4.初めて“独りで”観に行った思い出の作品。ですが実は「当時、あんまり話題にならなくて、誰も誘えなかった(私一人、観たい観たいと盛り上がってた)」という事の裏返しなんですけどね~。ピーター・ウィアー監督は、前作『刑事ジョン・ブック/目撃者』で、現代文明を拒絶する人々、アーミッシュを取り上げてましたが、今作では逆に、科学技術を信奉する変人発明家が主人公。前作ではまだ若干ヒーロー色の残っていたハリソン・フォードがユニークな役作りでこの変人役に挑戦しております。この主人公もまた、現代社会から距離を置いた特異な存在、映画において現代社会を相対化し批判的に眺める存在である点は、前作のアーミッシュと同じとも言えます。彼は雇われの身でありがら、雇い主の要求に応えず自分の発明に没頭。資本主義に対して批判的、米国社会を憂いているが、購入しようとしたテープが日本製と知ると「国産品を出せ」と怒るあたりを見ると、愛国者には違いない。父なる国を愛する余り、その現状に耐えられない彼は、自分の理想実現のため、全てを投げ出しジャングルへ移住。家族もこんな親父によくついていく。食器洗いの最中に引越しという突拍子の無さにも、妻は笑顔で帯同する。さて、いよいよジャングルに移住した一家、親父の発明品の数々に囲まれた、理想の村をここに実現していく。この辺の描写は、「本当にこんな事実現できるの?」というツッコミは抜きにして、「発明」なる香具師的イメージが生み出すファンタジー世界、ユーモラスな味わいがあります。密林の中の巨大冷蔵庫。ちょっと“フィツカラってる”映像ではありませんか。しかし、“宗教”あるいは“銃(武力)”といった外部からの侵入者の前に、理想世界は挫折していく・・・。主人公が忌み嫌った「押し付けがましいアメリカ国家」、しかし結局は彼自身が家族にとって、その「国家」と同じ存在になっていく。父権を乱用し、意志を強制し、仲間を野蛮人呼ばわりし、果ては息子を裏切りもの呼ばわりする・・・。映画のラスト、主人公の息子の独白は、父を愛し、父を受け入れ、その上で「僕の世界は広がった」と語る。つまり、我々もまた、父なる国家を、その欠点を認た上で愛せよ、そして視線は自国に偏ることなく世界へ向けよ、ってな感じのメッセージ、ですかね。まさかこの息子が父と同じ“インディ・ジョーンズ”になっちまうとは、当時想像もしませんでしたが。 【鱗歌】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-10-21 09:09:57) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 アリー(ハリソン・フォード)は文明社会とアメリカという国家・組織に背を向け、未開の地へと旅立ち、そこに自分の文明社会を築こうとする。「使わないものを買い、使えるものを捨てる今のアメリカ。」に始まって、何かとアメリカのことをぼろくそにこきおろし、正しい文明社会というものをまるでこれがお手本だと言わんばかりに築いていく。 しかしアリーが築く文明は、やはり現代文明を色濃く反映していて、冷凍装置を使ったクーラーの設置はまさにその典型。しかも、その機械が社会を滅ぼしてしまう危うさを秘めたものだという重大な事実は、あの大事故が起きるまで本人しか知らなかった。まるで現代の原発のよう。 そして、それまではその冷凍装置やアリーが築いた文明の恩恵を受けていた住民達が、事故が起きるや否や、アリーに向ける敵対的な視線。(ほんのワンショットではありましたが・・・)まさに、大多数の人々が、その仕組みを理解できないままに恩恵だけを享受している現代文明社会への痛烈な警鐘を感じます。震災と原発事故があっただけに・・・ さながらあの3人組は津波のような存在でした。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-01-04 04:05:43) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ハリソン・フォードとピーター・ウィアーの「刑事ジョン・ブック/目撃者」の翌年の作品であるのにマイナーなのは、問題作・異色作であっても見ていて楽しい作品ではないからだろう。 アメリカの物質社会を嫌い、家族を連れて中米のジャングルに飛び込んだ発明家アリー。 当初は知恵で順風に乗り切っていた彼が次第に壊れていく様は、大自然の中で孤立した人間の弱さ、傲慢さを滲ませて苦い。 文明から逃れたはずの彼が密林に自分の文明を築こうとして敗れ去るアイロニー。 演技派というわけではないフォードには微妙な役柄であり、結果的に変り者の父親に複雑な感情を抱く息子役のリバー・フェニックスが際立つことに。(「スタンド・バイ・ミー」よりピュアなイメージ、これが縁で「最後の聖戦」に?) 父を超えて生きようとする彼の、目を開かれた言葉が緑と水の世界に響く。 【レイン】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-12-05 01:20:38) (良:1票) |
1.この映画では人間の傲慢さと息子の自立を描いた作品ではないでしょうか。
まず、父親の矛盾した姿。 文明を嫌ってジェロニモに来たのに結局、文明を作ったり、山奥の部族に自分の知識をひけらかす。 世界の帝王であるアメリカを嫌っているくせに未開の地の帝王になろうとする。 ハリソンフォード演じる父は、矛盾していて傲慢な姿で人間の深い心理をついているかもしれないと思いました。
次に息子、チャーリーの自立。 戸惑いながら父の言うことにしたがっていたチャーリーが、だんだん自分の意志で動き出します。「俺はどうだ?」と聞かれて「最高だよ」としかいえなかったのに最後には「大丈夫だ」と父を気遣う姿勢を見せています。この台詞でチャーリーは自立し、世界が広がったのだなと思いました。
明るくなる映画ではないので点数は低めですが、メッセージの強い映画でした。でも、ちょっと演出がなぁ。言いたいことは良いはずなんですが、見てて飽きが来てしまったシーンもあったのでこの点数。
ハリソンフォード、そしてリバーフェニックスの演技は素晴らしかったです。 父に戸惑ったり、弟達を気遣うシーンなど名演技でした。
【うらわっこ】さん [DVD(字幕)] 5点(2005-12-01 20:17:34) (良:1票) |