5.《ネタバレ》 マイ号泣映画10選に入る最高傑作。
相当昔見たが、当時「イマイチ」と思った記憶があり、デイヴィッドが海底で観覧車で封印された所で「なんて暗くて重くて寂しい展開なんだ・・・」と、絶望感を抱きつつ見るのをやめていた。 (そしてあの暗くて救いようのない場面から想像して、バッドエンドだと思い込んでいた)唯一、ジュードのロボぶりがイケてた事だけは好印象だったのだけど。
あれから十数年。何も期待もせず「まぁジュードロボをまた楽しむつもりで」と見始めたところ…あれ?なんで?面白すぎる!
多分私、昔見た時には母性が不足ぎみだったのだ。でも母となり可愛い息子がいる今の自分が見ると、母の気持ちもデイヴィッドの気持ちも全て分り感情移入できるではないか。
デイヴィッドを愛している母の葛藤(デイヴィッドをイジメる実息子だが実息子だから大事にしないといけない。返品すべきだと言って譲らない夫も拒めない)も痛いほどわかる。
故障したデイヴィッドを修理中、立ち会った母が彼の手を心配そうな顏で握っていたが、一瞬手を離してその場を離れ、セリフなしで何ともいえない表情をする。 以前見たとき私は「機械部分丸見えな息子のボディを目の当たりにして、やっぱりなんだかんだ言ってもメカの息子だとリアルに感じて気分が悪くなったか」と思っていた。 でもあれは「メカなのに、ナゼこんなにも心配で傍にいてあげたいと私は思うの?私はメカ息子を心から愛してしまっているの!?」と、自分の中にあるメカ息子への愛に自分自身でも戸惑っている、そんな場面なのだと今ならわかる。
(再び戻りメカ息子の手をギュっと握る様子が縦モザイクのガラスを通して写っている印象的な場面を見逃すな!そして、その手を嫉妬の目で見つめるマーティンの表情も。)
肝心のストーリーだが、ハーレイ君のあどけないブルーアイズのせいで感情移入しまくり、海底に沈む遊園地でブルーフェアリーとご対面したあたりから涙が止まらない。
宇宙人が”複製するには体の一部が必要”という所で、デイヴィッドの傍にいたテディがあの髪の毛を出す場面でも号泣。 一日限りの母親復活でナレーターが「母は、夫もマーティンもいない中でとてもリラックスしてデイヴィッドといた」と話したときも号泣(やっぱり、夫やマーティンの手前、メカ息子と親密にはできなかったのだねと)。
そして母がデイヴィッドを抱きながら「ずっと愛していたのよ」と、2000年前には言えなかったことを、当時も愛していた(でも夫やマーティンの手前、素直に言えなかった)ことを伝えた所でまた号泣。
なんと、ハッピーエンドだったとは!
(ちなみに、母によるメカ息子への愛の告白は「I do love you.I have always loved you.」となっていますが、ここ、I love you (大好きよ)じゃなくI do love you (めちゃめちゃ大好きよ)と、高校時代の英文法の時間に習った”強調のdo”が挿入されてるのがミソです。
で、続くI have always loved youは、昔まだ同居してたときに夫や息子の手前言えなかったけど心の中ではあの時からずっと愛していて今もそうなのだよ、という現在完了形を使った愛情深いセリフであることもミソです。 (しかもデイヴィッドを抱き寄せて頬をくっつけ、耳元で囁く…ずっと心に秘めてきたことを打ち明けるように)
ついでにですが、DVDではメカ息子の一夜限りの復活を果たした母への最初の一声が「I found you」で、そのとき字幕では「やっと見つけた」ってなってましたけど、あれは訳ミス。 まだ同居してたとき母親が彼をクローゼットに閉じ込めたあとに罪悪感にかられて開けたときに息子に言った、かくれんぼに見せかけたセリフ「I found you(みーつけた)」の伏線の回収場面なんですね。そこ大事ですね。
ストーリーのテーマは、いたってシンプルな「愛」。それを近未来の、さらにはその後の2000年後で人類は滅亡し宇宙人が来ちゃう時代なんて相当ブっとんだ時空のシチュエーションでも、観るものにとって違和感なく入れる世界観として描ききっている。
2000年先まで描くのは冗長とか、そういう意見も多いが、いやいや、先ほどの母親復活で親子の愛情を確かめ合う号泣場面でもあるし、2000年後こそメリルストリープ様が声を演じるブルーフェアリーや、ベンキングスレー殿下が声を演じる宇宙人スペシャリストの声を聴く価値もある部分ですよ。
ちなみにジュードロウの”首を横に一回カックンしたらミュージックスタート!”は多分、マイケルジャクソンへのオマージュ。 【フィンセント】さん [DVD(字幕)] 10点(2015-06-24 11:27:52) (良:4票) |
4.この作品をS・キューブリックが撮っていたら・・・などとは言うまい。死んだ子の歳を数えるようなものであり、まさに無いものねだりと言うものだろう。かなり乱暴な意見だが、キューブリックはその才能のほとんどをすでに枯らしてしまっていたことは「アイズ・ワイド・シャット」でも見てとれるし、それを本人が一番良く分かっていた筈だ。それだけにこの壮大なストーリーを友人でもあるスピルバーグに遺言として託したのは当然の成り行きだったと思う。かつて「時計じかけ・・・」でM・マクダウェルがそうであったように、オスメント君とJ・ロウはこの作品のために生まれてきたような存在として感じるし、また夜空に浮かぶサイケな高速道路のイメージ・デザインや、そこを二人を乗せた若者たちの車が疾走するシーンは「時計じかけ・・・」だし、水没したマンハッタン上空をヘリで飛行するシーンは「2001年・・・」の月面上空を飛行する探査船とイメージが重なる。これらの視覚映像にこだわったのも、キューブリックに対しての敬意の表われだと思う。とりわけ海上のビル群をカメラが舐めるように飛行するスペクタクル・シーンは、「未知との遭遇」のマザー・シップの登場シーンに匹敵するほどの圧倒感があり、個人的にはこのシーンだけでもこの作品を観た甲斐があったと言うものだ。結末の捉え方によっては評価が分かれるところだが、少年デイビッドは母親と言うよりも、既に絶滅し、もはやクローン(もしくはバーチャルな世界)でしかその姿形を示せない人間そのものに涙しているのであろう。ロボットを造っておきながら、それらを否定するという人間のエゴと彼らに対する絶望感は、まさしくキューブリックの描いた終末観そのものだが、ファンタジックな優しさに包まれたエンディングにすることで、これこそが紛れもなくスピルバーグ作品だといえるのだ。 【ドラえもん】さん 10点(2001-08-05 16:35:30) (良:4票) |
3.この作品を単なる「人工知能を持ったロボットのお話」として捉えないで欲しいと思う。この作品は「愛することしかできない悲しさと尊さ」をとことん見せてくれる。デイビットの姿を見ていると、人間がどうして愛するという感情を憎むという感情に摩り替えられるかがわかった。愛することしかできなかったら、そこから逃げられない。逃げられなかったらデイビットになってしまう。だから人は憎むという感情を持つことで自分の心を守る。けれどデイビットは現実世界でいう「犬」のようなもの・・・ただひたすら愛する事しかできない。愛だけあれば他には何もいらない。観ている観客は「どうしてここまでされて憎まないんだろうか」「所詮ロボットだから愛せるんだ。インプットされた愛だからね」と思うだろう。それが人間という生き物。相手の愛を自分の尺度で計り、自分の納得行く形に収める事ができる都合の良い知能を持っている。けれどその知能こそが、愛する事しかしらない生き物の愛を傷つけるのだという事を描いている作品なのではないかと思う。母親の姿は等身大の人間のエゴであり、デイビットの姿はもっとも純粋な愛の形。けれどラストのシーンのデイビットの姿はまさしく人間の姿なのではないか。「たった一瞬でも、愛する人に会いたい。その直後に別れが訪れようとも、生き返らせてでも、姿をひと目見ずにはいられない」相手が目の前から消えてなくなるその瞬間まで、一秒も逃さずに、瞳に、焼き付ける。あの姿は愛する人間の姿なんだと思った。 【えりっぺ】さん 10点(2003-06-04 05:12:26) (良:2票) |
2.人間たちはメカを恐れ、憎悪し、破壊する。 その姿は自ら作り上げてきた文明社会に傷めつけられている現代の私たちの姿そのものではないか。 メカであるハーレイ君の一途な愛を乞う無垢な姿を通して、たったひとつの愛ですら貫き通せぬ人間の存在意義を痛烈に問うている。 創造し破壊する繰り返しの中で営まれてきた文明は一体何処へ辿り着こうとしているのか、という壮大で深遠なテーマを美しく詩情豊かに描いた本作を傑作と呼ぶことに、一片の躊躇もない。 【poppo】さん 10点(2003-12-20 13:24:11) (良:1票) |
1.「愛って、なに?」…この単純であり深淵でもある命題とともに彷徨する少年ロボットの物語を、最初の予定通りキューブリックが映画化していたなら、一種の「オデッセイ」(『2001年~』がまさにそうだったように)として華麗に映像化したんだろうな。それをスピルバーグは、自身がそうだったように「親に捨てられた子ども」という実にドメスティックな視点から作り直してしまった。で、出来た作品は、何ともおセンチなSF版『ピノッキオ』…。でも、たぶんスピルバーグが撮り得た最もプライベートな「私映画」として、これは本当に本当に本当に残酷で、悲しくも美しい映画だとぼくは思う。実際、愛とは死に至る病なのだってことを、この映画くらい生々しく、哀しく教えてくれる映画はない。単に良し悪しでも、好き嫌いでも、面白いかつまらないかでもない、ただ「美しい」という一点で、これは、ぼくにとって間違いなく最も愛しいスピルバーグ作品です。 【やましんの巻】さん 10点(2003-05-19 14:32:49) (良:1票) |