《改行表示》 4.《ネタバレ》 IMAXにて遅ればせながらの鑑賞。世間での高評価に水を差すようで申し訳ないが、結構な粗が目立つ作品だった。 この内容で7点以上の評価は付けられないと思った。 本作をよく注意してみてみると、クイーンという要素を外してしまえば、本作の物語の骨子は驚くほどありきたりなものだ。とある集団の栄光と挫折、そこからの復活。サイドストーリーには運命の恋人との出会いと別れ、家族との確執と和解まで、実にテンプレート的に盛り込まれている。映画の脚本としては、今からすると非常に陳腐な内容とも言え、そこには新鮮味もなければ深みもない。さらに言えば、クイーンファンなら即座にわかると思うが、本作では史実の順序が入れ替えられていたり、或いは誤解を招きかねない史実の省略を含んでおり、もちろん本作はドキュメンタリーでなく映画であるから仕方がないのだが、しかしそれでも、史実に対しての誠実さをあまり感じることができない脚本となっている。 演出面に目を向けても、フレディ以外の登場人物の描き方が雑。Love of My Lifeというわりにあまりにあっさり付き合い、あまりにあっさり別れるメアリーとの関係、バンドの他のメンバーのあまりに一面的な描写には、とにかく雑な演出という印象しか覚えなかった。クイーンは何もフレディ一人に依存していたわけではなく、他のメンバーの演奏能力の高さや各自が様々なジャンルの音楽を咀嚼してヒット曲を制作できる能力もあって、世界的にブレイクしたバンドであった。たとえば本作ではブライアンメイのレッドスペシャルや、ジョンやロジャーがいかに音楽的な成長を遂げて、ヒット曲を制作できるようになったのかといった部分が見事にオミットされている。結果的にフレディのみがフォーカスされて、他の人物の描写が粗雑になってしまったのでは、と思う。 とはいえ本作はあくまで映画である。限られた時間の中で史実の完全再現など出来るわけがなく、誇張や省略があってもいいと私も思う。ただし、史実の誇張や省略を含んだ映画が、それでも人の心を撃ち抜くためには、何かずば抜けた、それこそ狂気に近い域の演出や脚本や演技が必要だと私は思う。ただ残念ながら、本作でそうした部分を見つけ出すことが私はできなかった。史実への偏執的な拘りよりも映画的ダイナミズムを優先させた脚本はあまり高評価できず、演出も上述したように雑、CG合成だとまるわかりのライブエイドの映像も興ざめだし、ラミマレックの熱演は素晴らしかったものの、私が驚嘆する域までは達していなかった。フレディの振り付けは似ていても、歌唱部分は過去の音源の流用であり、これがもし彼自身で歌唱まで行っていればそれこそ驚嘆するしかなかったのだが…。 長々と書いたが、本作をまとめると映画的ダイナミクスを優先した、エンターテイメント要素の強い伝記映画ではあるものの、一方で不正確な史実の描き方や雑な演出も目立つ作品でもある。また、そうした難点をぶち破り、観客をねじ伏せるほどの狂気的な拘りもない映画である。クイーンに初めて触れる人や音楽ファンでない人たちには大満足の作品かもしれないが、ある程度目の肥えた批評家からの評価が高くないのは、本作のそうした弱点を見抜かれたからではないだろうか。 【nakashi】さん [映画館(字幕)] 6点(2019-02-02 10:56:58) (良:2票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 名だたる評論家たちが年間ベストに挙げ、巷も大絶賛。どうやら僕はそこに乗れない少数派のようだ。 たしかに良い映画だとは思うが、この映画の「感動」って元のクイーンの曲の力にあるんじゃない?それは別に悪いことじゃないし再現度はそりゃ素晴らしいが、そこが大事ならもっと音楽に焦点を当てればよかったのにと思う。しかし長い上映時間の大半を占めるのはフレディのセクシュアリティの葛藤。果たしてこれはストーリーとして何度も繰り返して表現すべきプロットだろうか?。フレディのソロ活動がカネまみれでクイーンを裏切る「完全悪」みたいな扱いなのもよく分からない。もっと分からないのはライアン・メイとロジャー・テイラーがこの映画のかなりの権限を握っているらしいこと。つまりその他史実の改変もこの二人の意向てこと?(少なくともOKは出しているはず) ライブ・エイドの演奏場面はもちろん素晴らしいのだが、当たり前だけど本物のライブ映像の方がもっと良いんだよ(笑)。このへんは音楽やスポーツの伝記映画の宿命ではある。しかしこれをクライマックスにするのならそこに至る雌伏の時期が物語上必要だが、それは「無駄な」ソロ活動や乱痴気騒ぎに「うつつを抜かしていた」フレディが「ファミリー」の元に帰る、という話なんだな。それでいいのかブライアン&ロジャー? 個人的にはフレディ役は当初の予定だったらしいサシャ・バロン・コーエンで観てみたかった。ラミ・マレックは確かに頑張っているが、フレディ・マーキュリーという人のとんでもない「強さ」を表現しきれていないように感じる。そりゃフレディは繊細で闇も弱さもある人だったろうが、どんな大観衆も圧倒する強さがこの役には必要だろう。サシャならそれができたように思うのだが。 【tubird】さん [映画館(字幕)] 6点(2019-01-01 20:43:25) (良:2票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 とても話題になった本作ですが音楽バンド映画として観るならとても凡庸な出来です。平均点ど真ん中くらいです。おそらくクイーンの楽曲が感動の底上げに三役くらい買っているのではないでしょうか。 クイーンの20年間を2時間に収めるのはたしかに難しいけど、どんな種類の伝記映画も抱える課題を克服できていません。各エピソードの羅列にとどまっており、フレディの内面を推し測るにはBSで放送していた英国製のドキュメンタリーを見た方がよほど有効です。 ライブ・エイドでのステージをクライマックスに持ってきたのにはなるほど、と思いました。当時わたしもテレビの中継にかじりつき、VHS3本に録画を収め、ラジオの音源も録音したものでした。お目当てのミュージシャンはクイーンではなかったのですが、しかし彼らのステージは間違いなくライブエイドにおける№1のパフォーマンスでありました。フレディの圧巻の熱量、声量、肉体の躍動には頬をひっぱたかれたかのような衝撃を覚えたものです。 そのライブを完璧に再現したという評価の本作。セットの細部やメンバーの動作など、確かに完コピできているとは思います。 でも、でもフレディじゃない。ラミ・マレックは誠実にフレディ・マーキュリーを演じたと思うけれど、そしてこれは彼にはどうにもできないことだけど、ラミにはフレディのような体格が無いのです。あのステージ映えする八頭身、長い脚、厚い胸板、頭部の小ささ。彼が舞台に仁王立ちして腕を高々と突き上げた時の筋肉美。他を圧倒するあの立ち姿をもってして、フレディはフレディ・マーキュリーたりうるのです。 汗光りしながら、マイクコードを華麗に脚でさばきつつステージを縦横に駆ける往時の「本物」の映像と比べると、最後まで涼しげにパフォーマンスを終えるラミ・マレック版ではフレディのオーラもナルシズムも感じることはできませんでした。 ブライアンやロジャー、ジョンが錯覚しそうになる位本人とソックリの役者さんなので、余計にラミが浮いて見えてしまいました。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-07-17 00:07:25) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 クイーンはよく知らない。 フレディ・マーキュリーがペルシャ系がルーツであることも最近知ったばかりだ。 そのため純粋に映画として見ると、彼の栄光と挫折、愛と孤独という在り来たりなストーリーには何かしらの捻りがなく、 演出も予想通りの陳腐さである。 そのマイナスポイントを誰もが聴いたことのある有名な楽曲とラミ・マレックら俳優陣の頑張りで大幅にカバーする。 7割方はこれらとライブ・エイドの再現による勝利だろう。 もっとも本物の歌唱力までは真似できず口パクで、エンドロールに本人たちの映像を流すあたり、 トップクラスのモノマネ大会に終始している感は拭えず。 数十年後も残る名作になるかひとときの熱狂で終わるかはこれからだろう。 クイーンを大まかに知れる分には悪くないかもしれないけれど。 【Cinecdocke】さん [映画館(字幕)] 6点(2019-04-23 00:30:36) (良:1票) |