《改行表示》 4.《ネタバレ》 水曜日。平日1200円の映画館で観て来ました。 ニュース映像でカンヌの観客が言った「これまでの細田作品で一番完成度が高かった。」その感想は本当か?確かめに・・・ テレビの所さんの番組でやってた密着取材を事前に見たためか、バーチャル空間の凄いCGも想像の範囲内で驚きには至らず。やぱり事前に情報入れちゃいかん!と反省。 さて、「これまでの細田作品で一番完成度が高い」に関しては、残念!“否”でした。 理由は、物語りを複雑に(=幾つかのテーマを並列に)描いたため、共感するポイントが分散していること。 主人公すずや、彼女を取り巻く人たちの人格、相互のつながり方が過去の細田作品の焼き直しに見えたこと。 一番の問題は、物語の展開に無理を感じたことでしょう。 以下は【ネタバレ】を含みます。 家族の不幸で自閉的になる → 親友が実は名家の電脳少女! → たまたま作ったアバターが電脳世界一の歌姫になった! → 誰も見つけられない破壊者の隠れ家へ潜入! → その正体を突き止めた! → その結果、現実世界でDV親から子供を救った!しかもたった一人で! それと同時に、現実では自分自身と学園のマドンナの恋を成就させている。 悩み多きJKヒロインなのに、いくら何でもスーパー大活躍過ぎるでしょうよ(笑) 周囲の助けを借りて、がんばって電脳世界で歌姫になり、現実の苦しみに希望を与えるコンサートをする。 現実では「のど自慢」に出て鐘2つ。それで充分感動できるのに・・・ DVから子供を救う展開も、現代的なテーマを入れたのでしょうが無理やりな感じ。 警察に保護させなさい!証拠映像あるし、警察の方が現着も速い、下手すりゃ刺されちゃうぞ。 トラウマを打ち破るイニシエーションとして、クレヨンしんちゃん「おとな帝国の逆襲」の階段登りと同じ演出なのでしょうが、電脳歌姫になった時点で、彼女はトップ・ユーチューバー以上の「世界を変える力」を得ている訳だから、そこは「歌の力」で暴力を打ち破らないと一貫性がなくなる。ベルが歌うシーンには感動させられたから、すずの歌こそ映画の中心にするべき。 《電脳世界の歌の力》で現実を救う話だったら、「サマーウォーズ」のAIの暴走を《現実の家族の力》で止める話と対(つい)を成して『細田守電脳二部作!』になったんじゃない!?て思ってしまう。 映像のクオリティは高いし、電脳世界で歌うシーンには感動する。嫌いじゃないけど、物語が散漫だったという感想です。 ※作る側の視点でしか映画を語れない、理屈っぽい嫌なオトナの感想(笑)このアニメが大好きな人ゴメンなさいね。 【墨石亜乱】さん [映画館(邦画)] 6点(2021-10-31 18:39:06) (良:2票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 ラッパーで映画評論家の宇多丸師匠がかつて、「映画の作中で現実離れした秀逸な歌を扱うとき、大多数の視聴者を納得、感動させる力をもつ歌を現実に作り出さねばならず、それは相当難しい」と言っていたのを思い出した。 そういう意味では、中村佳穂さんの歌は、堂々とその難問をクリアしているように思う。よく通る透き通った声と響き渡る声量、リズミカルで情感豊かな歌唱力にほれぼれしてしまった。 佳穂さんこそ、ベルの声を当てながら、Uの世界を実体験し満喫されていたのではないかと思う。 「U」と「竜」、「ベル」と「鈴」。ネーミングにセンスが感じられて、面白そうと思ったけれど、ストーリーには残念ながら引き込まれなかった。 私がこの作品に対して、ものすごくもったいないと思ったのは、日本最後の清流、四万十川をはじめとする美しい自然と、ベルの歌声が、なんら呼応するように作られていないこと。 呼応しているのは、デジタル処理されたきらきら光る文字だったり、紙吹雪もどきのデコレーションだったりで、それはそれで美しいんだけれど、 これらが「命としての生」を表現しているかというと、死生には縁のないアイテムだから美醜のサイクルをなんら持たず、結局還元されることのない一方通行の美でしかない。 ベルには、スピーカーを満載した仮想クジラのステージから降りて、本物の風が吹く清流をバックに、アカペラで歌ってほしかった。 そうすれば、印象的な対比として心に沁みた演出になったのではないかと思う。 (何十年も昔、胃薬「サクロン」のCMで、爽やかな緑の木々と清流の映像下でシンガーソングライターの谷山浩子が「風になれ ~みどりのために」を歌っていたのを懐かしく思い出した。ちょうどあんな感じのテイストになったと思う) もっと欲を言えば、高知県出身のキャラたちは現地の方言で喋ってほしかった。そうすれば、関東在住のキャラや仮想空間上の差別化がはっきり出る。 たとえば、同じすずでも『この世界の片隅に』の彼女は広島弁を喋り、土地柄がキャラの中に沁み込んでいてリアルな存在感があるのに対して、この作品の主人公は、まるで都会から田舎に移り住んできたような脆弱さ、よそよそしさがある。 スマホの小さな画面ばかりに視線を落としている彼女には、顔をあげて風光明媚な故郷を眺めるシーンがほとんど出てこない。 この透き通った声がデジタル機器に慣れ親しんで成長してきたものだとしたら、感動は大いに半減してしまうし、そもそも何のための自然描写なのだろう? 「現実はやり直せない。しかし、Uならやり直せる」 という冒頭の言葉に問いたい。やり直せるって、いつまで? 永遠に? 実態(当人)は現実世界にいるのだから、どうしたって引きずられる。Uの弱点はそこ。完全に切り離して意識だけを仮想空間に存在させることは不可能。 そこを、四万十川を絡めて突けばよかった。死を招いた川から始まり、命の再生の川で終われば非常にストレートで、観客の集中力もあちこち振り回されずにすんだろう。 『美女と野獣』を踏襲するために、竜をむりやり話にねじこんだ印象がぬぐえない。 こんな竜、必要だった? 【tony】さん [インターネット(邦画)] 6点(2022-08-09 22:28:21) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 まずはじめにハテナ?と思ったこと。 スマフォのアプリゲームであそこまで出来るか?仮想空間としてもあそこまでリアルに動いたり感情をダイレクトに伝達できるか?それと登録者数50億って約世界の半数じゃん!ありえないって。まあじゃあそれを容認したとしてもだ、その50億の中で才能ある人物なんてそれこそ沢山いるわけで、その中でたった一人主人公のすずが注目浴びるってなんかもう狭い世界にしか感じられない。で、そのすず=ベルと運命的な出会いをする竜。その竜の正体が同じ日本人って...どんだけの確率だよ!でその竜にしてもだ!虐待からのストレスの権化なのかもしれないが、いやいや待って、50億でしょ!50億の中で同じような目に遭ってる人たちどんだけよ!ストレスに押しつぶされそうな人たちどんだけよ!なんで竜だけなのって話。だからさ、50億て数字がこの作品にあまりにも負荷を掛けすぎちゃってると思うんですよ。もっと他にやりようなかったのかな。 とここまではハテナ?ツッコミを入れるところをあげましたが、ここからはめっちゃ良かった点をあげたいと思います。 圧倒的に絵が綺麗!その美しい色彩の世界にただただ酔いしれた。主人公すずを演じた中村佳穂さん。シンガーソングライターである彼女にとって今回が声優初挑戦。決して上手いというわけではないけれど、29という年齢なのに思春期の少女らしさが醸し出されていて、なかなか味わいがあって良かった。歌声も透き通っていてこの作品にピッタリはまってた。登場するキャラのキャラ作りがほどほどなのがよい。必要以上に細かな設定付を押し付けられないから、脇役のキャラとメインキャラとの住み分けがくっきりしていてとても見やすい。飼い犬の足のことや、欠けたマグカップもセリなどで説明しないのも良かった。 総評すると随分と大風呂敷を広げたもんだと思うけれど、それを踏まえた上でもこの一人の少女の成長物語は、なかなかどうして、十二分に共感できる物語だった。問題提示に対する明確な答えはなかったけれど、あれはあれで良いと思う。例えばだけれど、虐待を受けてたけいくんの一家がその後もっと悲劇な方向にいってしまったとしたら。もしもすずがその後ネット上で叩かれまくったら。リアルに考えるとその方がありかもしれない。でもそれを見たいかって。すずやけいくんは今回の件で強く生きると決めたんだから、その後の彼らについての物語は、描かなくて正解だと。それとすずが竜のことを気になったのも、なんとなく、これしかないでしょ。人が人を気になるのってなんとなくじゃん。 6点はちょっと甘めに付けましたが、自分に酔いしれる芸術作品でもなく、かといって媚を売るような大衆娯楽でもない、細田監督なりの挑戦とアニメ映画に対する愛情を感じ取れたのでこの点数にしました。 |
1.《ネタバレ》 だいぶ前に特報を観ただけで記憶から消えており、冒頭の説明で「また仮想現実の世界か」と思いましたが、その世界Uに堂々と現れるベル(中村佳穂)の歌姫っぷりは圧巻で「millennium parade」という音楽家集団との楽曲はどれもパワーがあった。歌が持っている力は凄いなと改めて思いました。 そのベルの正体は田舎に住む朴訥な女子高生すず。幼い頃から歌うのが大好きだった彼女は母親の事故の後から心を閉ざし気味になり人前でうまく歌えなくなってしまった。その彼女をUの世界に誘ってくれたプロデューサーで親友ヒロちゃん、幼馴染しのぶ、みんなの人気者ルカちゃん、一人カヌー部カミシン、すずを優しく見守る合唱隊のお姉様方と現実パートは良さ気な雰囲気が抜群にあった。しかし、タイトルの竜が登場しベルが追い求めだす辺りから微妙な気配になりましたね。Uの世界を荒らしまくる竜と自警団とのバトルは顔見せと状況説明として良いとして、隠れ家に入った後は『美女と野獣』の焼き直しにしか見えないシーンが多いし、すずがなぜ竜に拘るのかも分からなかったな。その竜の正体や現状を知り現実でも救いに向かうトコや顛末など全てが希薄で中途半端にしか見えず、盛り込みすぎて収集つかなくなってしまった感じ。普通にトラウマで歌えなくなった少女が自分を取り戻すまでの青春物語で良かったのにな。自分の正体を探られるのを嫌がってるのに竜を探るし、終盤はブレてしのぶに持っていかれてしまうがすずを理解し見守り背中を押す役回りはヒロちゃんに任せた方がまとまった気がするし、取って付けたような児童虐待ネタは薄っぺらいし色々と残念。『おおかみこどもの雨と雪』以降、細田は一人で脚本を担当してますが補佐や手直しをしてくれる人と組んだ方が良いと思う。 シンガーソングライターが本業で声優初挑戦だったというすず/ベル役の中村佳穂、ヒロちゃん役の幾田りらはとても上手かった。ボーカルをやってるだけあって勘が良いのでしょうかね。「有名人を使わず声優を」とよく言われてますがこういう達者な人もいるから難しいトコですね。 【ロカホリ】さん [映画館(邦画)] 6点(2021-07-21 21:02:14) (良:1票) |