5.映画のたのしみの一つに、自分がまったく知らない世界を、疑似体験出来る、ということがある。この映画はまさにそれ。アイボリー監督独特の、奇をてらうでもなく、衝撃を与えるでもなく、重厚かつ眈々とした作り込みは、小さな住宅すらまともに管理出来ないグウタラな私を、二時間十分の間、イギリス貴族の有能な執事の世界に浸らせてくれるのである。映画という性質上、たしかに原作と比べて、スティーブンスの微妙で繊細な心理描写は描ききれていないが、この音楽と背景と効果音(この映画の効果音はなかなか素晴らしいと思う!)と役者の上手さは、総合芸術として、見て損はない、美しさだと思う。 【ともとも】さん 9点(2003-11-09 11:47:09) (良:2票) |
4.執事という仕事が、使用人と呼ばれる職種の最高峰として誇りをもつことのできた時代。あらゆる感情を押し殺してその職務を全うしようとするバトラー魂と一人の人間として揺れ動く感情との内面の葛藤を、非常に繊細な抑えた演技で見せたホプキンスはさすが。レクター博士よりよほど深く重く複雑な心理描写が求められるこの役こそ、彼の代表作と言っていいのでは。感情のままに突っ走る若い使用人カップルを見送る2人の心の内を思うと大人でいることの切なさにキュンキュンする。観る方も有る程度大人じゃないと良さを味わえない極上の一作。 【lady wolf】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-05-12 14:25:29) (良:1票) |
3.淡々と描かれているから切なさがひしひしと伝わる。 【HRM36】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2009-10-08 15:07:41) (良:1票) |
2.執事という仕事を極めすぎてしまったがために、自分の気持ちを押し殺すのが当たり前になってしまった男。様式にこだわる職場にいつつも普通の感性を持つ女性であり続けようとした女。この二人が心の底では惹かれあうものの、愛の告白をするはずもない執事に対して愛の告白を待つ女。このどうしようもなさがたまらなくいい。どちらの気持ちが強いかと言えば、やはり女の方が強かったように見えるので、この映画は女性である自分の立場に対する「待つ」という固定観念に敗北した哀しい女の物語だと思った。 【ラーション】さん 9点(2004-04-23 00:51:57) (良:1票) |
1.大人の恋愛映画ですね。そしてアンソニー・ホプキンスの演技を堪能しました。イギリスの風景も素晴らしい。決して自分の気持ちを口に出さず、職務に徹するストイックなスティーヴンス。こういう自分の仕事に対して誇りを持ち、プロに徹する男性は魅力的です。貴族たちの品がよく、友好的なのはいいけど少々浮世離れした姿も興味深い。こういうところも、当時ヒトラー率いるナチスをヨーロッパでのさばらせてしまった原因のひとつなのかな、と思った。雨の降るバス停で別れるホプキンスとエマ・トンプソンにボロボロ泣きました。この二人の名演がこの作品を支えたのだと思う。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2003-11-21 21:49:29) (良:1票) |