379.ここのジョナサン・デミ作品評をつらつら眺めていて気がついた。『羊たちの沈黙』以外はえらく評価が低い…この人、名監督だと思っていたけど違うようだ。そう思ったら、本作の評価がどうして高いのかわかってきた。 この映画の価値は「レクター博士」の発明にある。ほぼ全て檻の中で演技しなければならないレクター役は、俳優にとって厳しい試練だ。アメリカ式のメソッド演技では、何カットもこなす前に早晩限界が来るだろう。レクターはアクターズ・スタジオ風の「なりきり演技」では突破できない矛盾だらけの難物だからだ。そこでやってきたのがアンソニー・ホプキンス。シェイクスピアのたっぷり染み込んだ舞台俳優だ。彼はほぼ立ったままで、表情も変えず、人物を象徴する装飾品もなく、長い長い科白だけで演技した。この爺さんはアメリカ演劇を無礼なまでに無視して、シェイクスピアを持ち込んだのだ…多分これはデミ監督の発案じゃないだろう。ロジャー・コーマン門下生の彼に、こんな大胆な発想ができるわけがない。この映画の特色は「ハリウッド演技の否定」から始まったと言って過言じゃない。 レクターの演技を生かすにはカウンター側のサポートも必要だ。しかもレクターは作中ほとんど主人公クラリスとしか話さない。こちらもシェイクスピアで行くべきか? だが、キャスティングされたジョデイ・フォスターはホプキンスに、張り裂けんばかりの大声で「NO!」を叩きつける。彼女の演技は教科書的なメソッド演技だと思うが、素性は天才子役だ。中学時代にデ・ニーロやカイテルと対等に渡り合った怪物サラブレッドで、知能指数もめっちゃ高く、素の人間としてはコッチの方がよっぽどレクターだ。そんな彼女は、シェイクスピア劇風のセリフの抑揚ではなく目の演技で対抗する。ほとんど表情のみで、強気の中に潜む「弱い少女」を浮かび上がらせる。これこそサラブレッドならではの、神域メソッド演技だ。彼女はこの役を演じる事が、必然的に「イギリス演劇界VSハリウッド映画界」の構図になってしまう事を理解していただろうか? オイラはそうだったと思いたい。 長い歴史、多くの作品によって培われてきた2つの演技方法のガチンコ対決。これが本作の魅力の根底になっていると考えていい。もちろん勝者はない。オイラには、対決をフィルムに収めたデミ監督が不当にも《漁夫の利》を得たような気がしてならないんだ…。 【エスねこ】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-05-03 17:25:05) (良:5票) |
378.ネタバレ ずっーっと前に1度観てたのに評価をしなかったのは、
もうかなり前の記憶でしたのとオチもわかっていたから・・
「ハンニバル」をまだ未見でしたのでこの機会に両方観ることに。
まずこちらから2度目の観賞ですが・・
前に観たときはよくできた映画だとは認めてはいたものの、
正直ソツがなくて今ひとつだったと記憶していました。
が・・この作品がなぜアカデミー賞を総ナメしたのか(この特殊なジャンルであるのに!)
ようやくわかったような気がします。
心理描写が深いこととやはり哲学性を感じたから。
そして何よりも主演二人の演技が素晴らしい。
ホラーにも属されるかもしれない危ういサスペンス娯楽でありながら、
こんなに深い描写をしていたんだなぁ・・
前に観たときには犯人である連続殺人犯がやけにマヌケに見え、
「悪魔のいけにえ」と同じじゃあないかと思っていたのですが、
これはああいう系ではなかったんですよね。
主題はまさにクラリスのトラウマ救済とレクターの好奇心です。
ジョディは体格も小柄でいて中性的な魅力を感じるし、
表情もあどけなくもあり色気もあります。
その賢明さ聡明さは観ていて力強くもあり、
怪奇殺人の犯人のほうが似合うホプキンズと正面から演技合戦をしても、
全く互角以上の真剣さです。
彼女の演技は客観的には観れないくらい入り込んでいます。
幼い頃の羊をかかえ逃げる彼女は救えなかったことが自分のトラウマになっています。
そしてそのトラウマと向き合うことをアドバイスするホプキンズ。
そのまんま犯人の井戸に隠した誘拐された女の悲鳴となるのです。
この単純なのに深層心理をついている脚本は見事です。
猟奇殺人をもとにした刑事ドラマでは「セブン」のほうが好きですが、
この作品も二重の舞台のトラウマと演出で上手に作られています。
なにしろホラー要素もあるサスペンスなのに品さえ感じられるのも、
やはりジョディ・フォスターだからでしょうか。
意思の強さと気弱さとあっけらかんとした陽気さ・・
見事な演技でしたね。
【アルメイダ】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-04-02 12:49:38) |
377.ネタバレ 究極の悪ハンニバル・レクターという題材を手に入れ、さらにアンソニー・ホプキンスという素晴らしい役者を迎え入れた時点でこの作品は勝利していたのだろう。
並外れた知性を持ち、あらゆる倫理規範を軽々と飛び越えてしまう怪物。クラリスはバッファロー・ビルから「羊」を救出するが、レクター博士という獣の前には無力だった。恐怖を感じつつも、その超人的な能力に不思議と惹かれてしまう人も少なくないはずだ。
実際のFBI捜査官は、レクター博士を連続殺人者としてはリアリティがなくむしろカルト宗教の幹部にふさわしいと評していて、それを聞いたときはなるほどと思った(そういえば犯行も儀式的で、被害者の死体が殉教者に見立てられている)。これほど強烈なカリスマ性を獲得した犯罪者は他になく、悪役としては史上もっとも秀逸な人物造型だと思う。
――と褒めつつも微妙な点数なのは、なぜか個人的にはあまりはまれないから。本作と不幸な出会い方をしたのもあるし、久しぶりに再見してレクター博士も脱走方法も「ありえないなー」と冷静に見てしまった。終盤があまり盛り上がらないというのもストーリー展開としてきれいじゃない。自分はむしろあまりの高評価に違和感を覚えてしまう側の人。素直に楽しめなくて非常に残念に思う。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-02-12 21:42:51) |
376.緊張感漂う雰囲気がなんともいえない。ストーリーも引き込まれるような展開で良かった。 【ucs】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-02-06 15:47:39) |
375.これを初めて観たのは中学生の時でしたが、クラリスは完全にレクターの掌の上で動かされているだけだなって感じがしちゃって、先がどうなってしまうのかというサイコホラーの真髄を楽しめる事が出来ました。ホプキンスって役者さんもこの映画で初めて観たのですが、あの目の強さと、とり付かれたような演技に身震いしたのをはっきり憶えています。ジョディ・フォスターも自身知的な彼女が演じたのは適役。最初に観た事も相まってレクターシリーズではこれが1番怖いです。ジョナサン・デミ監督の演出も凄い。 |
374.この作品を他の映画タイトルを拝借して要約するとこうなる。 「博士の異常な愛情 また博士は如何にして食べるのを止めて クラリスを愛するようになったか 」・・・う~んちょっとひねりが足りんな。 山田君、ザブトン一枚持ってって! |
373.ネタバレ 犯罪捜査にプロファイリングを取り上げたという点で、多大の功績をあげた作品だと思う。犯罪者の心理は犯罪者にしか分からないということで、レクター博士は最高の権威者であり、新人のFBI捜査官のクラリスにとっては最高の師匠といえよう。このふたりのやりとりが見事に描かれていると思う。 【nishiken】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-12-10 08:27:48) |
372.怖いのは苦手ですが、最後まで引き込まれてみたような気がします。 【pokobun】さん [DVD(吹替)] 8点(2005-12-09 23:57:15) |
371.ネタバレ やっぱりこのくらいごつくなくっちゃ。FBI捜査官なんだから。説明的な場面を極力減らすことにより、洗練された作品に。私はこのくらいならグロいと思いませんが、どうでしょうか。許容範囲。なにしろ、うんざりするようなグロシーン多いですから、いろいろと。グロい場面も撮り方次第ですなあ。「踊る大捜査線」でパクりましたね。でももうみんなこれ見てるからなあ。よその国の映画だからいいと思ってパクるのは品がないのでやめましょう。 【パブロン中毒】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-20 15:26:09) |
370.レクター博士が凄いです。終盤ではなぜか外へ飛び出して大暴れしますが、この人の怖さってそういう「人食い」の要素じゃないと思う。むしろ独房の中から微笑みながら、静かにクラリスを見つめる前半にこそ彼の恐ろしさがある。それに比べたら、バッファロービルなんてただの気色悪い変態にしか見えなかったなぁ。 【とかげ12号】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-11-19 20:46:11) |
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369.漂う緊張感が素晴らしい! レクター博士の目の動きや挙動一つ取っても一流。一瞬指をなぞるシーンはゾクッと来た。 アンソニーホプキンス=レクター博士の印象が強すぎて後の作品にも影響が…恋愛物の日の名残りとかにレクター空気出しすぎ。 【oO KIM Oo】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-11-13 20:30:08) |
368.アンソニー・ホプキンスはこの作品が初めてだったのでその後レクター博士のイメージがなかなか払拭できませんでした。 【maemae】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-08 14:22:04) |
367.いやぁ。。。濃密だった。 アンソニー=ホプキンスこわすぎ。。。 こういう系でアカデミー賞取りまくって、なおかつ説教臭くなくて楽しめるってのは凄いですね。 【とっすぃ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-05 20:08:31) |
366.ややグロテスクなテーマの中でここまで支持されている作品は他にはないでしょうね! サスペンスも十分、不気味さも十分。面白いと思える色んな要素がたくさんあって、 本来ならこの作品で完結させてほしかったな。 【坊主13】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-04 20:30:45) |
365.アカデミー賞受賞作品ということで見たのですがサスペンスが好きではない私にとっては決していい作品だとは言えなかった。ただ主演二人の表現力には脱帽。二人の息詰まる緊迫感が見事なまでに伝わってきた。 【CPA】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-10-30 06:01:10) |
364.私のベスト3に入る作品。事件の謎解きより、レクター博士という人物にものすごい魅力を感じてしまいました。もちろん彼は猟奇殺人鬼で犯罪者なのですが、ウィットに富んだ会話や深遠な知識、鋼の哲学に紳士的な振る舞いは他の作品の殺人鬼とは一線を画しています。そしてそんなレクターを怖いくらい見事に演じたアンソニー・ホプキンス。檻の中で青白く浮かび上がる彼の不気味さはかなりのものです。肝心の話の内容も、原作に忠実で非常にしっかりしています。クラリスのレクターへの複雑な気持ちもジョディ・フォスターの名演でちゃんと表現されているし、映像や雰囲気もとても良いです。細かい描写にも凝っていて、何度見ても飽きません。多くのサスペンス・ミステリー映画は原作には劣ると言いますが、この作品は完成度が非常に高いので原作を読んだ方でも楽しめると思います。 【クリスタル】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-10-29 14:29:55) |
363.「おはようクラリス」、この一言でアンソニー・ホプキンスはとんでもない怪物を映画史に創り出してしまった!!こんなイカれた(←ホメ言葉)演技をするのは自分の知る限り「シャイニング」のジャック・ニコルソンをおいて他に知らない。いかんせんインパクトが強すぎて、後のアンソニー・ホプキンスの出演映画ではどれもこれもレクター博士にしか見えないというトラウマは未だに拭えない。 【8823】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-10-28 16:47:33) |
362.かなり精巧に作られた映画だと思った。 私が、アカデミー賞を見直したきっかけ(それまではアンチ権威って感じでアカデミー賞はあえて避けるほど、ひねくれていた私)。 【りえりえ】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-10-28 02:11:46) |
361.おもしろい!このサイコサスペンスには、えもいわれぬセクシィさが漂ってます。たとえれば映画館で見てたら、生唾を飲み込む音が聞こえるような。エロテックなサスペンスとは違う種類のドキドキ感ですねー★ 【マミゴスチン】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-10-03 21:52:24) |
360.いいのはわかる、演技がうまいのもわかる。だけど繰り返しみたくはならない。 【アオイ】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-09-04 21:22:08) |