《改行表示》 4.《ネタバレ》 居住する鹿児島での公開は12月ということで、実家がある福岡にて帰省がてら観賞。戦争の悲惨さを描いた映画や小説は数多くあるが、戦争中のほのぼのした日常を描いたこの映画は新鮮だった。平和で和やかな日々に静かに少しずつ忍び寄る戦争を丁寧に描き、そんななかでも力強く前向きに生きていく登場人物たちには生きる喜びにみちみちていて、観賞後は爽やかな感動がある。後半にガツンとくる描写もあるがそのバランスが絶妙でしっかりと喜怒哀楽をまんべんなく描いている。「火垂るの墓」の一方でこういった日常もあったのだと思った。 冒頭のコトリンゴが歌う「悲しくてやりきれない」ですでに泣きそうになってしまい、そして映画の後半、すずが感情を吐き出し慟哭するシーンが激しく胸に突き刺さった。 とにかく多くの人が観るべき作品であり、観てほしい作品。 それにしてもこのようなすばらしい原作のアニメ映画化が、クラウドファウンディングでしか資金集めできないという状況の日本映画界、まずくないか?商業目的のアイドルを起用した実写映画化ばかりやってる場合じゃないぞ全く。 (2017/1/14 追記) 観賞後にもじわじわ感動が広がっていき、日常生活を送るなかでこの映画を思い出すことが多くなった。鹿児島での公開も始まったので二度目の観賞。 本当に素晴らしい映画。 この映画は現代を生きる私たちと地続きになっている。 【eureka】さん [映画館(邦画)] 10点(2016-11-24 22:45:50) (良:1票) |
《改行表示》 3.映画館で観て以来5回以上は観ていると思うが、なかなか納得のいくレビューが書けず削除してしまっていた。 結局この映画の何が良いのかと言うと、最初はほのぼのした戦時下の日常が描かれ、大変な時でも常にマイペースなすずさんに癒され、のんのちょっと間の抜けた優しい台詞にもホッとさせられ、戦時中とはいえほんとに普通の日常が描かれるので楽しいなぁと思っている所に突然降りかかかる戦争の火の粉。まさに不意打ち。しかし、戦時下を描いているのだから当然の展開。この映画はそういう展開にならないんじゃないかと何処かで安心していた心をこれでもかと打ち砕く。 だからこそ、最後の悔し涙を流すすずさんを見ていると胸が張り裂けそうになる。 このシーンはほんと何回観ても心が揺さぶられる…。 【ヴレア】さん [映画館(邦画)] 10点(2016-11-17 02:44:53) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 ほんの2、3世代前…こんな時代こんな日常があったという真実。 試写の評判をTwitterで知り、初日の午後 映画館へ。 テアトル梅田のロビーには人がいっぱい。上映中は立ち見の人までいて驚き。 舞台は戦時中。明るくふんわりと生きる主人公すずと一緒に、 私は、その時代の暮らしを体験した。 広島から軍港の呉へと嫁ぎ、新しい土地で新しい家族との生活が始まる。 物が無く食べる物にも苦労するが、失敗したり笑ったり。 それは今の私たちとさして違わない普通の暮らし。 私たちは、すずと一緒にくすくす笑い、家族とのふれ合いにホッコリし、時に涙する。 2時間の映画が、すずの生きる数年間にも感じられ…そして。 映画が終わった時、色々な感情があふれ、しばし言葉を失った。 片渕須直監督が現地で綿密に調査し再現した風景や暮らしは、全て当時の本当の姿だという。 祖父母から断片的に話を聴いたり、日本史の一部として知っていたその時代。 しかしこれは、どんな歴史書やドキュメンタリーよりもリアルな、VRのような時代体験だった。 すずさんの思いは、当時を生きた多くの普通の人たちの思いに相違ない。 ある意味、隠し、忘れてしまいたい過去。その良いところ悪いところ両方を 原作者の こうの史代さんも、片渕監督も知って欲しかったんだろうと思う。 これは、よく取材して丁寧に作られた、厳しくも優しい〝幸せのあり方〟を描いた最高の映画です。 【墨石亜乱】さん [映画館(邦画)] 10点(2016-11-16 01:57:53) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 【先行上映会にて鑑賞】 今年は「こうの史代原作の初のアニメ化」という事で、期待やら不安やらクラウドファンディングやらと忙しく過ごした2016年でした。期待というハードルはエベレスト山頂よりも高くなり、それと同時に発生した宇宙空間よりも広く深い漆黒に染まった不安と、日々やんごとなく格闘する私でした。 「ブラックラグーンの片渕監督やし、原作モノのアニメ化は巧者なはず」「キルラキル以降ヒット作のないMAPPA製作やけど、大丈夫なんか(キルラキルはトリガーだよ!と、2017/10/07に気付く)」「主演は能年…あまちゃん観た事ねぇけど、どうなんやろ!」…等々の、期待と不安。 それでも、呉を舞台にするアニメを作る下準備の惜しみ無さを、ほとんどストーカーかよ!というレベルで観察させていただいたせいでしょうか。当時の風俗、流行、背景などの設定の緻密さ、丁寧さに、驚かされるやら呆れるやら。私の不安など霧散させる監督のコダワリっぷりには、まったく脱帽です。 しかし…アニメは総合芸術。準備期間の長さやコダワリなんぞと、作品のクオリティは決してイコールではありません。 「結局めっさハードル上がってるやん!うおおおおどうしよ!ハードルどころか、幕、上がってるやん!」と、期待と不安に駆られた満員の劇場、そして私。 「かなしくて~かなしくて」コトリンゴ手がけるオープニングが流れ、動き出す世界。この時の静かな高揚を、どう言い表せばいいのか、わかりません。喜怒哀楽のすべての感情が、静かにふるふると蠢動していたように思います。 鑑賞後「拾いそびれたエピソードが惜しかった云々」「こうの漫画の起承転結の巧さが、長編アニメにそぐわない気がしないでもない」などと、つらつらと思い耽っていましたが 「この世界の片隅で…生きてきて良かったなぁ 生きる意味、あったなぁ」で、締めくくられていました。 製作陣のすべての人に、惜しみない拍手と賛辞を。クラウドファンディングに参加できたこと、それ以上に、この映画に出会えた事を、私は一生誇りに思います。 蛇足ですが、聖地巡礼は済ませました。公開前なのに! 【aksweet】さん [試写会(邦画)] 10点(2016-11-05 03:26:36) (良:1票) |