5.《ネタバレ》 優れたフィクションはリアリティを凌駕します。本作では、脳移植(人格の移植)や催眠術の実効性について、疑問を呈する気になりません。所詮は枝葉の話。それほどに、基本となるアイデアが秀逸であり、展開が見事であったと感じます。物語の根底に存在するのは人種差別。米国人でない私に問題の本質を肌感覚で理解するのは難しい作業ですが、主人公が人として扱われていないのは明白でした。彼ら黒人はあくまで“器”であり“乗り物”。芸術センスや身体能力といった“人種としての特長”は肯定しつつも、反面、人としての尊厳は認めていません。だから体を乗っ取っても良心は傷みませんし、疑似恋愛で誑し込めても情が移ることなどありません。道路で鹿を撥ねたところで「だからどうした」と思うのと一緒。この理解不能な価値観は生理的な嫌悪に繋がり、絶望という名の恐怖を引き出された気がします。また個人的には、真相が明かされてすぐ気付く仕掛けよりも、観終えて反芻するうちに理解する伏線に、より価値を感じました。例えば序盤、フィアンセが警察の職務質問で彼氏の身分証呈示を拒んだ件。反人種差別や彼氏の気持ちを慮っての抵抗では無かったワケですね。カメラのフラッシュが元人格発現のキッカケとなったのは、洗脳部屋でのビデオ鑑賞の記憶が呼び起されるからでしょうか。大変緻密に計算された脚本。観返せば、きっと沢山のフラグが隠されているはずです。なお、主人公が躊躇なく「正当防衛」の権利を行使するあたりも、実にスッキリしました。やられっ放しで逃げるなんてまっぴら後免ですから。 【目隠シスト】さん [DVD(吹替)] 8点(2018-07-05 17:56:31) (良:4票) |
4.《ネタバレ》 ネタばれありです。未見の人は読まないで。。 今まで観た中では新しい感性のホラーだと思いました。普通に見える人たちが怖いです。 「得体の知れない雰囲気」の不気味さが、後半ネタ割れと同時に伏線が次々明らかになる衝撃へと変わります。どこか不自然な黒人らの挙動、それビンゴゲームじゃなくない?、そして「我を失った」ように見えたスーツ黒人の叫んだ「get out」の本当の意味。 年寄り白人らの集いにおいて、主人公は商品として値踏みされていたのですね。にこにこと頷きながらクリスを見ていた車いすのじいさんの意図に気付いた時はぞーっとしましたよほんと。 人種差別が根底にあることは各メディアで指摘されているところ。ちょっと一ひねりあるように感じた点は、KKKのような大方の差別主義者や黒人を毛嫌いする人たちって、自らの肌が黒くなることなど断固拒否すると思うんですよ。ところがこの映画の白人らはちょっと違って、黒人の肉体の遺伝子レベルの高いことを認めている。そしてそのうえで、自分たちがその容れ物を強奪しても構わんのだと考えている。これはかつての植民地思想みたいなもんですね。彼らの土地を略奪し資源を横取りした白人優越思想の応用版。良いものは白人のもの。ジャイアンか。 表立って敵意をむき出しにする差別意識より、外面を覆い隠している分、タチが悪くヤバさは上です。 タチが悪い代表がローズですわね。あの、パッと本性を現した場面には嘔吐しそうになりました。なんたる性悪。いやああー怖い。 演者である黒人俳優の面々も巧い。なんというか「白人のしそうな振る舞いや表情」ってきっとあるんですね。皆みごとに「妙な黒人」でした。特に使用人役の彼女!黒人である自我が涙を流しながら、白人スマイルをなんとかキープしようとする長いカットがひたすら不気味で、あの演技力は凄いです。 ラストはバッドエンドの試写版から改変したのだとか。ほんとこのエンディングで良かった。救い無く終わっていたらメンタル立ち直れないところです。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-05-02 18:25:32) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ネタバレ注意! ネタバレ注意! ネタバレ注意!
黒人の若い男性が白人社会に入っていき怖い目にあう話かと思ったら、黒人の頭の中に白人が入って乗っ取る「チョー怖い話」でしたとさ。サイコパス軍団のこの映画の中の白人たちは、黒人の体が欲しいから、誘拐して「ビンゴ」で当選者を決める。つまり黒人を「もの」としか思っていない(それって実は現実?)。ハリウッド映画で、黒人と白人のカップルを見たことがないが…どうしてだろう。
ところで、もし、逆で作ったら大問題か。 つまり、黒人たちが白人を誘拐して体を乗っ取るという映画。 「だって白人の方がいいだろ?」 「日本人のあんた、白人になりたくない?」
ネタバレ注意!
ラストで、女が銃をとって、主人公と話す友人(ヒーロー)を撃つかも? ってヒヤヒヤした。
中盤まで予告通りに進み、酷い目にあう主人公が「すごく」楽しかったが、それ以降はあまり楽しめなかったかも。荒唐無稽に逃げたからかも。
そしてラストで銃で自殺する男が悲しかった。 元婚約者の女性の顔面を、主人公が「撃って撃ってうち撃ちまくって穴だらけ」にして欲しかった(散弾銃だから一発で穴だらけだが)。
もう一度観たい。 二度目が楽しめる映画はいい映画だ。8点! 【激辛カレーライス】さん [DVD(字幕)] 8点(2018-12-19 13:06:22) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 黒人差別を逆手に取った社会派サスペンスかと思ったが、何だかどんどん違う方向へ。さらにラストは、全く意外な展開に。 前半はとにかく不気味で、何だか謎めいた出来事だらけ。一体これはどういうことなのかと、話に非常に引き込まれる。なのでそこまでは面白かった。 しかし、そこからの種明かしは少々ガッカリするものがあった。 確かに意外性はあった。だが、それは悪い意味での意外性であった。 脳移植で永遠の命を・・ということなわけだけど、そんな脳移植の技術があるはずもない現代社会の、それも片田舎で、そんな脳移植が行われていましたよ!って唐突に言われても、意外というより、何じゃそりゃ!とあっけにとられるだけである。意外性があったというより、現代サスペンスの話が突然SFになってしまって驚いた、という方が正確である。 また、その脳移植もあまりに手垢が付きすぎたネタであった。「脳移植によって永遠の命を手に入れる」「その脳移植用の健康な体を手に入れる為に、人権を無視した人体獲得システムが構築されている」というのはSFではあまりに古い。 催眠術で人を操るってのも非現実的だなあ。 まあ、それでも細かい点でラストのどんでん返しで楽しめる点は多かったけども。 多少は怪しいと思いつつも少しは信じていた彼女の裏切りと豹変っぷりとかね。あと、一家がとにかくろくでもなく不快な奴ばかりだっただけに、最後に全員ぶっ殺していったのもカタルシスがあった。 まずまず楽しめる。 【椎名みかん】さん [インターネット(吹替)] 8点(2018-10-12 03:27:12) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 主人公の友人のTSA野郎が好きでしたね。彼のユーモラスで明るい存在感が、この映画のホラーとサスペンスを引き立てる良いスパイスになっていたと思う。自分の職業にめちゃくちゃ誇りを持っているところとか愛らしいです。
脚本は本当によく出来てる!有り得ないようなストーリーだけど、矛盾点が見当たらないし、筋が通ってるし、「あのときのあのセリフにはそういう意味が!」という発見も鑑賞する度にあるでしょう。特に主人公の恋人、今になって思い返すとなかなか恐ろしいこと言ってたなー。TSA野郎に「貴方が本命よ」とか。
そして、人種差別を裏テーマ(裏でもない?)として扱っているのがこの映画最大のポイントだろう。劇中、黒人は身体能力に優れた素晴らしい人種だと崇められているんだけど、それは「遺伝子が良いから」って言っているし、それも結局は一種の差別ですもんね。敢えて黒人が妙にチヤホヤされる様子を描くことで、アメリカ国内で今なお起きているであろう不当な人種差別を皮肉っている。人種差別を真っ向から描いた重いドラマ映画よりも、誰でも気軽に観られるホラー映画でさりげなく風刺する方が、観客に自ら考えさせて、より強いインパクトを与えるのかもしれない。このセンスには脱帽。 黒人たちの失踪事件に関与しようとしない警察の描き方にも風刺が効いている。しかも、自分の記憶が正しければ、黒人の警官もあの場にいたはずなので闇は深いですね。
そういう社会派的な側面を抜きにしても、一本のホラー映画としての完成度は高く、しっかり娯楽作になっているのが素晴らしい。頭が良い、クレバーな映画だ。
しかし、主人公の今後が不安。あの人をお茶に誘ったら大変なことになる。 【Y-300】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-02-05 11:05:14) (笑:1票) |