1.《ネタバレ》 冒頭10分でオートクチュールの仕立屋レイノルズと彼を取り巻く上流階級を隔たりなくスムーズに描く手際の良さに、ポール・トーマス・アンダーソンとダニエル・デイ=ルイスの徹底した芸術家肌を見る。埃一つ落ちていない、一つ一つが芸術品のような仕事場、面倒の無い規則的な習慣こそが彼の世界で彼の全て。ところがアルマという"未完成"な女性を気に入ったことから、静かな不協和音が生じる。自分にとって都合の良い、理想の"マネキン"として仕立てていくはずが、逆にアルマが彼をコントロールしようとする展開からホラー風になる辺りが新鮮。恋愛も結婚もお互いに妥協しながら維持していくものであり、レイノルズみたいな完璧主義者を陥落させるにはどうするかという一つの答えだろう。物事が進まないことを私のせいにするならば、逆に私なしでは生きられないようにしてあげるという、ヤンデレ的なSMプレイ。共依存にも思えなくないが、あえてハッピーエンドで終わらせる潔さを買う。一作一作完全燃焼で全力投球するダニエル・デイ=ルイスの引退作になるのかと思うと寂しい。 【Cinecdocke】さん [DVD(字幕)] 8点(2018-11-08 18:51:33) (良:1票) |