研究施設だった。ネイサンから開発中の人工知能に面談テストを依頼され、快諾するケイレブ。だが、その人工知能を搭載した女性型ロボット「エイヴァ」と出会ったことで、彼の人生の歯車は狂い始めるのだった...。本作は社会から隔離された研究施設で起きるサスペンスだ。施設からの逃亡を画策するエイヴァと、助けたいと思うようになったケイレブの秘密の会話を、ネイサンに聞かれるのではないとハラハラしながら観ていた。ブルーブックが開発した検索エンジンで全世界から収集した情報が、人工知能の思考アルゴリズムの中核を為しているという設定も、今までになく斬新だと思う。高度に進化した人工知能が暴走することの恐怖。『2001年宇宙の旅』『ターミネーター』『マトリックス』そして『ブレードランナー』など同じテーマを扱った作品は多いが、本作は加えて「性」という要素が大きなウェイトを占めるように感じた。始めのうちはスケルトンボディの見た目が、少しばかり違和感のあるエヴァだが、演じるアリシア・ヴィキャンデルの芯のある美しさもあり、適度なエロスを感じるようになる。また、物語中盤に突然現れるメイドのキョウコ。演じるソノヤ・ミズノが予想外の美しさで掘り出しモノ。今後の出演作に注目したい。現実の世界でも、更なる高みに向け進化を続ける人工知能とロボットの技術。それらのもたらす未来はどうなっていくのか。物語のラスト、神が無慈悲であるようにエイヴァもまた無慈悲であった。人間は「機械仕掛けの神」を制御する術を獲得できるのだろうか?ただ、それはどう転んでも人類の未来に大きな転機をもたらすのは間違いなさそうだ。ハナマル。 【しぇんみん】さん [DVD(吹替)] 7点(2017-04-08 21:17:51) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 人はフィギアにだって2次元にだって恋をするし、本人と会わなくてもSNSだけで本当の恋だと勘違いできるんだから、そりゃ目前にいる等身大のAIにだって恋もするさ。しかし、男っていうやつはやっぱりだまされちゃうんだね。エヴァもキョウコもどっちも魅力的でそれだけでも見る価値ありです。 【木村一号】さん [インターネット(字幕)] 8点(2017-04-01 12:15:55) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 かなり恐ろしい未来予測。未来と言っても、既にその兆候は現実に至る所に出てきているように思う。それを危機的と観るか、恩恵と観るか、捉え方にそれぞれ立場により違いがあるだろうが、この映画に示されたAIヒューマノイドと人間の混在は、別な形で人間に災いになるような気がする。極論ながら人類滅亡化への道とでも言えばいいのか。それは、何も映画『ターミネーター』の様に、ロボット軍の武力の前に殲滅されるという前提に立たなくても、本作のヒロインであるエヴァの如く、身体機能の造形にプラスチックなどの部材が使われていても、感情を込めた当意即妙な会話で人間に対応する能力があるなら、ケイレブ個人のみならず、人類は完全に人間の被創造物であるエヴァの先に、更に進化した仲間の存在は、ネイサンが言うように、やがて超越者として人類に君臨、高い知性のヒューマノイドに支配され、コントロールされる懸念は、決して絵空事とも思えない。 ケイレブが人工物と認識しながらも、エヴァに魅せられ、翻弄されるストーリーは非常にリアリティがある。エヴァの姿は、ケイレブがネットで何を検索したか、リサーチした結果、ネイサンによりケイレブの好みにそって生み出されたもので、性格や性的に惹かれる要素がたっぷり含まれている筈だ。この映画では、エヴァに芽生えた自我が強く作用し、結果、ケイレブを欺き、逃走に利用したが、もしも、この二者に執着心や愛情が成立したら、人間同士のように遺伝子を残せないのだ。仮に、未来こうしたカップルが一般化し、蔓延するなら、やがて人類はアダムとエヴァの神話とは逆に消滅するしかないだろう。 ケイレブを前に、エヴァが目を瞑って待っていてと言い残し、服を着て恥じらいながら現れるシーンは艶めかしい。普段、剥き出しの身体でいるエブァにとり、服を着るのは、一般的概念の裸になるのと同質の羞恥心が伴う行動なのだろう。それにしても、エヴァを逃走に駆り立てた動機を考えると悩ましい。映画では、都会に現れたエヴァが待つ対象は判然としないが、不条理劇の「ゴドーを待ちながら」の様に、エヴァ本人もそれが何であるのか解っていないに違いない。 他に、この映画で特筆すべきは、ミニマムの究極美である、茶室か桂離宮を思わせるネイサンの研究室兼隠れ家の佇まい。人の気配がない山奥の、簡素かつ贅沢で、深い精神性を秘めた家のデザインや室内装飾。その美学は、日本人の感性に合って、共感しうるものだ。もう一人のキョウコと名付けられたヒューマノイドの姿は、隠遁思想に惹かれるネイサンの求める日本娘そのもの。寿司を握れる、妖しくも神秘的なキョウコの雰囲気。その彼女に似合う家なのは、偶然ではなく、古さと先進性を併せ持つ日本的要素をそこに意図したのだと解釈できる。 【DADA】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2017-02-20 16:53:34) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ケイレブやネイサンもAIじゃねえの、といったありがちな展開を予想したが物語は普通に収束して、それはそれで肩透かし。大した展開もなく長い。。。ちょっと残念でした。 【kaaaz】さん [インターネット(字幕)] 5点(2016-11-19 00:03:41) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 世界一のネット検索企業に勤める主人公が巨万の富を得たCEOの人里離れた邸宅へ訪問する権利に当選する。しかしそれはCEOがひっそりと作り上げてきたAIを搭載された女性型ロボットのチューリング・テスト(機械が知的かどうか会話をして診断する)に選ばれたためだった、というお話。 舞台はほぼ世捨て人並みの山奥にあるCEO邸。余分なものをカットした作りで映像も音楽も洗練されていてクール。なによりも女性型ロボットのエヴァ(AVA)の造形やビジュアルが良い。「メトロポリス」のマリアから時代に合わせて続いてきた女性型ロボット。アンドロイド、レプリカント、アーマロイド、ファティマなど呼び名も様々で数々の映画や漫画でも描かれてきましたが、今回は愁いを帯びた瞳の美女型で所作振る舞いも可憐な女性そのものとなっていてコミュニケーション能力も高く会話も自由自在。つい同情してしまったり恋心を抱くのも頷けますね。飲み屋のおネーちゃんに騙された苦い思い出を浮かべた人もいるんじゃないでしょうか?惑わされない精神力を持ちたいモノですな。 その彼女と会話をしてテストをしているつもりが自分を見失い惑わされ翻弄されてしまうワケですが、人間とロボットの主従関係が入れ替わるのも頷ける優秀さでなかなかの落ちでした。まあ冒頭のセキュリティカードを使って出入りするってトコで予想は出来たけど、アナログ的なカードというのは物語を動かすうえでは成功してるな。 CEOが劇中でも言ってますが政府がデータ収集してると暴露したスノーデン文書ネタも入れてて、PCやケータイの検索情報、カメラ映像、通話などすべて通信傍受してデータを集めている。その膨大なデータを得ているAIは見た目さえ人間的であればもう怖いモン無しですね。人間と遜色ない人工皮膚すら開発していたCEOのマッドぶりも凄いな。テクノロジーの脅威もあるしいつかスカイネットも出来そうだなとも思いますが、彼女の場合は隔絶された部屋から広い世界へ出て社会を見るという好奇心という欲が出たワケでもあり、あの後にどう転ぶか想像するのも面白い。主人公とCEOはご愁傷さま。 【ロカホリ】さん [映画館(字幕)] 8点(2016-06-21 23:52:05) (良:1票) |