4.サーカスが好きである。世界各国から集められた芸達者な精鋭たちが、あの限られた閉鎖的な空間の中で、無限にも感じるイメジネーションを繰り広げるエンターテイメント性は勿論、彼らが当然抱えているであろうパフォーマーとしての人生の機微や、決して綺麗事ばかりではないであろうショービジネス界の苦悩も含めて、圧倒される。
そんな“サーカスの祖”とも言える稀代の興行師の人生を軸に、“ショー”の中でしか生きる術が無かった者達の人生讃歌が、圧倒的な歌唱とダンスで映し出されていた。 ミュージカル映画好き、そしてサーカス好きとして、問答無用の高揚感に包み込まれたことは言うまでもない。
だがしかし、この映画のストーリーラインと語り口は、“空中ブランコ”のように極めて危うい。 その最たる要因は明確で、ヒュー・ジャックマン演じる主人公P・T・バーナムが、決して清廉潔白な品行正しい人間ではないからだ。 彼はあくまでも私利私欲のために(勿論、愛する家族を守るという大義名分はあるけれど)、いわゆる“フリークス(奇人)”を集め、笑いものにするための「見世物小屋」を始めたのだ。 その様をどんなに成功譚的に描き、“好人物”の世界屈指の代表格であるヒュー・ジャックマンが演じようとも、この主人公に対して非倫理観や不道徳性を感じてしまうことは否めない。
無論、そんなことはこの映画の製作陣は充分に理解している。理解した上で、それでも敢えて短絡的に思える語り口を貫き、ただただシンプルに主人公をはじめとするショーの中で生きる者達の生き様を歌い上げている。 この映画が素晴らしいのは、まさにその映画として潔い「態度」だ。 ほんの少し演出のバランスが悪かったり、別のキャスティングだったならば、主人公は勿論、他の登場人物たちの言動も決して受け入れられず、非難の的となっていたことだろう。
フリークス達は、「綺麗事」ばかりを振りかざして生きていくことなどできないこの世界の闇の深さを、他の誰よりも知っている。 倫理に反しようが、不道徳だろうが、そんなもの知ったこっちゃない。 誰に笑われ、誰に罵られようとも、「生きていく」という覚悟の上に、彼らの歌声は響き渡る。
ミュージカルシーンの華やかさと力強さは紛れもなく素晴らしい。ただそれによる娯楽性が、ストレートな多幸感には直結しない。終始一貫して、薄くへばりつくような居心地の悪さを感じる。それは即ち、この現実世界にはびこる居心地の悪さそのものなのだろう。 その映画としての試みが完全に成功しているとまでは言わないが、このミュージカル映画の目指した「表現」と「着地点」は、圧倒的に正しいと思える。
演者としては、ゼンデイヤ嬢が「ホームカミング」に続いて魅力的だった。彼女の溢れ出る魅惑的な異端性は、女優として今後益々唯一無二のものとなっていくだろう。 蛇足だが、ミシェル・ウィリアムズとレベッカ・ファーガソンに挟まれては、流石のヒュー・ジャックマンも辛かろうな。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-03-15 08:04:21) (良:2票) |
3.批評家からは散々だったのに作品としてはヒットしたというのがすべてだと思います。 金儲けに走り家族よりも歌姫にうつつを抜かす主人公にもご都合主義な展開にも感情移入できないものの、楽曲のクオリティーやワクワクさせるショーの演出、自信満々でめちゃくちゃイケメンな主役のヒュー・ジャックマンを見たらなんかわからないけど許せてしまうって作品なのかなと。 私もそんな批評家の評価と興行収入の賛否に興味が湧き、Blu-Rayを購入したら二度三度と見返しているヒュー・ジャックマン好きです(笑) 【まさかずきゅーぶりっく】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2023-03-04 20:59:23) (良:1票) |
2.ミュージカルで大切なのは、音楽と踊りです。この映画はそのどちらとも、すごく良かったので、とっても気に入りました。ストーリーがあまり良くないので、名作にはなりませんが、そのストーリーの弱さを、音楽と踊りの魅力で補い、余りある魅力で観客の目を引き付けること間違いありません。映画館の中ならではの大音量で見られたのだ、なおさらそう感じました。ソフトの発売など待たずに、映画館で見ないと損します。 【shoukan】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-03-02 23:20:04) (良:1票) |
1.「ミュージカルってやっぱりこういうものなんですね」 というのが正直な感想。
個人的に、映画に関してストーリー重視するタイプなので ミュージカルだからストーリーよりも音楽重視。ミュージカルの部分さえ魅せれば最高!とは思えないんですよね
本当に音楽もそれを魅せる映像も素晴らしかったです 特にバーのシーンはテンション上がりまくりでした
だがしかし、それを考慮しても内容は本当に薄っぺらい 内容は本当昔からよくあるストーリーの焼き直しで、今更そんなストーリー見せられても・・・という感じですし その焼き直しも、ミュージカル要素のために更に薄めてる感じでした。
ミュージカルですから曲が始まればストーリーはほとんど進まないですし 必然と言えば必然なのですが、それにしたって薄っぺらい。
キャラはそれぞれ濃いですし、それぞれのキャラの掘り下げがあればそれぞれのキャラの絡みや会話などを楽しめるのでしょうが あくまでミュージカルシーン重視なのでそれは皆無なわけです
最初からこれが史実を元に作っている映画だと知っていれば、期待もせずに音楽だけに集中できたんでしょうが 前情報を全く入れないでみたいタイプなのでそれもかなわず。。。
ただ、この映画はミュージカル映画好きにはたまらない映画なんだろうなぁとは理解できました。 【非映画人】さん [映画館(字幕)] 5点(2018-03-02 17:37:54) (良:1票) |