6.梅雨明けした週末、それに合わせるように封切りされていた本作を観に行く。 正直なところ“期待”は半々といったところだった。 新海誠監督の前作「君の名は。」はちょっと異常なレベルの社会的大ヒットとなり、これを受けての次作は、否が応でも注目を集めることは必至で、それは「独善的」なこのアニメーション監督の作風にいい意味でも悪い意味でも影響を与えるだろうと思えた。 案の定、公開前からちょっと節操がないくらいの企業タイアップの乱れ打ちが目立ち、注目度と製作資金の潤沢さを感じる反面、あらゆるしがらみに覆われた相当に自由の利かない映画製作になったのではないかと危惧していた。
酷評も辞さない構えで鑑賞に至ったのだけれど、その危惧は全くの杞憂だった。 善し悪しはまず別としても、そこで繰り広げられたのは、前作以上、いや過去作のどれよりも“独善的”で“独りよがり”な新海誠監督の「セカイ観」全開の映画世界だった。 危惧された不自由さはむしろ皆無だったと言っていい。美しすぎる精巧なアニメーションは無論健在だが、その美しさと表裏一体の生々しくリアルな描写が観る者の心情をじわじわと抉ってくる。 現実の具体的な企業名や商品名が作中の至るところで映し出され、「現実感」を効果的に演出していた。そう、節操なく思われた企業タイアップだったが、監督と製作陣はそれを最大限に活かし、アニメ世界の重要なファクターとして表現してみせている。
タイトル「天気の子」が表すとおり、この国のあらゆる「天気」を表現したアニメーションはあまりにも美しく、それだけでこの映画の価値は揺るがないとすら思える。 しかし、この映画で表された美しさは、いびつで残酷だ。 主人公の少年少女たちは、この美しい世界の“底”で、文字通りに生命をすり減らしながら、喜びと希望を見出そうと奔走する。 それは決して安直な綺麗事ではなく、心身ともに追い詰めされた彼らがギリギリのところで保とうとした生きる「意味」だった。
この映画が描き出したストーリーテリング、そして主人公たちの帰着に対して、受け入れられない人は多いだろう。 彼らの「選択」は極めて破滅的な行為であることは間違いなく、想像よりもずっとカオスで狂気的な映画である。
セカイの“しくみ”も“理り”も関係ない。 彼らは、あまりにも無責任に、あまりにも独善的に、そして「確信」をもって、「大丈夫だ」と言い切る。 ならば、それがすべてだ。 世紀の“わがまま”を押し通す、若い生命の猛々しさと瑞々しさ、最高密度の「青臭さ」に、少なくとも僕は、涙が止まらなかった。
梅雨明けのタイミングで観に行って、なんと“梅雨明けしない”顛末には面食らったが、今、この国の夏に観なければ、あまりに勿体ない映画だ。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 9点(2019-07-26 23:22:01) (良:2票) |
5.劇場公開時、評判を知ろうとレビューを軽くみると「恐ろしいほどのセカイ系」とのレビューが多数。 あぁ新海、今回は自分の趣味全開でやらせてもらえたのね…と思いつつどストレートなセカイ系はさすばにちょっと…と思い(&声優じゃない有名俳優女優のキャステイングも気にくわなかったので)劇場に脚を運ばなかったわけですが、今回地上波放送との事で視聴。
後半、覚悟していたその想像を上回るほどのど直球なセカイ系っぷりにはちょっとびっくりで、逆にここまでセカイ系だといっそ清々しい…と感心するレベル。 普通に評価すれば6点とかなんでしょうが、いまどき「セカイの命運より君一人が大事」というセカイ系特有の青臭いテーマをどストレートに描く姿勢はわりと嫌いじゃないのでプラス1点です。 とはいえ映画の出来としては「君の名は」には遠く及びません。 同じセカイ系であっても、一般の人が観る劇場映画なんだからあれくらいうまくそれを隠してほしいのですよ、えぇ。
あとは映画について細かい事をちょこちょこ書くと… まず前作よりさらに具体的に描かれる細かなリアル東京の姿には感動しました。 描かれる街があまりに具体的なので東京の地理に明るいかどうか…で受ける印象がだいぶ変わってくるのではないでしょうか?
たとえば、冒頭の病院のシーン、彼女が新宿南口のあの病院から小田急の踏切を渡って代々木のビルに行くシーンわけですが、あのシーンで実際に「この踏切閉まると長いんだよな」とか「ここ右まがったひつじ屋おいしいんだよな」なんて事が頭に浮かぶかどうかでだいぶ映画の印象変わるんじゃないかな、と。 そう思うくらい具体的なややマニアックな新宿池袋田端近辺の街が描かれていて、個人的には好きでした。東京好きなんで。
あとどうしても言いたい日本の劇場アニメでよくある「興業のために声優を使わない事」に関しての問題です。 個人的には「キャスティングが嫌だからアニメ映画を観にいかない」人もいる事を制作会社には強く訴えたいのです。
平泉はネタとして割り切るとしても、本田翼はかなり残念。小栗の役は「これが平田だったら…」といちいち思わせてくれるし、じゃぁジブリのように声優嫌いなのかというと、花澤綾音というオタ向きな声優いじりして遊んでくるし、もうどうしたいのよ?と。 主要キャストについては知名度の高い俳優を使えという製作会社の意向なんでしょうが、こういうのはほんとーにやめていただきたい。
そんな中、主演の二人の演技はなかなかよかったと思います。 特に昨今売れてる森七については、今後普通に声優の仕事普通にやってけるよなぁ、と感心するほど。 まぁ主役の声がひどいと例えばプロメアみたいに「観てらんない」ような事態に陥る可能性が多分にあるわけで、そこはさすがに配慮したんでしょうけどね。 【あばれて万歳】さん [地上波(邦画)] 7点(2021-01-04 02:45:06) (良:1票) |
4.映画館で観たときは消化不良に終わったが、 自宅での再視聴でその良さに気付いた。 子どもから大人になる過程で誰もが経験する 理性と感情のアンバランスの中にだけ存在できる 「かけがいのないもの」が見事に映像化されている。 【煮タマゴ】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-06-08 01:34:06) (良:1票) |
3.公開開始時には何も言ってなかった小学生の息子が今頃になって「見たい」と言い出したので、一緒に見に行ったのですが(むしろ当初興味を示していた娘は欠席)、映画が始まってみると、劇中に、最近息子が興味津々のオカルト雑誌『ムー』が登場(ホント、血は争えませぬ・・・)。さてはコレが息子の目当てであったかと、映画が終わって彼を問い詰めると「いや、まさか『ムー』が出てくるなんて、知らんかってん」とのこと。それだけならまだしも、続けて彼が言うには「でも、『君の名は。』にもちょっとだけ『ムー』出てきたで」。ってオイオイ、オマエはいつからそんなムー的都市伝説を語るようになったんだ? ⇒でもこれは事実なんです、ハイ。『君の名は。』にも、床に伏せて置かれた『ムー』誌が、一瞬だけ登場します。息子曰く、「見てたらたまたま見つけた」とのこと。トホホ。 前置き長くなりましたスミマセン。それにしても、前作に続いてまた、心をチクチクと刺すような映画を作ってきますねえ。災害にあうことなく生き続ける者たちは、災害にあって死んいった人々に対し、何ができるのか、同情だけはしつつも結局は忘れ去って日常を送るだけじゃないのか、という問いを前作では突きつけられたように感じたのですが、本作ではさらにストレートに、我々の原罪を糾弾しているかのようです。「今の我々のぬるま湯のような生活は、不公平の上に成り立ってるんじゃないのか、誰かの犠牲の上になりたっているんじゃないのか、それをみんな分かっていながらノホホンと分かってないフリをしてるんじゃないか」という、痛烈な問い。突き刺さるなあ。 作品は例によってスピード感があり、これは、間を省略したような断片的なシーンを積み重ねる構成によるもので、「もうちょっと間をとってじっくり描くシーンも見たいなあ」と感じなくもないんですけどね。でも、このやや軽い語り口であっても、登場人物たちを印象的に描くことでちゃんと物語を盛り上げていくし、クライマックスの主人公が走るシーンへと繋がっていくのが、いいんですねえ。ここはあくまで、走り「続ける」。その姿の持つ魅力。 舞台となっているのが、雨が降り続く東京の街。異常気象ってのは、騒ぎすぎるのもどうかと思いつつもやはり、我々にとって昨今の大きな不安となっていることは事実。その中で、雨、水、といったものがアニメーションの中で巧みに取り入れられていて(「風」はあまり出てこない作品ですが)、印象に残ります。その雨の中のネオンサイン、あるいは雲が切れて太陽が顔を出す、光の描写もまた印象的。一方、日が差さない「暗さ」をアニメでどう描くか、ってのは、少し難しいところがありますねえ。 【鱗歌】さん [映画館(邦画)] 9点(2019-09-28 00:25:51) (良:1票) |
2.夏休みということで、小学高学年の娘と二人で観に行きました(特に監督や作品のファンというわけではありません) 見終わった後、妙な違和感が・・・ 違和感の理由として、この作品は完全な恋愛映画で、もっと深い部分での感動を期待していた自分としては「ちょっと違うな」という感情が その理由だと考えられます。 自分たち世代でいえばアニメといえば「ラピュタ」「ナウシカ」「もののけ姫」など作品の裏に隠された強いメッセージ性を映画に期待していたので、「天気の子」というタイトルから、異常気象による自然災害など、もっと深い所でのメッセージを感じたかったのですが・・・完全な恋愛映画です。 まぁ映像は綺麗でしたし、恋愛ものとして割り切って鑑賞すればそんなに悪くない作品ではないでしょう。 【N.Y.L.L】さん [映画館(邦画)] 3点(2019-07-31 20:14:36) (良:1票) |
1.つまらなくはない。 途中、ちょっと泣けたし。 ただねえ、印象は「君の名は。の縮小再生産だなあ」。 特に、「君の名は。」同様、エピローグが結構長いんだけど、そこで結構マイナス点。 この終わり方は、あまりいい気分じゃない。 主人公の最後のセリフに、自分は「そうかなあ?」と思ってしまった。 【まかだ】さん [映画館(邦画)] 7点(2019-07-19 22:39:55) (良:1票) |