4.映画史における伝説や逸話が、何十年にもわたって先行し、流布し、世界中の映画ファンの「期待値」があまりにも大きく肥大したこの映画企画に挑み、“作品”として創造してみせたことを、先ずは称賛すべきだろうと思う。
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督は、「メッセージ」や「ブレードランナー2049」でも見せたその芸術性の高さと、芳醇なイマジネーションを最大限発揮し、“DUNE”の世界観を見事にクリエイトしている。 この映画監督の素晴らしさは、ただ単に芸術的な画作りができるということではなく、絵画のように研ぎ澄まされた映像表現が、ストーリーを紡ぐ登場人物たちの感情や人生観にきちんと直結していることにある。 どこかのインタビューで、ヴィルヌーヴ監督自身が力を込めて話していた通り、映画製作における最優先事項は、映像の美しさや音響の素晴らしさではなく、その根幹に存在すべき人間の“ストーリー”なのだ。 そういう映画作りにおける本質を、圧倒的な創造性の中で表現できるこの映画監督の立ち位置は、今後益々孤高のものとなっていくだろう。
そして、本作も、そのヴィルヌーヴ監督の孤高の創造性に裏打ちされた見事な映画作品だった……とは思う。
ただし、この映画が、映画史における複雑に入り組んだ文脈、そこに深く絡む期待と宿命、それによるあまりにも高くそびえる“ハードル”を超える作品であったかと言うと、そこは「否」と言わざるを得ない。
僕自身は、本作で初めて“DUNE”の世界観に触れたのだが、1965年に発表されたSF小説「デューン 砂の惑星」と、その「映画化」への挑戦の歴史が、その後に創造されたあらゆる作品に多大な影響を与えていたことはよく理解できた。
製作開始直前にとん挫した1970年代の映画化企画による“遺産”が、その後の「スターウォーズ」や「エイリアン」に大きな影響を与えたことは言わずもがなだろうし、映画の構造としては、「マトリックス」や「ロード・オブ・ザ・リング」や「アバター」も、その系譜の上にあることは間違いない。 日本の作品に目を向けると、「風の谷のナウシカ」がその筆頭だろう。 描き出された未来世界のビジュアル、文化、慣習、人々の価値観や相関図に至るまで、あらゆる側面が色濃く影響していたことは明らかだった。
今回の映画化作品が、上述の歴史的大作の数々に匹敵するポテンシャルと魅力を備えていること自体は疑いようもない。
ただ、それらの作品が映画史上において果たしたような「革新」が、本作そのものに備わっていたかと言うと、残念ながらそれは無かったと思える。 壮大で果てしない映像表現も、体の奥底まで響き渡るような音響表現も、その上で息づく人物たちの深い生き様も、映画作品として最高水準のものであったことは間違いないけれど、そこに、心が沸き立つような映画的革新を感じることはできなかった。
「革新」を宿命づけられるなど、そもそもが無理難題なのだとは思う。 「スターウォーズ」にしたって、「マトリックス」にしたって、時代の中でふいに誕生したからこそ、その驚きと共に「革新」に至るのであって、予定調和の上の革新などあるわけがないのだ。 そういう意味で本作は、もしかするとたとえ「傑作」だったとしても「失敗作」という寸評から逃れられないあまりにも重い宿命を背負った作品だったのかもしれない。
だからこそ、その無理難題に果敢に挑み、映画作品として仕上げて見せたこと自体が素晴らしい成果だったと思う。 そして、その成果は、この後製作される“PART 2”によっていかようにも転じるだろう。 大きく上方修正されて、改めて革新的な「名作」として映画史に残るかもしれないし、逆に「駄作」として人々の記憶に残る結果に終わるかもしれない。
めでたくも続編の製作は決定しているらしいので、映画ファンとしては引き続き心待ちにしたい。 ラスト、主人公本人の台詞で明言された通り、この“伝説”は「始まったばかり」なのだから。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 7点(2021-11-09 21:49:44) |
3.原作未読。
劇場で体感して大正解。 ハンス・ジマーさんの音楽と効果音が凄い。 音が広がって絡まりあって、そして包まれる。 これが砂の惑星か・・・正にそこに居るような感覚でした。 その点だけでも劇場鑑賞で良かった。
映画としては進行がゆっくりしている。 鑑賞後に情報収集したら、原作を尊重した作りだとか。 監督スタッフの原作へのリスペクトを感じた。
リンチ監督の「砂の惑星」では、サンドワームの三つ分かれの口が不満だった。 広告が過剰で期待が大き過ぎた。 そういう時代でした。 本作では砂のCG、あえて現れないサンドワームは上質だと感じた。 テクノロジーお陰でイメージを映像に表現できる。 素晴らしい進歩。
そして、続編の制作が始まったそうです。 楽しみに待ちたいと思う。 【たんぽぽ】さん [映画館(字幕)] 7点(2021-10-31 15:11:43) |
2.二部作(三部作⁈)の1発目と言うこともあり評価するのが難しいし、正直面白いかと言われると微妙なところもありますがヴィルヌー節を心ゆくまで堪能出来たので私は大満足です。 レベッカファーガソンが本当に美しくてウットリしたり、髭を剃ったジェイソンモモアが渡辺謙そっくりだったり、見たことあるけど誰かと思えばジョシュブローリンだったり、筋肉ドラッギーだと思ってたデイヴバディスタが非常に良い役者だったり、貫禄ある公爵がまさかのSWの若造のオスカーアイザックだったり、デンゼイヤに何かイラッときたりと、発見の多い配役も大変結構でした。 興業が成功して素晴らしい次作が完成することを祈ります。 ホドロフスキーは本作を観たのかな。彼にも想いを馳せて。 【Kの紅茶】さん [映画館(字幕)] 7点(2021-10-22 20:45:20) |
1.とても、とても丁寧に作られている。原作へのリスペクトもひしひしと感じる。 しかし、リスペクトしすぎるあまり、一本の映画としては味気ない。 小説の映画化を名曲のカバーとして喩えるならば、本作はカラオケの域を越えていない。歌唱力はめちゃくちゃ高いけど、あまりに癖がないから「この人、歌上手いな」以上の感想が出てこない。
しかし、一見の価値は十二分にある。トンボ型の航空機や砂虫などのアートワークは満点。 ヴィルヌーブさん、ワーナー・ブラザースさん、続編も宜しくお願いします。 【Y-300】さん [映画館(字幕)] 7点(2021-10-18 21:11:04) (良:1票) |