4.『グラン・トリノ』を見た時の感動、というのは、これがきっと最後の監督・主演作になるだろう、という予感ゆえに感動したのか、それとも感動したがゆえにそのような予感がしたのか。今となっては渾然となってよくわからないのですが、はっきりしているのは、その予感は外れて、間遠になったとは言えその後も、現時点で2本、監督・主演の兼業をこなしている、ということで。なんという映画への情熱とバイタリティ。老人、おそるべし。 この主人公は、煮ても焼いても食えない奴だ、と思ったら、自分で主演やるんですかねえ。頑固者のイメージ。それが、自らの老いた姿とともに、映画の中に焼き付けられています。今回の主人公も、推定年齢200歳くらい(?)のジジイ。カウボーイの生き残り。かつて南北戦争でも戦ったことがある、と言われても驚かないような、そんな人。 この物語の主人公がこれほど年老いている必然性があるのか、と言われるとよくわからないけれど、とにかく、イーストウッドは「今の自分」をさらけだし、「今の自分」を主人公に重ね合わせる。御年、90歳。乗ってたクルマが不調で、車体の下をのぞき込む、そんな仕草だけでも、ゴクロウサマと言いたくなる、そんな光景となっています。 しかししかし、映画たるもの、カメラがあれば、肉体の衰えなど乗り越えた動きのあるシーンも作り出すことができる。ニワトリを追いかけるシーンの張り切りぶりなどは、映画に動きを与えるとともに、どことなくユーモラス。 少年と旅をするロードムービー、のようでいて、実はそんなに旅をしていないような気もするのですが、イーストウッドはとにかく、若い人に何かを伝えたがっている、という雰囲気が伝わってきます。何を伝えたがっているのかというと、このマッチョ教の教祖のような人が、今さらになってではありますが、マッチョだけじゃいかんのよ、と。 というか、チキン(臆病)もマッチョも、紙一重。大事なのは、勇気を持つこと。 などと言ってしまうと安っぽくなるけれど、だからこそ、言うのではなく、それを映画で表現してみせる。体現してみせる。 イーストウッドは例によってカウボーイハットを目深にかぶり、陰になった目元がよく見えないのだけど、帽子を脱いでその目元が露わになると、妙に可愛らしい瞳がそこにあって。 ジイサン、すっかり丸くなった・・・のかねえ。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-03-16 04:54:32) (良:1票) |
3.イーストウッド監督・主演でなければ、おそらく石を投げられるような作品。いわゆるロードムービーの部類なんでしょうが、とにかくドラマがなさすぎるというか、ハラハラとかワクワクとかさせてくれる部分がほぼ皆無。プチ出来事をフワッとくぐり抜けて一件落着という感じ。まあ老イーストウッドのイメージビデオのようなものということで。 ただし、感情を制御できなくなるその辺の老人よりはずっとマシ。この作品から流れる終始温厚な雰囲気は、老いてもかくありたいという理想像のような気がします。 【眉山】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-10-28 03:56:56) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ★原作小説があるようだが、未読。子供の誘拐だのの絡むストーリーに、ミスティック・リバーやチェンジリングみたいな緊張感を予想もしたが、そんなこともないほのぼのした映画でした。 ★あの頃のメキシコがどんなだったか自分は知らないが、自分はあんなとこ行ったらあっという間にオダブツだろうな~よく90のじいちゃんが一人で行くなーと序盤は思っていたが、ストーリーは案外障害もなく進行していく。 ★ストリートキッズと化したラフォは牧場経営をダシにあっさりマイクに付いてくし、マイクたちを追いかけるラフォ母の用心棒は無能だし、麻薬取締の警官もそれほど深刻な展開もせずクリアしちゃうし、車盗まれてもすぐ次が(日本の置き傘(もちろん悪い意味で)感覚で)利用できたり。 ★そしてレストランの女主人マルタの親切に心をほだされ・・・最後しっかり彼女をモノにしてるのはフフッとしました。好きな女性や好きな動物たちに囲まれて暮らすのが一番って、なんてノーマルな着地。 ★まあ作中でもはや自らが「マッチョ」ではないことを認めちゃってますからね。それを期待して観るのは間違いでしょう。それでも所々粋なセリフ回しは健在ですが。あと、あ、と思ったのは非行少年ぽいラフォが案外信心深く(教会を宿代わりにするマイクを非難する)マイクもそれをあからさまに否定したりしないこと。やっぱりこれまでのイーストウッド作品らしくないのかな、なんて。 ★とにかく90超えたイーストウッドが監督主演してる!、ってことに価値を見出せる人の映画じゃないかなと。(縁起でもないが)いつ遺作になってもおかしくないんだし。なので甘く7点。 ★余談 雄鶏のマッチョ君がカシコ過ぎてかわいい(笑)。ムダ鳴きもせず車では大人しく座席にいるし、その車盗まれてマイクとラフォがトボトボ歩くのにトコトコついてくし(!)、悪人には飛び掛かって撃退するし・・・うちの実家に昔いたニワトリなんか、〇鹿なんで餌の時しか見向きもしないし、朝でもない一日中コケー!とトキの声上げてうるさかったぞ。個人的にはマッチョ君に主演男優賞あげてもいい(^^)/ 食べちゃダメだよ! 【wagasi】さん [映画館(字幕)] 7点(2022-01-30 16:53:02) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 落ちぶれた元ロデオスターのマイクと少年の旅路。路線的にはよくある系でイーストウッドにしてみれば手慣れた内容だった気がするが、「イーストウッドが描く真の強さ(マッチョ)」と宣伝されていた割にかなり淡白な出来栄えでちょっと残念だったかな。舞台は整ったってトコで終わっちゃった感があり消化不良。苦労と挫折を味わい生きる意味を失っていた男が人生を取り戻すのはいいとして、その老人を見て成長しつつあった少年との別れのシーンはもうちょっと後の展開を匂わせる演出が欲しかった気がする。裁判のコマとして息子を欲しがってる親父をマイクは知っているだけにね。まあ彼のように老いと向き合い上手く付き合うのは難しいですね。 長く滞在することになった村の住民が次々に動物を連れて来て診るハメになった時の「俺はドリトル先生か」や、メキシコ警官に停められた時の「どうせお前らに言葉はわからねえだろ」的な英語での罵詈雑言などイーストウッド節は健在で笑った。あの年齢でも最後にはしっかり女性をゲットするのもさすがだ。イーストウッド91歳はまだ現役だわ。 【ロカホリ】さん [映画館(字幕)] 5点(2022-01-14 23:58:18) (良:1票) |