《改行表示》 10.《ネタバレ》 何度も映像化されてきたニクソン政権の政治スキャンダルを、M・ストリープとT・ハンクスの二大スターの安定感と演技力でしっかりした骨格の娯楽作に仕上げています。人物らの立場説明が簡略にして明快なので、事件そのものに疎くても理解が容易です。 クライマックスの盛り上げ方も巧いなあ!受話器を握りしめるストリープの、決断を迫られた緊迫感あふれる表情にこちらも手汗がにじみます。 また、この脚本は横糸として当時の世相であった女性軽視の視線をだびたび挟みます。ポスト紙社主のケイは「女が社主なんて」という目で見られている描写が多々あり、またストリープも随分と物腰柔らかな女性としてケイを演じます。それだからこそ、ヤマ場での経営者としての腹のくくり具合は大変に立派で胸を打つのでした。 ケイの置かれた厳しい立場を誰よりも理解していたのがハンクス演じるキャップの妻(彼女もまた大事な情報を伝えてもらえないという形で軽んじられています)というのも、皮肉が効いているなあと思いました。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-18 18:32:35) (良:1票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 昔、ロバートレッドフォードとダスティンホフマンが同じワシントンポストの記者を演じ、ウォーターゲート事件を描いた、大統領の陰謀、なる作品があった。本作は、それに先立つベトナム戦争の実態隠蔽をやはりポスト紙記者が暴く作品。 但し、地道な取材を通じてでは全く無く、いわゆるタレコミ的な情報ソース提供の資料を掲載に踏み切るか否かの葛藤プロセスが克明に描かれる。 記者の奮闘というより、民主主義国家に於いて報道がなすべき責務を新聞社として如何に遂行すべきか、国家反逆罪扱いなのか報道の自由なのか、揺れる者達の群像劇の映画。 トム・ハンクスもメリル・ストリープも、本来の個性は打ち出さず、役に徹した演技、それはそれで熱演だが、に終始する。が、この映画の最たる見所は、アメリカが培ってきた、否、今も培いつつある、民主主義の危機に瀕したときの具現化を丹念に描いているところだろう。 どうしても今のこの時期、59期目の元首を選挙で選出している最中の今のアメリカと比較してしまう。 第45代大統領トランプのこの4年間と選挙敗戦に際しての見苦しいこと甚しい往生際の悪さを、相当数の有権者が受け入れてきたアメリカと、この映画で描かれたアメリカ、どちらも本当に同じ国家なのか考えさせられてしまう、そんな映画。 日本も国民の半数近くは今の政府のコロナ禍対策を一定評価していると云う。劣化しているのは世界的な潮流なのかも知れない。 【Postef】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-11-09 20:24:47) (良:1票) |
《改行表示》 8.時代において必要な映画だと感じた。決定から勝利までの場面は感動的。 統治者ではなく国民のために憲法がある、ということの意味は重い。 【simple】さん [インターネット(字幕)] 7点(2019-02-17 15:09:17) (良:1票) |
7.最初の展開がやや難しく、ストーリーに入っていきにくいのが難点だけど、その後は機密文書を巡って一気に引き込まれる。SNSの存在や政治への無関心が問われる今の時代で、メディアに携わる人達にはぜひこうあって欲しい。 【noji】さん [インターネット(字幕)] 7点(2019-02-11 16:48:47) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 近作『ブリッジ・オブ・スパイ』もよかったが、今作はさらにシンプルな出来。こうゆうストレートなメッセージをてらいなく、でもエンターテイメントで発する最近のスピルバーグの姿勢は好きだ。それに応える大御所主演コンビもさすが。トム・ハンクスなんて、別に特殊な役作りをしてるわけではないのに、他の作品とは違う、明らかにワシントン・ポストの編集長になってた。ちょっと弱っちくて、まわりの男たちからさりげなくバカにされるメリル・ストリープも新鮮。役者の引き出しってすごいと素直に感動する。個人的に気に入ったのは、本作では「正義を為す」ことが、ベンにとってはケネディ大統領と親友だったことで生まれる躊躇をジャーナリストとして乗り越えることでもあり、父と夫から引き継いだ新聞社を守ることしか考えていなかったケイにとっては、はじめて自分の信条に従って(だから、ケイとマクナマラのシーンは超重要)決断を下すことであったという、「公」と「私」を重ねた描き方。脚本うまいし、それを嫌みなく演じる2人と監督の淡々とした演出も素晴らしい。この後のウォーターゲート事件で実際に『ワシントン・ポスト』はニクソン政権の息の根を止めてしまうのだが、そこにつなげるラストシーンの流れもなかなかよい。難点をいえば、短時間で作ったことがわかるセットや場面のワンパターンさ。あと、最近のスピルバーグ作品にイマイチあってない気がするジョン・ウィリアムズの音楽くらいか・・・。それから邦題。サスペンス的な印象を与えてしまって、この作品のシンプルな作風を損ねてしまっていて残念。 【ころりさん】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2018-09-17 21:41:15) (良:1票) |
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《改行表示》 5.プロダクション・クレジットには気付きましたが、監督クレジットを見逃しました。今になって、ああスピルバーグだったのかと。 保身を図る圧力に抗して権力犯罪を暴く覚悟と気迫を見事に描いた傑作です。但し、お嬢様育ちとして描かれたオーナーが保身ではなく対決の決断を下す根拠や過程が十分描かれていない点が不十分だったと思います。まあ、些細な欠点です。「兄がベトナムにいる」とエールを送る政府側弁護士事務所職員のエピソードを加える手腕が秀逸です(まさか、ここは実話ではないでしょう?)。でもベトナムの人々への思いが微塵もないな、なんてことをスピルバーグに言ってもしょうがありません。マイケル・ムーアでは、こんな感動作にはならなかっただろうしなあ。ポストの記者を排除せよとの大統領の電話やウォーターゲートのくだりは余計なサービス(蛇足)でした。 本作を見て、現在の日本のマスコミはどうなのかということにも思いを馳せて欲しいです。 【傲霜】さん [映画館(吹替)] 9点(2018-05-06 09:43:53) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 東宝東和の配給映画は、始まる前に日本語のタイトル画面が現れる。よって、無粋な「映倫」マークを伴わずに実にあっさりと表示されるThe Postの原題は、危うく見逃すところであった。ん?The Post? 「ペンタゴン・ペーパーズ」しかもご丁寧に「最高機密文書」の副題までいれたタイトルから、勝手にポリティカルサスペンスを想像して観に来た私の認識は早々に改めることを余儀なくされた。 実際、話の中心は、伝統はあるが、経営は時代遅れの同族で、必ずしも順調でないワシントン・ポストを、不本意ながらも背負わざるを得なかった女性社主キャサリンが、さまざまな挫折や妥協を重ねた末に、ようやく経営者としての強い判断を下すにいたるまでの経緯の物語であり、一種の個人の伝記映画の側面の方が強かった気がします。 本当に、トランプ政権に対する批判としてこの映画を製作した意図があったのですかね?それにしては、タイトルの付け方も含め、少し変化球すぎたと感じます。非常にダイアローグの多い映画で、容赦のないその早口の会話から、さらには画面に映る新聞や文書などの文字から読み取るべき情報がきわめて多く、この事件の背景を少しは知っていないと、ストーリーについて行くのは結構大変かも。スピルバーグにしては、このあたりの作りこみが不親切だった気がしました。 【Northwood】さん [映画館(字幕)] 5点(2018-04-10 01:02:44) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 スピルバーグが「映画化まで2年も3年も待てるような作品ではない。すぐに映画化しなければならない」と語ったというが、71年の実話でありながら、確かに現代的で、考えさせられる作品となっている。 ベトナム戦争について的確な分析が行われており、負け戦と分かっていても、その分析を隠蔽していた当時のアメリカ。「フェイク・ニュース」だと叫び、自分の都合のよう事実だけをつなぎ合わせる者が現在の権力者である危機感が伝わってくる。そして、真実を曲げることはできないという、信念が感じられる。 権力者の都合で公文書がざくざく改竄され、権力者のお友だちや後ろ盾となっている大企業が好き放題をやっている、我が国の映画人に危機感はあるのだろうか? 【こんさん99】さん [映画館(字幕)] 9点(2018-04-08 19:34:54) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 重厚感と緊張感のハンパない久々に観応えのある秀作。スピルバーグの演出は解りやすい上に説得力があり、最早云うことはない。更にストリープ・ハンクスの演技、美術、音楽等全てが高いレベルで維持されている。国と新聞社の表現の自由をめぐる抗争を軸に、仕事へのプライド・家族愛などを絡めたかなりの感動作。ちなみにここまでアカデミー作品賞候補作4作を観たが、この作品がダントツである。 【ふじも】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-04-01 22:54:17) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 機密文書の内容は「3政権に渡って国民は騙されていた」というだけで最後まで詳しく明かされないません。地味な作りの作品という印象でした。というか、真面目に歴史を勉強したアメリカ人なら機密文書の内容は言われなくて知っているので必要ないのでしょう。表現や出版の自由は英語圏の国々では国家体制の根幹をなすもので、その意味では政府 v.s.ニューヨーク・タイムズ紙と政府 v.s.ワシントン・ポスト紙の法廷での争いも最初から結果は見えていました。でも同じ訴訟が日本で起きたらどうなるのか、あるいは法廷が支持率の高い政権や蝋燭デモの主張を忖度するような国でははどうなのか、考えさせられます。日本では本作のケイ・グラハムやベン・ブラッドリー、反戦主義者たちや終わり近くで登場する兄を戦場に送った若い女性のように人が死なないことが国益だということが明々白々すぎてこんな訴訟は今のところ起きそうにありませんが、日本政府がこのまま軍事装備を増強していけば遅かれ早かれ仮想敵国には絶対秘密の軍備の内容などを巡って機密漏えいが国益に反するか国民の知る権利のほうが大切だとかの議論は起きるでしょう。それにしても権力の奢りというものは怖いです。それから、ニューヨーク・タイムズ紙のすっぱ抜きのエピソードはワシントン・ポスト紙から見ると「なぜか」ですが映画の視聴者から見れば経緯は明らかで記者クラブ制のない国ではこんなことも行われるのだと驚きました。メリル・ストリープは年を重ねても色っぽくて相変わらず理知的だし、仕事人間の役では右に出る者のないトム・ハンクスが演じる編集主幹のベン・ブラッドリーが自宅の一室にこもって部下と仕事をしている時に「一杯25セントです。」と言ってレモネードを差し入れた小学生の娘に「50セント払うぞ!」と言うシーンが微笑ましかったです。 【かわまり】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-02-01 11:45:02) (良:1票) |